戦後すぐに編纂された『調停読本』は、法を重視しないなどという批判を学者から受けている。
しかし、法を重視すべきという記載も見受けられる、「人情と筋と法とをほどほどに」(P98)というバランス感覚が悪いとは思わない。
事例ベースに書かれていて、読み物としても案外おもしろい。
委員が、本気で怒ったが為に当事者との間に争が生じ、主任判事に於て先ずその争を調停し然る後に本来の調停をしたという珍風景を呈した例がある。委員の信用と調停の威信を失墜すること大きいと謂わねばならない。すべて委員は常に品位を重んじなければならない。 P183
日本調停協会連合会編(1954)『調停読本』(最高裁判所事務総局)
わたしが『調停読本』で一番問題だと思うのは、
のびのびは 人の迷惑 国の損(P171)
と、全体主義的なイデオロギーが克服されていない点だ。
司法調停が、1940年体制という性質をあらわにしている箇所だと思う。