飯田邦男(2008)『こころを読む 実践家事調停学―当事者の納得にむけての戦略的調停 〔改訂増補版〕』(民事法研究会)
東京家裁の主任調査官によるもの。
非常に多くの文献を参照している。
小山昇に代表される古典的な調停の文献はもちろんとして、レビン小林久子、鷲田清一やら南山の人間関係トレーニングに至るまで、非常に目配せの効いた文献リストになっている。
また、申立書、申立時の付票などの実際的な資料や、現代の夫婦関係を示す豊富なデータも紹介されていて、非常に有用だと思う。
しかし、にもかかわらず、わたしは強烈に違和感を持ちながら読んだ。
冒頭の「夫婦の基本形を知る」という記述では、「普通の夫婦」を正方形で表し、家事調停に登場する当事者をその「普通の夫婦」からの逸脱として認識するところから始まる。
この「判断=同意モデル」のツールとして、さまざまなスキルや知識が動員される構造になっている。
「普通の夫婦」が実在するか、また、「普通の夫婦」からの逸脱を指摘することがそれぞれの家族の問題解決に有効か。
家裁でのケースワーク思想とは、個別性尊重の追求ではなかったのか。
考えさせられる。