大学に着任してすぐから大学1年生の法学の授業を担当することになって、いろいろ苦心している。
利用者目線、当事者視点で書かれたテキストというのがなかなか探しづらい。
そういう意味では、現場の相談を元に作ったPOSSEの労働法教材は使いやすいかもしれない。
ざっと目を通しただけの感想だが、権利があるから使える、使うべきだというストーリーはわかりやすいけれど、正直ちょっと違和感がある。
権利について、特に大事なところだけでもしっかり理解して知っておくべきというのには完全に同意なのだけれど、権利行使のカードをいつ切るのかということには一呼吸必要な気がする。「会社が当たり前のように違法行為を行っている」(解説編1頁)だとすれば、なおさらである。
権利行使は正当なものであったとしても、そこには権利を有するものにとってもコストを伴う。
個々の労働者が会社を教育する義務はない。
むしろ、コストを伴ってもカードを切るべきときがいつなのか、そのときがきたらきちんとカードを切れるようにする勇気を持つには、といった視点での教育が必要だと思う。
自分が教室での教育に使う状況をイメージすると、経営サイドへの共感がない教材は使いづらいなと感じた。
ただ、こうした議論も、教材を公開しておられるからこそできるわけである。現場の情報の体系化というのは、手間がかかる割には文句をつけられやすいが、こういう地に足のついた情報を元にした議論こそ社会をよくするためにとても重要だと思うので、ぜひ応援したいと思っているので、文句だと受け取らないで欲しいなと。