元岡山大学教授で現在関西学院大学教授の守屋明先生が、わたしの著書の書評をしてくださった。
(さる大先生からPDFで原稿をメールしていただいて拝読した。)
守屋先生のような偉い先生に好意的に評価していただいて大変にありがたい。
わが国における民間調停の停滞という状況を、司法調停が優位してきた歴史の帰結であるとみなすだけでは将来の展望は開けない。また、日本人は公権力への依存傾向が強く、私人間紛争についても公権力の介入を求めがちであるという法文化を記述したとしても、それは私的自治の理念の強化・現実化を諦める理由にはならない。歴史的・文化的諸制約を前提としつつ、その中で今、何が可能であるのかを具体的・実践的に探索しようとする著者の視点は、今後のわが国の紛争解決システムの可能性を展望する上で重要であると思われる。 * 欧米との歴史的・文化的相違を強調するよりも、共通する問題性を解決するための調停の理念と手法を開拓する試みの方が、理論的にも、また実務的にも、やや行き詰まりを感じさせるわが国のADR論に対するインパクトを与えるであろう。 * 本書はADRをめぐる今日的かつ論争的な問題点に対して、改革運動としてのADRという観点から実践的な議論を展開しており、今後のわが国における民間調停のあり方を考える上での必読文献である。守屋明「書評 『現代調停論』」法社会学第80号(2014)328-333