吉田勇(2008)「日本社会におけるADRの可能性 : 「納得のいく解決」を求めて」熊本法学、113号、pp.199-252
大学紀要はPDF化されて一般公開される場合が増えているが、「熊大法学」もそのようだ。
吉田勇先生のADRについて、55頁の大部な論文。特に近年の国内での対話促進型調停、ないし、交渉促進型調停の研究や議論についてかなり詳細に紹介しておられる。
法的解決と非法的解決が未分化な「主観的未分化モデル」→意識的に法的解決と非法的解決を専門分化させそれぞれ別個に充たすことを求める「専門分化モデル」→ひとたび専門分化された法的解決と非法的解決が反省的に統合される「反省的統合モデル」
という三段階の発展を仮説として提唱している。(P226)
このモデル論について、もう少しお聞きしたい感じがした。
対話促進型調停が民間で拡がるとともに、裁判所における調停の運営がより対話促進的なものにすることが望まれているとも述べている。(P229)
わたし自身は、大正期の話や、『調停読本』の分析などは、もう少し角度の違うところからも議論したい気がしているが、全体としてはとても共感するところが多い論文だった。
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ところで、吉田先生は、六本先生と一緒に『末弘厳太郎と日本の法社会学』という本を出しておられる。
六本佳平、吉田勇(2007)『末弘厳太郎と日本の法社会学』(東京大学出版会)
この本には、非常に闊達な末弘厳太郎の講義録が収録されている。