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研究生活 アーカイブ

2006年11月20日

学内で研究発表

かなり手厳しくやられてしまった。

ご説ご尤もというところが多いのは確かで、まあ、これから戦線を立て直してやるしかないと。

2006年11月29日

古典としての調停批判

佐々木吉男[1967,1974]『民事調停の研究』(法律文化社)を読んでいる。

民事調停法の成立までの沿革について書かれているところなど、大変勉強になる。おもしろい。
借地借家調停法(1922)より前に、すでに領土としていた台湾や関東州で、民事訴訟調停制度が作られていたこと。(明治37年:台湾、明治41年:関東州、明治43年:朝鮮、大正12年:南洋諸島)
借地借家調停法以降の調停法も、都市限定、分野限定だったのが、昭和17年の戦時立法で民事分野全般に拡張されたこと。

2006年12月14日

短い論文書きました

入江秀晃[2006]「自主交渉援助型調停と評価型調停」(JCAジャーナル、2006.12、第53巻12号)

JCAジャーナル
まだ論文名は上記Webには掲載されていません。

2006年12月17日

メモ

前田智彦「民事司法における裁判補助の法社会学的考察(1)-裁判所書記官による裁判補助を中心に」『法学協会雑誌』(2006、第123巻第2号)

書記官の要件事実論を中心にした知識等について書かれている。
集中的なインタビュー調査を行った成果のよう。

2007年01月27日

Hewlett財団の20年間の紛争解決プログラム

The Hewlett Foundation's Conflict Resolution Program: Twenty Years of Field-Building

160ミリオンドル、900以上のGrant(補助金)、320以上の組織・・

2007年01月29日

Florida

How to become a Florida Supreme Court Certified Mediator

http://www.flcourts.org/gen_public/adr/bin/How%20To%20Become%20a%20Mediator.pdf

2007年01月30日

RANDレポート

Civil Justice Reform Act of 1990 Final Report

http://www.uscourts.gov/library/cjra/cjrafin.pdf

2007年01月31日

世界の法曹の課題

法曹新職域グランドデザイン

アジア5カ国と米国の、法曹の現状と課題。

大阪大学・法曹新職域グランドデザイン。

内容保証はなしだそうです・・

2007年02月09日

最高裁のホームページの図解

裁判所 | 民事事件の登場人物

民事訴訟、少額訴訟、民事調停、労働審判手続の図解がある。

進化している。

2007年02月11日

地図は現地ではない

といったひとは、コージブスキーだそうです。

アルフレッド・コージブスキー - Wikipedia

2007年02月13日

あるある化する日本社会

「日本人の法意識」はどのように変わったか -1971年、1976年、2005年調査の比較-
北大法学 2006年11月で、全文読めます。

大切なこととして、親孝行を挙げる者が1976年増加し、自由を尊重することを挙げる者が減っている。

             2005年 1976年
親孝行すること    61.3%  52.9%
自由を尊重すること  36.7%  45.2%

服役中のものに対する意識。

                                 2005年 1976年
懲らしめる必要。待遇を良くしすぎるべきでない。 49.9%   30.2%
人道的におもいやりをもって処遇すべき。      29.5%   60.8%

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2007年02月15日

最新ADR活用ガイドブック

日本弁護士連合会ADR(裁判外紛争処理機関)センター編[2006]『最新ADR活用ガイドブック―ADR法解説と関係機関利用の手引』(新日本法規)

をようやく入手した。
手続フローや実績が書いてあり、参考になる。

途中の注釈で自分の名前を見つけてぎょっとする。悪いことはできませんなぁ・・
著者のひとりのT先生の仕業かな。

隣接士業について、リストに土地家屋調査士会しか載せていないのはちょっといかがなものかとおもった。

2007年02月17日

新ハーバード流交渉術

R. フィッシャー、D. シャピロ、 印南一路(訳)[2006]『新ハーバード流交渉術 論理と感情をどう生かすか』(講談社)

フィッシャーさん、もう、中東の交渉話はやめれ。などとは、だれも言えないくらいの大御所の新作。
好き嫌いは抜きにして議論の前提になるタイプの本だという意味で、うまい邦題のつけ方だと思う。
最後に文献案内が載っている。「ポジティブ心理学」についての言及があって、興味を引いた。
ドイチェ、コールマンのHandbook of Conflict Resolutionも読むべきと言っている。

2007年02月20日

メディエーションで大事なもの

JCAジャーナルの2月号で、中村芳彦先生が、メディエーションで大事なのは、①利用者主権、②社会的実験主義、③反省的実践の3つだと発言されていた。(神戸のシンポジウムの記録)
これは、まったくそのとおりだなぁと思う。

2007年03月08日

Circuit Court

First Circuit Courtを見学させてもらった。

ひとつは、医療訴訟で、経済学者が、インフレ予測などについて証言しているところだった。
医療訴訟と経済学者の関係がよくわからないのだが、被害額算定に関係するのだろう。

もうひとつは、陪審を選ぶところを見せてもらった。
ドラマのように大真面目に、裁判官が質問して、原告の弁護士が質問して、被告の弁護士が質問するところを見た。

ハワイの裁判官は、投票でなく、試験で選ばれるそうだ。

http://www.courts.state.hi.us/

2007年03月09日

HawaiiのADR

トレーニングがない日も、いろいろ人に会って話を聞く。

ハワイのADRは、現在コロラドに居られるらしいPeter Adler氏がNJCの一つであるカンザスから持ってきたものとして始まり、広がったようだ。裁判所が正式なプログラムにするまでずいぶん時間がかかっている。

Peter S Adler(mediate.com)

さっぱり、サーバイブが問題だな。

2007年03月10日

Pepperdine続報

トレーニングは朝8時半からの予定だが、7時半ごろにだいたい皆集まる。
簡単な朝食を教室でとりながら待機していると、8時過ぎには、講義が始まる。

Pepperdineの企画としては、ハワイでは初めてだということで、かなり有力な人が集まっている。
30人のクラスのうち、トレーニングを行っている人間が三分の一くらいいるのではないかということだった。
HawaiiのADRセンターの代表もいる。

参加している裁判官は7人。
残りのほとんどは弁護士で、スコットランドからも来ている。

年齢はかなり上の方が多く、よくわからない。
明らかに私が最年少だ。

2007年03月14日

ハワイのADR事情

みなさんお知りになりたいであろう単価水準だが、ハワイでも本土でも弁護士のタイムチャージよりも調停人のタイムチャージが高いのだそうだ。(もっとも、「金の取れる」調停人は限られている。)
ハワイでは、一時間当たり150ドルから350ドル。
これは、米国の本土に比べると随分安いそうだ。
本土では一時間当たり450ドルくらいは普通で、900ドルくらいさえもざらにいるという話だった。

ハワイでは、元判事や弁護士たちがコミュニティの調停センターにトレーニングを受けに行ったり、経験を積むために無償ボランティアを行なう流れが明確になっているという。

以下、トレーニングに参加していた人の印象的な話。

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2007年04月14日

法令用語日英標準対訳辞書

内閣府で行っている、日本法を英語に翻訳するプロジェクトについての話を聞いた。

民法をはじめとして、数十の法令がすでに翻訳されているが、それだけでなく、法令用語日英標準対訳辞書(Standard Bilingual Dictionary)がWebで公開されている。

気になって調べてみると、調停はconciliation、複数ある「あっせん」の訳のひとつとしてmediationが使われている。

法令上の調停は、民事調停法のように裁判所で行われるものを指すからconciliationでよいと思うが、mediationの訳が「あっせん」に固定されるとしたらちょっとミスリーディングになるように思える。

もっともこの辞書は、日本法を英語に訳す作業を円滑にするためのものであって、英語を日本語に訳す使い方は想定していないのかもしれないが。

また、ADR促進法も対訳作業が平成18年に終わっているはずのようである。(まだ公開されていないみたいだが)

法令外国語訳推進のための基盤整備に関する関係省庁連絡会議

法令翻訳データ集


上記リンクが古くなっているので、以下を参照。(2012/05/09)
日本法令外国語訳データベース

2007年04月23日

諸富祥彦先生のお話

トランスパーソナル心理学の本を書いておられる諸富祥彦先生による、プロセス指向心理学の紹介等のワークショップに参加した。

本題の話はごく「さわり」だけだったが、カウンセリング経験などが豊富そうな話の仕方そのものが興味深かった。

心理学を学びたいという学生は多いのだが、仕事はないんだけどね・・というような、余談も興味深かった。
文芸誌を購読する数より、文芸誌の新人賞に応募する数のほうが多いという話と似ている。

2007年05月11日

法社会学会・新潟大会

日本法社会学会の新潟大会に来ている。

2007年05月12日

東京ノート

先日、平田オリザ演出の舞台、東京ノートを見てきた。

駒場東大前から徒歩3分のこまばアゴラ劇場で。
エンターテイメントではないと聞いていたので、どんなものだろうと思って見に行ったが、楽しい。

ぼくが好きな映画監督の中ではトリュフォーに似ている感じがした。
緊張感は高いのだが、緊張が高まりそうだとおもうと、案外あっさりもどってくる。
しかし、その振幅が、最初は浅く、だんだん深くなってくる。

あまり広くない劇場で、椅子は割と窮屈だが、いっぱいに混んでいた。

2007年05月13日

法社会学会1日目

(法律)相談機関の満足度調査研究の話が興味深かった。自治体の法律相談の満足度が低く、消費生活相談の満足度が高いという結果が報告されていた。消費生活センターの人たちには朗報だとおもう。「使える情報」なのではないか。

自治体の法律相談については、中立的で一般的すぎるので役に立ったという感じがしないという話だった。わたしには、中立的だから役に立たないとは思えないが、一般論は役に立たないということはよくわかる。
消費生活センターの満足の理由についての報告はあまりなかったのだけれど、わたしの印象では、相談員は、具体的で新しい事件情報について詳しいので、相談に行ったものが被害を受けているのは自分だけではなかったとかいった位置づけが得られて安心できるのではないかと感じを持っている。

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2007年05月14日

法社会学会2日目

学校ADRについて、教師と学校の紛争解決を行う試みが紹介されていた。「強者(学校)-弱者(保護者)」の関係から、「消費者(保護者)-提供者(学校)」の関係への変質という指摘は、実感としてよくわかる。

北東北の司法書士業務についての実証調査研究も興味深かった。本人訴訟支援を行う司法書士は、簡裁代理に積極的というデータもとれているらしい。
他には、石垣市を対象とした、離島における弁護士利用の研究も興味深かった。

『<心理学化する社会>と法の公共性』というタイトルの本も近々出るそうだ。わすれないように書いておこう。

2007年05月31日

勧解

新潟の法社会学会での報告が興味深かったので、林真貴子先生の勧解についての論文をいくつか読んでみた。

明治初期に政府が用意した庶民のための紛争解決システムなのだが、近世の内済とはだいぶ違うようだ。また、大正期に出てくる個別立法としての調停とも違うようだ。

非常におもしろい。

2007年06月09日

弁護士会のADR機関リスト

日弁連 - 紛争解決センター

仲裁統計年報

2007年06月18日

平田オリザ先生の講義

コミュニケーションデザインの「デザイン」というところに焦点を当てた講義として、どんなのがあるのかを質問してみたら、キャンパス内で舞台空間を見つけ、即興の演劇を行うという授業があるということを教えてくださった。

おもしろそう・・だが、どこかで、事例紹介などあるのだろうか。

2007年06月21日

60年代のTグループ

関計夫[1965]『感受性訓練―人間関係改善の基礎 』(誠信書房)

東大・教育学部の図書館で借りてきて読んだ。
感受性訓練というタイトルだが、内容はTグループについて書かれている。
著者は、執筆時点では九州大学教授。

同じことを今行えば問題になりそうなことも載っているが、手作りで実践してきたことを具体的に紹介してあり、「使える」なあと思うところも多々あった。実際に現在の南山でやっていることと重なっているところも多く、Tグループの参加経験者にとっては特に、なるほどこういう意図でああいうことをやっていたのかと合点が得られるだろう。

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2007年06月22日

Carrie Menkel-Meadow先生の読書会

神戸大学CDAMS-Web | 研究活動アーカイヴ:Carrie Menkel-Meadow教授の読書会

80年代に、小島武司先生が、Carrie Menkel-Meadow先生の論文の紹介を行っている。
(『アメリカ法』、1986―1,p131~136、1986.5)


2007年07月02日

国立国会図書館法務図書館

法務図書館検索ページ TOP
利用に当たって
    まず,法務図書館へ電話し,閲覧したい図書,利用したい日時等についてご相談ください(直接来館されても,利用できない場合がありますので,必ず事前に電話してください。電話は、利用可能日・時間内にお願いします。)。

事前電話確認が必要な図書館だそうです。

2007年07月03日

ヘイリー『権力なき権威』

John Owen Haley , 財団法人判例調査会訳 『権力なき権威 -法と日本のパラドックス-』(原題:Authority Without Power Law And The Japanese Paradox)


 日本の政治の特徴で最も顕著で固有的なものは、権威と権力の分離である。・・強制する力の方は目立って弱い社会である。その結果、社会秩序を維持するための手段として、法に依らない非公式な社会統制手段に依存する。それと同時に、社会を統治する規範や規範にかかわる有効な統制権をこうした非公式な執行手段を巧みに扱い得る人々に移転している。したがって日本には、公権威の集中化と同時に強制的権限の拡散(決して一様ではないが)の両者が存在する。
P17

研究のために図書館でいろいろ資料を漁っているが、この本は一級品の面白さだった。
和訳もしっかりしているのに、なぜ正規に出版されていないのだろう?
ウォルフレンがあれほど受けいられたのだから、商品性も高いと思うのだが。

2007年07月16日

仲裁ADR法学会

7月14日、立教大学での開催。

立教は池袋西口駅前の猥雑感とのギャップがはげしいきれいな大学だ。
学生時代に、かっこいい生活をしている立教の友人にレポートの手伝いをさせられていたことを思い出した。

研究会は、実務家は、ECネットワークの沢田さんだけで、実務に詳しく関心のある学者の発表が中心だった。
どれも興味深かったが、実務家からの報告の割合をもう少し増やしたほうがよいように感じた。
実務家同士で議論を闘わせるとか。

同席調停対別席調停(交互面接調停)という構図の議論については、町村先生が書いておられる

ADRの実効性とはなにかということで、いくつか質問してみたのだが、質問の仕方が悪かったのか、適切に答えていただいてはいるものの、隔靴掻痒感があった。
ADRを考える理論そのものも、もう少し、発展する必要がありそうだと思った。
例えば、相談をするひとのコンピタンスは何かを考えると、カウンセリング的な能力が必要であるという議論はあって、それすらも手当てされていない場合が多々あるという現実があって、そのあたりで話が終わりがちなのだが、最新事案をどのように共有知識化するかとかいったことが本当は相談者の満足度に直結するはずなので、その辺までの議論が必要だと思う。

聞き置く、あるいは、切り捨てるためのADRから、くみ上げるためのADRに変わっていく(べき)としたら、どこがそのメルクマールになるのかを見る目が必要になるはずで、要は、そこが充分でないとすると、研究しなければならないことはまだ残っているということになる。

2007年08月03日

二弁仲裁センターの事例集

第二東京弁護士会仲裁センター運営委員会[2007]『ADR解決事例精選77』(第一法規)

1990年に設立された、民間型で分野非限定という意味で、最初のADR機関が二弁仲裁センターである。
その最新の事例集。

各事例には、「心証開示」やら「促進型(自主交渉援助型)」やらの分類もなされている。
本物の事件がこうして解決されているという事実は重い。

以前のエントリー:仲裁センター規則・候補者名簿



2007年08月25日

1997年、GAOのADRについてのレポート

1997年のGAO(米国会計検査院)のレポート。
組織内ADRのケーススタディを行なっている。民間5社、公共公益5社。
建築のBrown & Rootや、USPSも。

GAO/GGD-97-157
http://www.gao.gov/docdblite/summary.php?rptno=GGD-97-157&accno=159133
(英語)

2007年09月19日

奈良教育大「ピア・メディエーションの研究」

池島徳大、吉村ふくよ、倉持祐二「ピア・メディエーション(仲間による調停)プログラムの実践的導入に関する研究」(PDF) 教育実践総合センター 研究紀要 Vol.16 2007/3 奈良教育大学

マニュアルの訳も含まれている。

2007年10月01日

東大、博士課程学費タダ

NIKKEI NET(日経ネット):東大、博士課程の授業料「ゼロ」・頭脳流出歯止め狙う

本当?

2007年10月11日

司法過疎

神奈川大学大学院法務研究科主催講演会・パネルディスカッション「大量増員時代の生き方 ― 弁護士過疎地のオンリーワン」

岩手県の宮古という地域で、日弁連の公設事務所の所長を去年までしていたという田岡直博弁護士の話などを聞いてきた。
30歳とまだお若いのに、非常に魅力的な話し方をする。

地域司法モデル(PDF)の構想図にとても共感した。
地方の名士として成功してしまった長老弁護士などは、公設弁護士事務所ができるのを嫌うという話も、なるほど、と思った。

ひまテラNEWS

2007年10月29日

少額訴訟の実態研究

草地未紀[2001]「少額訴訟手続における和解の意義とその問題点 : ある簡易裁判所における傍聴観察データを基に」(岡山大学大学院文化科学研究科紀要第12号、pp.151-170、2001年11月)

岡山大学の紀要。全文がPDFで公開されている。
ケーススタディがきちんとされていて、実態と課題がよく分かる。
1時間で決着をつけなければいけないということで、話し合いが盛り上がってきたら、強引に和解を迫られたり、唐突に判決が行われたり、あるいは打ち切られたりという結果につながりやすいということを紹介している。

米国同様に、少額訴訟にも、メディエーション(調停)の付設が望まれていると思うのだが。

2007年11月12日

司法調停の満足度

大阪地方裁判所委員会・2005年2月14日(PDF)
リンク元:大阪地方裁判所委員会

一般調停31人、特定調停34人という小規模な調査であるが、調停を利用した当事者アンケートの結果が添付されている。

一般調停について、
調停委員の対応(応接態度,言葉遣い)・・24名中(4名:悪い 3名:非常に悪い) 不満足率3割
調停委員の説明する内容・・22名中(9名:分かりにくい) 不満足率4割

阪大・仁木恒夫先生の講演の付録という位置づけ。

もっと大規模に、継続的に調査をしたらよいのにと思う。・・しかし、課題がある情報を含めて公開しているのは立派だとおもう。

他にも類似調査結果は出ているのだろうか。

2007年11月26日

問題構造化手法

先日PI-FORUM年次セミナーで、東大工学部で准教授をされている加藤先生のセッションに参加した。

関連論文:政策課題抽出支援のための問題構造化手法とその 合意形成手法への適用可能性/東京大学大学院工学系研究科  加藤 浩徳(PDF)

一見、KJ法に似ているのだが、
(1)ステークホルダのパターンに分けて図解する
(2)因果関係(制約条件-選択肢-目的)を図解する
という特徴がある。

最近、川喜田二郎の『発想法』『続・発想法』を読み直していたのだが、『続・発想法』に出てくる「累積KJ法」というやり方に近い感じがした。
パターンランゲージにも近いのかも。

(1)に関連して、当事者のステレオタイプ化を強化する方向に働かないかというフロアからのコメントがあったが、これは鋭い指摘だと思った。

優れた役人なら頭の中でやっている活動を、外在化させることによって、
・引継ぎを容易にする
・説明責任(アカウンタビリティ)を果たす
という効果を持つというストーリーは納得できる。

こういう”秘術”と目されていた、「申合せ事項」としての調整業務がどこまで形式知化されるかはよくわからないが、とても大切な仕事であることは確かである。

二者間のメディエーションでも当然利用可能だと思われるが、図解においては、ステレオタイプ化が不要であるため、より容易かもしれない。
一方で、感情ファクターをどのように図解化するかなどの研究はより重要になるだろう。

2007年12月09日

司法アクセス学会第1回学術大会

司法アクセス学会第1回学術大会
に参加してきた。

懇親会は出席せずに失礼したが、企画も面白く、聴衆側も濃い感じで面白かった。
挨拶したいと思っていた何人かに挨拶できたのも個人的にはよかった。

個人的に勉強になったのは、
・PIO-NETの行政向けデータ利用開放が近年あったこと(内容ははっきりわからなかったが・・)
・法テラスの広報予算が1億円と聞いたこと
・池永知樹弁護士の国際的な法律扶助の報告
あたりが特に。

新司法試験について、試験制度というより、その背景にある法学部教授や有力な実務家たちの「考え方」そのものが問題なのではないかというF先生のコメントがあったが、深くうなづいてしまった。

2007年12月17日

フット先生新刊

ダニエル H.フット (著), 溜箭 将之 (翻訳) [2007]『名もない顔もない司法―日本の裁判は変わるのか』 (NTT出版ライブラリーレゾナント 40)

偉大なるフット先生のサバティカル本第二段。

「透明な存在であるボク」のなれの果てとしての司法システムを批判する本と言えるのかもしれない。
この問題は根深い。

以前のエントリー:裁判と社会

2007年12月30日

facilitative vs evaluative on mediate.com

正月から2週間ほど、アメリカに行くので少し、頭の中を英語モードに切り替えないといけない。

A Study in Mediation Styles: A Comparative Analysis of Evaluative and Transformative Styles

コンパクトにまとまっている上に、事例ベースの検討もある。
なぜか著者の署名がない記事で、不思議だ。

変容型調停の説明は、Bush&Foldger自身のものとは少し違うような気がするが、それは詳しい検討が要りそうだ。

評価型調停が80年代に広がったという記述もあり、そのあたりは興味深い。

Styles of Mediation: Facilitative, Evaluative, and Transformative Mediation
by Zena Zumeta - September 2000

これは、三つのスタイルの長所短所を比較したもの。


Should Mediators Take The Reins? Evaluative Interventions In Mandatory Mediations by Peter Annis - February 2003

評価型調停がすばらしいというカナダの人の文章。

2008年01月03日

まずはMarylandから

http://www.courts.state.md.us/macro/index.html
http://www.courts.state.md.us/macro/rules.pdf

民事訴訟手続規則(巡回裁判所)に、調停人の認証や、調停トレーニングが規定されている。

http://www.mcdr.org/

2008年01月04日

Maryland

MarylandのMACROを訪問したところ、懇切丁寧に案内してくれた。
朝7時にホテルを出て、5件のヒアリングを終えてホテルに帰ってくると夜9時だった。

http://www.courts.state.md.us/macro/awards.html
に書いてあるように、他の州や外国政府のモデルになることを意図して作られたものだから、と言えば言えるのかもしれないけれど、その気合がすごい。

http://www.oag.state.md.us/Consumer/complaintmediation.htm

MarylandのAttorney Generalの消費者向け電話調停についても教えてもらう。
アメリカに教えてもらうことは、まだまだ多いと実感した一日目。

2008年01月05日

BBB

BBBの本部と、Washington D.C.支部を訪問する。

BBBは1912年設立。2006年の問合せ(Report requested)は46百万件。紛争解決は83万件中60万件(72%の解決率)。
まさに巨大なADR機関だが、現在、改革のさなかにあるようだ。

苦情処理用のITシステムを見せてもらったが、Webベースの非常にスマートなものだった。メールやPDFが添付されるのはもちろん、企業や消費者とのやり取りが整理されて保存され、必要なアクションがアラートされる機能もある。
PIO-NETと比べると、N700系新幹線と、機関車のデゴイチくらいの差がありそうに思った。

2008年01月12日

Florida

フロリダに来た。

Bestではないかもしれないが、Mostであることは確かだと言われるくらいADRが盛んなところだ。

裁判所付設型の調停が非常に広く使われている。裁判所からの命令があったものだけで12万件(2001年推計)。州全体の人口も現在大体1800万人の巨大な州だが、それにしても調停件数が多い。

裁判所が資格のある調停人名簿を整備している。その名簿に登録している人が5000人以上いる。
裁判所の認証した調停人資格を持っている人が消費者相談をやって効果を上げているという話も聞いた。

巡回裁判所(日本で言えば地裁くらいのイメージか)の調停人は弁護士資格が必要だったが、2007年11月に要件が変わり、弁護士資格が不要になった。
進んだり後戻りしたりするにしても、この分野は動いている。

2008年01月15日

自助目的の法情報提供サイト

当事者の自己決定を支援するためには、当事者がよく情報を与えられなければ(well-informed)ならない。

そのためには、本人訴訟支援などを目的にした、素人用の法情報源が役に立つかもしれない。
米国にはいくつかあるようだ。

http://www.selfhelpsupport.org/

http://www.peoples-law.info/Home/PublicWeb

2008年02月07日

Key Bridge Foundation

エントリーが滞っていますが。

今回の米国取材で印象的だったのが、障害者向けの調停プログラムでした。

Department of Justice ADA Mediation Program
Key Bridge Foundation

障害者と企業(例えば、ファーストフードチェーンとか、ホテルとか)や公共施設相手に、調停を行うというもの。
このプログラムは、当初障害者団体から非常に懐疑的に思われていたらしい。しかし、実際にやってみると予想以上にうまく行っているようだ。

ミソは、司法省の調査権限という強制力と、調停を微妙に連携させているところ。
調停の内容そのものは司法省にさえ非公開なのだが、調停の席に着いたかどうか(応諾したか)と、調停結果が成立したかどうかだけは司法省に通知される。
司法省は不満が集まっているのに誠実に応対しない企業から重点的に調査を行うという運用をしている。
そしてそのことが、調停の場で良い解決をしようというインセンティブにつながっている。
その結果応諾率は9割近くになり、合意率も高いらしい。

法と運用のギャップが大きいときに、ソフトランディングさせるツールとして、調停は有効に使えることを示していると思う。
当事者間の力の格差が歴然としていても、強制力とうまく連携すれば効果が上がるということも示していると思う。

同じ「一罰百戒」にしても、修正するつもりのある当事者をいきなり高権的に処罰すれば、当事者は反省するというより不運であったと思いがちであるし、怒りは権力というより申し立てた相手方に向かいがちになる。
反対に、調停を間にかませることで、執行機関は、確信犯的で不誠実な相手に対してのみ「一罰百戒」的に振舞うことが出来、正義に適っていると思う。

北米における権利擁護とサービスの質に関するシステム 「日本における「障害のある人に対する差別を禁止する法律(JDA)」の制定に向けて」桃山大学北野誠一

こちらは、かなり懐疑的。

2008年02月13日

日本EAP協会

日本EAP協会 ホームページ - Japan Chapter of Employee Assistance  Professionals Association

EAPの名前が書いてある会社の人と名刺交換した。
見るからに優秀な方なのでさっそくいろいろ教えていただいた。

EAPのスキームでは、カウンセラーが従来行わなかったような、環境改善への働きかけが”概念的には”含んでいるらしい。


2008年02月25日

家事調停の当事者の声

http://www7.big.or.jp/~single-m/kaishoukai/12.08hitokoto.htm



  • むかないと思う人こそ留まってほしい。私こそが調停委員だと思っている人にこそ降りてもらえるシステムが必要

  • 調停委員が主観や個人の価値観を押し付けるようなことだけはやめてほしい。・・
    調停委員のお説教を聞きに仕事を休んで裁判所に通うようなことが何回か続き、ほんとに情けなく憤りを感じました。
    きちんと弁護士と調停に臨んでいても延々と続くお説教、私の弁護士さんが何度も抗議をしてくれましたが、それでも男性調停委員の『男の子には父親が必要という』演説は繰り返されたのです

  • 私の場合、家事調査官調査が入り、ていねいな調査をしていただき、その調査報告書を元に面接交渉が決まりました。
    しかしそれでも色々と問題が発生したのです。
    あれだけていねいな調査官が介在し実現した面接交渉であってもこれだけのことが生じているということを伝えようと思ったのですが、家裁では終わった事案に関しては電話も手紙も門前払いでした。
    このことは非常に残念でした。
    これから増加の一途をたどるであろう面接交渉に関連する調停に、少しでも子どもための面接交渉という観点を忘れないでいただきたいと思うのです。

2008年02月28日

国土交通政策研究所のメディエーション報告書

国土交通政策研究所(調査研究成果報告)(報告書概要)

2008年02月29日

当事者の声

教えて!gooで、「離婚調停」を検索すると、5000件以上のヒット。
家事調停だと1000件以下になる。

http://okwave.jp/qa767527.html

調停委員の「あたり」、「はずれ」については時々コメントがある。

2008年03月01日

ステークホルダー分析に関するポータルサイト、stakeholderanalysis.org

http://www.stakeholderanalysis.org/

松浦正浩さんが中心として活動しているもの。

報告会を聞きに行ってきたが、いくつかの事例で非常にうまくいったという話だった。

ステークホルダー分析というのは、ある意味、バカ丁寧なやり方である。
「市民の声を聞く」というときに、公共事業の伝統的なフレームだと、一般には「2週間の縦覧期間」みたいなものがあればよいとされる。
その実態は、役所の片隅に、何とか事業の縦覧期間ですとA4の紙をペラっと張り出し、それを見た市民が、計画を見に行けるというものであるが、ほとんどの市民はそんなもの知らないし、役所のほうも、みんな見に来るなんて思ってもみないというものだ。
法的にはそれで十分ということでやってきたが、そんなものはちっとも十分じゃないということでいろいろ問題になっている。

ステークホルダー分析というのは、わざわざ市民のところに出かけていって、何を考えているかをひたすら聞き取る作業を行う。それを主だった意見、人をカバーし尽くすまで続けるというものである。

2008年04月02日

新しい年度

1月に行った調査では、大量の情報を収集してきたが、少しずつ消化していかなければならない。

Bostonで、ADRをやっている弁護士のチャンピオンといわれた人が、David Hoffman氏。

米国弁護士会(ABA)の紛争解決セクションの議長も務めている。

協同法務(Collaborative Law)の実践をしているという意味でも興味深い方。
この協同法務というのは、法律家にとってはむしろ調停よりもビジネスチャンスが大きいかもしれない。

まだ日本ではあまり知られていないように思える。
アメリカで広がったのは、調停の実務家の法律家が中心であった点が大きいのだろう。

Hoffman氏の論文は、Webで公開もしている。

http://www.bostonlawcollaborative.com/people/attorneys/david-hoffman/publications-list.html

ボストンの事務所にはガンジーのポスターなんかも貼ってあった。

2008年04月09日

ADR仲裁法

山田文・山本和彦[2008]『ADR仲裁法』(日本評論社)

ADRの必読書がまた一つ。
論文集ではなく、網羅性を意図して作った「教科書」。


2008年04月17日

Moore "Mediation Process"翻訳

クリストファー・ムーア (著), レビン 小林久子 (翻訳) [2008]『調停のプロセス―紛争解決に向けた実践的戦略』(日本加除出版)

ついに出版されたようです。

2008年04月22日

法と交渉研究会

「法と交渉研究会」という、90年代の民事訴訟学者と法社会学者の丁々発止の議論。
http://homepage3.nifty.com/satosho/NEGO/index.htm

感心してちゃあいけないんだろうけれど、おもしろいです。

2008年05月02日

勉強することは山ほどあるが・・

ADR Prof Blog

MoffittやNancy Welshなど、有名な学者が共同でブログを書いているようだ。

ロースクールでADRを教える際のティーチングマテリアルも見つけた。

2008年05月03日

ADR機関で検討すべき要素

NAFCM Community Mediation Center Quality Assurance Self-Assessment Manual

NAFCMが作った自己アセスマニュアル。惜しげもなくという感じの資料だ。

ADR機関を評価をするのはADR機関自身であるべきだが、正義を御旗にして身内に甘いことは言わずにに、ロジカルに徹底するというスタンスがすばらしいとおもう。

センターの立ち上げを考えている人にはとても参考になる資料だと思う。
例えば、受付(インテイク)のときに、受付をしない場合をどう考えておくかとか、当事者に対して手続をどう説明するかとか、あるいは、そもそもどうやって受付担当者を育成するかということも頭出しされていて、チェックリストまでついている。

2008年05月12日

日本法社会学会の神戸大会

日本法社会学会の神戸大会に行ってきた。

交渉教育に関するセッションがあり、「共通事実」だけで交渉ロールプレイさせるという斬新(?)な報告を、草野芳郎先生がされていた。新司法試験対策になるらしい。
草野先生の授業でも、観察者を置いたり、アンケートを取って授業を改善したりと「反省的実践」をされていて、授業の評判も良いようだった。

他には、民事訴訟利用者調査の報告などを聞いてきた。
裁判官が強く説得しすぎるという評価と、裁判官へのマイナスの評価の相関関係があるというデータに基づく報告もあった。

2008年05月23日

家事調停の改革の可能性

『仲裁とADR Vol.3』(商事法務)
が、アマゾンでも販売されるようになった模様。

松原正明「家事調停について」

をはじめとして、調停に関する論考がやはり興味深かった。

坂梨喬「現代家事調停論―司法モデルから調整モデルへ」判タ 1237、48-66頁、2007
http://www.hanta.co.jp/hanta/hanta-1237.htm
の存在も知ったが、家事調停実務見直しの機運が生まれているのかもしれない。

2008年05月29日

弁護士の報酬

日弁連 弁護士報酬(費用)

なかなかおもしろいパンフだと思う。
45%の弁護士さんはタイムチャージ1万円で仕事をするというデータもある。
(この項目の回答率は低いから、実際にはタイムチャージで仕事をしないと決めている人が多いのだろうが・・)

[弁護士 小松亀一] 2006年版弁護士白書-弁護士収入はやや減少中

などと併せて読むと興味深い。

2008年06月10日

グループ理論と調停

日本でメディエーションを勉強する人の一部で、南山大学の人間関係研究センターのグループトレーニングを受講するのが流行っているが、米国でも似たような議論があるのを見つけた。

Gaynierというひとが、ゲシュタルト心理学の手法は、トランスフォーマティブ(変容型)メディエーションに理論的基礎を与えるという論を張っている。

Gaynier,"In Search of a Theory of Practice: What Gestalt Has to Offer the Field of Mediation?", in the Gestalt Review 7(3):180-197,(2003)

Gaynier,"Transformative Mediation: In Search of a Theory of Practice",Conflict Resolution Quarterly, 22(3), Spring 2005

Bush & Folger, "A Response to Gaynier’s “Transformative Mediation: In Search of a Theory of Practice”", Conflict Resolution Quarterly, 23(1), Fall 2005

2008年06月15日

裁判所の予算と調停委員の報酬

裁判所の予算は約3100億円から約3200億円であるが,そのうち約100億 円が調停委員の報酬である。コスト効率のよい紛争解決手段といえる。実行満足度も高い。癒しの効果もある。外国から日本の裁判所の見学に来る人の中には, 調停を見たいという人が多い。

明日の裁判所を考える懇談会(第6回)
2002年11月27日(水)
http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/asu_kondan/asu_kyogi6.html

この懇談会は、北川正恭、田中直毅、平木典子、米本昌平など面白い人選。

2008年06月18日

産業カウンセラー協会がADRサービス開始

産業カウンセラー協会・報道発表

「対話促進」手法で、勤労者が直面する職場の紛争解決をサポート。ADR開始。(2008年5月21日)[pdf]

ADR法認証の取得を目指しているそうです。

2008年06月19日

ピア・サポート学会

ピア・サポート学会

この学会で推奨しているトレイバー・コールの本には、わかりやすいメディエーションの説明がある。
ピア・サポート・トレーナーの資格制度というのができたそうだ。
一度覗きに行きたい。

トレバー・コール(2002)『ピア・サポート実践マニュアル』(川島書店)

2008年06月26日

千葉家裁松戸支部の取組

吉田彩・田中義一(2008)「千葉家庭裁判所松戸支部の家事調停への取組」(ケース研究295号)

体験型学習を取り入れているそうです。

調停に関する一般的説明を「調停のしおり」にして、期日通知書に同封したところ、書記官室に殺到していた問い合わせが大幅に減ったそうです。

2008年06月27日

文献管理ソフト

http://www.usaco.co.jp/products/isi_rs/endnote.html

http://www.varsitywave.co.jp/products/getaref/index.html

http://www.surf.nuqe.nagoya-u.ac.jp/~nakahara/Software/BibCompanion/

http://www.kenkyuu.net/comp-soft-02.html

http://members3.jcom.home.ne.jp/refwin/

みなさんどうしているんだろう?

最近の英語の文献引用の方法では、斜体を使うのが一般的なようだが、テキストファイルで管理では間に合わないではないか。

文献を読んだときにちょっとしたメモを取っておきたい場面に、どういう流れで仕事をしているのか、とてーも気になる。

2008年07月02日

法的文書作成の方法

坂本正光(2005)『入門リーガルライティング―法科大学院テキスト』(有信堂)

法的サービスのアンバンドリングという議論がある。
パッケージ化されたサービスから、要素毎のバラ売りになる(べき)という議論で、ADRが進展すると考えられる根拠の一つにもなっている。

日本で、法的文書作成というと書式集に若干手を入れて使うというイメージが強いが、アメリカではリーガルライティングの理屈も講義されているようだ。

この本の中では、中山代志子「第二章 法律メモと意見書の作成」のパートが有益だった。
(塾の解約の事例を扱っているのに、消費者契約法を使っていて、特商法を使っていないのが気になるが・・)

調停の中で、法情報を活用する際に、法律メモと同様に、「情報提供の限界を意識し、その限界についての当事者の合意を得ること」が必要だと思うのだが、どうだろうか。

2008年07月03日

弁護士にとってのADRの意義

匿名弁護士さんのブログでのADR論。
産業カウンセラー協会のカウンセラー資格も持たれている模様。

黒猫のつぶやき:ADRは役に立つか?(前編)
黒猫のつぶやき:ADRは役に立つか?(後編)
黒猫のつぶやき:「筋が悪い」事件とは?

弁護士が事件を受任した場合に,その事件をわざわざ弁護士会のADRに付すメリットがあるとは思えません。和解がまとまりそうなら弁護士同士の話し合いで何とかなるでしょうし,和解が難しいのであれば基本的に裁判を利用すれば済むことでしょう。

とある弁護士の先生に、「仲裁センターで活動している人の動機は何なんですか?」と聞いたところ、「会務だから」という答えだった。
「会務だから」「ブームだから」「他士業に先を越されたくないから」などの発言は、照れとか自嘲があるのだと思うが、本当のところはどうなんだろう?

2008年07月04日

実験社会心理学論文

JJESP : Vol. 45 (2005) , No. 1

特集論文 政策の公共受容と社会的合意形成:社会心理学的アプローチの可能性

2008年07月05日

家裁調査官の話を聞く

大学院修士で臨床心理を勉強して、家裁調査官になった方のお話を伺った。
まだ若手ということもあって気さくにいろいろ伺う。
現在は少年事件中心ということだったが、家事係もやったことがあるそうだ。

いかにも家裁の調査官らしく、善良かつ親切そうな方だった。

家裁では、依然として精神分析も重視されているが、面接技法は受容的な方法が一般的になっているし、現場の様々な問題には認知行動療法などのほうがすぐに使えそうという認識も少しずつ広がっているということだった。

調停技法については、逆に関心を持っていただけたようだ。

家裁のシステムは世界的にもユニークなはずだが、もう少し大学なんかと連携したらいいのにと思う。

2008年07月06日

調停嫌いの弁護士のブログ

弁護士中隆志の法律漫遊記: 調停と訴訟

基本的に、私は調停は嫌いである。調停は話し合いの手続なのでお互いの意見を交互に聞いて、「相手はこう言っているがどうですか」と調停委員から言われ、場合によれば調停委員から相互の意見を聞いた上で一定の方向性の呈示がされるという手続であるが、出頭しなくとも罰則はないし、話し合いであるから強制力もない。そのため、調停を何回かやったが、結局時間の無駄であったということの方が経験上多いからである。

 待ち時間が時間の無駄でもある。いつ呼ばれるか分からないので待合室にはいなければならない(トイレくらいにはいける)。1人だと本を読んだり、座りながら仮眠を取ることも出来るが、依頼者がいるとそういう訳にもいかない。このスピードが速い時代になんとも悠長な手続ではある。

離婚調停で発病したとおっしゃる方

男からの離婚調停1|男からの離婚裁判その後の戦い


はっきり言いましょう。

調停は運です。

調停で解決しようとは思わないことです。

僕が発病したのは調停のせいと言っても過言ではありません。

2008年07月07日

日証協 ADR法認証

日本証券業協会 ADR法認証(第15号、2008年6月30日)

2008年07月12日

仲裁ADR法学会・第四回大会

第4回仲裁ADR法学会大会@名古屋大学

参加中です。

2008年07月18日

JLF 日弁連法務研究財団シンポ 「法曹の質」

日弁連法務研究財団の、設立10周年記念シンポジウム<「法曹の質」の検証>を聞いてきた。

パネリストは、太田勝造先生、菅原郁夫先生、ダニエル・H・フット先生。

司法試験の合格者を増やすことになって、「弁護士の質が下がった」と言われることがあるけれど、その質って何だったのかを、一度立ち戻って考えようというもの。

途中で菅原先生が、「似たような考えのパネリストを呼びすぎたのでは」とおっしゃっていたが、確かに。

解釈学としての実定法の狭い知識だけが弁護士が仕事で使う基盤ではないだろうという話が出発点になっている話が多かった。
実務家弁護士としては、その通りと思う面と、そうは言ってもリーガリスティックな問題処理能力こそ自分たちの核の能力という思いが錯綜しているのではないだろうかと想像しながら聞いていた。

以前、フット先生がおっしゃっていたが、考え方の問題(あるいは考え方の貧しさの問題)にもうちょっと向き合う必要がありそうだと思う。

一番最後にシャンシャンで終わろうとしたときに、若い女性弁護士が、「多様な能力を持った新しい法曹というありがたいお話はよくわかったが、いったいその職場はどこにあるのだ?裁判官も検事も増やさないのだから裁判も増えないし、企業が法曹に職場を与えるようにはなっていないじゃないか?」という質問(もうちょっと上品な言い方だったかもしれないが)をされた。

それに対して、菅原先生が、以下の2点をおっしゃった。

①例えば料金体系ひとつとっても企業が裁判をするときの体系になっていて、他のニーズに応えられていない。端的に言えば、新しいビジネスモデルができていない。
②弁護士に職がないなどと言っても、世の中を見渡せば、弁護士に頼りたいのに頼れない人はまだまだたくさんいる。例えば、地方での公設事務所の経営がなりたっていることもひとつの証左だ。過払い問題という収益源があったからとも見られているが、弁護士が近くに行って初めて問題が見えたという面もある。弁護士に頼りたいのに頼れないというニーズを細かく掘り起こせば相当マーケットは広がるはずだ。

わたしはこの菅原先生のコメントにとても共感する。

プロボノ活動というのが、エリートで金持ちの免罪符や、すでに十分に成功している人の名誉職的なものではなく、手当てされていない不公正の現場に迫るツールになれば、マーケティング的な意味が出てくるのではないだろうか。
いくつかの公設事務所での活動のように黒字化するものもあれば、逆にどうやっても赤字にしかならない活動も明らかになるかもしれない。そのような場合にはなんらかの手当がなされるように、場合によっては立法につなげる活動していくことまで含めて、法律家の仕事として期待されているのではないかと。

でも、こうした考えは、法律家にとっても法学者にとってもそれほどメジャーな考え方なのではないのだろうな、ともおもう。

**

津久井進の弁護士ノート 「法曹の質」 豊かな人間性って・・・
某機関で弁護士に対してなされた「法曹の質アンケート」  - [ボ]

2008年07月21日

二弁主催のADR夏季勉強会(7月19日)

全国の弁護士会ADRセンターから参加がある全国会合に朝から終日参加させていただいた。

今年初めて参加させていただいたが、部外者にも参加を認めてくださっている。
こういうオープンな姿勢はとてもありがたい。
隣接士業の方の参加もあった。

第一部(午前中)は医療ADRについて、第二部(午後1)はADR法認証について、第三部(午後2)は、各支部の報告。

業界型ADRのひとつのあり方として、コンプライアンスしているかどうかを業者に立証させるプロセスを提唱していた方がいた。コンプライアンス遵守を立証できなければ、業者は責任を取らなければならないという考え方である。わたしにとって、この考え方は、とても面白いと思った。
消費者からすれば、裁判などよりも高いニーズを満たすことが、簡単な手続でできれば望ましい。業界に属する企業にすれば、確かに満たすべき水準は高くなるかもしれないが、同時に予測性が高くなる。業界で、自分たちが約束したことを守っているかどうかで判断されるというのは、企業側ユーザから見て、「辛いけれど納得できる」線になるだろう。業界を知らないものに「第三者から見た客観的な線」を示されるより、もしかしたら納得性が高くなるかもしれない。

もうひとつ、わたしが興味を引かれたのは、「事務局の負担」という話題だった。ある弁護士会で、受付になった職員が次々病気になったり辞職したりが続いたという。当事者からの申立を聞いたり、説明をしたりと、こんなに辛い仕事だと聞いていなかったと言うという。さもありなん。
手続管理者制度を医療ADRでは試みている。良い制度だが、弁護士の負担がさらに大きくなるので現実的でないというコメントも聞かれた。

弁護士会でも、いくつかの会で、立ち上げがまだだったり、立ち上げた後件数がほとんど増えていなかったりする場合がある悩みが語られていた。

今、弁護士会の中では、愛知県が最も件数を伸ばしている。
Webサイト:愛知県弁護士会 紛争解決センターのご案内を見ると、確かに充実している。Q&A書式集をとっても充実している。Webではわからないが、履行勧告までやっているらしい。

わたし自身は、弁護士会のADRの取り組みに、問題がないとは思わないが、しかし、20年近くも実践を続けているというその蓄積は貴重であるし、その活動はもっと社会の中で認知・評価されてもよいのではないかと基本的に思っている。

2008年07月24日

1999年の損保ジャパン研究所のレポート

損保ジャパン総合研究所クォータリー 1999年10月20日発行 Vol.30

イギリス新民事訴訟規則と代替的紛争解決(ADR)の構想-保険会社のADR機能の評価に言及して- (78.6KB)   = 要 約 = 主任研究員 卯辰 昇

  Ⅰ.はじめに
 イギリスの新民事訴訟規則は、1999年4月26日から施行されている。本稿は、イギリス民事訴訟制度の特徴と現状を分析し、新民事訴訟規則の主要点を概説し、その上で問題点及びADRの可能性について論ずる。

Ⅱ.イギリスにおける民事訴訟の現状と改革の方向性
 従来のイギリスの民事訴訟に対する批判として、費用がかかりすぎること、解決までに時間がかかること、そして訴訟が複雑であるといった点が指摘されていた。新民事訴訟規則は、主として、プリ・トライアル段階とトライアル段階で生じている各種の問題の解決を指向している。

Ⅲ.イギリス新民事訴訟規則の概要
 イギリス民事訴訟の最大の特徴である当事者対抗主義から、裁判官が積極的に関与するケース・マネジメントの導入に関して論じ、特にプリ・トライアル段階での和解への誘導とトライアル段階でのスリー・トラック制の訴訟進行について概説する。

Ⅳ.イギリス民事訴訟改革の問題点の分析
 当事者対抗主義からケース・マネジメントへの移行が、従来のイギリス民事訴訟制度に内在する問題を解決するものかどうかを「法と経済学」の成果を援用して分析する。特にケース・マネジメントによるADRの積極的活用と、訴訟費用の敗訴者負担原則を中心としてゲーム論的に分析を試みる。新規則の制定により、イギリス民事訴訟制度に内在する問題の解決に向けた一定の評価が可能であるが、なお問題が残ることを指摘する。

Ⅴ.日本における司法制度改革とADRとしての保険会社の機能
 日本での司法制度改革の方向性とADRの方向性を論じ、保険会社のADR機能を積極的に評価し、将来の制度設計を考える視点を提示する。

Ⅵ.おわりに
 今後、交通事故や商品被害事故等の定型的かつ少額の紛争解決についての手法を考え、さらにプラクティカルな提言ができるように検討を深めていく必要がある。

2008年07月27日

明治16年の紛争解決

勧解は、明治16年に120万件近くまで利用されたという話が知られている。

詳しくは、菅原郁夫(2005:32-33頁)「司法統計から見た民事裁判の概要」『統計から見た明治期の民事裁判』(信山社、初版)を参照。

そのときの人口はどれくらいだったのだろうと調べてみると、38百万弱だった。

統計局ホームページ/日本統計年鑑-第2章 人口・世帯

松方デフレによるということだから、最近の特定調停に似ている側面もあって、紛争性が強いものばかりではなかったのかもしれないが、それにしても件数が多い。

2008年08月01日

なかなか前進できないが

研修屋のおっちゃん化していたが、やっと少し次の展開が見えてきた。

トレーニングと手続設計と実務(事例)の三者を一体的に研究したいと思っている。
臨床心理で言うサイエンティストプラクティショナーモデル的な役割が必要ではないかと考えている。
(そこでも、トレーニング自身はとても重要である。しかし、それだけで止まっていてはいけない。)

ここに来て、ようやくトレーニング以外の研究ができる目処が少しずつでてきている。
チャンスをうまく生かして、なんとか意味のある研究にまとめたい。

2008年08月02日

ADR研究の古典

ADRの文献は総じて英語のものの方が面白いが、日本語で書かれた古い文献も案外面白い。

1970年代のものでは、佐々木吉男(1974)『増補 民事調停の研究』(法律文化社)小山昇(1977)『民事調停法』(有斐閣)の二冊は非常に面白い。というか、面白いという言葉が畏れ多いほど、先生という存在が偉かったという威厳を感じさせるものだ。
佐々木先生のものは、批判的な実証研究であり、小山先生のものは教科書的である。

小山昇教授の論文集(小山昇(1991)『小山昇著作集第七巻 民事調停・和解の研究』(信山社))では、古代アテネのdiaitaと呼ばれる調停類似の制度や、フランスの調停法の歴史なども書かれている。

 ひとくちでいえば、戦前の調停制度の機能は上意下達の現象において見られたといってよいであろう。戦後、民主主義という言葉が氾濫した。民主的な教育が民主的に行われ、民主的に収集された情報が民主的に提供された。民主的であることは紛争処理における上意下達とは相容れない。いきおい、調停者は自分の人格と識見によって調停をせざるを得なくなった。しかしながら、染み着いた伝統的な倫理観(たとえば家族的構成社会の社会倫理)は一朝一夕には変らない。変えなければいけないと自信喪失した者が調停をすれば、いわゆる「マアマア調停」となる。変えることができない者が調停をすれば、上意に変わり自意を下達しようとする「説教調停」となる。調停の機能は、調停者の多様化に伴って、種々雑多なものになっていったということができよう。 P39

人は非を悟ったとき譲るものであるから、調停委員は当事者自身が自分の言ったことのなかに是と非を弁別するよう仕向けることが大切である。これが調停委員の活動のうちのもっとも重要なポイントで、かかる能力を有する調停委員が得られるかどうかによって、調停制度の発展または衰微が決まるといっても過言ではない。調停委員は、自分の価値観、自分の処世訓、自分の倫理、自分の人生観、自分の社会観などを当事者に押しつけてはならないし、そもそもそういうものを披瀝することすら余計なことである。 P57

2008年08月04日

不可知論

日本で、同席調停に初めて取り組んだのは、当時家裁調査官であった石山勝巳教授だったと思われる。
石山勝巳(1994)『対話による家庭紛争の克服 -家裁でのケースワークの実践-』(近代文藝社)
には、1960年代の終わり頃から70年代前半に、雑誌『ケース研究』などを通じて論争を起こしたことを紹介している。

石山教授は、60年代終わりくらいから調査官の多くが「精神分析・カウンセリング等の」心理的援助技術に関心を向けだしたが、自分は「異なる方向を志向した」と書いている(P21)。

この本に、小山昇教授とのやり取りが出てくる。

ある日私が小山教授に「家事調停では何故当事者の話し合いと合意が必要なんですか」と質問した。私はその時、ケースワークの個人の尊厳、自己決定の原則が出てくるのではと予想していたが、教授は即座に「それは不可知論だ。相手のことをわかっていると思うと話し合わない。わかっていないと思うから話し合うのだ」と言われた。全く、眼を開かれる思いであった。 P55

多くの立場の人々がそれぞれの角度から不可知論的謙虚さでもって事件にアプローチすることによってはじめて、「民主的」と言えるのだ、小山教授が言っている。

2008年08月06日

石山勝巳の合同面接

前々回に引き続き。

石山勝巳(1994)『対話による家庭紛争の克服 -家裁でのケースワークの実践-』(近代文藝社)

石山先生のこの本もとても面白い。

1957年に調査官研修所が創設され、一期生として参加したという話が冒頭に出てくる。
なんでも、一期生というのは、手探りでいろいろ自分で考えざるを得ないので、こういう真のフロンティアが出てくるのかなとおもう。

ダウンタウンが吉本のお笑い学校の一期生であることに似ている(似てないか)。

同席に持っていく前に、申立人にだけ30分先に来てもらい、同席での話し合いに先立ってオリエンテーションを行い、少し事件についても聞くという流れを採用している。
同席が始まると、申立人からだけ話を少し聞いたという点を相手方にわびて(説明して)から話し合いを始める。
そして、同席での話し合いが終わると、今度は申立人を先に帰し、相手方と30分くらい話をするという構成を基本にしているそうだ。帰る時間をずらすことで、不測の事態に備える意味もこめている。(P240)
このやり方でなければならないとか、常に絶対に良いというつもりは決してないが、かなり考え抜かれた構成だと思う。

また、対席の向きについても、当事者同士が最初から正対するように促し、調査官に話しかけようとしたらなるべく相手におっしゃってくださいと促すのだという方針も書かれていた。
これも、最初から正対させるのが良いとは限らないと思うのだが、ひとつのやり方であることは確かだし、なによりこういうことの大切さをきちんと意識して記述しているということ自身が重要だと思う。

共感したのは、前にも書いたけれど、心理療法的アプローチとむしろ反対であるという点を強調しているところだ。心理療法的アプローチでは、当事者の中に欠陥を見つけようとしてしまう。
石山先生は、「行動療法的」とか「森田療法的」などと言って、問題を外在化させて直接的に関係に働き掛けている。その中核には、当事者がどうしていくのがよいのかについての、不可知論的謙虚さがあるのだろう。

「ケースを通じて、わたし自身で手探りで考え出した方法」(P190)とあるように、メディエーション技法の輸入ではないはずだが、考え方においても方法論においてもかなりの程度共通している。
60年代以来、これだけのものができていながら、必ずしもその良さが、家裁を含めて日本のADR実務に十分に反映されていないように思える。

早すぎたのかなぁ。

2008年08月07日

Harvard大Bordoneによる交渉ワークショップ

上智大学法科大学院 | 文部科学省専門職大学院等教育推進プログラム | セミナー

Harvardの交渉ワークショップに参加させていただくことになった。
前回(2005年)のDVDも見せていただく。

当たり前だが、さすがに洗練されたトレーニングだなぁと感心しながら見ている。

フレームがきっちりしているのと、そのフレームを理解するための事例の紹介と、体験型の活動の組合せの方法、演習後の締め方など、どれをとってもなかなかこうは行かないなぁと思いながら見ていた。

内容的には、「7つの要素」を中心に、Getting to Yesに忠実な解説なのだが、自分の頭の中で起きる声の処理の仕方など、内省的なスキルについての説明が意外に丁寧だと思った。

2008年08月10日

Harvard交渉ワークショップ2日目

Bordone,Darwinのコンビでの交渉ワークショップ、3日のうち2日終わった。

点数化されたロールプレイで、パレート最適を目指すといった古典的なものも含まれているが、感情への対処などの扱いが充実している印象。

法律家がなぜ感情を学ばなければいけないかというデータもいろいろ準備している。

昨日体験した、「役割交換ロールプレイ」(実際の困難な場面を演じてみるというもの)について、以前、心理学系のワークショップで経験したものに似ていたということで、ある程度知ってはいたがそれでも実際に体験してみてこの方法のパワーを感じることができた。

セラピーにならないように注意しつつ、感情の扱い方・教え方が研究されている。

2008年08月11日

Harvard交渉ワークショップ3日目終了

Harvard交渉ワークショップで扱ったのは以下の項目。

・「7つの要素」を使った交渉準備の考え方の紹介(復習)
・価値創造と分配の緊張
・感情理解と主張の緊張
・当事者と代理人の緊張

ロールプレイでは、それぞれ事情が異なる3者交渉、代理人と当事者の4者交渉も行った。
秘密事項の設定がA4で3ページくらいが標準で、少し長い感じがしたが、ロースクールで行う場合なら別に問題にならないようだ。

ワークショップで経験したことをふりかえってジャーナル(日誌)を書くようにというアサインメントもあった。わたしはワークショップ後のジャーナルは個人的には以前から書いていたが、ハーバードでは詳しいガイドラインが準備されている。

Bordoneは、2007年に優れた教え方をするということで、ハーバードロースクールの学内で受賞している。既存の学術研究の成果も紹介するし、良い交渉のロールモデルを示すというインタラクティブなやり取りも常に行うことができる。

2008年08月12日

ケースマネジメントについて

司法書士関川治子のBlog~ADRな日々: ケースマネージャートレーニング

新潟の司法書士会でADRに取り組んでいる関川さんが、ケースマネジメントが難しいと言っている。

特に応諾要請が大変だという話だと思う。
わたしは、スキルが足りないという側面も確かにあるかもしれないが、組織としての準備が足りないという面が大きい気がしている。

例えば、「申立人候補者から電話があったとき、聞き出すべきことは何で、伝えるべきことは何か」等を含んだマニュアルを組織内で整備していくことが大切だと思う。

アメリカでは、文字どおりスターターキットが売っていたりするが、日本ではまだない。
(同じサイトに、有用な様式集も紹介されている。)

どうやったら応諾を取り付けられるかということを考えたくなる気持ちはわかるが、「相手方が調停に出てこない自由」は尊重すべきである。
むしろ申立人との話し合いで、強制力をもたないということをきちんと説明しながら、応諾要請のプロセスそのものを当事者と一緒に作り上げていくくらいの気持ちで取り組むのが大切だとおもう。

組織内で十分に準備をした方がよいというのは、そのことによって、自分たちが何はできて何はできないのかを明確化できるからである。
自分たちの限界をきちんと認識すれば、そこからスタートすることでかえって親切な対応が可能になるのではないかとおもう。

2008年08月13日

寮内調停

アメリカでも調停トレーニングを受けて調停をやりたい人がたくさんいるのに、調停のケースが十分にないという問題があるようだ。

HarvardのDarwin先生は、だから、想像力を働かせていろいろな紛争の現場に入っていく考え方が大切だとおっしゃっていた。Harvardでは、寮の中のもめごとを解決するための調停手続があるそうだ。

わたしも中学生のころに寮に入っていたが、たしかにもめごとには事欠かなかった。

2008年08月14日

紛争システムデザイン

Bordone先生は、スキルベースのトレーニングの他に、システムデザインの講義も行っているらしい。

システムデザインに関するシンポジウムの様子を動画配信している。

Dispute Systems Design Symposium 2008

Menkel-Meadow、トランスフォーマティブのLisa Bingham、Mnookinやら、そうそうたる顔ぶれ。

Lisa Binghamの略歴を見ていると、韓国最高裁の民事訴訟改革のタスクフォースのメンバーになっているようだ。

2008年08月17日

自分でしますの人

長崎で行政書士をされているよしよしえさんが、最近、行政書士に代行を頼まずに自分で申請しようとする人が増えていると書いておられた。これ

「自分でします」の人が増えているという背景には、長い歴史的なスパンで見たら、識字率を含めた教育水準の向上ということもあるのだろうが、役所の窓口も、素人にはそれなりに親切にしなければならないという意識の変化も(ないわけではないかもしれないかもしれないくらいの)あるのではないかと思う。

「自分でします」の人が増えると、単純な代行申請や代書の仕事は厳しくなるが、「自分でします」の人のためのガイドなど、少し違う種類の仕事が新たに出てくるかもしれない。

大きな目で見れば、プロが、詳しい知識を持ち、親切にわかりやすく知識を提供する競争に取り組むということは、世の中にとってはいいことだと思う。しかし、素人の領域とプロの領域の線引きが固まるまでの間は、摩擦や混乱はさけられないだろう。
もっとも、その混乱は、才覚のある人にとってはチャンスであるはずだが。

2008年08月21日

ポーカーフェースか、正直か

調停において、ポーカーフェースを決め込んで、どちらにも中立というスタンスに徹するべきか、ある程度自分の考えを言ったり、指示をだしたりしてもよいと考えるべきかという問題がある。

メディエーショントレーニングでは、ポーカーフェースで中立の役割を演じる方法や必要性をある程度教えるのだが、自分の考えを言ったり、指示をだしたりしてもよいかどうかについては明確な形でのガイドラインが記載されていない場合が多い。
もちろん、不公正な合意がなされそうな場合には、調停を打ち切ることを含めて「指示的」になるべきであるとされているが、問題はそこまで行かない程度の場合である。

わたしは状況次第であると思うし、「調停人としての正しい振る舞い」には一定以上の幅があると思っている。
大切なのは、「中立性」と「良く情報を得た決定」のバランスをいかにとるかということであり、そのようなジレンマ状況を調停人として正面から悩む姿勢であると思っている。

中立に話し合いの進行を助ける役割を演じられなければ、単にパターナリスティックな一方の代理人になってしまうか、独自の価値観に基づいた説教調停に陥ってしまう。
とはいえ、調停人の活動が、あまりに表層的な仲介に終始していれば、当事者が中身の議論をする妨げになるかもしれない。調停人が自己一致して話をすることは基本的に良い影響を与えるだろう。しかし、それは、調停人のエゴが制御されずに流出したというものではなく、当事者への問題解決のためのリソースとして提供される場合に限って許されるべきものだと思う。

結局どっちなんだという雑ぱくな質問をする前に、自分が当事者ならどう感じるかを考えるべきだろう。

2008年08月25日

事業承継マニュアル

ファミリービジネスの継承の方法論について、この分野もニーズがあるけれど、サービスが追いついていないとおもう。
税法に関する知識、登記に関する知識、紛争解決手続に関する知識、経営に関する知識、家族・親族のいさかいを処理するための知見など様々なものが、実際には必要だと思う。

役所でもマニュアルを作っている。

http://www.jcbshp.com/achieve/guideline_01.pdf

http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei20/download/shoukei.pdf

このマニュアルにも出てくるが、創業者が頑固者で、形式的には息子に社長を継がせているけれど、実権は握り続けているという話はよくあるだろう。
しかし、「そのパターンだな」とわかったとしても、誰がその猫に鈴を付けるかという問題が残る。

メディエーショントレーニングの方法論を用いて、事業承継を考えるプログラムを作っても面白いかもしれない。

2008年08月28日

Beyond Intractability

Convening Processes

コロラド大学の紛争解決学の情報提供サイトだが、いつのまにかさらにずいぶん充実している。

リンク先は、調停への召集についての記事である。
一般的には、プロセスに対する理解と安心感を持ってもらうのが大切だという。
多数当事者の場合には、参加する当事者の特定が問題になることなども紹介している。

Convening Processes / Audioでは、インタビューでのラリー・サスカインドやピーター・コールマン音声も聞ける。
パワーポイントもあるし、なんだか至れり尽くせり。


2008年09月01日

千手観音

川嶋四郎(2007)「日本におけるADRシステムの現状と課題についての覚書」法政研究,74(3),p35-50

PDFが公開されている論文。
紀要系では増えてきた。

講演を元にしたもののようで流れるように読みやすい。

テミス像ではなく、千手観音のようなものが正義像であるという。
千の目と千の手という限りない慈悲を持っている存在。
・・しかし、限りある予算。そこはどう考えればよいのだろう。

川嶋四郎(2006)「ADR機関の連携可能性と弁護士会の役割 : ADR機関の連携を通した「福岡発連携的正義」の試み」法政研究, Vol.73, No.2, pp.79-111

2008年09月04日

司法制度改革実施推進会議参与会

司法制度改革実施推進会議参与会

司法制度改革実施推進会議参与会 第6回会議議事概要(平成19年6月29日開催)[PDF]

司法制度改革実施推進会議参与会 第6回会議議事配付資料(平成19年6月29日開催)

司法調停・ADRの統計などが公開されている。

2008年09月15日

1988年の夢

私には、こんな夢がある。調停裁判所を地裁・簡裁・家裁とは全く別個の建物にし、夏には前庭を盆踊りに使用でき、建物は市民講座とか趣味講座に開放するなど、怖い裁判所というイメージをなくしてしまう。調停委員は、話の聞き方だけをみっちり講習を受け、調停では一切自分の意見を言わず聞き役に徹し、ただ当事者が自発的に解決案を出せるようにうまくリードできる、そんな人が良い、と。
竜嵜喜助(1988)「調停制度の現状と問題点」『民事訴訟法の争点<新版> ジュリスト増刊』、p58-61

2008年09月20日

放送大学の講座がネット公開

NIME-glad ビデオ検索 - 登録ビデオ一覧

おぉ、山本和彦先生によるADRの講義も聴ける。これ


2008年09月24日

廣瀬氏の調停論

廣瀬忠夫(2005)「私の調停論とその実践」『調停時報』162号、2005.12

トレーニングの参加者の方に教えていただいた論文。

東京家裁で調停委員として、同席調停にも取り組んでこられた方のもの。
文章も達意で、なんとなくお人柄が出ている。
個人的には6割以上の成立率とのこと。
共感する内容が多かった。

むしろこういう方がトレーナーになるとよいと思うのだが・・(私はぜひ受講してみたい)。

2008年09月26日

イギリスの法律相談、初診行動の研究

濱野亮(2008)「司法アクセスにおける相談機関利用行動 -イングランドの現状を参考にして-」『民事司法の法理と政策 小島武司先生古稀祝賀記念論文集(下)』商事法務、148-182頁。

とても面白い論文。
ミステリーショッパー(mystery shopper)と呼ばれる”仕込みの”相談者が、当該機関の精通分野外の法律問題を相談し、相談機関の対応を調査したもの。

驚くべき結果が明らかになった。相談機関が自ら助言したケースのうち、六六%について、他機関を道案内しなかった判断は正当化できないと評価された。 (略) そもそも、知識が不足しているのであり、かつ、そのことを自覚せず、謙虚さも欠き、クライアントの利益を損ねているのである。この点は、ソリシタと非営利相談機関のボランティア相談員との間には大きな差はなかった。 P169
不適切な助言のパターンとしては、1)安易なあきらめ、2)具体的助言を欠いた一般的情報提供、3)法的な支えのない空疎な助言、4)不正確な法情報、があるという。

善意で働いている人を試すようないやらしい調査研究手法ではあるけれど、善意があるからこそ間違った癖が固着しているところもあるだろう。
ADRを考える上では必読だと思った。

Richard Moorhead and Avrom Sherr, "An Anatomy of Access: Evaluating Entry, Initial Advice and Signposting using Model Clients" (Legal Service Research Centre, 2002)
modelclientpaper(pdf)
Legal Services Research Centre

2008年09月29日

国会での質問記録

衆議院議員長妻昭君提出製造物責任(PL)法施行にともない設立された裁判外紛争処理(ADR)機関であるいわゆるPLセンターの中立性に関する質問に対する答弁書(2002年4月5日)

衆議院議員長妻昭君提出製造物責任(PL)法施行にともない設立された裁判外紛争処理(ADR)機関であるいわゆるPLセンターの中立性に関する質問。

2008年09月30日

米国模擬裁判

米国訴訟 模擬裁判形式セミナー№209S1

インターネット映像配信

参加してきた。
陪審のトライアルをかなりリアルに再現したもの。

日本の民事裁判を模擬でやると、ナレーションというか、解説が相当ないとわからないだろうが。

ディスカバリーで整理した証拠を中心に、ギリギリとしたやり取りを繰り返していた。
契約を無視してビジネス関係を解消されたヨーロッパの販売会社が、アメリカのコンピューターゲームメーカーを相手取った紛争である。

最後に陪審審議をアメリカ人5人、日本人5人それぞれ5分ずつ(?)行った。
結論としては、アメリカ人陪審も日本人陪審も4:1で原告勝訴となったが、その時間の使い方が違っていて興味深かった。

アメリカ人の陪審は、司会者役が、「互いに割り込みをしないというルールで進めましょう」と言って開始し、それぞれが一巡して話をした。立場と理由を説明するという役割もそれぞれが理解していた。その後、少しだけディスカッションになった。

日本人陪審は、司会者役が、いきなり「まずわたしから始めます」と言ってスタートした。そして、会社名を名乗って自己紹介をした。二番目の人がひとつ目の論点を話おわったときに、論点毎に言っていくことにしましょうと進め方の提案を司会者役が行った。日本人陪審は、全員会社名を名乗った。日本人陪審の話は二番目の論点を議論する暇もなく時間オーバーになった。

議論の中身としては、アメリカ人陪審も日本人陪審も同じようなところに指摘があり、理解度に差があったとは思えない。短い時間に端的に立場と根拠を述べるという話し方ができたのはアメリカ人陪審であり、日本人陪審はできなかったように見えた。

この案件で、調停だったらどういう展開になったろうとも想像したが、結局当事者の状況認識(自分がどの程度有利と考えているのか)にかなり依存する事件だろうと思った。

模擬裁判を見るなどして、裁判手続を良く理解すると、その限界が見えるので、調停の存在意義についても良く理解できるのではないかという気がした。

2008年10月05日

日本のADRについて、英語で説明しているもの

Articles on Japanese ADR which is available on the web.

ADR in Japan (by JCAA)

Overview of the ADR Act

The ADR Act (PDF)

"Alternative Dispute Resolution in Japan" by Rieko Nishikawa, 2000 (PDF)

German Law Journal - Comparative Dispute Management: Court-connected Mediation in Japan and Germany

2008年10月06日

混雑する簡裁

東京地方裁判所委員会 2004年(平成16年)3月2日(火)(PDF) 委員発言

簡裁の混み方に驚愕した。国民のニーズから考えれば,裁判所が広報すればするほど,事件数は増え,かつ迅速性も求められるというジレンマに陥ることと思われる。簡裁に来る事件は,本当は裁判所よりADRなどによった方がいい事案もあると思うので,裁判所がADRの宣伝や紹介をし,また,裁判所が相談窓口で事案の振り分けをするようなことがうまくできないだろうかというようなことを考えている。

アメリカでは、「トライアルが消える」という議論もあるが、日本ではどうなるのだろう。

2008年10月18日

警察の生活相談(安全相談/総合相談)

H19年度版警察白書 3 警察安全相談等への対応

100万件以上の相談がある。
1%がメディエーションに向くとしても1万件の潜在案件があるということだ。
例えば、近隣間でいがみ合っているとか、DV関係でも一部は、話し合いが可能なものもあるだろう。

それから、警察を含めた行政型相談機関のネットワークが形成されているようだ。(下記リンク参照)
警察庁:関係機関・団体とのネットワークの構築状況(pdf)
山梨県:県民相談相互支援ネットワーク

現場でやっていらっしゃる方は、どの組織でも管轄外になるような、扱いに困る案件もたくさん持っているに違いない。
案件が集まらないADR機関が、その一部でも解決できれば、互いによいのではないかと思う。

2008年10月21日

共同調停と単独調停

とある研究会で、共同調停をやってみたが、好きになれないという方が多かった。

例えば、当事者が考える時間をとっているつもりなのに、相調停人が沈黙に耐えられずに口を挟んでしまうとか、思い通りに進められなかったからだという。

わたしは、共同調停モデルが良いと思っている。もちろん、どちらにも長所短所はあるが。
共同調停モデルが良い点としては、「反省する機会が豊富になる(目が増える)」、「経験を積める」ことにあるとおもう。

共同調停モデルがうまくいかないのは、調停プロセスについて、理念と手続の両面で合意できていない点が多いからではないかという気がする。

共同調停モデルでうまくいかない点を具体的に次に生かせればよいとおもうのだが、自分たち同士の話し合いではそこまで踏み込んで話ができないということかもしれない。
当事者には踏み込んだ話を求めて、調停人同士は踏み込んだ話ができないということがあるのなら、言っていることとやっていることが違うという話になるかもしれない。

不協和音そのものを対話のリソースにするというのが理想だとは思う。
理想通りにやることが難しいということと、理想が明確になっていないということは違うので、まずは何が理想かを考えて、話をすることかなと思う。

2008年10月31日

弁護士会・全国仲裁センター連絡協議会(岡山)

参加させていただいた。

テーマは、「トラブルを克服する社会づくりを目指して ~対話促進に法律的整理を加えた岡山モデルの提案~」。

2008年11月02日

対話型の調停における事実の扱い

「市民と法No.53」のADR特集はとてもおもしろかった。

わたしが事例研究を重視するようになったのは中村芳彦先生のアドバイスによる。
中村芳彦先生の論考(「ADRにおける事実認定と対話」)で指摘している内容は、現行の調停トレーニングプログラム批判として最も本質を突いていると思う。
対話重視のはずが、単に将来性重視への強引な”リフレイム”にすりかわるとしたら、浅薄のそしりを逃れられない。「事実をいかに語るか」が整理されていてとても考えさせられた。この考え方をどのようにトレーニング教材に落とし込むかについては、工夫が要りそうだが。

ところで、先日の岡山弁護士会の全国仲裁センター連絡協議会での報告では、自主交渉援助型調停でも事実を重視しながら対話するというプレゼンをされていた。
議論は少しずつだが成熟してきているのかもしれない。

過去のエントリー:市民と法 ADR特集

2008年11月15日

調停の受付の心得

戦前の文献は、案外のびのびと書かれている。

裁判所は成る可く紛争を解決する主旨に於て八ヶましいこと、六ヶしいことを云はず、つまり四の五のと云はず事件を受附けるがよいのであろう。 P11
長島毅(1924)『小作調停法講話』清水書店

数字がなかなか、効いている。

2008年11月19日

西口判事の和解論

Nコートの西口元(はじめ)裁判官の和解技術に関する話を聞いた。

・対席和解(同席調停に相当)は、当事者参加型争点整理と集中証拠調べと併せて行うべきものという位置づけで考えている。
・対席和解は、経験上、十分機能している。当事者が嫌がっても、だめだったら交互面接和解(別席)に移行するからと言って、少しだけ対席(同席)で話をしてみてもらうが、そうすると、最後まで対席で話が続くことが多い。
・当事者が、「別席でなければ話せない」などという話は、大した話でないことが多い。陰口めいたことなどが出てくるが、相手に話せなくて裁判官に話せるということはあまりないはずである。
・和解案は2割位の幅を持たせて提示する。高裁では、和解案を提示する際には、合議に掛けてから。したがって、当事者は、裁判所の判断はその時点でわかる。
・当事者の一回の話は、15分位を考える。感情的になってはげしく話しても15分位やっていると疲れてくる。話したという実感も持てる。
・当事者は互いに相手の言葉をさえぎらないというルールは大切だ。
・裁判官にとって、対席和解は疲れるし緊張する。交互面接和解は情報操作ができるので楽である。対席和解では、資料をちゃんと読んでいないとばれてしまう。交互面接和解なら、資料をちゃんと読んでいなくても押し切れる。
・弁護士の立場からは、裁判官には、「根拠としての証拠」「どの学説を採っているか」などを聞くと良い。資料を読んでいてちゃんと考えているのか、ざっと読んで印象だけで話しているのかがすぐわかる。
・裁判官をやっていて10年目から15年目位のキャリアの頃が、一番傲慢になる。弁護士がバカに見えてくる頃だ。こういう裁判官をきちんと教育する意味で、弁護士の先生方には、ガツンとやっていただきたい。裁判官は、もっとキャリアを積むと再び、謙虚になる。
・裁判官は純粋培養なので、良い人はすごく良いが、悪い人は矯正されにくい。
・裁判所と民間ADRが協力するようなことがあってよい。例えば、事実認定や法律解釈を裁判所が協力して、話し合いを民間ADRで行うような可能性がある。自分は少し論文に書いた。しかし、現実に、裁判所ではまったく誰も考えていないようだ。

2008年11月20日

社会言語科学会

社会言語科学会::Home

ポライトネス理論が議論されているようだ。

2008年11月29日

JBワークショップをふりかえる

昨日の午後の企画のやり方も感心した。
トレーニング通りには必ずしも実施しないが、少しやってみて、その意図を説明する。
その活動の選び方も興味深かった。ネタとしてはいくつか用意して下さっていて、最終的には直前に決まった。蓄積が違う。

最後に、メディエーションには、いくつか前提が隠れているという話を扱った。
文化人類学の見方で見ればよいということだが、良い教え方がわからないと、率直におっしゃっていた。
メディエーションという手続もまた、神ならぬ人が作ったものだから、その枠組みとしての限界を持っている。そこに意識的であるということを教えたいと。

Jennyの流暢な日本語は、日本での滞在経験が長いためである。文化人類学としての研究対象を日本に選んでいる。米国の調停理論の確立に大きな貢献をした人物が、日本語や日本文化にも精通しているというのは偶然といえば偶然なのだろうが、余人を持って代え難い存在である。

日本の調停制度を改革するには、例えば、Jennyのような人を招いてプロジェクトを立てれば良いのにとおもう。

2008年11月30日

続 JBワークショップをふりかえる

コロラド在住の加藤大典さんに共同講師として実施していただいた。

Jennyと考え方が違うところがあるが、あえて統合せずに、違いが見えるようにして話をしていただいた。
準備段階では、どうやって話を組み合わせるかがなかなか見えなかったが、最終的には十分に伝わったのではないかと思う。

加藤さんは、調停者自身が自身の内面を扱う方法を知る努力をするのが大切で、そこからスタートすべきだと思っている。
わたしは、その努力は大切だと思うが、参加者にその準備ができていないときにそれを持ち出すのは乱暴なのでやりたくないと思っている。それから、その扱い方の範囲設定も難しいと思っている。

交渉を支える見方であれ、成長の機会としてのコミュニケーションの実験室としての見方であれ、調停の本質は当事者の内的な統合を支えようとする活動である。
そうであるなら、調停人自身が軸を持っているということが大切なのは確かだ。

ただ、へんちくりんな心理化やカルト化にならないようにすることには、細心の注意や節度が必要ではないかと思う。

2008年12月01日

続々 JBワークショップをふりかえる

Jennyは、フィラデルフィアのコミュニティ調停があまり活発でないという極めて率直な話をされた。

確かに、フィラデルフィアは、活発でない州で、確かにあまり件数が伸びていないようだ。しかし、それでもこのようなサービスをするところがどの地域にもあって30年以上運営されているという事実は大きい。1つのローカルなセンターで30から40件の調停を成立させているという事実は、あまり軽視すべきではないと思う。さらに、ローカルなセンターレベルでも少年司法関係など、様々な関連サービスに活動を伸ばしていて、単純に停滞しているというわけではない。

さらに言えば、カリフォルニア、フロリダ、メリーランドのような活発な州では、非常に多くの調停が行われている。フロリダでは、裁判所からの紹介だけで12万件という推計がある。

ひるがえって、日本の弁護士会ADRセンターは19年目で、まだ申立は全国25単位会(29センター)で千件にすぎない。成立はさらに少なく400件強である。
つまり単位会当たり単純平均すれば申立は40件で、成立は20件以下などという数字になる。
業界型ADR機関などは、調停に関しては開店休業も多い。

アメリカ人が、アメリカの調停が思ったほど伸びていないという話をしたときに、少し注意して聞かないといけない。安易に日本の状況にひきつけて想像すると間違える。

2008年12月03日

NY州裁判所のメディエーショントレーニングガイドライン

NYS - CDRC Program Manual: Training(PDF)

メディエーショントレーニングガイドライン

1 紛争解決の歴史
2 法的説明(秘密保持関係等:847章、1987年法、裁判所法21-A項)
3 司法制度と地域の紛争解決センターの関係
4 紛争の力学(紛争管理スタイル;感情、心理、経済など)
5 調停過程の目標、目的
6 調停の限界
7 受付と紹介手順
8 秘密が守れ安全な環境の設定と、調停開始(オープニングステートメント)
9 当事者間の情報交換
10 当事者の議論の整理
11 選択肢開発と選択
12 合意文書作成
13 センターの行動基準
14 文化的多様性
15 体験学習

2008年12月07日

出先での調停持ち物リスト

司法書士関川治子のBlog~ADRな日々: 持ち物一覧

こういうチェックリストはとても大切だとおもう。
お茶や食べ物重視のリストといったあたりで、人柄が出ているようなところもいい。

一回で合意が成立するときもあるのだから、それに備えた準備も必要かも。
モバイルプリンターとかは大変かもしれないけど。

ところで、情報発信することで、学べることはとても多い。
それに、他の人が意見を言ってくれて、さらに発展できる可能性もある。

・・とはいえ、わたしがブログに書いた話はあまり実務家や研究者で突っ込んで下さる方は少ないのだが。(しかし、少しはいる。ありがとうございます、はげみになっています。)

ともあれ、少なくとも、自分が思い出すのに役立つ。
それだけでもいいのではないか。

もう一つ、より大事だと思うのは、考えたことの整理だが、これをやり出すと時間がいくらあっても足りない感じになる。

2008年12月11日

NCSC(米国州裁判所全国センター)ADRデータベース

http://www.ncsconline.org/WC/Publications/ADR/default.htm

州別政策のデータベース。

2008年12月16日

書記官って大変

にぶんのいち 書記官って大変!

ADRのトレーニングというと、一般的には、裁判の限界を話をすることが多いのかもしれないが、わたしは最近は、裁判所の蓄積を素直に学ぶことも大事なのではないかと感じている。
特に書記官の仕事は、苦情対応にしても、和解条項の起案にしても、ADRにとっても不可欠な重要なものだ。

これらは、サービスとしての紛争解決の質に直接関わってくる。
本当にADRを促進するつもりがあるなら、できるかどうか確かめてやるという認証制度より先に、こうやればうまくいくというのを教えるのが、"政策的に"大切なんじゃないだろうか。

2008年12月18日

mediationhistory.org

www.mediationhistory.org: The Friends of FMCS History

オーラルヒストリーも公開している。

http://www.mediationhistory.org/Papers/InternetBargaining.pdf

2008年12月19日

料理の腕はなくとも舌が肥えて入れば見込みはある、かもしれない

廣田先生のセンターから修了証がとどいた。

いろいろ印象的な発言があったのだけれど、「自分で料理をつくれなくても、うまい、まずいは子供でも分かる。(廣田尚久(2006)『紛争解決学(新版増補)』(信山社)、P131)」というのがあった。

ADRの事例研究やインタビューなどで話を聞かせてもらっているだけでも、これは良い解決だったのだろうなというのと、そうでもなさそうなものがわかるときがある。

良い解決ができる力はすぐにもてなくても、うまい、まずいがわかれば、それを次に生かせる点がありそうだ。この原理が体験型学習の基礎にもなっているのかもしれない。
調停の理論は、このように反省的実践をするものに、指針を与えるものであればと思う。

2008年12月21日

若手弁護士の将来を考える会

アンケート集計結果<第一弾:就業状況及び収入について>

1割弱が年収500万以下って本当?

2008年12月28日

サンフランシスココミュニティボードのWebサイト

COMMUNITYBOARDS.ORG

まだ、生きてまっせ、というかんじだろうか。
よく見ると、Webができたのが今年のようだ。誰かがプログラムを再興しているのか・・
1月からe-newsletterも作っている。

Sally Engle Merry and Neal Milner(1993) "The possibility of popular justice : a case study of community mediation in the United States"(Ann Arbor, Mich.: University of Michigan Press)

The, Bush, Robert A. Baruch
Unexplored Possibilities of Community Mediation: A Comment on Merry and Milner,
21 Law & Soc. Inquiry 715 (1996)

2009年01月05日

民間ADRへの財政支援の必要性に関する原後発言

昨年亡くなった原後山治弁護士は、ADRの構想について、弁護士会内では、超少数説とも思われる国家財政運営説を唱えておられる。
現実の弁護士会の紛争解決センター・仲裁センターの姿と、創始者の思いは必ずしも一致していない。

僕は構想しているのは、「特殊法人法律処理センター」というか、「紛争解決センター」というものです。今やっている我々の仲裁などというのは、全く財政的に基礎がない。国家予算をもらっちゃうと紐ついたりするとかいろいろあるけれども、本当はこの財政こそは国家予算で賄うべきで、今やっている法律相談とか仲裁とか、それから今おっしゃった調停なども含めた独立した裁判所と並立した紛争処理組織がもしできたら、理想だと思う。そういうところが統括していって、そして裁判所と協力しながら、こういう事件は仲裁の方がいいから仲裁センターへ回せ、これは調停に回そうとか、そういう協力関係でやって行ければ理想だと思う。・・仲裁とか調停とかいうようなものは強力な国家の財政にバックアップされた組織として運営されていかなければならないだろう。それへの過渡的な形として今弁護士会でやっている。 114-115頁 那須弘平他「弁護士会仲裁と法化社会(プレシンポジウム座談会第1回)」第二東京弁護士会編(1997)『弁護士会仲裁の現状と展望』(判例タイムズ社)81-116頁

過去のエントリー:原後先生を悼む

2009年01月06日

やっと聴いてくれました

「あなたが真に求めているものは何ですか?」
「なんてこったい、いままで誰もその質問をしてくれなかったよ」
Kovack教授の発言(p.327)

Alfini, et al, (1993) "What Happens when Mediation is Institutionalized: To the Parties, Practitioners, and Host Institutions"
Ohio State Journal on Dispute Resolution, 9, pp.307-332

2009年01月14日

紛争を噛み合わせる

Bernard S. Mayer (2004)"Beyond Neutrality: Confronting the Crisis in Conflict Resolution"Jossey-Bass

昨年(2008年1月)に米国訪問したときに、複数の方から薦められた本。

BushらのTransformativeアプローチは、専門家活動目標として、当事者の変容(ないし成長)を言うのは少し言い過ぎではないかという問題提起をしている。
当事者が成長する「準備ができていれば」、調停がその成長の機会になればよいということには同意するけれども、むしろConflict Engagementを調停の目標にする方がよいと提案している。その理由としては、後者の方が、控えめでもあるし、と同時により挑戦的で重要な目標になり得るからと言っている。(P192)

例えば、「ケンカを助ける方法(How to Assist with a Fight)」も使う場面があってもよいのではないかと、提案している。(P199)

Conflict Engagementというのは、紛争を顕在化させて噛み合わせるというイメージの言葉のようだ。

成長とかWin-Winとかを言い過ぎると茶坊主くさいよ、ということなのかな。

2009年01月18日

Baruch Bush in DVD

The "Purple" House Conversations A Demonstration of Transformative Mediation in Action

Bushがデモ調停人として活動しているDVDを入手した。
ひげもじゃもじゃで、グルっぽいが、説明は明確。

2009年01月19日

東京都行政書士会の調停技法トレーニング終了

O先生との共同トレーニングでの6日間、ほとんど脱落者もなく参加して下さった。
基礎編一日目はなかなか難しいなとおもいながらのスタートだったけれど、よい研修になったとおもう。

最後は共同調停のロールプレイだったのだが、「人の話を決めつけがちなのに、はじめて探りを入れられる質問ができて自分で驚いている」とおっしゃったかたがいた。

2009年01月23日

米国のコミュニティ調停

Daniel McGillis(1997)"Community Mediation Programs: Developments and Challenges" Diane Publishing Co.

コミュニティ調停の文献でよく参照されているレポート。

Google Book

2009年01月27日

米国調停センターの実態

DVDと一緒に買ったFolgerらが書いたレポート

Folger, Della Noce and Antes (2001) "A Benchmarking Study of Family, Civil, and Citizen Dispute Mediation Programs in Florida. Tallahassee: Florida Dispute Resolution Center"

http://www.transformativemediation.org/publications.htmから買える。

Dorothy J. Della Noce, Joseph P. Folger, James R. Antes (2002) "Assimilative, Autonomous, or Synergistic Visions: How Mediation Programs in Florida Address the Dilemma of Court Connection" Pepperdine Dis Res L. J., 11-38
の論文の元の報告書。

調停プログラムのケーススタディがあって、調停の合意文書を裁判官がレビューしたり、子どもの権利を保護する後見人が調停手続のために選任されたりする仕組みが紹介されていた。

2009年02月07日

本:実践家事調停学

飯田邦男(2008)『こころを読む 実践家事調停学―当事者の納得にむけての戦略的調停 〔改訂増補版〕』(民事法研究会)

東京家裁の主任調査官によるもの。
非常に多くの文献を参照している。

小山昇に代表される古典的な調停の文献はもちろんとして、レビン小林久子、鷲田清一やら南山の人間関係トレーニングに至るまで、非常に目配せの効いた文献リストになっている。

また、申立書、申立時の付票などの実際的な資料や、現代の夫婦関係を示す豊富なデータも紹介されていて、非常に有用だと思う。

しかし、にもかかわらず、わたしは強烈に違和感を持ちながら読んだ。

冒頭の「夫婦の基本形を知る」という記述では、「普通の夫婦」を正方形で表し、家事調停に登場する当事者をその「普通の夫婦」からの逸脱として認識するところから始まる。
この「判断=同意モデル」のツールとして、さまざまなスキルや知識が動員される構造になっている。

「普通の夫婦」が実在するか、また、「普通の夫婦」からの逸脱を指摘することがそれぞれの家族の問題解決に有効か。
家裁でのケースワーク思想とは、個別性尊重の追求ではなかったのか。

考えさせられる。

2009年02月19日

調停のマジックの背景にあるロジック

自分のなかの最良のところも最悪のところも、調停に出てくる当事者の中に必ず見てしまう。 P19 Albie M. Davis "The Logic Behind the Magic of Mediation" Negotiation Journal, 1989, Vol.5(1), pp.17-24

Albie Davisの書く文章は、内省とユーモアとリズムがあって、良いなと思う。
率直さと親しみやすさに加えて、威厳もある。

2009年02月27日

知財分野の行政型ADRと民間ADR

よく知らなかったのだが、知財の分野では、行政型ADRである「特許庁の判定制度」と民間ADRの日本知的財産仲裁センターの関係が議論されているようだ。


産業構造審議会知的財産政策部会(2006)『特許制度のあり方について』(PDF)

特許庁:特許庁の判定制度について
日本知的財産仲裁センター
商標ナビ:商標侵害判定制度
塚原国際特許事務所:判定請求解説

特許庁判定は、4万円の印紙代。
知的財産仲裁センターのセンター判定(双方判定)は、申立42万円、口頭審理期日手数料10万5000円/1回(各々、両当事者では倍の21万円)。

こういう拘束力のない専門家の判定というのも、ADRではとても重要なメニューである。
そして、それは、話し合いによる合意を目指す調停とも補い合う関係にある。

2009年02月28日

StulbergとLoveの新作

Joseph B. Stulberg, Lela P. Love(2009)"The Middle Voice: Mediating Conflict Successfully"(Carolina Academic Press)

裏表紙にはNancy RogersとSharon PressとBaruch Bushが推薦の言葉を書いている。
Bushは、この2人の著者は、誰よりもfaciliative mediationをよく知っていると言っている。

Stulbergは、ADRムーブメント初期の、下記の論文が有名。
"Theory and Practice of Mediation - A Reply to Professor Susskind"(Vermont Law Review Volume:6 Issue:1 Dated:(Spring 1981) Pages:85-117

Loveは、調停でなぜ評価すべきでないかを書いた以下の論文が有名。
"The Top Ten Reasons Why Mediators Should Not Evaluate"
http://www.law.fsu.edu/Journals/lawreview/downloads/244/love.pdf

Stulbergは、1973年から調停トレーニングをしているのだそうだ。
つまり、今年で36年目。

この本は160ページと比較的薄い、また、文献リストも絞り込んである。
トレーニングで話している内容をぎゅっと圧縮して出版したような本だと思う。

2009年03月10日

マイケル・リンド氏講演会

JMCの田中圭子さんのコーディネートによる企画。

http://www.shiho-shoshi.or.jp/activity/event/20090308/index.html

http://www.adrgroup.co.uk/

http://www.adrgroup.co.uk/about-adrg/Michael_Lind.htm

英国で会社組織としてメディエーションサービスを提供している「ADR Group」のマイケル・リンド氏によるプレゼンテーション。

興味深い報告だった。
・ADR Groupのメディエーションの料金は高い。
 1日に5.6万円~42.7万円。(それぞれの当事者)
・ADR Groupは高い料金だが、年間500件実施している。
 ケースマネジメントを会社が提供し、調停人が調停をする。
 取り分は1:2(会社1で調停人2)。
・ADR Groupでは別席調停が多い。
・メディエーション・ヘルプラインと呼ばれる公設で
 民間プロバイダに事件を流す仕組みの運用が始まっている。
 年間1600件の調停申し込み。約800件の調停実施。そのうち3分の2の成立。
 調停手続は裁判所内で行う。
・少額訴訟事件向けの裁判所付設調停が開始。
 2008年初年度で7800件。当事者の利用料は無料。
 これも調停手続は裁判所内で行う。
・調停人は多いが、調停件数は少ないというのがイギリスの課題。
・ウルフ卿も、ADR Groupのトレーニングを受けた。
・クオリティマーク制度は、認証モデルというより登録モデル。
・EUでは、ディレクティブ(指令)と行動規範がある。
・ADR Groupのトレーニングでは、ビデオテープを取って、メディエーターのパフォーマンスを評価する。
・日本のADR法は、「馬を置く前に馬車を置く」だったかもしれない。
・今日帰ったら、「ADRについて、だれかひとりに話して下さい」-地道な活動が、徐々に広がりを生む。

やり手の方のようだが、わたしと同じ年齢だ。
眉間にしわを寄せて話をするのが気になったのだが、途中から立って話し出すと、生き生きとしてきた。こういうプレゼンよりトレーニングのほうが好きなんだろうと想像しながら聞いていた。
ADR Groupのキャッチフレーズは、Teach、Talk、Resolve。調停という概念を教育することを先行させるという意味か。トレーニングの重要性を強調していたのと、プロフェッショナリズムとしての品質の確保に注力していたのが印象的だった。

リンド氏が、東京司法書士会の、成功報酬料金体系が問題ありという発言をしていた。
東京司法書士会ではあまり意識されていなかったのかもしれない。
わたしが理解している限りでは、米国では、明示的な禁止までされている場合ばかりではないが、一般に成功報酬料金体系は望ましくないとされている。

http://www.abanet.org/dispute/essay/pastan.doc

2009年03月11日

EUのADRについてのディレクティブと行動規範

EUR-Lex - 32008L0052 - EN

European Commission - European Judicial Network - Alternative dispute resolutions - Community law

2009年03月12日

メディエーションとファシリテーション

PIフォーラムで、公共分野のファシリテータとして、活躍している人が言っていた話である。

「通訳なら、Aランクの実力があれば、常にAランクの仕事ができるのかもしれないが、ファシリテータは違う。仕事を請ける経緯などで、その能力を発揮できない。前さばきがCランクなら、Aランクの仕事しかできない。」


通訳でも、事前準備によって仕事の質が変わってくると思うが、公共分野のファシリテータの場合、確かにもっと難しくなると思う。
ここでの「前さばき」とは、ステークホルダ分析を言っていたり、中立的な対話進行に徹することができるという契約条件の設定やその公開を言っているのだとおもう。

メディエーションには、単なるスキルではなく、手続や制度を指向する側面がある。
そこはメディエーションの強みだろうと思う。
(もちろん、手続や制度だけでは意味のある実体にならない。)

ただ、ファシリテーションについても制度化して考えるべきという視点も持たれつつあるので、そうなってくるとあまり違いがなくなってくる。

よくメディエーションとファシリテーションの違いを聞かれるが、両者の違いっていうものがそんなに大事だとはわたしは思っていない。
むしろ、よいメディエーションとよくないメディエーションの違いを考える方が重要だとおもう。

ファシリテータとして現場経験のある人はそれなりの数おられるので、彼らの経験ももっとメディエーショントレーニングにも反映できたらと思う。

2009年03月16日

戦前の調停

現在の裁判所の調停では、別席での話し合いが原則であるようだが、戦前の調停はむしろ同席が原則であったような節がある。

充分なデータはないのだが、例えば、『調停読本』(1954)には、別席調停のメリットも書かれているが(P98-99)、原則型として、「当事者双方及び代理人並びに利害関係人等を全部同時に呼び入れ」、話し合いが進められる手順が紹介されている(P173-174)。

また、裁判官が最後の調書読み上げだけに登場するなどといったことはなく、調停委員会として調停委員2人と一緒に話し合いに参加していたという話もある。(この点での形骸化は戦前に見られるという指摘もある。)

戦前の調停と一言でいっても、封建的で乱暴な調停もある一方で、逆に、現在では考えられない位丁寧な手続もあった節もある。例えば、関東大震災後の借地借家調停では、調停期日を1週間後ぐらいにどんどん入れていたそうである。

調停理解に、ステレオタイプは禁物である。

2009年04月08日

mediate.comのインタビュー集

Take Advantage of Open Access to The Mediate.com Video Center - Over 100 Interviews!

mediate.comのインタビュー集の動画が公開されている。

Roger Fisher
Frank Sander
Carrie Menkel-Meadow
Larry Susskind
Joseph Stulberg
Albie Davis
Len Riskin(Leonard Riskin)
Bernie Mayer(Bernard Mayer)
Chris Moore
Joe Folger(Joseph P. Folger)
Linda Singer
David Hoffman
Randy Lowry
Peter Robinson
Nina Meierding

などなど。

メディエーション運動のコアにいる人たちの雰囲気が伝わるとおもう。

Albie Davisは、メディエーターの役割は、中立性とか秘密性という以前に、「そこにいることだ」と言っている。
http://www.mediate.com/mediaplayer/mediaplayer.cfm?snid=2000320

2009年04月09日

mediate.comのインタビュー続き

http://www.mediate.com/people/personprofile.cfm?auid=788

Joseph Stulbergのインタビューもおもしろい。

トレーニングの品質について話をしている。
「4時間や6時間では教えることはできない」と明言している。1973年からメディエーショントレーニングをしている人だけに、重みがある。

また、ロールプレイの使いすぎは問題だと言っている。例えば20時間中16時間ロールプレイなどというのはおかしいと。

トランスフォーマティブアプローチに対して
・イシュー(課題)を特定しないのはいかがなものかと疑問。
・実際には、USPSで成功しているトランスフォーマティブアプローチのメディエーションは、非常に具体的な話し合いを行っている。(「事実上イシューを限定している」のではないかと言外に言っているとおもう)
・プロブレムソルビング対トランスフォーマティブの構図の議論には関心がない。
・トランスフォーマティブアプローチのエンパワーメントとリコグニションについては、用語は違っても同様のことの重要性を教えている。

2009年04月10日

山田文先生の家事調停についての論文

山田文(2008)「離婚紛争と調整型ADR」(名古屋大学法政論集. v.223, 2008, p.367-385)

交渉促進型(faciliatative)には、積極型と消極型があるという話をしている。
一般的にメディエーショントレーニングは、「積極型」なのだが、トレーニングを知らない人は、「消極型」(調停人は積極的にはなにもせず、双方の主張を取り次ぐだけ)をイメージしている場合がある。
このあたりのイメージの齟齬については実演を見せたりするしかないが、さりとて実演すればしたでステレオタイプ化した誤解が拡がったりして難しい。

また、離婚後の面接交渉を考えた場合に、当事者が能動的に合意形成に組み込みを図るプロセスが有効で、交渉促進的調停は有意義と評価している。
と同時に、弱者が情報を十分に得て、真の自己決定をできる環境を作るために、調停人が積極的に役割を果たす必要性を論じている。

このあたりは、素朴な「メディエーションは対話促進で、当事者にアドバイスしない」とする役割像を超えている。

わたし自身は、山田先生の考え方に共感する。
しかし同時に、上記の言葉尻だけを捉えて、「弱者保護なら(必ず)情報を与えて良い」と考えるひととか、さらに曲解して「評価型と適当に混ぜればよい」などといいだすひとも出そうだと心配する。
こういう変な議論にならないようにどうしたらよいだろう?

一つの方向性は、積極的な役割を果たす場合に、調停人個人だけでなく、調停機関が役割分担をして、手続として安全に、かつ、当事者にとっても中立らしく見えるようにするのがよいのではないかとおもう。
例えば、典型的論点と規範は、調停開始前に事前に両当事者に説明してしまうとか、ブックレットで提供するといったやり方も考えられる。

現実的に有限な能力の中で、何をどう救済しようとするかは、機関としての価値判断が求められる。

Folgerがメディエーションは、イデオロギー的にフリー(中立)ではありえないと言っているが、このあたりも困難な場所だなぁとおもう。
http://www.mediate.com/mediaplayer/mediaplayer.cfm?snid=2000418

2009年04月23日

熊本大学・吉田勇先生のADRについての論文

吉田勇(2008)「日本社会におけるADRの可能性 : 「納得のいく解決」を求めて」熊本法学、113号、pp.199-252

大学紀要はPDF化されて一般公開される場合が増えているが、「熊大法学」もそのようだ。

吉田勇先生のADRについて、55頁の大部な論文。特に近年の国内での対話促進型調停、ないし、交渉促進型調停の研究や議論についてかなり詳細に紹介しておられる。

法的解決と非法的解決が未分化な「主観的未分化モデル」→意識的に法的解決と非法的解決を専門分化させそれぞれ別個に充たすことを求める「専門分化モデル」→ひとたび専門分化された法的解決と非法的解決が反省的に統合される「反省的統合モデル」
という三段階の発展を仮説として提唱している。(P226)
このモデル論について、もう少しお聞きしたい感じがした。

対話促進型調停が民間で拡がるとともに、裁判所における調停の運営がより対話促進的なものにすることが望まれているとも述べている。(P229)

わたし自身は、大正期の話や、『調停読本』の分析などは、もう少し角度の違うところからも議論したい気がしているが、全体としてはとても共感するところが多い論文だった。

ところで、吉田先生は、六本先生と一緒に『末弘厳太郎と日本の法社会学』という本を出しておられる。

六本佳平、吉田勇(2007)『末弘厳太郎と日本の法社会学』(東京大学出版会)

この本には、非常に闊達な末弘厳太郎の講義録が収録されている。

2009年04月26日

東京家裁でのロールプレイ研修

小林隆、林詩子、及川由佳(2008)「東京家庭裁判所における調停委員のためのロールプレイの実際」『ケース研究』297号、pp.101-114。

・平木典子先生の助言も得て行った。
・1回のロールプレイは10分。
・ふりかえりでの発言
 「調停委員2人を前にすると圧迫感を感じる」
 「まるで被告席に座らされているような・・」
・著者3人は、家裁調査官。

ロールプレイ事案の資料が添付されていたのだが、概要しか書かれていなかった。
秘密事項の設定なしにやったのかもしれない。

それにしても、いよいよ、家裁でも、本格的に取り組み始めたということだろうか。

2009年04月27日

パン屋のあるじ説

高野耕一(2008)「人訴移管後の家事調停」ケース研究296号、pp.3-53

「調停合意説」の根底にあるものは、「パン屋のあるじ」がパンを買いに来た「客」に対して、パンは自分で作るものだよと説諭するに等しいのではないだろうか。P42

対話型調停批判の論客で元裁判官の高野耕一氏によるもの。
この論文を書かれたのは84歳だという。

裁判所が持つ権威性に無自覚な調停委員では困るとおっしゃっている。公正な解決を目指さなければならないというのが、一番の眼目のようだ。

調停の場に話し合いなど求めておらず、「相手をこらしめたい」というニーズを持っていたり、「専門家による正当な評価を得たい」というニーズを持っていたりする当事者がいるのは当然のことだ。そこをどう考えるか。

この論文に、いろいろ言いたいことはあるが、それは、論文で書くべきだろうということで。

2009年04月28日

調停技法の小学校導入に向けたトライアルプロジェクト

http://quris.law.kyushu-u.ac.jp/~cms/pandp/index.html

九州大学・レビン小林久子先生らによる小学校向けプロジェクト。

どんな活動をされるのか、関心がある。
米国では、ピア・メディエーション・トレーニングはかなり広範に拡がったようだ。
昨年12月に来たJennifer Beerさんも、大学のクラスを教えていて、何人か(何十人か)に1人はいるとおっしゃっていた。

子どもに伝えられるメッセージがあるならば、大人の社会でも拡がる可能性があるだろう。

2009年05月01日

OKWaveの人生相談

不倫になってしまうのでしょうか? - 教えて!goo

こういう事件は、民間調停(メディエーション)が非常に向いているのではないかと思う。

不倫をした側から家裁に夫婦関係調整で持っていくというのも難しいだろうし、労働基準監督署にパワハラで相談してもらちがあかないだろう。民事調停での損害賠償請求も考えられなくはないかもしれないが、そういうお金が欲しいというのでなく、こうしたへんな男のことは忘れ、奥さんに嫌がらせされずに仕事をしたいというのがニーズだろう。

不倫をした相手と夫が今も同じ職場にいるのが耐えがたいという正妻の気持ちももっともである。
悪いのはこの男だが、「『もうお互い訴えてくれ。俺が悪い。』との開き直りとも見られる態度のままで相談にも応じてくれません」だから、はっきり言って膠着している。

原後山治氏がかつて、不倫の側からの申立は、弁護士会仲裁(和解あっせん)でメリットのでる一事例だと話している。
第二東京弁護士会編(1997)『弁護士会仲裁の現状と展望』(判例タイムズ社)
70頁。

2009年05月08日

十分な時間をとって話し合います

愛知県弁護士会紛争解決センターのパンフを見てたら、以下のような記述が出てきた。

Q3 どれくらい時間がかかるのでしょうか?
早期で円満な解決を目ざします。おおよそ3ヶ月程度で解決するよう、関係者の皆さんが努力します。そのため、1回ごとに十分な時間をとって話し合います。

早い解決を目指すけれど、むしろ期日内では、丁寧にじっくりと手続を進めるという宣言を、非常に簡潔な文で表現していてすばらしい。

ただ、残念ながら、現在は少し表現が変わってしまって、十分な時間を取った話し合いという部分がなくなってしまったようだ。
Q7:解決までの期間はどれくらいですか

2009年05月09日

利谷信義先生の講演

今日から法社会学会大会@明治大学

先だって、昨日は、利谷信義先生による初期の法社会学に関しての講演があった。
利谷信義先生ははじめてお目にかかった。
77歳ということだが。

穂積重遠先生の弟子であった来栖三郎先生の民法の講義のなかで、自分にとっての法社会学の出会いがあったという話、東大セツルメント(亀有)での活動の話もされていた。

来栖先生の講義のおかげで、最初から、穂積、末弘、戒能、川島といった人を非常に近しく感じていたそうだ。

亀有のセツルメントのなかでは、夫が家出したあとの奥さんから相談されて、離婚を手伝うといったこともしたそうだ。裁判所の調停の前段階の援助を行うという意識があったという話もしていただいた。

セツルメントで活動すると出世できないよと先輩から言われていたということだが、実際には出世した人がとても多かったんじゃないだろうか。

利谷先生ご自身の人柄がとても魅力的で、感じるところも多かった企画だった。

2009年05月10日

法社会学会大会中

一昨日、利谷先生が、1955年体制ができあがっていくということに川島武宜は自覚的だったのではないかという話をされていた。
利谷先生は、そうはっきりおっしゃったわけではないが、「現在は体制の再構築中のはずなのだけれど、学問の側で、どうも決め手に欠けている」と感じておられるようだというところが、印象に残っている。

ところで、『末弘厳太郎と日本の法社会学』を読み直してみた。
六本佳平、吉田勇(2007)『末弘厳太郎と日本の法社会学』(東京大学出版会)

戦後に行った末弘厳太郎の4回講義の速記録が収録されている。

興味を引いたのは、「法現象の社会学」と「社会学的法律学(社会科学を使った法学)」の対比という議論で、末弘自身もパウンドの立場である後者に近い立場を保ったのではないかと六本先生が分析している。

講義で、末弘が「最低限身につけておけ」と言っている内容は、わたしから見れば十分に高度すぎるのだが、その膨大な知見からすれば確かにエッセンスだけを伝えようとしている感じがする。

まず最初に、「法社会学の性質及び方法」という問題を考えなければならぬ。私は元から、実は学問の性質及び方法論というのは、相当学問してから後で気がつくことで、入口で方法論に興味を持つことは、自分の学問の進歩を妨げるという考えを持っておるので、長年やって来てようやく自分を顧みて、方法だとかいうようなことをこれからお話しするのでありますが、だんだんにやってみようという方に、初めから方法ということを気になさることをお勧めする気は、毫もないのであります。 P104(末弘厳太郎第四講)

"Stay hungry, stay foolish"で、めげずにやっていくのが大事なんだな、と思う。
元気を出していこう。

2009年05月11日

法社会学会大会・続き


「法曹の新しい職域」研究会の報告書をいただいた。

かなり厚い報告書であるが、途中には、アンケートの自由記述欄もあっておもしろそうだ。

弁護士には、名弁、良弁、並弁、悪弁、経営弁の5種類が居ると書いている弁護士回答者がいた。

わたしが以前会った方で、弁護士は大きく二つに分けて、はったり系と、じっくり系がいるという話をしている人もいたが。

こういう分類の仕方そのものもおもしろい。

過去のエントリー:企業内弁護士に関する調査報告書

2009年05月12日

米国ADR専門家のインタビュー集

英語の勉強にも良さそうな、スクリプト付きインタビュー集。

Beyond Intractability: Expert Interviews

Ray Shonholtz

John Paul Lederach

William Ury

Peter Coleman

Morton Deutsch

Deborah Kolb

Larry Susskind

Sarah Cobb

2009年05月13日

事例研究の方法論

二弁の事例検討会に出席させていただいて一年になるが、とても勉強になる。
メディエーショントレーニングの考え方とはかなり違うところもあるが、見るからに誠実そうな弁護士による話などを聞けることも多い。
年に一度の夏季勉強会には他士業からの参加も認めていてふところが深いところを見せている。

当事者が特定できないようにかなり配慮した報告になっているが、それでも紛争解決の様子で伝わることは多い。
非常に有意義な活動だと思う。
弁護士会でも事例研究を行っているところは限られているが、本来は、必ず行った方がよい種類の活動に思える。

ひとつの事例でも、よいことばかりでなく、考え方が分かれるような微妙な論点もでてくるところがある。

事例研究に参加している人が、なるほどADRはこういう風に良いが、このあたりは課題かとか、実感として持てれば、ADRへの持ち込み案件も増えるだろう。
逆説的だが、限界を見せてもらえた方が、かえってその相手を信頼できる。

例えば、臨床心理の世界ではもっと事例研究の作法などは確立しているとも思われるので、他分野の状況も調べていくと参考になるだろう。

ADRの促進といった場合に、案外、こういう心配、懸念材料にひとつひとつクリアするための議論を積み重ねていくことが大事かなと思う。

2009年05月14日

ライオンズクラブでメディエーション?

以前、米国で調停に長らく関わっておられる方と、日本でどうやって新しいスタイルの調停を広めることができるだろうかと話をしていたときに、「ライオンズクラブやロータリーズクラブに話を持っていったら」と助言されたことがある。

それを聞いたときには、日本では誰もそんなことは考えたことがないかもしれないと思った。
確かに地域に根ざした活動をしている団体だし、目先の利益を目指さず、公益的な活動をしている。

正義へのアクセスを増やそうという話と、司法を効率化するためにADRを使おうという話では、ADRについての動機づけが異なってくるが、前者の位置に立った政策としては、まだまだ検討されていない選択肢があるのかもしれない。

この本↓おもしろそうだ。

非属の才能 - 情報考学 Passion For The Future

2009年05月20日

法と言語 学会

法と言語 学会

先日、「法と言語 学会」の設立大会(@明治大学)に行ってきた。
こぢんまりとした学会運営に好感を持って、つい入会してしまった。

「法と言語」と「学会」の間にあるスペースは、何の意味があるんだろう?

どちらかというと刑事畑の学者が多いようだ。

2009年05月21日

穂積重遠は子どもと一緒でも仕事ができる

穂積の語録はおもしろい。

法律をふりまわす法律万能主義は、法律家としての勉強が足りないから出てくるのだと言っている。

しろうと、というのも、なかなかに法律をふりまわすと言っていて、法律にふりまわされないために、調停には法律家も入るのが良いと言っている。

調停とは関係がないところだが、子どもが部屋で遊んでいても、気にならずに仕事ができるという話を見かけた。
何げなく書いてあったが、わたしは、異常な話だと思った。

2009年05月29日

ABAのメディエーション品質に関するレポート

ABA: Section of Dispute Resolution: Task Force on Mediation Quality

米国弁護士会(ABA)の2006年の調停の品質に関するレポート。

2009年06月03日

ナラティブ・メディエーション

仲裁とADR4号で、神戸大学博士課程の山田恵子さんが、ナラティブ・メディエーションの文献を紹介している。

周到に目配せされた紹介でとても参考になった。

ただ、ナラティブ・メディエーションは、真にナラティブなのか、という疑問を持ちつつ読んでいたのだが、そこのところがよくわからなかった。
殻に閉じこもりがちな伝統的な専門性を開き、対等な関係性を日常言語の対話の中に構築しようとするはずの試みが、自分たちの方法こそ「正しい関係性」を構築できる「正しい方法」だと宣言しはじめたとたんに、新しくも伝統的なひとつの「専門性なる殻」への回帰の誘惑に駆られる。
その辺はどうなんだろうかと。

わたしがこれまで会った人の中では、Sara Cobb先生がナラティブ派の人だった。
この方は心理学出身だったが、非常にさっぱりとした実際的な議論をされる方だった。

技法論として、例えば変容型と、どの辺が違ってくるのかも、もう少し知りたいと思った。

『仲裁とADR 4号』(商事法務、2009)

2009年06月04日

小山昇先生の過剰さ

ウィキペディアで小山昇先生のところを見ると、「民事訴訟法学に於いてはほとんどの学説対立にて、通説側に立っている」といった、敬意の感じられない記載がある。少なくとも、調停の分野では、あまりに偉大なのになぁと。なんとわかっていない書き込みだろうかとおもう。

『民事調停法』(有斐閣、1977)の、「新版の序」のところに、「・・わたくしは、新著を出すことにした。この機会に、民事調停法のすべてを画き尽くす試みをすることにした。しかし、資料を集めていくうちに、とうてい集め尽くせないことを悟った。また、問題を考えていくうちに、とうてい考え尽くせないことを自覚した。それにもかかわらずこの試みを棄てなかった」とある。

そして、7-16頁に膨大な文献リストが掲載されている。
このリストは、完全ではないが、しかしかなりなものだと自分で書いているように、確かに、執拗に充実したリストになっている。すべてを集め尽くそうという話が、まんざら言葉だけではないことがわかる。

この民事調停法という教科書は確かに古いのだが、新しい文献ではかえってあまり触れていないようなところで、目の覚めるような記載が出てくることがある。

私が気に入っているのは、例えば、以下の記述。

 極言すれば、調停制度は、迅速・簡易・低廉を目的とするものではない。調停は合意による解決の制度である。合意の形成過程の手続は複雑を要しない。すなわち、調停による解決が迅速・簡易・低廉でありうるのは、調停が合意により成立するものであることにともなう結果なのである。それは調停制度の属性といったほうがよい。 P53 ※原文の、強調文字を太字に変えた。


2009年06月10日

メディエーションにおける法情報の扱い

野田順一司法書士(神奈川県):メディエーション場面における法的介入の在り方
リンク元

とても興味深い論考。
わたしも、近いテーマで小さな論文を書いてみようと準備しているところ。

法的助言は行わないが、中立的法情報提供は許されるという考え方は、ひとつの可能性であることは確かだと思うが、資料として添付されているやりとりの例を見ても、かなり微妙なところだ。


2009年06月14日

かいけつ☆おさ丸の展開

群馬司法書士会『執務現場から』(41号、2009年5月)をいただいた。

ADR特集である。地方の県の単位会が作った特集としては、とても充実していた。
群馬司法書士会のADRは、プロボノ事業として、無償で行っていくらしい。

わたしが知る限り、司法書士会のADRの活動が、ビジネスとして成立する余地があるのか、ということはまともに検討されていないように思う。

中で、神奈川県の稲村厚さんが、認証ADRでは、「調停人リスト」を持っているということが、ビジネス展開の可能性につながるという指摘をしていて、興味深かった。
ADRといわないまでも、公正にかつ、丁寧に苦情を聴ける人というのが求められる場面というのはたくさんあって、そういうところで活躍する意欲も能力もあるということを示していくことが大切ではないかということだ。これには、まったく共感する。
そう考えれば、必ずしも単位会のADR活動は、それで黒字化しなくてもよい。一種の「見本サービス」と位置づければ良くなる。

プロボノでやるなら、多様性を考えて、司法書士以外とも一緒にやっていけばいいのではという議論がなかで出ていたが、まだそういう展開ではないようだ。

2009年06月15日

群馬司法書士会『執務現場から』の続き

群馬司法書士会『執務現場から』の中で、斎藤幸光氏(群馬司法書士会)が興味深い発言を多くしている。

その中でも、調停の現実は、ほとんどの場合両者ともに不満(Lose-Lose)であって、Win-Winなどと安易に言うべきではないという主張が光っているように思える。

分配的事項について、一方が100を主張し、他方がゼロを主張し、70や30で決着したとしても、双方、少なくとも当初の期待からは減少している。
安易に統合型交渉観を強調しすぎるのはいかがなものかという主張は、傾聴に値すると思う。

2009年06月18日

JILPT「企業外における個別労働紛争の予防・解決システム利用者の実態調査」

独立行政法人 労働政策研究・研修機構/研究成果/資料シリーズ:企業外における個別労働紛争の予防・解決システム利用者の実態調査

社内相談の結果、「そのすべてが経営者にバレて然も悪口を言っていたと伝わっていた」「当初は何とかするということだったが、トラブルの相手が辞表を出したことから喧嘩両成敗でお前も辞めろとなってしまった」といった、衝撃的な、利用者の声が出ている。

こういう制度は、ただ手続があればよいというものではなく、上記のような「正直者がバカを見る」という結果になるくらいなら、ないほうがまし。
これは、ADRについても言えることだ。

2009年06月21日

古稀の特権

萩原金美 栗田隆雄 郷田正萬 丸山茂 中山幸二 鶴藤倫道 坂本宏志 井上匡子 「萩原金美先生を囲む座談会 : 法化社会の実現をめざして」神奈川大学研究年報 26 (2008.3) pp.3-72
※PDFファイルが公開されている。

・裁判官を辞めたのは、裁判が怖くなってきたから。(p12)
・高利貸の手伝いのような民事裁判の仕事が崇高とは思えなかった。(p13)
・スウェーデンでは、法律業務は誰でもできる。(p46)
・スウェーデンでは、現職の裁判官が民間のADR機関で仕事をすることがある。(p58)
・日本のADRは、官僚の権限拡大に狙いがある。(p59)
・弁護士会でさえ法務省の認証を受けなければならないという話に対する危機意識が民訴学者になさすぎる。(p59)
・公証人制度は、判事・検事の姥捨山。(p60)
・(井上匡子教授の構想に賛成して)ADRは裁判所の肩代わりという役割だけを負っているのではないのに、ADR法はそれを殺すおそれがある。(p62)
・法律関係者が当然にADRの担い手にふさわしいという考えは誤り。(p65)

2009年06月25日

ケンブリッジ市女性委員会

Cambridge(MA) Women's Commision

井上匡子先生の論文で紹介されていた、ケンブリッジ市の女性委員会。
被害者への司法へのアクセスを保証すると共に、法曹内でのDV理解浸透を目指している。民間NPOは、被害者支援はもちろん、加害者回復プログラム、警察や病院への教育プログラムを提供するグループ、裁判所で託児をするグループなど、数多く集まっているという。

井上匡子「ADRの現代的意義と市民社会-社会構想の必要性」名和田是彦編著『法政大学現代法研究叢書 28 社会国家・中間団体・市民権』2007,pp.39-65

紛争解決を狭く捉えるというより、社会的事象を総合的に解決するためのネットワークハブとしてADRが機能している例ということのようだ。

2009年06月26日

裁判所委員会の調停利用者アンケート

高松地裁裁判所委員会

2006年(平成18年)11月24日 高松地裁裁判所委員会議事録(PDF) ※アンケート設置
2007年3月15日高松地裁裁判所委員会議事録(PDF) いくつかの結果
2007年7月27日 高松地裁裁判所委員会議事録(PDF) 民事調停に対するアンケートの結果。一定の評価を得ているが、「職員、調停委員いずれの場合も利用者が共通して抱いている不満は「話を十分に聞いてくれない」と感じていることである。」

松山家庭裁判所委員会

2009年(平成21年)2月10日(火) 松山家庭裁判所委員会 第11回議事録(PDF)
アンケート用紙(PDF)
アンケート集計結果(PDF)

過去のエントリー:
東京地裁委員会が利用者アンケート
大阪地方裁判所委員会の調停利用者アンケート

2009年06月27日

ADRには予算をつけないという方針

ADR検討会(第26回) 2003年(平成15年)12月1日(月) 議事録

これを読む限り、「ADRには予算をつけないという方針」はかなりはっきりと打ち出されているとおもう。

ADR法成立に向けて舞台まわしをした小林徹参事官の発言の、
「これではADRは育たないという御意見もあるかもしれませんけれども、基本的には、やはりADRの発展はADR自身の努力に待つところも大きい・・
 そういった考え方が、やや冷たいのではないかという御議論もあろうかと思いますけれども・・」
というあたりで明確なのだろう。

もちろんそれでよいかという話にはならないが、ADRに予算をつけるという理屈付けや、そのための働きかけというのも誰もちゃんとはやっていないのかもしれない。

2009年06月29日

挨拶

Yahoo!辞書 - あい‐さつ【挨拶】
挨拶は時の氏神 - ウィクショナリー日本語版

「挨拶」という言葉には、仲裁の意味があるらしい。
挨拶は時の氏神ということわざがその用例。

へぇ、と、おもった。

ADR解決事例 精選77』のコラムに載っている。(P153)

広辞苑で引くと、挨拶の一番目には、禅の問答で、悟りの深さ・浅さを調べる意味が出てくる。

興味深い言葉だと思う。

過去のエントリー:二弁仲裁センターの事例集

2009年07月01日

少額訴訟と和解

大阪簡易裁判所簡易裁判所活性化研究会編(2006)『大阪簡易裁判所少額訴訟集中係における少額組訟手続に関する実践的研究報告』判例タイムズ

少額訴訟の審理時間データが載っている。
1998年(平成10年)~2005年(平成17年)のデータでは以下の通り。
(N=2395)

30分以内 51.9%
1時間以内 20.3%
1時間30分以内 15.6%
2時間以内 8.6%
3時間以内 3.0%
3時間を超える 0.7%

「ところで、訴額の上限が拡張され、少額訴訟手続の間口が広がったことにともない、紛争内容が複雑困難化し、多種多様な争点が主張され、感情的対立が先鋭化している事案や、独自の見解に固執して譲らない当事者の事案が散見されるようになり、主張の整理や当事者の説得に以前にも増して時間を要し、それが、平成17年においては、平成15年、16年に比較して、1時間以上の審理時間を要した事件の割合が増加している原因と思われる。(P157)」

米国の少額訴訟には、少額の調停手続が隣接している場合があるが、日本の少額訴訟では裁判所内の司法委員が和解手続を担当していて、外の調停機関に出すということはない。
しかし、上記のように時間のかかる事案が増えている現状では、和解ないし調停手続との組み合わせを強化した方がよいようにおもえる。

ひとつには、和解を進める司法委員に対しても、調停技法トレーニングの機会をきちんと提供した方がよいのではないか。
また、1日にこだわらない調停との組み合わせを手続的に整備するべきではないか。
と考えるが、どうだろうか。

あと、気になっているのが・・
相手方に弁護士が受任するとほぼすべて通常訴訟に移行するという話(P30)。
少額の執行で、「差押債権がなかったり差押債権があってもごく僅かで功を奏していないものが72.7%に及んでいる。(P112)」という話。

過去のエントリー:少額訴訟の実態研究

2009年07月03日

大阪簡易裁判所の調停事件の書式

判例タイムズ社:判例タイムズ1130号(2003年11月30日号)

大阪地方裁判所簡易裁判所活性化民事委員会編(2003)『大阪簡易裁判所における民事調停事件の諸手続と書式モデル』判例タイムズ臨時増刊1130、2003年11月30日号

受付相談票(P76)や、(相手方への)照会書(P91)、調停制度の説明(P92)、調停条項案などもある。


2009年07月04日

家裁調停の黄昏

坂元和夫(2007)「家事調停の黄昏」(鴨川法律事務所事務所便りかもがわ)Vol.41、2007.8.1、3-4頁。 (PDF)
リンク元

調停委員が情報独占し、情報を小出しにすることで調停委員への依存を高めることで合意を調達する手法では、真の合意が実現できず、調停制度への不信を招くと批判している。

坂元弁護士は、元日弁連副会長。

Vol.42で同じ事務所のひょろり君(山崎浩一弁護士)が、夫婦を和解させている話もとてもおもしろい。

山崎浩一(2007)『頑張れ!ひょろり君―熱血弁護士奮闘中』現代人文社

2009年07月06日

大阪の総合紛争解決センター

幅広い民事紛争の解決に尽力いたします | 一般社団法人 総合紛争解決センター
和解あっせん人・仲裁人候補者
費用について

大阪弁護士会らが設立を進めていた「総合紛争解決センター」のWebサイトが整ってきている。

料金は、弁護士会ADRに比べても安い水準に抑えているようだ。
申立時に10500円と成立手数料。
成立手数料は100万円未満で15750円。1000万円未満で52500円。

先日、JAA研究部会で話を聞いたのだが、3人の和解あっせん人で進められ、うち1人が弁護士になるそうだ。

ビジネスというよりは市民サービスと割り切って、団体乗り入れ型で進めていこうとしている姿そのものはとてもまっとうだ。

ただ、正直なところ、やってあげている的なサービスに陥ってしまうのか、市民的紛争解決機関として育っていくのかは、まだわからない。

過去のエントリー:大阪弁護士会の士業団体連携型ADR構想:総合紛争解決センター

2009年07月14日

ドイツの民間家事調停

ドイツの民間家事調停について、熊本大学の大橋眞弓教授が紹介をしている。

・ハイゼンベルク市1000人弱の弁護士のうち調停を実践しているのは10人程度 P184
・ドイツ全体で、10名程度の家庭裁判所裁判官が裁判所外で調停を実践 P184
・代表的な相談・調停機関-プロ・ファミリア P185
・プロ・ファミリアの設立は1952年。 P185
・1976年の法律(妊娠及び家庭扶助に関する法律) 妊娠中絶手術の事前相談義務づけ
 同法が西ドイツ全体で施行された。プロ・ファミリアが国家的な任務の主要部分を受け持つ。財政的な裏付けを得た。 P185
・2001年でドイツ全体で150カ所ほど。2005年で170カ所ほど。 P185
 バーデン・ヴェルテンベルク州内に18カ所。 P185
・バーデン・ヴェルテンベルク州コンスタンツ市(人口13万)のプロ・ファミリア訪問調査。 P186
・常勤5名、非常勤2名。非常勤の一人は弁護士。 P186
・2004年890件の相談。 P186
・2004年の州補助金は1820万円。これが全体の7割。その他、郡・市の補助金あり。 P186
・「学際的な判断がプロ・ファミリアの特色」 P186
・ある調停者養成コースでは、修了までに計204時間の受講が必要 P189

大橋眞弓「家庭紛争に関する裁判外紛争解決システム」吉田勇編(2006)『法化社会と紛争解決』成文堂、172-192頁

プロ・ファミリアについての日本語のWebリンク。

ドイツで人材コンサルタント - 楽天ブログ(Blog)

ドイツでの妊娠中絶──法制度

2009年07月19日

二弁夏季勉強会に参加して (続き)

各弁護士会の活動の紹介は興味深い話が多かった。

わたしが興味深く思ったのは、以下のあたり。

・大阪弁護士会の総合紛争解決センターの話が徐々に分かってきた。
 利用者にとって、費用がかなり安い。
 あっせん人3人体制で1人が弁護士という方式。このあたりが今後どう評価されるかがポイントになってきそう。
・岡山弁護士会の行政仲裁センターについて、なぜオンブズマンにしなかったのか、中立性の問題はどうなっているのか、などという質問あり。
・横浜弁護士会、京都弁護士会は、認証取得後件数増加中。
・愛知県弁護士会は、ADR調査室を発足。申立支援などを弁護士が行うが、その活動に手当が出されるようになった。
・東京の弁護士会医療ADRは利用され始めているが、病院との協力体制などが作れていない。
・東京弁護士会では、現在100件強だが、300件、500件にできないかと考えて、様々な取り組みを実施中。事例を匿名化した上で公表しやすくするための規則改正にも着手。
・仙台弁護士会が準備している今年の連絡協議会では、「2.5人称の視点」というキーワードで、弁護士あっせん人の役割を考える予定という。

2009年07月31日

企業内紛争解決

企業のためのコンフリクトマネジメント(PDF)
リンク元:(財)大分県産業創造機構 機関誌「創造おおいた」
九大出身の福嶋崇さん。


2009年08月03日

雲の上の紛争解決

IBMと富士通の紛争の仲裁人はMnookin教授(当時スタンフォード、現ハーバード)だったようだ。

則定隆男(2002)「<論文>ADRの推進力としての問題解決的アプローチ : IBM・富士通紛争解決事例を通して(商学部開設50周年・商科開設90周年記念号)」関西学院大学 商學論究 50(1/2) pp.527-547

先日の本と読み合わせるとおもしろい。
Win-Winだったのか、Lose-Loseだったのか。

Mnookin自身も論文に書いているようだ。
Mnookin(1992)"Creating Value through Process Design: The IBM-Fujitsu arbitration" Arbitration Journal, September 6-11

2009年08月06日

意図開き

この間公開した論文は、司法書士会や行政書士会で調停技法研修の講師をしていて、一般の受講者だけでなく調停センターの運営側にさえ意外と理解が少ないと思った箇所について書いてみたつもりだ。

法律家である○○士がなぜ対話促進などというまどろっこしいことをするのかという疑問や、対話促進調停ならばどんな結果であれすべて当事者の責任だとするような誤解への、暫定的な回答として書いたつもり。

法情報の提供の話はもう少し突っ込みきれなかったので、この点だけをさらに掘り下げて書いてみたいと考え中。

また、二弁夏季勉強会で話した、事例で見る調停の価値についても、論文の形で公表したいと思って、少し進めている。

以前のエントリー:論文ダウンロード

2009年08月08日

川島武宜:軽業のような調停

川島武宜と調停というのも、論じるのが難しい。
・『日本人の法意識』の著者
・調停実務家
・穂積重遠の生徒(あるいは、歌舞伎鑑賞仲間)
・建設工事紛争審査会制度の設計者
・原後山治、廣田尚久の先生
といった顔がある。

 私はかつて数年間調停委員をやりまして、このことをしみじみと痛感したのであります。「それは調停下手だからだろう」と言われるかもしれません。私は決して上手であったとは思いません。しかし、どんなに条理を尽して説明しても、その人の身分や名誉に訴えても、「正しい解決」とか「正義」ということを理解しない人、要するに経済的損得しか考えない人は、「正しい調停」に応じてくれません。こういう例がございました。これは密輸入をやっていた人の離婚事件でしたが、「金がないから出せない」という一点張りで、財産分与、慰謝料の支払いに応じない。ところが、話し合いの途中で、その人の取引銀行がどこだということをチラッと耳にしたんです。そこで、その銀行の某支店に家庭裁判所が公式にその人の口座の有無と預金残高とを問い合わせたところ、相当の預金があることがわかりました。そこで、その次の調停期日に、「あなたは金が全然ないと言ったが、××銀行のあなたの口座には現に×××万円の預金があるではないか」と言ったんです。そうしたら、その人は非常にあわてました。それは密輸でもうけた秘密の金だったからでしょう。「それが知れたら大変なことになる。仰せの金額は直ちに払います」と言って払ってくれまして、調停が成立しました。これは、全くの「怪我の功名」でありますが、そういう軽業(かるわざ)みたいなことをやらなければ、調停が成立しないこともあるのです。こういうことは、皆様も恐らくご経験がおありだと思います。十分に金を持っていることがわかっていても出さない当事者は、いくらでもあるわけです。そういう人間を相手にして調停を成り立たせようとすると、調停委員の方は無原則に譲歩することを余儀なくされてしまいます。  そういう譲歩をしてまで調停を成り立たせることが正義の観念に照らして正しいとお思いになっている方は、一人もいないだろうと私は思います。なぜそういうことをしなければならないのか、そこが問題だと私は思うんです。それに対する手っ取り早い答えは、今日、調停の場で調停委員がとりうる手段方法は結局説得しかないということに尽きるでしょう。もっとも、うっかり「説得」などと言いますと叱られるでしょう。カウンセリングの専門家は、調停で「説得」などと考えるのは間違っているという批判をしておられる、と聞いています。「説得」ではなくて、自発的にそう思うようにするカウンセリングのテクニックが必要であり有用であることについて、私はいささかも異論をとなえるものではありません。そうして、カウンセリングの「スーパー名人」なら、どんな因業な人間でも考えを変えさせることができるのかもしれません。私もそういう名人の軽業的な例を知っています。しかし、すべての調停委員が「スーパー名人」的な離れ業をして「力の支配」を排除できるというようなことは、現実には不可能なことでしょう。少なくとも問題を現実的に考えるかぎり、そういう超現実的理想状況を前提して今日の調停--特に家事調停--の問題を考えることは許されないと思います。現実はどうかと言いますと、全く非常識な額の支払で、財産分与の調停をまとめるケースは、今日相当の数にのぼっています。稀には大きな額の財産分与もありますが、大ていはあまりに小額です。今日の家裁の調停で認められている財産分与の額の大部分を、客観的に正しいと思っておられる方があったら、それは今日の国民の大部分の考えとはかけ離れている、ということを私は力説したいのです。しかし、私はそういう調停が多いことを「非難」しているのではありません。そういう調停をせざるを得ない、因業なことを主張する当事者を抑えることができない、調停を成立させようとすればあの金額でもやむを得ないのだ、という事実を率直に認識する必要があると思うのです。言い換えれば、現実には、調停においては、力の優位に立つ者の「力の支配」が存在しているということ、説得とかカウンセリングという手段の果たしうる能力には事実上限界があるということは、明らかであります。さらに、この現実は、裁判所における・裁判官を調停委員会の一員とする調停としては、本来の理想ないし趣旨に反する、ということを認めることが必要であると、私は考えるのであります。 P380-381

初出 『ケース研究』158号1976年
川島武宜(1982)「調停における当事者の力関係」『川島武宜著作集 第三巻 法社会学』岩波書店

・職権探知のあり方
・説得とカウンセリング
・コミュニケーションスキルの限界
など、興味深い論点が出てくる。

2009年08月10日

珍風景

戦後すぐに編纂された『調停読本』は、法を重視しないなどという批判を学者から受けている。
しかし、法を重視すべきという記載も見受けられる、「人情と筋と法とをほどほどに」(P98)というバランス感覚が悪いとは思わない。

事例ベースに書かれていて、読み物としても案外おもしろい。

委員が、本気で怒ったが為に当事者との間に争が生じ、主任判事に於て先ずその争を調停し然る後に本来の調停をしたという珍風景を呈した例がある。委員の信用と調停の威信を失墜すること大きいと謂わねばならない。すべて委員は常に品位を重んじなければならない。 P183
日本調停協会連合会編(1954)『調停読本』(最高裁判所事務総局)

わたしが『調停読本』で一番問題だと思うのは、

のびのびは 人の迷惑 国の損(P171)

と、全体主義的なイデオロギーが克服されていない点だ。
司法調停が、1940年体制という性質をあらわにしている箇所だと思う。

2009年08月19日

「調停」疑なきにしもあらず

兼子一教授発言: 戦争中に一般民事調停がつくられて、できるだけ広い範囲の事件を全部調停に持ち込めるようにした空気は非常にけっこうなことだという意見も考えられますが、私は、戦争中のあの意識というものには、国民は一致しなければいかぬのに国民同士でけんかするとは何ごとだ、全部簡単に片づけるから持って来いという意識が多分にあったので、あのときの考え方を今すぐ持ってこられては困ると思った。 P29 座談会、兼子一 他(1952)「「調停」をめぐる座談会 2 「調停」疑なきにしもあらず」『ジュリスト』20号 1952.10.15 26-31頁。(参加者:東大教授 兼子一、東京地裁判事 柳川真佐夫、弁護士  久米愛)

研究者の間では有名な座談会だが、実務家では読む人が少ないかも知れない。
「のびのびは 人の迷惑 国の損」という位置づけを捨てていない戦後調停は、戦中体制をひきずっていることは明らかであるが、戦後しばらくは、その点についての警戒心が強かったようである。
上記の兼子教授の発言はその代表的なものであるとおもわれる。

兼子一教授発言: これは一般に日本の裁判所のあり方にも関係するので、ことに第一審裁判所なんかについて日本の裁判所というのは、今まで裁判官が一人で全責任を負ってやる、人の調査に信頼しない、手足は使わないという考え方でしょう。訴訟の正式の審判は別にして非訟事件的なものにはある程度行政機関的運用を認めて、責任はなるほど裁判官が負うのだけれども相当調査官的なものを使って、それの調べたところなり、あるいはそれの意見によって裁判してもいいのだというふうなことが、もうちょっと機構として出て来ていいのじゃないかと思うのです。 P30

同じ座談会の、この発言もとても興味深い。

2009年08月29日

仲裁人協会で調停における実務上の諸問題研究

実務に関与している学者と、学者(的)活動もしている実務家の数名が集まって、標記の研究会を行っている。
まだ立ち上がったばかりだが、昨日(8月28日)に二度目の会合があった。
弁護士会、司法書士会、土地家屋調査士会、民事調停(高裁)、建設工事紛争審査会の調停実務を串刺し的に見ようという意欲的な試みである。

昨日の会合は非常に盛り上がったのだが、問題は、メンバーが忙しすぎることだ・・これからどう進めるかを考えないと。

2009年09月02日

民間調停における忌避について

当事者が担当する裁判官がはずれてほしいと申し出る手続を「忌避」という。(民事訴訟法24条)
調停においても、当事者が、その調停人を避けて欲しい(その調停人でないひとに調停をして欲しい)と言う手続を「忌避」と呼んでいる。

おどろおどろしい語感だが。

先日書いた、仲裁人協会の調停の実務上の諸問題研究会で少し忌避について調べてみた。

裁判所の民事調停では、忌避手続が存在しないのが通説になっている。
(ただし、有力な反対説がある。)

民間調停(民間型ADR機関の和解あっせん等の手続)では、多くの場合に忌避手続が設けられている。
こういう意味では、司法調停に比べて、民間調停のほうが、当事者の主体性が反映された手続と言えば言える。

しかし、そもそも、「忌避」などという法律用語そのままが規則に書き込まれているだけで、その手続が法律家でない当事者の利用を前提に用意されていると言えるのか、と言った観点で見直すと、現実的にはどうもお粗末な状況のようだ。

当事者が安易に調停人の変更を申し出られるようでは、調停手続が思うように進まないということも一方で確かである。
だが、当事者が納得する手続とか、当事者の自主性を重んじる手続と言いながら、機関側にとってあまりうれしくない手続については、わかりにくい規則としてのみこっそり規定されているにすぎないような状況では、竜頭蛇尾というか、羊頭狗肉というか、そういうものと言われても仕方がない。

実務上の諸問題研究会では、このように、なるべく具体的な問題に即して、理念と手続の実際の両面を考えていきたいと思っている。

2009年10月08日

南山大学「人間関係研究」

南山大学の紀要「人間関係研究」が公開されている。
なぜか一覧からはリンクされていないのだが、各号は公開されている。
第8号
第7号
第6号
第5号
第4号
第3号
第2号
第1号

山口真人「人間関係トレーニングにおける「学びの深さ」の次元の探求」(PDF)
津村俊充「自己変革のためのアクションリサーチ「セルフサイエンス」~認知行動療法の原理を活用して~」(PDF)
中村 和彦・杉山 郁子・植平修「ラボラトリー方式の体験学習の歴史」(PDF)

2009年10月09日

金融ADR制度-立案者の告白

中沢則夫「金融ADR制度-立案者の告白」NBL,913,pp42-47

率直な文体でわかりやすかった。かなり大規模な立法だったようだ。
金融業界は、金融庁ばかりではなく、利用者に理解されなければならないということを認識して欲しい。そして、企業としてトップ以下真摯に向き合う姿勢を持って欲しい。・・ということが最後に書かれていた。

2009年10月13日

棚村政行「調停委員から見た家事調停の実情」

家事調停の委員の認識について、アンケート結果を分析した論文を読んだ。

<抜き書き> 原則は同席調停を支持するのは二%にすぎず、原則は別席調停とする回答がむしろ七二%で、両者を組み合わせるが一八%であった。 P492

研修については、現在の研修体制が十分だとする人が二二六名で七三%にのぼり、研修で学んだことが実際に役に立っているとの回答も二六九名で全体の八六%にのぼった。
(略)
研修のあり方の改善点については、あまり参加していない調停委員に参加を促す方法を講ずるべきだとか、裁判所主催の研修を増やしてほしい、一方的な講義方式だけでなく、参加型の双方向な研修にしてほしい、少人数のグループ研修やロールプレイも含めた実務研修を求める声などが比較的多かった。自由記載では、とくに新任の調停委員からはマニュアルのようなものを作成してほしいとの意見も寄せられた。
P492-493

棚村政行「調停委員から見た家事調停の実情」棚瀬孝雄/豊田博昭/山城崇夫/大澤恒夫 編(2009)『小島武司先生古稀祝賀<続>権利実効化のための法政策と司法改革』(商事法務)483-505頁。

2009年10月29日

漢字はおもしろい

「争」という字は、棒を二つの手で引っ張り合っている様だそうだ。

また、浄(きよい)とか、静(しずか)のように、争という字を中に持ちながら、むしろ平和な意味の字にも転じているものもある。

争 - ウィクショナリー日本語版

2009年11月08日

司法アクセス学会・学術大会

司法アクセス学会の大会に出席した。
岩瀬徹氏による法テラスの報告、中川英彦先生の話、パネルディスカッションという構成だった。
パネルディスカッションでも法テラスからの出席者もいて、また、関学の守屋先生からも報告があった。

中川英彦先生は、住友商事出身で京大教授になった方。弁護士数問題で、弁護士から評判の悪い「日弁連市民会議」のメンバーでもある。
利用者から見たアメリカの弁護士と日本の弁護士の違いを極めて率直に話していた。
日本の弁護士は、
・偉そう・抑圧的な印象を与える
・専門性が高くなく、金太郎飴的
・忙しそうにしている
・(企業から見ると)報酬は安い
・使い勝手が悪い
ということだった。
「フル規格の法律専門家」でなければいけないという発想が法曹界には強いようだが、利用者からすれば、必ずしもそういう人を求めているわけではない。
アメリカの弁護士は、ユーザー指向が強く、決して忙しいとは言わない。
使い勝手はよく、頼りがいもある。しかし、報酬がきわめて高いのと、玉石混淆。


法テラスの認知度はまだ4人に1人程度であるそうだ。
法テラスでは、インターネット広告に思い切って資金を投入したら電話の問合せが増えたという。
かなり相談が増えているという。

法テラスへの苦情の紹介もしていた。
一般的すぎる助言で役に立たないという話も多いようだ。
法テラス側の自覚としては、対応者個人の資質に頼っていて、対応者によって能力のばらつきが大きく、イメージされている情報提供まで行かないものも多いと考えているということだった。
研修を充実化させようという話があるらしい。
FAQは約3500項目になっているそうだ。(その一部がWEBで一般公開)

わたしは会場から、以下の趣旨の質問をした。
「米国では消費者保護行政を行う州司法長官(State Attoney General)は、トップが選挙で選ばれている。彼らは、地方毎に限られたりソースを思い切って配分している。法テラスからの話は、国全体の話が中心で、地方発信の話が少ない。現実には、スタッフ弁護士など現場で創意工夫をしている人がいるとおもうが、そういうものを支える地方分権の発想や議論はないのか?」

それに対する答えは、「極めて難しい質問だ」と率直に答えていただいた後、「法テラスの地方所長」の仕事がそれに近く、一部の地方での成功例を全国に拡げたという話も少しずつ出て来ているということだった。

わたしの印象では、現在の法テラスは第一世代なので、基本的に意欲もあって創意工夫もそれぞれしている感じがする。しかし、世代交代が進むと、どんどん前例踏襲的にならざるを得ないだろうと感じる。その時に、現場での工夫を後押しする制度があるか、国一律という建前の元に抑圧してしまうかは大きな違いが出てくるだろうと思う。

法テラスから派遣村に協力がなかったというおしかりを日弁連から受けたという話もしていたが、法テラス全体で判断するのか、地域ごとに判断できるのかによって、その動き方は変わってくるはずだ。

総合法律支援法を見ていたら、機関の連携強化をうたっている、以下の条文もある。
機関連携は地方でなければできないとおもう。

総合法律支援法 30条6号

国、地方公共団体、弁護士会、日本弁護士連合会及び隣接法律専門職者団体、弁護士、弁護士法人及び隣接法律専門職者、裁判外紛争解決手続を行う者、被害者等の援助を行う団体その他の者並びに高齢者又は障害者の援助を行う団体その他の関係する者の間における連携の確保及び強化を図ること。

守屋先生は岡山市の取り組みを紹介していた。安心・安全のまちづくりという防犯・防災の活動の延長に権利擁護を視野に入れて活動する話が進んでいるのだそうだ。

岡山市 安全・安心ネットワーク紹介ページ

2009年11月15日

アジア法学会「アジア諸国のADRの実情と課題」

アジア法学会でアジアのADRについてのシンポジウムがあった。

太田勝造先生が、基調講演で、小島武司先生の正義のプラネタリーシステムに対抗して、交渉を中心にするプラネタリーシステムを提案していた。
ADRは「取引コスト」を削減する、効率化推進者としての位置づけを話しておられたが、ADRが本当に効率的かということは検証が必要だろうと思う。特に、日本で件数が極端に少ないADR機関が事件処理をするときに、効率的でない可能性が高いのではないか。

いくつかの報告があったのだが、わたしが関心を持ったのは、中国の人民調停という制度だった。
全国津々浦々にあって、調停人が500万人位いて、年間実施件数が500万件位あるらしい。(推計値は、人によりデータが違うらしいが、いずれにしても非常に大きな数字)
裁判所の外側での手続であるそうなのだが、1950年代頃から続いているという話だった。
いままで中国のADRについてはあまり関心を持っていなかったのだが。
その人民調停について、統一的な法制化作業も進んでいるらしい。
法アクセス学会大会の冒頭で、小島武司先生が、韓国と中国のADRの進展が非常に急速であるということをおっしゃっていたのだが、この人民調停の改革もそのひとつなのかなと思いながら聞いていた。

中国の調停制度

2009年11月24日

内閣府・海外消費者ADR調査

内閣府国民生活局「諸外国における消費者ADR体制の運用と実態に関する調査」(2008年2月)

2009年11月28日

国交省が公共事業に住民参画を位置づけたガイドライン

国土交通省(2008)「公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドライン」(2008年4月4日)

「住民参加促進」のプロセスがうたわれている。


(2) コミュニケーション手法の選択
住民・関係者等とコミュニケーションを行うには様々な手法がある。
例えば、広報資料やホームページ、新聞等のメディア等を活用した広範な情報提供手法や、ヒアリングやアンケート、パブリックコメント等の実施による意見把握の手法、さらに、説明会や公聴会、住民・関係者等の参加する協議会、ワークショップ、オープンハウス等を開催し、対面で意見交換・聴取を行う手法等がある。
これらのコミュニケーション手法の選択においては、次の4点を考慮する必要がある。
なお、複数の手法を組み合わせて活用する等、適切に実施することが望ましい。
① コミュニケーションの目的(情報提供、意見把握等)
② 対象者
③ コミュニケーション手法の特性(メリット、デメリット等)
④ 予算や時間等とのバランス
P9

こういう手法が正面から位置づけられるようになったのだなぁという感慨もある一方で、役所や事業者の考え方、発想法の変容も求められると思うが、そういう手当はどうなっているのだろうとおもう。市民の側の熟度みたいな問題もある。

2009年12月03日

請求の背景にあるものの聴き方

一方が100万円請求している場合に、調停人として、何をどのように質問していくかが課題になる。

100万円の請求されている「根拠」を教えていただけませんか?
100万円の「請求理由」は何ですか?
100万円の「明細」を教えて下さい。

これらはいずれも法律家的な聞き方で、別にこういう質問をしたら間違いというわけではない。
しかし、最初から上記のように聞かないでもよいはず。例えば、以下のような質問も可能。

100万円の請求に至った「経緯」を少し教えていただけませんか?
100万円の請求をされた「ご事情」を教えていただけませんか?
100万円の請求をされようと思った「お気持ち」を教えていただけませんか?

同じようなことを聞いていて、結局は同じような答えになるのかもしれないが、微妙に違う。
その違いが大きいのではないかと思っている。
根拠や理由を聞かれると、最初から理屈と証拠で武装した答えをしなければならないが、経緯や気持ちを聞かれたら、率直に、これまで言い足りなかったストーリーを話しやすい。

調停技法は、みんな仲良くというムードみたいなものにすぎないとか、建前的な心がけを唱和するようなものだとか思われている向きもあるが、わたしは、論理的なものだと思っている。

2009年12月11日

共同調停という用語には、二つの用法がある

一つは調停人が複数の場合で、もう一つは当事者が多数の場合。
前者は、co-mediationの訳。後者は、共同訴訟からの類推からと思われる使われ方。
こういう基本的な用語が混乱している。
どう整理すべきだろう?

2009年12月19日

タイムアウト法

静岡県司法書士会のADR関係者忘年会に参加してきた。
県内自治体の職員の方で、DV加害者への支援を行っている方から、活動を教えていただく。

暴力をふるいたくなった人が、とりあえずクールダウンするために、一人になるという練習(これをタイムアウト法という)をするという方法があるのだそうだ。
一種のソーシャルスキルトレーニングだとおもう。

家族療法でいう「システム」に、加害者(多くは男性)も取り込まれている。そこに働きかける、素朴だが自分で有効だと思える方法を自分の手でつかんでいくのだということだ。
DV加害者も、支援グループに属することで、別の方法をとれるようになる場合もあるという。

ただ、男性は一般に相談したがらないし、DV加害者支援という文脈ではなおさららしい。

調停と、この種の当事者支援グループが連携できたらすばらしいとおもう。

2010年04月18日

第一東京弁護士会の書式集

申立書の記載事例が充実している。

第一東京弁護士会・仲裁センター

「手続助言者」という制度(ケースマネージャのことか?)が置かれている。

2010年04月23日

ADR事例研究の論文

東京大学大学院情報学環紀要

入江 秀晃「事例に見る民間調停の価値創造」東京大学大学院情報学環紀要 情報学研究78巻(2010年)79-106頁
PDF
CiNii

研修講師の経験を通じてつくづく感じたことは、ADR機関の立ち上げに関わっている専門家ですら、自分たちがどのような紛争を、どのように、どの程度解決するかというイメージに乏しいということだった。
学者の抽象的な議論が多いのも、実証研究がほとんどないから、仕方がないところもある。

そういう意味で、つたないながらもまとめたものがこれです。
ご笑覧いただき、ご批判をいただければ幸いです。

2010年04月30日

行政書士会・雑誌の連載

入江 秀晃 (2010) "スキルか制度か (新しいADR論 2)", 月刊日本行政, 450, 4-7.

月刊日本行政 2010年5月号

2010年05月06日

財産開示手続

日弁連・財産開示手続に関するアンケート調査結果(PDF)

弁護士の6割が罰則強化を求めている。

リンク元:
弁護士業務総合推進センター

2010年05月10日

法社会学会大会@同志社大学

ことしも両日参加してきた。

二日目の午前のセッションで、訴訟行動調査の報告があった。
京都法テラス所長の出口治男先生と、学習院大学の大島崇史先生(元裁判官、弁護士)がコメンテーターで、実務家としての実感を交えてコメントがあった。

特に自治体が主催して弁護士が行っている法律相談の満足度が非常に低いということが調査の結果、明らかになっている。
利用者にとって、受任してもらってしっかり仕事をしてもらった場合には弁護士にも訴訟手続にもそれなりに満足をするが、そこまでいくのに敷居が高いと感じており、経済的に豊かでも弁護士の知り合いがいないと利用したがらないという傾向があるという話も紹介されていた。

出口先生は、弁護士会内で、法律相談が減っているという危機感があるという議論を紹介していた。法律相談減少の原因が、法テラスによる”民業圧迫”にあるという<批判>もあるのだそうだ。
大島先生は、弁護士は法律相談で対応した話を受任したがらないという実情を紹介していた。
弁護士にとって、法律相談の場が、クライアントを門前払いするところに陥っていながら、相談が減っているのは法テラスのせいだ、あるいは・・、などと他者を批判している状況にあるようだ。

調査の中で、自治体法律相談の利用者は、経済的に余裕がないわけでなく、知的にも低いわけでないという状況を紹介していた。
つまり、潜在的な顧客候補を逃がしていると言えそうだ。

法律相談を受ける弁護士だけが悪いとは言えないはず。受任しても割に合わないだろうという直感は個別的・ミクロ的には正しい可能性が高いと思われるからだ。しかし、もう少し全体状況的・マクロ的に見ると、潜在的な弁護士利用者を弁護士が行う法律相談の印象で取りこぼしている可能性もまた高いと思われる。
マクロ的に見れば門前払い的な役割に過ぎなかった「過去の法律相談」が充分に改革できていないのではないのかという印象を持った。このあたりは検証されなければならないと思う。

2010年05月13日

1920年代から30年代にかけての弁護士数の変動

ヘイリー J. O. (2002) 『権力なき権威 -法と日本のパラドックス-』, (財団法人判例調査会), 財団法人判例調査会.

日本では1920年代から1930年代の始めごろに弁護士の数はピークに達し、1920年に3,082名であった弁護士数が1932年に7,000名に達した。議会における弁護士の政治的な影響力も高まった。その理由は明らかではないが、1930年代の中頃になると弁護士の数は急減し、1934年の7,082人であったものが、1938年には5,000名を下回っている。1934年から1938年までの間に日本の弁護士のほぼ3分の1近くがその仕事を辞めていることになる。 P125

現代の司法を取り巻く状況は、戦間期(1920年代から30年代)と似ていると思える。
陪審員制度も調停制度もこの時期にはじまっている。
上記のような弁護士数の激変も経験している。

歴史に学ぶ必要があると思う。

2010年05月14日

労働審判についてのセミナー

菅野和夫先生による労働審判制度についてのセミナーが社研であったので出席してきた。
菅野先生は、現在、中央労働委員会に在籍しておられるのだそうだ。

労働審判制度は非常にうまく機能しているようだ。
利用者から見て、労働者側の調停人なのか、雇用者側の調停人なのか最後までわからなかった(それほど公平に進められていたということのようだ)というエピソードも紹介されていた。
年間二千件を目処に制度設計されたが、すでに3500件を超えているという。
事例を多く調べていると、「労働法学者の精緻な議論をあざわらうかのような、公然とした労働法無視の現実」に直面することになったという話も紹介されていた。

この制度がうまく行きすぎていて、解雇事件等で判例が形成されなくなってきているという懸念も紹介されていた。
もうひとつの課題として、企業内の紛争処理については、司法型はもちろん行政型も受け皿になっておらず、企業内の相談窓口はほとんど機能していないという議論もされていた。

東大社研:雇用システムワークショップ

過去のエントリー:ジュリスト増刊:労働審判

裁判所 | 労働審判手続

2010年05月24日

JMC総会

5/23に、JMCの総会とフォーラムに参加してきた。

「メディエーション研究」という研究論文誌を創刊したということだった。
(JMCから一部1000円+送料で買えるそうです。)

聞けなかった、Alone in Londonの講演録が採録されていて、勉強になる。
仕事を求めて家を飛び出してしまった、もしくは、ホームレスになってしまったという若者と、その家族の話し合いを仲介するサービスを行っているそうで、確かに日本でもニーズがありそうに思える。

Durowoju, Babs (2010) "世代間メディエーション(講演録)", メディエーション研究, 1, 3-23.

JMCフォーラムでは、マンション管理士のかたが、行政窓口に寄せられた相談の一例を紹介して下さった。騒音トラブルだがメンタルなトラブルを抱えている方の事例で、かなり重たい内容だった。確かに、法律でも、単なるカウンセリングでも難しそうな、しかし、何かできることがありそうな事例だった。

日本でも、メディエーションが、様々な可能性があるという段階での議論はそろそろ終わってきていて、具体的な問題解決のための動きとして結果を出せるかどうかが試される時期に入ってきたような印象を持っている。

何でもできますというような大きなことは言わずに、少し役に立てる場面があるということを具体的に示せるかどうか。限られたリソースを次につなげられるかどうかがポイントだろうとおもう。

2010年05月26日

7/10仲裁ADR法学会・予定

第6回仲裁ADR法学会大会案内 (Japan Association of the Law of Arbitration and Alternative Dispute Resolution)

金融ADRが扱われるようだ。

2010年05月27日

大正デモクラシー期の法と社会

伊藤 孝夫 (2000) 『大正デモクラシー期の法と社会』, 京都大学学術出版会.

末弘法学を典型とする、大正デモクラシー期の法学は、一方では法秩序の<現代法化>への課題に応えようと試みつつ、他方ではまた、こうした国家的価値の膨張の試みに反駁し、個人の自由を保障する近代市民法的秩序を擁護するという課題にも取り組まなければならなかったのである。 P104-105

京大の法制史の教授の本。第一章は、大正期の調停立法について詳しく書かれている。わたしにとって関心の深い穂積重遠の扱いが軽かったが、末弘厳太郎の小作調停と労働調停への考え方などはかなり詳しく書かれていて、また、牧野英一の扱いはそれなりに詳しくて勉強になった。

わたしは1920年代の大正デモクラシーとしての調停制度と30年代以降の戦中体制としての調停制度とでは断絶があるという見方を持っているが、伊藤先生も、「二〇年代の文脈においては、この概念(引用注:協調主義のこと)が有していた積極面に意義を認めるべきである、というのが私の見解である(P109)」と書かれていて、納得した。

2010年06月10日

戦前において、調停と訴訟は同時に増減

ヘイリー教授が来日されているようだが、残念ながらセミナーに出席することはできない。

 戦後の観察者は、日本人が訴訟を避ける傾向があるという神話を形成する際に、新しい調停法は訴訟よりも非公式な解決を希望する社会の全般的な傾向の反映であると考える傾向があった。だが、実証的な証拠はこうした見方を否定している。調停法の制定にもかかわらず、訴訟の件数は1920年代から1930年代の初期を通じて著しく増加した。1934年に入ると提訴された民事訴訟の件数は急激に減少し始めるが、図5-1、表5-2および5-3が示すように、訴訟の減少と平行して、調停の件数もまた同様な減少を示している。 P121

ヘイリー J. O. (2002) 『権力なき権威 -法と日本のパラドックス-』, (財団法人判例調査会), 財団法人判例調査会.

戦前において、調停が訴訟の代替になったのではなく、市民への法的サービス拡大と縮小に連動し、増減したという指摘である。

2010年06月23日

日本企業の調停使用例

わたしが、最近見た2つの文献では、いずれも別席調停を経験している。米国で、同席と別席の実際の割合はどの程度なのだろう・・?

調停では著名な調停人を起用した。彼はお互いの部屋を行ったり来たりして(shuttleするという)、3日目の夜には複雑で大きな訴訟の和解案をまとめ上げた。当方社内弁護士いわく、彼は有能な弁護士であるばかりでなく、有能なビジネスマンであり、また有能な心理学者であると。  調停人を使い、早いうちに和解する道を探るのがE-Discoveryの費用や陪審裁判の不確実性を考えれば一番なのではないかと思えてきた。P15 川上 陽一 (2009) "新生法務部誕生と米国での訴訟と調停の経験から", JCAジャーナル, 56(12), 8-15. ※川上氏は、豊田通商株式会社 法務部長で、ニューヨーク州弁護士。
実際の進行の面では、相手方とFace-to-Faceで対峙することなく、Mediatorを通じて当社側主張を述べ、また、相手方の意見・主張を聴取する形式なので、客観的な目を通した主張・意見が浮き彫りになり、和解範囲・着地点が見えてくることがあります。P37

鳥海 修 (2010) "Mediationの有用性を経験して ~米国の事例から~", Business Law Journal, 3(3), 37-38.
※鳥海氏は、三井物産株式会社 法務部 企画法務室 室長

2010年06月24日

2009年11月号の自由と正義

「隣接士業問題の現況と今後の方向性について」という特集。

結構、激しい記述が・・

特に、司法書士と行政書士の方は、内容を検討しておかれた方がよいようにおもいますです。

日弁連 - 自由と正義 2009年 Vol.60 No.11[11月号]

2010年07月02日

ADRに法律扶助の法制上の措置なしの理由

うーん。難しい。

・・法律扶助の対象化については、既存の制度上もADRによる和解交渉が民事裁判に先立ちとくに必要なものと認められれば、扶助の対象とされる余地があり、現時点でさらに法制上の措置を講ずる必要性に乏しいなどの理由から、結局、・・消極的意見が多数を占めたようである。 (注)・・なお、ADRの法律扶助対象化については、現在の日本司法支援センターの「業務ハンドブック」では代理援助対象になるとの扱いとなっている。 P6-7 竹下, 守夫 (2010) "司法制度改革審議会における審議過程から見たADR法の状況", 仲裁とADR, 5, 1-7.

上記を見る限り、ADR手続費用は補助対象外、ADR代理は補助対象であるということか。
しかし、ADR代理でも、法律扶助を使ったという話は聞いたことがないのだが・・

財政的な議論がされなかった理由をもう少し知りたい。
わたしは、ADR検討会のメンバーでこれを議論できる人がいなかったのではないかと疑っているのだが。

2010年07月07日

法務省のADR予算

法務省の平成22年(2010年)概算要求資料によれば、「裁判外紛争解決手続の利用促進に必要な経費」は、12,743,000円。

http://www.moj.go.jp/content/000001320.pdf
P110

ADR法 第四条 国は、裁判外紛争解決手続の利用の促進を図るため、裁判外紛争解決手続に関する内外の動向、その利用の状況その他の事項についての調査及び分析並びに情報の提供その他の必要な措置を講じ、裁判外紛争解決手続についての国民の理解を増進させるように努めなければならない。

ADRについての内外の動向調査は、国の責務になっているが、上記の予算でそのような活動ができるのだろうか?

2010年07月28日

内閣府:総合法律支援に関する世論調査

内閣府大臣官房政府広報室(2008)「総合法律支援に関する世論調査」

 裁判外紛争解決手続(ADR)について,どのようなものがあることを知っているか聞いたところ,「裁判所が行うもの(民事調停,家事調停)」を挙げた者の割合が34.3%,「国民生活センターや中央労働委員会等の政府関係機関が行うもの」を挙げた者の割合が16.7%,「弁護士会・司法書士会等の資格者団体,NPO法人等の民間団体が行うもの」を挙げた者の割合が14.7%,「民間団体が行うもののうち,法務大臣の認証を受けた認証紛争解決サービス(かいけつサポート)」を挙げた者の割合が3.9%,「裁判外紛争解決手続(ADR)というものがあることは知っていたが,具体的にどのようなものがあるかは知らなかった」と答えた者の割合が5.5%,「裁判外紛争解決手続(ADR)というものがあることを知らなかった」と答えた者の割合が36.2%となっている。なお,「わからない」と答えた者の割合が16.6%となっている。(複数回答)

内閣府調査:総合法律支援に関する世論調査:裁判外紛争解決手続(ADR)への認知度 グラフ

法務省の深山氏が、論文中で紹介していたもの。
深山, 卓也 (2010) "法務省からみたADR法の状況", 仲裁とADR, 5, 14-24.

法務省認証については、3.9%の認知度と低いなぁ、というデータとしても読めるわけだが、ADRを何らかの形で知っているのは国民の三分の二だとも言えるわけで、認知度そのものは、さほど低くないと見る見方もあると思う。

2010年08月09日

オーストラリアの調停人認定システム

NADRAC: National Mediator Accreditation System

2008年1月1日より運用。

2.
The purpose of a mediation process is to maximise participants’ decision making.
調停手続の目的は、両当事者の意思決定を最大化すること。

10.
The mediator has no advisory or determinative role in regard to the content of the matter
being mediated or its outcome. The mediator can advise upon and determine the mediation
process that is used.
調停人は、調停中の事項(コンテント)や結果に関して、助言や決定の役割にはない。調停人は、利用されている調停手続(プロセス)について助言と決定ができる。

http://www.wadra.law.ecu.edu.au/pdf/Final%20%20Practice%20Standards_200907.pdf

2010年08月10日

岡山弁護士会で、キャラクター募集中

岡山弁護士会-公式キャラクター募集

愛知県弁護士会キャラクター:聞之助(きくのすけ)に、続けということかな。

2010年08月23日

何か祈るような気持ちです

ADR検討会の議事録を読み返している。

しみじみする発言に出会うことも。

ADR検討会(第38回) 議事録


○綿引万里子委員(東京地方裁判所判事) この2年半の議論を聞いていて、日本にはまだ裁判外の紛争処理というものが全く根付いていない中で法案をつくろうとしたところで、私たちは非常に苦労をしたのではないかと思うのです。これから、何を広報する、何を教育するといったときにも、まだ裁判外の紛争処理というものが、正直なところ、日本にはおよそ根付いていないのだと思うのです。
 なので、今度、初めて認証ADRという形で裁判外の紛争処理というものを法的に認知した。そして、認証制度というものを入れたということで、認証制度を運用される法務省が、これをどれだけ適正に運用してくださるかというのは一つすごく大きなところだと思うので、そこのところは、これが変な規制にはつながらず、かつ、健全なADRの育成につながるように上手に運用していただくというのが今後のために、現実的な意味では非常に大切なことではないかというふうに思うというのが第1点です。
 あと、先ほど座長の方から国会での審議の御紹介あり、三木委員も言われたのですけれども、私も、紛争の解決というのは絶対ペイする仕事ではないと思います。経済的にみてもうかる仕事では決してない。やはり、そこのところを認識して、この制度が動き出さないと、とんでもないことになるというのは間違いないだろうというふうに思っています。
 ですから、ADRというものを、これから何とか日本国における紛争処理の中で位置付けていこうというときに、これが下手なビジネスになっていってしまったら、これはとんでもないことになるんだということはみんなが心しなければいけないのではないかと考えております。紛争処理によって儲けようということでは、決して裁判外の紛争処理というのが健全には成長していかないだろう。
 それでは、儲からないものをどういうふうにやっていけばよいのかというところになると、先ほど三木委員が言われたようなことも一つの政策的な考え方なんだろうと思いますが、やはりADRに携わる方にそういう認識と見識を持って取り組んでいっていただくようにお願いするよりほかないかなという思いです。決してペイする仕事ではないけれども、それが裁判とは別の紛争処理機能を果たすとすれば、儲からなくてもよい解決をという基本理念があって、そういうADRが健全に育っていってくれればと、これは何か祈るような気持ちですと申し上げるよりほかないと思います。
 非常に抽象的なことを申し上げました。
(強調:引用者)

2010年08月27日

古い世論調査のデータが公開されている

調停に関する世論調査(1975年(昭和50年)1月)

Q1 裁判所には,一般の裁判所とは別に,話し合いでもめごとを解決する「調停」という制度があることをご存知ですか。
(82.1) 知っている
(17.9) 知らない

SQ4 裁判所の調停について,あなたの感想をうかがいますが……。(N=83)
(ア) 調停によって得られた解決に満足していますか 。
(27.7) 満足している
(31.3) まあ満足している
(39.8) 不満である
(1.2) 不明
家事調停及び少年審判に関する世論調査(1958年(昭和33年)6月)
Q16 ところで裁判所にもいろいろあるのですが,あなたは家庭裁判所というものをお聞きになったことがありますか。
(80) ある
(20) ない

Q23 あなたは,家庭裁判所へ行くのは,何となくいやですか,別にそういうことはありませんか。
(43) 何となくいやだ
(47) そういうことはない
(10) 不明

Q33 調停が成立して,金銭を支払うことが決まった場合,先方へ直接支払わないで,一旦家庭裁判所へ預け,家庭裁判所から先方へ支払うという制度があることをご存じですか。
(18) 知っている
(31) 知らない

Q41 あなたは調査官がいた方がよいと思いましたか,そうは思いませんでしたか。
(39) いた方がよい
(2) そうは思わない
(1) 不明

2010年08月30日

日行連9月号

入江, 秀晃 (2010) "自分に向き合うこと ~ADR活動の前提として~ (新しいADR論 6)", 月刊日本行政, 454, 15-20.

2010年09月02日

Hamline大学の調停についての教材ビデオ

Mediation Videos | Hamline Law School, Minnesota

来日中のLela Love先生が紹介していたもの。

2010年09月06日

資格は・・

Frank Sander: Qualifications in Mediation - Video

サンダー教授曰く、「資格制度は、利用者でなく、資格を与える側に利益をもたらす仕組みである。このことは歴史が示している」。

2010年09月16日

2009年版仲裁年報

日弁連 - 仲裁統計年報

最新版の統計が出たようです。
全体として微減。右肩上がりだった愛知も減少に。
注目としては、大阪の総紛が132件申し立て。解決数は26件で、解決率は低めか。
解決率の意味では岡山は、申立93件で解決数65件はかなり高い。

2010年10月01日

提出した

ようやく一区切りと。審査はこれから。

季節はすっかり秋ですな。

こちらも出たようだ。

太田勝造編 (2010)『裁判経験と訴訟行動 現代日本の紛争処理と民事司法 3』東京大学出版会

入江, 秀晃 (2010) "交渉とADR", 『現代日本の紛争処理と民事司法 3 裁判経験と訴訟行動』 太田 勝造 & フット ダニエル eds., 東京大学出版会. 239-255.

2010年10月08日

どうやれば法テラスから民間調停機関を紹介してもらえるか

法律のひろば9月号のADR特集では、日本司法支援センター(法テラス)第一事業部長補佐の佐々木文氏の報告が面白かった。

2009年度に法テラスが受けた約40万件の情報提供件数のうち、認証ADR機関紹介件数は、わずか679件に留まる。P50
佐々木, 文 (2010) "法テラスに寄せられる法的トラブルとADR", 法律のひろば, 63(9), 47-51.

非常に上品な書きぶりではあったが、要は、ADR機関って、何やっているのかわからないから紹介しようがない、ということを言っておられるようにおもう。

2010年10月21日

事例検討会の方法論

ある家裁では、インシデント・プロセス法による事例検討会を行っているそうだ。

検索してみた中で、いいなと思う説明は、社会福祉分野に多いように感じる。

インシデントプロセス法 - NPO法人にいがた・オーティズム

事例検討会の方法論についても、もう少し、自分自身としても勉強する必要があると感じている。

2010年10月26日

水が流れていないことは自慢にならない

紛争は水のようなものである。
適切な量は恵みだが、多すぎれば災害になる。(P.xiii)
Constantino, Cathy A. & Merchant, Christina Sickles (1996) Designing Conflict Management Systems: A Guide to Creating Productive and Healthy Organization, Jossey-Bass.

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2010年11月22日

仙台弁護士会のADR

仙台弁護士会紛争解決支援センターは、2006年から業務開始なので、弁護士会の中でも後発だが、最初の年から今まで、年間100件以上の申立件数を維持し続けている。

その仙台では、受付をする件数のシミュレーションをして、75件を確保すると、収益が出ると計算した・・という話を知る。

事務局費用や場所代などまで考えたうえでの収益なのかどうかは疑問であるし、そのロジックもよくわからないのだが、しかし、こうしたことを一旦、正面から受けとめて考えて見るということがとても大切なのではないかと思う。

赤字の場合でも、たとえば、外国のセンターと比較して、こういう支援が得られたら十分まわっていくとか、具体的に話せるようになることが大切だと思う。

2011年05月07日

棚瀬孝雄先生のオーラルヒストリー

日本法社会学会の大会のために東大・本郷に来ている。

棚瀬孝雄先生のオーラルヒストリーを聞く。

約10年単位くらいで、自らの研究史をふりかえり、「どんなことを考えてとりくんでいたか」を話すというもので、極めて率直な語り口だった。
学部中に司法試験に受かって(1966年)、卒業時には川島武宜の助手に採用される。ハーバードの社会学で博士をとり、京大で助教授、教授になられる。華麗な経歴で、膨大な業績である。
しかし、主観的には、悶々とされていた時期も長かったそうで、聞いてみなければわからないなとおもう。

わたしにとって印象深かった言葉をいくつか。

修業時代の10年間の集大成として1977年に「紛争と役割過程」(法学論叢)を書き上げるまでは、「暗いトンネルをとぼとぼと歩いている感じ」。

棚瀬先生が、法社会学を志した当初、自分は確かに社会によって作られているが、社会を作りかえることに自分はどう関われるかという関心-左翼的な関心-があった。

1980年代に個人(近代的個人)のゆらぎというパラダイム転換を学び、自分の研究を見直し。若い大学院生から学んだ。研究の資産は10年は持つが・・

『本人訴訟の審理構造』は本当に力を入れた仕事。アメリカから学んだものは、自分の手で自分の紛争を解決するという当事者主義。これがドイツとフランスから学んだ職権主義の「埃だらけ」の日本の訴訟を見直す契機になる。

法社会学のレゾンデートルとしての近代化。近代化は未完のプロジェクト。近代は、普遍的法と私人の合意以外による決定を排除。川島武宜が攻撃した家父長的な権威主義はその例。
法社会学の研究には、観察と洞察が不可欠。

弁護士をやってみて分かったこと:
当事者から見て「高い」と思われているが、日本の弁護士費用は安すぎる。棚ぼたの仕事は少なく、実際にはほとんど手作り。その結果、弁護士が手抜きする。
弁護士はうそをつく。当事者は弁護士に共謀的な態度を求める(うそを求める)。断ると解任される。裁判所は弁護士のうそに寛大。

フロアから、「なぜそんなに元気なんですか」と質問。

2011年05月09日

法社会学会大会:「司法過疎地の法的ニーズと弁護士の新しい職域」

法社会学会大会は今年も興味深かった。

一番興味を持ったセッションは、弘前大の飯考行先生のコーディネートで行われた「司法過疎地の法的ニーズと弁護士の新しい職域」というものだった。
パネラーは、松本三加弁護士(福島県・浜通り法律事務所)、冨田さとこ弁護士(法テラス沖縄)、小佐井良太准教授(愛媛大)、池永知樹弁護士。
コメンテータ は、櫻井光政弁護士(桜丘法律事務所)。

【今週の発言】 WEB市民の司法
日弁連 - 留学体験記

のあたりとも重なる。

いばって稼げた時代へのノスタルジーがない、新しい時代を開拓するタイプの弁護士のみなさんで、率直にすばらしいとおもった。

2011年05月11日

法社会学会大会での緊急特別企画

法社会学会大会での緊急特別企画として、東日本大震災の支援をめぐる議論があった。

広渡清吾先生(東京大学教授)から、日本学術会議の活動報告があり、原発政策の選択肢を科学者・研究者の知恵を集めて国民に示す役割を果たそうとしているという。
また、原発の危険性についての著作もある長谷川公一先生(東北大学教授)から、被災地の状況報告と原発政策の課題についてのスピーチがあった。
わたしが最も興味を持ったのは、弁護士会での震災後の法律相談の活動の責任者的立場も務められ、法律相談の内容の分析を進めつつある津久井進弁護士の報告だった。
今回の震災後は弁護士は待ちの姿勢でなく、積極的に声かけをする出かける姿勢を持っているということを言っておられた。弁護士すべてがそうなっているというわけではなく、こういう活動に関わっている方々の姿勢が変わってきているということだろう。
弁護士の働き方が変わってきているのをここでも感じた。

2011年05月16日

しばらく考えたいエッセイ

松本秀文:「現実はひとつではない」と現実の中で呟く

 20世紀を代表する詩人エズラ・パウンドは、「Make it new(刷新せよ)」と語っていた。彼にとって、詩とは言葉によって現実を突き破る方法であった。私もそれに同意する。詩を書くということは、私たちが互いに「現実」と呼び合うことで確保される安全な場所から勇気を出して飛び出すことである。
 本来、言葉と現実との関係性は複雑で多層的なものである。それが「客観的現実」によって単純化されることは、私たちの「生」が単純化されることを意味する。私はそれを否定しないが、肯定もしない。詩は、個人それぞれの「主観的現実」の多様性を徹底的に保証し、擁護するものである。

2011年5月14日(土)西日本新聞朝刊11面

2011年06月17日

中国の調停

Kumamoto University Repository System: 葉陵陵(2009)「社会転換期の中国における多元的紛争解決システムの構築とADRの可能性 (1) : 各紛争処理手続きの連携を図る「大調停」メカニズムの考察を兼ねて」熊本法学,117,282-215.

2011年06月21日

家事審判法から家事事件手続法へ

法務省:法制審議会 - 非訟事件手続法・家事審判法部会

法務省:非訟事件手続法及び家事事件手続法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案

2011年08月09日

理想主義と現実主義を内に持つこと

先日紹介したバイステック『ケースワークの原則』からの引用。

 筆者は、援助関係について行った議論全体を通して、一人ひとりのソーシャルワーカーが、成長して獲得すべき専門家としての高潔な理想を明確にしようとした。ケースワーカーはまず、しっかりと地に足をつけた現実主義者でなければならない。また同時に、見通しのきく眼をもった理想主義者であることも求められる。現実主義者としてのケースワーカーは、クライエントの人生がもっている厳しい現実、またときには嫌悪の情をもつような醜い現実を、目をそらさずに見つめ理解し、そして援助するよう期待される。一方、理想主義者としてのケースワーカーは、ある場合には、自分がかけがえのない人間であるという信念を失ったクライエントの尊厳と価値を、具体的に発見し認識するよう期待されている。  理想主義者としてのケースワーカーは、個人の権利を守る闘志である。一方、現実主義者としてのケースワーカーは、個人の権利が他の人びとの権利や社会の共通の福祉によって制限を受けることを知っている。  またケースワーカーは、現実主義者として、困難に巻き込まれた人びとの人生において情緒的な要因が大変重要であることを理解しているが、これに対して理想主義者としては、情緒的なニーズや問題がいかに重要であろうとも、それだけが人間生活において考慮すべきもっとも重要な事柄でないことも理解すべきである。ケースワーカーは、自分の基準や価値をクライエントに押しつけるのではなく、クライエントが自ら客観的に社会的・法的・道徳的境界のなかにとどまるよう、援助に努めるべきである。  ケースワーカーは、理想主義者としては、クライエント一人ひとりを天にまします父の貴い幼子として捉えようとするが、現実主義者としては、クライエントが神の振舞いとはまったく異なる態度や行動を示す現実ももっていることを知っている。ケースワーカーは、愛という動機をともなって、助けを求めるきょうだいを援助するために諸科学の知恵を使いこなす技能を獲得するよう努力しなければならない。すなわちケースワーカーは、小さな規模ではあるが、自らが神の摂理の道具となるよう願うのである。 P215-216

2011年08月26日

日弁連、仲裁センター連絡協議会@札幌

今年は9月16日に開催。学務で出席できず残念。

2011年08月27日

裁判迅速化報告書

裁判所 | 裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第4回)(平成23年7月8日公表)

法廷侮辱(罪)や、弁護士強制なども議論されている。裁判所、弁護士への聴き取り調査の結果も整理されている。

2011年08月31日

Mediator's Handbook 4th Edition

The Mediator's Handbook » Blog Archive » Sketching the Exchange

話し合いから合意に至る過程が図解されている。わたしは、この説明が好きだなぁ、とおもう。

2011年09月02日

屋台での30分調停

【Mediate.com】Challenging Conventions In Challenging Conditions: Thirty-Minute Mediations At Burning Man(英語)

バーニングマンというイベント会場で、30分間の調停を行っている活動へのインタビュー。
Timothy HedeenがRon Kellyにインタビューしたもの。

<最初の10分>
キッチンタイマーを使って5分ずつ話す。(顕在化させる段階)
・調停者は言葉をはさまない。(しかし、一生懸命聴く)
・できるだけ心を開いて話して欲しいという。
・後から話す方には、先に話した人が言っている事に答える必要はなく、自分の見方をできるだけ心を開いて話すように言う。

<次の10分>
それぞれ5分ずつ使って、決まった質問に答えてもらう段階。
1.その問題を解決したいですか?
2.一文(ワンセンテンス)で言うなら、解決したい問題は何ですか?
3.問題解決にはいろいろなやり方があります。そのやり方も善し悪しがあります。やりたくないやり方もあるでしょう。この問題を解決するためのやり方をリストに書き出して下さい。(ゲームショーで、1千万円もらえるとおもってやって下さい、という場合もあります)
4.最後に聴くのは、「もし今まで選んできたものがあるとしたら、この五分で別のもので一番良さそうなものを選んで下さい」。

<最後の10分>
・紛争の脱個人化する質問を使う
・会話をロールプレイする場合もある

<事例>
もうすぐ結婚を予定するカップル。女性側の言い分は、相手が批判ばかりする。男性側の言い分は、食事中にいなくなって料理が冷えてしまったり、キャンプ場の危険な中に準備なしに歩いていったり、子どもじみた行動をする。話していくうちに、女性側が、親からバカにされていたことが、フィアンセの行動でよみがえり、それが恥ずかしさや怒りになる・・フィアンセが原因を作った(cause)というより、感情を呼ぶきっかけを与えた(trigger)のだということを突然理解し、解決にむすびついた。

この、バーニングマンというイベントの解説を行っている日本語のサイトがある。
バーニングマン - マガリスギ.net


追記

ネバダで世界一の奇祭『Burning Man(バーニングマン)』が開催!! - ガジェット通信

2011年10月07日

家裁の福祉機能よ、どこへ行く?

家事事件手続法立法のための法制審では、家事手続相談(旧家事相談)自身が、全く話されなかったようだ。
『家事審判法実務講義案(六訂補訂版)』(司法協会、2007)によれば、家事手続相談は20分をめやすとしているのだそうだ。(20頁)

2011年12月22日

書く公益系弁護士

法学セミナーの谷口太規弁護士の連載、「ロー・アングル 公益弁護士論--法と社会のフィールドワーク」が面白い。

法律相談において、相談者の心情を受けとめ、真に求めるものを理解するためには、その人の人生そのものに触れようとする必要があると述べた。しかし、見ず知らずの他者の人生に触れようとすることは、正直とても怖いことだ。触れようとしたその人生はいつも滑らかなものとは限らない。法的紛争の現場では、むしろ、それはざらつき、ささくれだったものであることの方が多い。そして、私たちがそれを癒やせることは決して多くはない。それでも他者に触れようと試みるのはなぜか。それでも、他者と出会う「開かれた」場に身を置きたいと思うのはなぜなのか。 P67

私たち弁護士が関与するのは紛争だ。紛争において、どちらかの当事者に全面的な正義があることはむしろ珍しい。しかし、私たちは「投機」する。一方当事者の側につき、その人たちの声を、込められた思いを信じ、精一杯代弁しようとする。「開かれた場」で偶然出逢った他者に自身を投げ出そうとする。それは「関係性への投機」だ。
P68

時に、「触れた」と思う瞬間がある。けれど、それはいつも逃げていく。Aさんが泣いた理由だけではない。Fさんはもう笑わず今日も傷つきながら誰かに怒っているかもしれない。S夫婦の場合には「鍵」がうまく見つかったが、見つからないことの方が圧倒的に多い。分からないことだらけだし、届かぬものだらけだ。「開かれた場」に身を置くことは、そうした本質的に分からぬ他者性と遭遇し続けるということだ。
P69

谷口 太規「ロー・アングル 公益弁護士論--法と社会のフィールドワーク(7)分からぬもの/分かろうとすること」法学セミナー56巻4号(2011年)66-69頁


2012年01月04日

生活保護と自殺

厚生労働省社会・援護局保護課(2011)「生活保護受給者の自殺者数について」PDF
生活保護受給者の自殺率は一般の二倍以上。

2012年02月08日

米国弁護士会ADRセクション・事例を使った実際的な問題解決型法教育についてのタスクフォース

ABA ADR Section Task Force on Legal Education, ADR & Problem-Solving

2012年02月21日

さいきんのわたくし

2/19、長崎県・諫早で紛争管理研究会に参加してきた。

レビン小林先生の前座を務め、主として裁判所の調停委員などの実務家を相手に話をしてきた。
午前中は、ゼミ生の研究発表。何度も何度もリハーサルと準備をしてきたという態度は聴衆に伝わるもので、内容は高度なトピックだったが、みな真剣に聴いておられた。
その後に学生とは違う話をしなければならず、これはこれでプレッシャーだったのだが、まずまず楽しんでいただけたように思う。

20日はインタビュー調査をするため広島へ。

2012年02月22日

斉藤睦男「「震災ADR」に学ぶ」

斉藤睦男「「震災ADR」に学ぶ」法学セミナー686巻(2012年)2-14頁

を読む。仙台弁護士会の震災ADRは、2011年4月から12月まで348件の申立。
扱った具体例も紹介されており、大変参考になる。

震災復興関連では、一弁の情報が充実しているようだ。
第一東京弁護士会・震災復興
復興のための「暮らしの手引き」~ここから/KOKO-KARA~[平成23年冬版](PDF)"
震災法律相談Q&A(PDF)
復興のための「暮らしの手引き」~ここから/KOKO-KARA~[平成23年夏版]

2012年05月15日

法社会学会大会に参加して

京都女子大での大会に参加してきた。

弁護士の経済基盤、震災復興、日本法社会学の創始者たちに関する理論セッション、全体大会(法と正義の相克)の4つを聴いた。他にも聴きたいものがあったのだが(特に、法と心理学、DV関連)。

全体会の最後のフロアから広渡先生の発言が印象的だった。
自らの学術会議での経験を引いて、エビデンスとロジックに限定した「科学的な議論」が重要なことは理解できるが、たとえば市民が放射能に不安を抱いているという「社会的な事実」にどう対処しようとするのか、科学者のイマジネーション=想像力が問われている、と発言されていた。

「社会のきしみ」を前にして、自らの立ち位置をどのように考えるのか?

2012年06月06日

裁判所がビバ面会交流のビデオ

裁判所 | 離婚をめぐる争いから子どもを守るために(ブロードバンド)

シーン別

2012年08月07日

国際家事調停についての弁護士会内の研究を紹介した論文

橘高真佐美「日本における国際家事調停モデルの検討 : ハーグ条約の実施に向けて」自由と正義63巻5号(2012年)111-119頁

イギリスのリユナイト(Reunite)の協力を得ている。
リユナイトのモデルは、2日間で1期日3時間×3回期日の調停手続を実施(同席)。
日本の一般的な調停は抽象的な合意が多いが、国際家事調停では具体的な条項を作成しておくことが有用だろうという指摘。

Reunite International

2012年08月08日

自治体相談利用者調査の困難

村山眞維「離婚問題当事者のための自治体相談ネットワーク」法律論叢82巻2号(2010年)375-407頁

明治大学の村山先生のご研究。
196の窓口を訪問。ほとんどは調査を歓迎しない。
113の窓口に依頼した配布調査票は938通。
回答があり回収できたものはわずか49票。

日本社会における実証研究の難しさを思い知らされる・・

2012年08月12日

弁護士会と司法書士会の協働による調停センターの設立

浅井健 (2012) "全国初の弁護士会との協働による調停センターの設立について", 月報司法書士, (484), 106-110.

弁護士会の常議員会内では、「弁護士会にも紛争解決センターがあるので、取り扱う紛争が重なる司法書士会が調停センターを設置する必要性がない、それに協力する必要もない」という意見もあったそうで・・(P107)

そこを引用するな、と、叱られそうですが・・

2012年08月17日

JILPT、職場のいじめについての労使ヒアリング調査報告書

内藤 忍他『職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメント対策に関する労使ヒアリング調査―予防・解決に向けた労使の取組み―』(労働政策研究・研修機構・2012年)

資料シリーズNo.100「職場のいじめ・嫌がらせの解決・防止に向けた労使の取組み―労使ヒアリング調査結果―」:研究成果/JILPT

労働者の約1割がパワハラやいじめを実感。
職場での見聞きは約1~3割。
ハラスメントの行為者は、上司だけでなく、同僚、部下、取引先や顧客など多様。
雇用形態の異なる労働者間のハラスメント。 例:派遣社員と正社員。

積水ハウスとグンゼは実名で、他の多くの会社は匿名で取り組みを紹介。

2012年08月25日

FLCの面会交流支援/二宮周平先生による海外事例紹介論文

NPO法人 FLC安心とつながりのコミュニティづくりネットワーク
Vi-Project(ビー・プロジェクト)子どものための面会・交流サポートプロジェクト

二宮先生の論文で紹介されていた。

二宮周平「当事者支援の家族紛争解決モデルの模索--ドイツ,オーストラリア,韓国の動向から」ケ-ス研究2011巻1号(2011年)5-34頁

この論文では、特にドイツについての支援の仕組みが詳しく紹介され、興味深かった。たとえば、不履行の場合に、再度調停に付すスキームが運用されているという。オーストラリア、韓国の事例も紹介した上で、日本の家事調停に足りないものを具体的に指摘しておられる。

2012年09月06日

千葉家庭裁判所松戸支部の取り組み

論文紹介シリーズ。

吉田 彩=田中 義一「調停実務シリーズ(100)千葉家庭裁判所松戸支部の家事調停への取組」ケ-ス研究2008巻1号(2008年)124-140頁

・期日は2ヵ月後。その後の様々な取り組みで1.5ヵ月後に。
・調停成立率は30%台と低迷。これも改善し8パーセント増加、その後も維持。
・調停導入を見直す研修。
・インシデントプロセス方式の事例検討会。

2012年09月16日

ACR Conference 報告 その1

右を見ても左を見ても調停人だらけというACRのカンファレンスに出席してきた。

実務家向けのもので、追加料金が必要なセッションもあり、学会と実務家向け研修会の混合という趣き。

米国では、大学内に紛争解決専門の修士課程や博士課程がたくさんできていて、そのためのモデルスタンダードを作ろうかという話も持ち上がっていた。ちょっとしたバブルのようで、proliferatingとかmushroomingとか言われる状況がある。
米国でもキャリアパスはあまりはっきりしていないような印象を受けるが、ある程度は拡がって来ているということも事実のようである。

ADR Hubというサイトを運営している方と知り合いになった。
もともと大学の卒業生向けのサービスで作ったWebサイトを活用したもので、様々な機能を備えているが、無料で使えるようにしている。

ウェブベースのセミナーのことをウェビナー(webinar)と言うらしいが、そういうことまでできるようになっている。

ポッドキャストのコーナーもあって、10分くらいの短いやりとりで聞きやすい。

バルック・ブッシュ先生も登場している。

Podcast #17: Transformative Mediation With Robert A. Baruch Bush - ADRhub Werner Institute

トランスフォーマティブ調停は、世の中を良くしようとする調停だと理解したがそうかと聞かれて、ブッシュ先生はそうだと応えている。
その流れの中でブッシュ先生は、調停人はそのスタイルに関わらず、Better world peopleだ、と言っている。

ACRは、まさに、Better world peopleの集まりだった。

2012年10月20日

論文紹介:離婚契約公正証書

奥林潔「離婚契約公正証書の利用の実際」ケース研究312号(2012年)4-49頁

元家事審判官で、現在公証人の奥林氏の離婚に関する公正証書作成に関する論考。

奥林氏は、離婚契約公正証書のひな形を原案として利用者に示して、「原案づくりサービス」をしておられるのだという。
話し合いがついていない当事者には、家事調停やFPICを紹介するが、勧めに応じるとは限らない・・

公証人の役割がどこまでであるのか、公証役場に来る当事者の実態、手続への期待内容(家裁と相場が違う?)などについても考えさせられる興味深い内容であった。

2012年11月15日

論文メモ:労働審判利用者調査

労働訴訟に比べて満足度が高い。
たとえば、裁判官への満足は、訴訟に比べて高い。
 2.67(労働訴訟)→3.47(労働審判)

使用者側当事者の評価について、従業員100人未満の規模の小さな企業では評価が低く、それ以上の比較的規模の大きな企業では評価が高い。労働審判制度は、大企業で支配的な労働慣行をスタンダードとしていると考えられる。

佐藤 岩夫「労働審判制度利用者調査の概要と制度効果の検証」日本労働法学会誌120巻(2012年)22-33頁

2013年02月05日

九州大学法学部紀要「法政研究」吾郷眞一教授・レビン小林久子教授退職記念号

法政研究79巻3号(吾郷眞一教授・レビン小林久子教授退職記念号)の目次

法政研究79巻目次

わたしは、事例検討会について書きました。
大澤恒夫先生の、鞆の浦メディエーションに関する論考を始め、興味深いものが多数。

そのうちにPDFで公開されると思いますが、別刷りを希望される方はご連絡ください。

2013年03月09日

労働局あっせんの事例研究

労働政策研究研修機構(編)『日本の雇用終了―労働局あっせん事例から (JILPT第2期プロジェクト研究シリーズ)』(労働政策研究研修機構・2012年)

ブロガーとしても有名な濱口桂一郎先生による、労働局あっせんの実証研究。

労働法と法社会学の関係についても言及しておられる。
その両方の創始者とも言える末弘厳太郎以来、関係が深かったはずなのに、という話。

事例の中で私が興味を引いたのは、顧客の要望が絶対化していく中で労働者が切られているケースもある(多い)という話。

2013年05月17日

これまでは話し合いではなく、調停委員に対する言いつけ合いにすぎなかったのではないか by 梶村太市

……調停や審判は同席が原則となろう。私は、実は民法七六六条改正の意義はここにこそあったと思わざるを得ないのである。調停は話し合いだといいながら、これまでの別席調停だと話し合っているのはそれぞれの当事者と調停委員の間だけであって、当事者同士はちっとも話し合っていないではないか。これまでは話し合いではなく、調停委員に対する言いつけ合いにすぎなかったのではないか。こんなことでよいはずはない。調停委員の力量増進の研修を強化して、同席調停が可能な条件整備に努めるべきである。今回の改正はそのことを要請していると解すべきである。少なくとも子どもの将来に関わる面会交流では、同席による話し合いでとことん子育ての将来設計について意志疎通を図るべきである。
 同席調停に関しては、相手の顔も見たくないといって、これをいやがる当事者もいるが、少なくとも面会交流のような将来とも子どもをめぐって関わりあいを持たざるを得ない両親等の当事者同士のような場合に、同席調停もできないようでは、将来面会交流が「子の利益」に適う内容と形式でできるはずがないことは何人も認めるであろう。同席調停はできないが、面会交流は原則的に強制すべきであるというようなことはあり得ない。面会交流の実施が原則ならば、同席調停が原則とならざるを得ない。もちろん、財産分与や遺産分割等の財産関係等の場合には、別席による調整が効を奏することもあり、すべて全事件に同席を原則とすべきとはいえないが、司法とは透明性の確保と当事者権の保証がその命である以上、ブラックボックスを伴う別席では問題が生じることを肝に銘じるべきであろう。(11頁)
梶村 太市「親子の面会交流原則的実施論の課題と展望」判例時報2177号(2013年)3-12頁

2013年10月12日

ミネアポリス

ACRの大会のためにミネアポリスに来ている。

火曜日に来て、土曜日の夜まで。

ACR | ACR 2013 Annual Conference

報告をしたわけではないが、忙しく出席して、話も聞いたりして、疲れた。
ミネアポリスは、徒歩や自転車に向くまちづくりがされていて気に入った。
まちがきれい。

2013年10月17日

コミュニティ調停のファンドレイジング

もうひとつ、コミュニティ調停の財源獲得に関するセッションも面白かった。

ヒューレット財団の撤退は未だに痛手のようだし、リーマンショック以来の経済低迷も響いているようだ。
それでもむしろ拡大しているところも結構あるよという話を紹介していた。

ロビイストを雇って財源確保できたという話もあった。

草の根の市民から資金を調達するベネボンモデル(benevon model)というのもあって、それに基づいてある程度の規模の予算を集められたという話も聞いた。ここ:Conflict Resolution Center - Minnesota

ベネボンモデルを簡単に書くと、以下の通り。

第1段階:無料のイベント(基礎的な情報の紹介、感情のひっかかりを与える、名前と連絡先の聞き取り。)
第2段階:スタッフによるフォローアップ(お礼、感想の聞き取り、参加機会の調整)
第3段階:お金を求める(サービス、複数年の誓約)
第4段階:知人を紹介してもらう

よく考えられているなぁと、思った。

2014年03月11日

オブザベーション

近場の裁判所(magistrate court)で調停を見学させていただいた。

裁判所内での調停はアメリカでも少し忙しい感じ。
2つ見せていただいたが1件目は途中から別席で1時間半、もう1件はすべて同席で1時間ほど。

2014年03月12日

オブザベーション続き

同じ裁判所で見学。今日は不動産賃貸借関係の紛争のみを扱う曜日。

いつもよりは利用者が少なかったそうだがそれでも当事者の出欠を確認する際には、法廷がいっぱいになっていた。
必ずしも調停になるものばかりではなく、事務的な動機で申し立てをし、出席しているケースも多いようだ。

家主からの申立をもとに、標準化された支払い計画のフォーマットに落とし込む作業を調停人候補者の人たちが手伝っていた。

見せていただいた調停では双方に弁護士がついていた。

2014年03月20日

ADR法検討会の報告書

法務省:ADR法に関する検討会報告書

2014年03月24日

民間調停機関を見学

調停のオブザベーションをさせてもらった。
裁判所内の調停とはだいぶ雰囲気が異なる。
(進め方そのものは共通性もあるが。)

Atlanta Mediation and Arbitration Services - Miles Mediation

朝食や昼食が提供される。
裁判所は9時に始まるが、民間では10時に始まって昼食も付く。
これが80年代終わりからアトランタエリアで続いている民間調停のやり方なのだそうだ。

見せていただいた調停人は1ヵ月先まで予定がびっしりで、現在もビジネスが拡大中だという。

見せていただいたケースでは、申立手数料はそれぞれ150ドル、タイムチャージは450ドル(これを当事者で割る)。
3時間のセッションだった。

2014年03月25日

メディエーション機関におけるチーム制

昨日訪問したMiles mediationでは、チーム制がひかれている。

士業団体のADRを見ていると、リーダーが自分の色を出して引っ張っているところのほうが前に進んでいるという印象を持っている。そうは言っても、その人やグループに相性が良くない人を遠ざけるリスクはある。

色や個性を活かしながら、それ以外の個性を否定しないあり方として、チーム制みたいな組織形態はありえるのではないかと思ったので、ちょっと書き留めておく。

2014年03月26日

活動記録

アジア研究ファカルティという学際組織が企画している、ブラウンバックレクチャーでプレゼンをした。
テーマは日本での調停トレーニングの経験について。

英語でのプレゼンは、場数を踏まないとと。

このブラウンバックもそうだが、アメリカの大学にはいろいろ興味深い活動や仕掛けがある。
課題もいろいろあるようだが、日本の大学が見習えることは少なくないと思う。

2014年04月02日

北欧での裁判所付設型実証研究

デンマークとノルウェイの調停についての研究。

合意文書において、裁判結果とは異なる内容が含まれた場合に、「創造的である」として計測したところ、半分以上の調停合意は創造的であったという。

事件内容で見ると、離婚や労働などで「創造的である」という傾向が見られ、傷害では「創造的でない」という結果が見られた。

Creativity in Court-Connected Mediation: Myth or Reality?

Solfrid Mykland (Bergen University), Lin Adrian (University of Copenhagen)

ノルウェイは、歴史的に長い調停制度の歴史があるが、最近改めて新しい制度として設置されたようだ。昔あった制度からの沿革についての話はなかったのだが、歴史的な手続の存在については意識されていたという話はうかがった。

2014年04月10日

Tavistock

2月にNova Southeastern Universityでオブザーバ参加させていただいた3日間の紛争管理/グループプロセスのワークショップ。

Tグループとの共通性もあり、Tグループ由来の資料も活用されていたが、違いも多いグループアプローチ手法のワークショップであった。

The A.K. Rice Institute | for the study of social systems

Graduate School of Humanities and Social Sciences | Nova Southeastern University

2014年04月11日

自由と正義への寄稿論文

自由と正義2014年2月号です。

入江 秀晃 (2014) "家事等分野における調停政策", 自由と正義, 65(2), 9-16.

2014年04月14日

守屋明先生による『現代調停論』の書評

元岡山大学教授で現在関西学院大学教授の守屋明先生が、わたしの著書の書評をしてくださった。
(さる大先生からPDFで原稿をメールしていただいて拝読した。)

守屋先生のような偉い先生に好意的に評価していただいて大変にありがたい。

わが国における民間調停の停滞という状況を、司法調停が優位してきた歴史の帰結であるとみなすだけでは将来の展望は開けない。また、日本人は公権力への依存傾向が強く、私人間紛争についても公権力の介入を求めがちであるという法文化を記述したとしても、それは私的自治の理念の強化・現実化を諦める理由にはならない。歴史的・文化的諸制約を前提としつつ、その中で今、何が可能であるのかを具体的・実践的に探索しようとする著者の視点は、今後のわが国の紛争解決システムの可能性を展望する上で重要であると思われる。

欧米との歴史的・文化的相違を強調するよりも、共通する問題性を解決するための調停の理念と手法を開拓する試みの方が、理論的にも、また実務的にも、やや行き詰まりを感じさせるわが国のADR論に対するインパクトを与えるであろう。

本書はADRをめぐる今日的かつ論争的な問題点に対して、改革運動としてのADRという観点から実践的な議論を展開しており、今後のわが国における民間調停のあり方を考える上での必読文献である。

守屋明「書評 『現代調停論』」法社会学第80号(2014)328-333 


2014年04月26日

Clearness Commitee

クエーカー(Quaker)の活動で、クリアネスコミッティー(Clearness Commitee)と呼ばれるものがあるらしい。Susan Raines先生の講義で教えていただく。

5,6人の小グループで、メンバーが出した自分の問題を、他のメンバーが質問していき、その質問を提出した人がより深い洞察を得るというもののようだ。

わたしは「忘れられた日本人」に描かれた寄合を思い起こした。
ファシリテーションが目標としているミーティングの原型という感じもする。

The Clearness Committee | Center for Courage & Renewal

The Atlanta Friends Meeting (Quakers): Homepage

Parker Palmer - Clearness Commitee 1 - YouTube

2014年04月28日

リーガルサービスのアンバンドリング

授業で話題になったのだが、リーガルサービスのアンバンドリングはカリフォルニアで進んでいるそうだ。

非弁問題などともからむし、情報化社会ともからむ、面白い研究テーマだと思う。

Michigan Bar Association | Unbundling of Legal Services: Selected Resources - pdf4article1742.pdf

2014年04月29日

Michigan State International Law Reviewの日本法特集

Foote先生、Colin Jones先生、Giorgio Colombo先生などが執筆。

Michigan State International Law Review | Michigan State University College of Law
Volume 22, Issue 3 (2013)

As among ourselves we are probably in agreement that Japan is a “normal” country when it comes to law, and that mystical cultural explanations and stereotypes are likely to be both misguided and annoying. Colin Jones, P711


2014年05月02日

Paul Warhaftig

Wahrhaftig, Paul (2004) Community Dispute Resolution, Empowerment, and Social Justice: The Origins, History and Future of a Movement, NAFCM Press. (amazon.com)

コミュニティ調停運動の歴史的発展を、自身の経験を含めて記載した比較的薄い本。
サンフランシスココミュニティボードはコミュニティ調停分野の中で特異であったと言っている。

Community Dispute Resolution, Empowerment and Social Justice: The Origins, History and Future of a Movement | Beyond Intractability

Paul Warhaftig - Parent of the Field | The School for Conflict Analysis and Resolution

2014年05月10日

America Speaks

AmericaSpeaks

21世紀タウンミーティングなどの手法を使う。
デリバラティブデモクラシーを実践しようとしているという感じ。

ボランティアファシリテーターを教育して、大規模なファシリテーションを実施しているらしい。

Community Forum Guidebook

2014年05月13日

対人援助学

立命館大学 望月昭教授
対人援助学を提唱されている方。

院生に教えてもらう。

対人援助学は、ブログ的にならざるえない、あるいはブログ的に紹介する方がわかってもらえやすいと書いておられて、そのあたりのスタンスも興味深い。

対人援助学のすすめ 1 (PDF)

2014年05月22日

James Laue

Tim先生から教わったJames Laue教授のこと。

1993年に56歳で亡くなった方だが、GMUの紛争解決プログラム、NIDR、UNIPなどを立ち上げた方。
キング牧師の葬儀に身近に立ち会った5人のうちの1人でもあるらしい。

James Laue 1982 "Ethical Considerations in Choosing Intervention Roles" Peace & Change 8(2 3) 29-41

James H. Laue

2014年05月24日

小耳に挟んだ話

コーチの1人の人に伺ったのだが、USPSの調停プログラムは、トランスフォーマティブを全面的に採用したことで有名だが、その前の段階ではJustice Center Atlantaが請け負っていたのだそうだ。

2014年06月15日

傍観者向けの研修

特にいじめ防止の文脈で注目されているらしいが、傍観者(bystander)トレーニングのプログラムが開発されているらしい。

Active Bystanders: Looking Out for One Another At MIT

Step UP! Facilitator Training 2014 | Bystander Intervention Program | Kansas City, Missouri | May 15-16, 2014

いじめられているのを見た第三者が正義感から声をあげると、むしろ次のいじめのターゲットにされるということがある。
だからといって、本当に黙って知らないふりをしているだけしか選択肢はないのかというと、そうでもないだろうという考え方が背景にある。

いじめ防止などを目的にした、肯定的な行動(positive behavior)を広げようという活動も知られてきているらしい。

PBIS.org Home Page

2014年06月22日

POSSEの労働法教材

大学に着任してすぐから大学1年生の法学の授業を担当することになって、いろいろ苦心している。

利用者目線、当事者視点で書かれたテキストというのがなかなか探しづらい。
そういう意味では、現場の相談を元に作ったPOSSEの労働法教材は使いやすいかもしれない。

POSSEの労働法教材

ざっと目を通しただけの感想だが、権利があるから使える、使うべきだというストーリーはわかりやすいけれど、正直ちょっと違和感がある。

権利について、特に大事なところだけでもしっかり理解して知っておくべきというのには完全に同意なのだけれど、権利行使のカードをいつ切るのかということには一呼吸必要な気がする。「会社が当たり前のように違法行為を行っている」(解説編1頁)だとすれば、なおさらである。

権利行使は正当なものであったとしても、そこには権利を有するものにとってもコストを伴う。
個々の労働者が会社を教育する義務はない。

むしろ、コストを伴ってもカードを切るべきときがいつなのか、そのときがきたらきちんとカードを切れるようにする勇気を持つには、といった視点での教育が必要だと思う。

自分が教室での教育に使う状況をイメージすると、経営サイドへの共感がない教材は使いづらいなと感じた。

ただ、こうした議論も、教材を公開しておられるからこそできるわけである。現場の情報の体系化というのは、手間がかかる割には文句をつけられやすいが、こういう地に足のついた情報を元にした議論こそ社会をよくするためにとても重要だと思うので、ぜひ応援したいと思っているので、文句だと受け取らないで欲しいなと。

2014年06月25日

認証ADR機関の受付件数一覧表

法務書:「認証紛争解決事業者の取扱件数について」(PDF)

合計数の推移
H19 - 63
H20 - 722
H21 - 884
H22 - 1123
H23 - 1347
H24 - 1284

2014年06月28日

Heather Pincock先生、mediate.comに登場

在外研究先の若い教員であるHeather Pincock先生の研究がmediate.comで紹介された。

Does Mediation Make Us Better?

紹介されている論文は、以下。

Pincock, Heather (2013) "Does Mediation Make Us Better? Exploring the Capacity‐Building Potential of Community Mediation", Conflict Resolution Quarterly, 31(1), 3-30.

調停が当事者の能力向上(capacity building)につながるという話は、実際に調べてみるとそこまで大きなものではないという実証研究。

調停の価値を高く評価するが故に、「言い過ぎ」みたいなことはちゃんと正していかなければならないという新しい世代の研究だと思う。

2014年06月29日

マルッティ・アハティサーリのインタビュー「良い調停人とは?」

Martti Ahtisaari on: What is a good mediator? - YouTube

ノーベル平和賞受賞者のMartti Ahtisaariインタビュー。
調停人は助産婦(midwife)に似ているとコメント。

これも授業でTim先生に教えていただいた。

2014年07月02日

18世紀のクエーカーの紛争解決

ABAのカンファレンスで知り合った方に教えていただく。

Conklin, Carli N (2006) "Transformed, Not Transcended: The Role of Extrajudicial Dispute Resolution in Antebellum Kentucky and New Jersey", The American Journal of Legal History, 39-98.

18世紀のクエーカーの紛争解決が扱われている。

2014年07月18日

法とソーシャルワークの結合

mediate.comのインタビューシリーズ。

Jay Folberg先生は、かつて仲裁ADR法学会の招きで来日されている方。

親権をめぐる離婚調停に関連して、法律家・臨床心理士・ソーシャルワーカーが互いにトレーニングを提供しあったりして学び合った話をしている。

Pioneer Series: Field Combined Law and Social Work - Video

2014年07月30日

国際離婚調停の研究報告書

公益財団法人日弁連法務研究財団 | 国際家事事件(とくに国際的子奪取案件)の専門的な調停スキームの研究

2014年08月01日

あれっ!和解あっせんの方が費用がかかるのね

どこが違うの? あっせんと裁判・調停 | 仲裁センター | 第二東京弁護士会

2014年10月12日

樫村志郎教授の還暦記念研究会

神戸大学で樫村志郎先生の還暦記念研究会に出席してきた。
樫村先生自身の講演が40分。ガーフィンケルによるエスノメソドロジーの起源についてのお話だった。法社会学の対象と方法
新しい話といつもの話が混ざっていたのかもしれないが、いろいろと不勉強な私には非常に新鮮だった。ガーフィンケルは、「常識的合理性」のある種のもの(たとえば、白人ばかりの裁判官が黒人の当事者の発言を嘲笑するようなもの)と戦いたいと思っていた「熱い人」なのだという話をされていた。

樫村先生と関連の深い研究者からの報告が続いたが、なかでも仁木恒夫先生が、同席調停についての報告をされて、興味深かった。樫村先生は、研究論文を謙抑的に書くが、座談会などでは率直に話しているということにも触れておられた。

後の懇親会では、棚瀬孝雄先生が、初めて会ったときの樫村先生の報告を見てさすがだと思った話や、和田仁孝先生が、ライバルだ、負けられないと思ったという話などもされていた。

法社会学には、熱さが必要なのだなぁと。
また、まっすぐに対象(理論であれ、社会現象であれ)に向かうべきだというメッセージも感じた。

80年代の米国の調停に関する未発表論文があるという話もされていた。
読ませていただきたいなぁ……

2015年03月11日

HIL研究会@清泉寮

ラボラトリートレーニングのスタッフが集まる研究会に参加してきた。

私は昨年12月の沖縄HILの経験を元に全体会の運営に関する話題を準備して参加した。

他には、看護学校の修了直前のプログラム実施に関する話題や、エンカウンターグループとラボラトリートレーニングの責任者の役割に関する違いについてといった話題も扱われた。
ファシリテータの具体的な関わりが主に話題にされる例年とは少々趣が異なるところもあったが、大変興味深い内容だった。

私は2015年度も沖縄HIL(2015年11月28日〜12月2日)には参加させていただくつもり。

HIL研究会

2015年12月22日

大谷美紀子弁護士によるハーグ調停に関する報告

仲裁人協会の研究委員会主催の研究会があり、参加してきた。

報告者は大谷美紀子弁護士で、テーマは「日本と諸外国の調停モデルの異同を踏まえたハーグ調停」。

せっかくのイベントなのに仲裁人協会会員のみに参加資格があり、またFAXでの告知のみ(!)という不思議な慣習のために、10数人の参加しかなかったが、大変興味深い議論があった。

ハーグ条約は1980年代からだが、批准国でも調停を本格的に用いようという議論は2011年からに過ぎず、イギリス、ドイツ、オランダは推進するがアメリカは懐疑的という構図があるという。

アメリカで調停が軽視されている点が背景にあるという話も興味深かった。

ハーグ条約加盟国で調停が話題になったのは、もともと、イスラム諸国とハーグ条約加盟国の間での管轄のみについての二国間の協定を拡げる形で、調停の実施が議論されていた話題が飛び火した形であったらしい。

調停について、法律家と非法律家の共同であるべきで、かつ、双方共に調停の専門家としてトレーニングを受けた者が実施しなければならないということを強調されていたのが印象的だった。

大谷美紀子『最新 渉外家事事件の実務』(2015年、新日本法規出版)

2016年02月11日

FPIC福岡のセミナー

FPIC福岡のセミナー

1月30日にFPIC福岡のセミナーを聴講してきた。研究会があったのでちょっと遅刻しての参加だった。

面会交流の問題、面会交流を継続的に支援することなどに興味があり、そういう意味でのFPICの活動の現在の全体像を教えて欲しいと思って質問したら、どうやら子どもに会いたい非監護親の当事者のひとりと思われたらしく、あまり期待しすぎないで的なコメントをもらったので、いや自分は研究者で、基本的にFPICの活動に共感しているし、大事だと思っているが、総体としての活動が知りたいと思っているという質問をしたところ、もうすぐ戸籍時報に報告が出る予定だと教えていただいた。

無料の勉強会であまりに多くのことを望むのは間違っているのだろうが、やや違和感が残ったのは正直なところで、その違和感が何かをもう少し深めていきたいとおもった。

たとえば、FPIC福岡とFPIC大阪ではまた違っているだろうから、機会を見つけて大阪のイベントにも顔を出してみようと思っている。

ゲストスピーカーとして講演されていた山口祐二氏(NPO法人ワーカーズコープ・福岡市子ども総合相談センター)が、子どもにとっての父親の役割と題して、父親的な役割を果たす大人の重要性を話されていたのが大変興味深かった。そういう意味でも、勉強になったのだが。

2016年03月02日

JAA研究部会でのモンゴル調停制度報告

JICAの専門研究員として2年半にわたってモンゴルに滞在し、プロジェクトを進められた岡英男弁護士から報告いただいた。

地方に点在するすべての裁判所を訪問し(ほとんど2回以上ずつ)、熱心にプロジェクトを進められたという非常に情熱的な取り組みをされた方だけに、興味深い報告だった。

前に行かれた磯井美葉弁護士もそうだったようだが、モンゴルに魅せられて、献身的にプロジェクトを進められた様子が伝わる内容だった。

若手弁護士やロースクールの学生さんにも、こんな活躍の仕方があるんだよという話を伝えたい気がする。

岡弁護士は、裁判所書記官として5年間働いた経験があり、裁判所の事務や調停のあり方に問題意識を強く持っておられたのだそうだ。

2016年06月06日

LSA@New Orleans

法社会学会大会@立命館大学朱雀キャンパスと、Law and Society@New Orleansがあり、出席・報告をしてきた。

私はどちらも弁護士会ADR利用者調査のデータ分析についての報告をさせていただいた。

LSAは今年で2回目だけれど、やはり興味深かった。
かなり学際的であるし、国際的でもあるので、low contextなので、説明がシンプルで分かりやすいものが多い。
玉石混交感が強いのも、良くいえば、カジュアルに楽しめる。

ここに来ると、英語で論文を書かないとなぁと思う。

日本の法社会学会は、前置き的な議論が多くて内向き度が高いために、もやもやすることが多いのかなともおもう。

今年は、震災関係のセッションに多く出た。
ある日本法に造詣の深い教授が、「日本では、現実的な法と社会の関係の分析(socio-legal analysis)に興味を持つ学者が少ないけれど、最近増えてきたのか?」という質問をされていた。

2016年06月15日

仲裁人協会で和田仁孝教授による医療メディエーションについての報告

仲裁人協会研究委員会主催の研究会が行われ、和田仁孝教授による医療メディエーションについての報告があった。

特に院内メディエーションについての発展の経緯についての報告が参考になった。研修受講者だけでも2万人規模に及び、厚生労働省が診療報酬の対象とするなど予算的裏付けのある制度として確立するに至っている。

院内メディエーターの倫理と共に、院内ミディエーションシステムデザイン上の倫理も問題になってくると思えた。

伺っていて驚いたのは、院内メディエーションのセッションを全部録音して、患者側にも音声データを提供するという運用をしている場合があるということだ。
構造的中立性はないので、むしろそうやって透明な運用をした方がかえってよいという。

2016年06月27日

愛媛和解支援センターの総会

愛媛和解支援センターの第7回総会に参加してきた。活動としては14年目。

会の活動報告・会計報告などが行われ、新年度の計画が承認された。特に、昨年度の12件の調停実践(19件の申立て)についての具体的な報告もなされるなど、実質的な話し合いもある充実した総会だった。
午後からは、私が講師になってミニ勉強会を行った。

ここの活動に関われているのは本当に光栄。

松下先生から、お土産に農場でとれたハチミツを一瓶いただいた。
ガチミツやな、と長男が言っていた。

おいしい、というだけでなく、もっとなにかありがたい感じがする。

松山では、私が以前JCAジャーナルに連載していた調停技法誌上講義を「調停技法読本」として製本して、勉強会を続けていただいている。12回分まで進んだということ。だんだん難しくなってきて読みづらいなどとおっしゃりながらも、読んで下さっている。こういうことは、筆者冥利に尽きる。

2016年11月16日

本人訴訟支援センター構想

遠藤, 賢治. (2016). 本人訴訟における審理手続と本人への支援のあり方. 判例時報(2287), 3-13.

静岡の司法書士の小澤吉徳さん経由で知った。

この論考は重要だと思う。本人訴訟を理論的、現実的に考察し、その上で、本人訴訟支援センターを立ち上げる必要性について書いておられる。

弁護士がこれだけ増えたのに本人訴訟の割合が減らないのはなぜかという疑問を出発点に、本人訴訟を単に敵視したりバカにしたりせずに、適切な支援を後方から行う社会的な機能の必要性について検討し、具体的なセンター構想が提唱される。いわば、マニフェストである。

2016年11月18日

医療メディエーションの取材

福岡市内の院内メディエーションの取り組みを取材させて頂いた。

平成24年(2012年)の診療報酬制度改正により、いわゆる患者サポート充実加算ができて、院内メディエーターの設置コストが、医療保険から充当される仕組みになったが、それよりも前からの取り組みをされている病院の話を伺えた。

この方法論は、組織内の紛争システムデザインに応用できそう。

いままで、医療ADRについてはあまり手を出してこなかったが、日本の中でこれだけ動いて成果も出ている手続でもあり、勉強する必要があると思う。

2017年07月10日

仲裁ADR法学会

今年の仲裁ADR法学会は、阪大(豊中)で。

環境ADRについてのシンポジウムがあり、公害等調整委員会についても報告があった。

公害等調整委員会は、重装備の手続で、さらに「調査」については、当事者負担なく国庫負担の仕組みになっている。

仲裁ADR法学会について、さる民訴学者は仲裁法の研究報告がしづらくなっていることを嘆き、さる法社会学者は民訴学会っぽい雰囲気になってしまっていることを嘆いておられた。

誰もがアウェイな学会ということか。

元茨田高校の教員だった池田径さんの連載記事を読んでいた。

大変味わい深い。

……私は、「生まれてくることはすばらしい」という話からは入りません。親からの虐待があったり性別違和の問題を抱えている子どももいるからです。  まず、この世界に生まれてくることの不条理について問いかけます。「いきなり人生が始まって、自分の希望とは関係なく姿形も性別も家族も決められていて、あとは死に向かって生きていくだけ」ということの不条理です。この輪の中にいる全員がその不条理の中で生きていることを確認します。  その上で、この不条理は実は奇跡とともにあることを伝えます。……  誕生日は、あなたが不条理にもこの世界に送られた日ですが、周囲の人たちにとっては、あなたという存在を贈られた日です。 P58-59

池田径 (2016) 「ピアメディエーション教育で安全安心な学校環境を(第5回)「バースデイチェーン」による"存在の肯定""自他の尊重"」 月刊学校教育相談, 30(10), 56-59.

2017年10月22日

福岡県司法書士会ADRセンター事例検討会

福岡県司法書士会ADRセンターは、2019年(平成31年)3月31日まで、申立時の事務手数料3000円だけで手続ができるという利用促進策を取っておられる。その成果もあって、昨年度は39件の申込、今年度に入って24件の申込があるという。今年度応諾ありで手続実施に至ったのは7件で、継続中の1件を除き6件とも合意成立しているそうだ。

いろいろな民間の調停センターを訪問しているが、やはり稼働しているところは、大変ではあるけれども、やるべきことが見えており、議論も噛み合う。稼働しているといえないところでは、観念的な議論ばかりになる傾向があるように思う。

2つの事例が話し合われた。内容は書けないが、同席手続であったり、休日期日開催であったりと、当事者にメリットのある形で手続がなされている。

ADR法施行から10年経って、部外者から見れば、ちまちまとしか成果が出ていないようにしか見えないだろうが、裁判件数の減少、民事調停件数の激減などの外部環境も総合的に見て、一定の成果を出しているということに、プラスの評価が与えられても良いのではないかと思っている。

法律専門職の中でもADRに関心を持つ人の数は減っているが、ADR法成立前後のときのような勘違いしているタイプの方々がいなくなっている状況は、健全であるとも言える。

日本社会でもADRを使う余地があるということが、地に足のついた形で、少しずつ認識が拡がりつつある面もあると思う。

2017年11月25日

萩原金美先生のこと

法社会学会のMLで、萩原金美先生の訃報を知った。11月10日に亡くなられたそうだ。

大磯に住んでいたときに、東海道線でご一緒したこともあり、また一度ごちそうしていただいたこともあり、何度か直接お話を伺えたことがある。
船に乗って執筆に専念するやり方を伺ったりした。
私のつたない文章もチェックして頂いており、応援してくださっていた。
萩原先生は、九大に内地留学されたこともあって、私が着任することが決まった際もとても喜んでくださった。

法曹(準法曹も)が、調停人に当然にふさわしいという考えは誤りであるという話など、はっきりおっしゃっている。
三宅正太郎の、事務的に堕した調停は寒心に耐へないという一説も、萩原金美先生の著作から学んだ。

「裁くことへのおそれ」という問題を、常に考えられていたように思う。

磯野誠一先生や、千葉正士先生のことももっと伺いたかった。

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