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60年代のTグループ

関計夫[1965]『感受性訓練―人間関係改善の基礎 』(誠信書房)

東大・教育学部の図書館で借りてきて読んだ。
感受性訓練というタイトルだが、内容はTグループについて書かれている。
著者は、執筆時点では九州大学教授。

同じことを今行えば問題になりそうなことも載っているが、手作りで実践してきたことを具体的に紹介してあり、「使える」なあと思うところも多々あった。実際に現在の南山でやっていることと重なっているところも多く、Tグループの参加経験者にとっては特に、なるほどこういう意図でああいうことをやっていたのかと合点が得られるだろう。

カウンセリングの理論で言っているように、自分にはそういう経験はないけれど、あなたの気持はよく解ります、という共感(empathy)では、劣等感はなかなかしずまりません。「唯円坊おなじ心にて候」と親鸞が弟子の信仰における喜悦の念がないことの悩みに答えたように、同感(sympathy)のほうが現実には相手をいやしやすいようです。Tグループが単なる理論の抽象的学習ではなく、体験的学習である以上、わたしは自分のTグループにおける体験的裏付けのないことは、なるべく言いたくないのです。ですから、どなたかがいわゆる共感で相手の劣等感を治せるようでしたら、それはたいへん結構なことだと思います。 P126-127

といった極めて読みやすい文体で書かれている。
リスクの高いTグループの運営について、手の内を明かしすぎという意味で、この本自体にも危険度があるのだが、この分かりやすさ、読みやすさがその危険をさらに増幅している。

そういう本なので、善良な方、節度をわきまえている方のみどうぞ。

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2007年06月21日 10:43に投稿されたエントリーのページです。

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