司法アクセス学会の大会に出席した。
岩瀬徹氏による法テラスの報告、中川英彦先生の話、パネルディスカッションという構成だった。
パネルディスカッションでも法テラスからの出席者もいて、また、関学の守屋先生からも報告があった。
中川英彦先生は、住友商事出身で京大教授になった方。弁護士数問題で、弁護士から評判の悪い「日弁連市民会議」のメンバーでもある。
利用者から見たアメリカの弁護士と日本の弁護士の違いを極めて率直に話していた。
日本の弁護士は、
・偉そう・抑圧的な印象を与える
・専門性が高くなく、金太郎飴的
・忙しそうにしている
・(企業から見ると)報酬は安い
・使い勝手が悪い
ということだった。
「フル規格の法律専門家」でなければいけないという発想が法曹界には強いようだが、利用者からすれば、必ずしもそういう人を求めているわけではない。
アメリカの弁護士は、ユーザー指向が強く、決して忙しいとは言わない。
使い勝手はよく、頼りがいもある。しかし、報酬がきわめて高いのと、玉石混淆。
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法テラスの認知度はまだ4人に1人程度であるそうだ。
法テラスでは、インターネット広告に思い切って資金を投入したら電話の問合せが増えたという。
かなり相談が増えているという。
法テラスへの苦情の紹介もしていた。
一般的すぎる助言で役に立たないという話も多いようだ。
法テラス側の自覚としては、対応者個人の資質に頼っていて、対応者によって能力のばらつきが大きく、イメージされている情報提供まで行かないものも多いと考えているということだった。
研修を充実化させようという話があるらしい。
FAQは約3500項目になっているそうだ。(その一部がWEBで一般公開)
わたしは会場から、以下の趣旨の質問をした。
「米国では消費者保護行政を行う州司法長官(State Attoney General)は、トップが選挙で選ばれている。彼らは、地方毎に限られたりソースを思い切って配分している。法テラスからの話は、国全体の話が中心で、地方発信の話が少ない。現実には、スタッフ弁護士など現場で創意工夫をしている人がいるとおもうが、そういうものを支える地方分権の発想や議論はないのか?」
それに対する答えは、「極めて難しい質問だ」と率直に答えていただいた後、「法テラスの地方所長」の仕事がそれに近く、一部の地方での成功例を全国に拡げたという話も少しずつ出て来ているということだった。
わたしの印象では、現在の法テラスは第一世代なので、基本的に意欲もあって創意工夫もそれぞれしている感じがする。しかし、世代交代が進むと、どんどん前例踏襲的にならざるを得ないだろうと感じる。その時に、現場での工夫を後押しする制度があるか、国一律という建前の元に抑圧してしまうかは大きな違いが出てくるだろうと思う。
法テラスから派遣村に協力がなかったというおしかりを日弁連から受けたという話もしていたが、法テラス全体で判断するのか、地域ごとに判断できるのかによって、その動き方は変わってくるはずだ。
総合法律支援法を見ていたら、機関の連携強化をうたっている、以下の条文もある。
機関連携は地方でなければできないとおもう。
国、地方公共団体、弁護士会、日本弁護士連合会及び隣接法律専門職者団体、弁護士、弁護士法人及び隣接法律専門職者、裁判外紛争解決手続を行う者、被害者等の援助を行う団体その他の者並びに高齢者又は障害者の援助を行う団体その他の関係する者の間における連携の確保及び強化を図ること。
守屋先生は岡山市の取り組みを紹介していた。安心・安全のまちづくりという防犯・防災の活動の延長に権利擁護を視野に入れて活動する話が進んでいるのだそうだ。