富士通・IBM紛争続編
伊集院丈(2008)『雲の果てに―秘録 富士通・IBM訴訟』(日本経済新聞)
以前のエントリーの続編。
汎用計算機の互換をめぐる紛争を扱っているが、『雲を掴め』では二者間交渉であったのに対して、この本では、AAA(米国仲裁人協会)での仲裁そのものが扱われている。
AAAに申立をしたのはIBMだが、富士通がJCAAに反訴するという場面も出てくる。じきに取り下げるが。
巨大ビジネスでADRが使われるという話は良く聞くが、当事者自身がこれだけ詳しくADRの中身の話を書くのは珍しい。
汎用機ビジネスそのものが時代遅れになったから証せる話だとも言える。
米国の弁護士の仕事の仕方という意味でも興味深い話が出て来た。
顧客自身からの要求への拒絶権も与えられた形で、「事実が何であるか」の調査を詳細に行う。
実際にソースコードを書いている人間に、誰から仕様を受け取って誰に渡したか、というレベルでの調査を下請企業も含めて行う。(P68)
仲裁廷は、IBM側から一人、富士通側から一人と、第三の存在としてもう一人の合計三人で行われているが、後半に第三の仲裁人が辞任して二人仲裁人として進行される。
このあたりの手続的なルールについてももう少し詳しく知りたいと思ったが、学術書ではないからそのへんはよくわからない。
富士通側が選任したスタンフォード大の教授は、調停的な進行を好み、当事者相互の互恵性を見つけたいという意欲が強かった。このことが、この仲裁を富士通有利に進めた大きな原動力になっている。