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2009年09月 アーカイブ

2009年09月01日

本『仕事するのにオフィスはいらない』

佐々木俊尚(2009)『仕事するのにオフィスはいらない』 (光文社新書)

ノートパソコンがあれば、オフィスなしに仕事ができるというのは、かつては夢物語のように語られていたが、現在は実際にそうなっている。

わたし自身大学の研究室とか、自宅の書斎はあるものの、「オフィスなし」の状況だといえば、そうだ。
実際にそれで仕事をしてみると、オフィスはあったほうがいいし、しかも、家から近い方がいいと思うのだが。

前の会社で同じ部署でほぼ同時期に辞めたクロサカタツヤさんが、ノマドワーカーの代表として、大きく取りあげられていた。ご活躍の様で何より。

この本では、フリーで、オフィスなしで働くには、自律のノウハウが必要と強調している。
ネットでぶらぶらとしていると、あっという間に時間が経過してしまう。
それこそが自律の大敵だと。

2009年09月02日

民間調停における忌避について

当事者が担当する裁判官がはずれてほしいと申し出る手続を「忌避」という。(民事訴訟法24条)
調停においても、当事者が、その調停人を避けて欲しい(その調停人でないひとに調停をして欲しい)と言う手続を「忌避」と呼んでいる。

おどろおどろしい語感だが。

先日書いた、仲裁人協会の調停の実務上の諸問題研究会で少し忌避について調べてみた。

裁判所の民事調停では、忌避手続が存在しないのが通説になっている。
(ただし、有力な反対説がある。)

民間調停(民間型ADR機関の和解あっせん等の手続)では、多くの場合に忌避手続が設けられている。
こういう意味では、司法調停に比べて、民間調停のほうが、当事者の主体性が反映された手続と言えば言える。

しかし、そもそも、「忌避」などという法律用語そのままが規則に書き込まれているだけで、その手続が法律家でない当事者の利用を前提に用意されていると言えるのか、と言った観点で見直すと、現実的にはどうもお粗末な状況のようだ。

当事者が安易に調停人の変更を申し出られるようでは、調停手続が思うように進まないということも一方で確かである。
だが、当事者が納得する手続とか、当事者の自主性を重んじる手続と言いながら、機関側にとってあまりうれしくない手続については、わかりにくい規則としてのみこっそり規定されているにすぎないような状況では、竜頭蛇尾というか、羊頭狗肉というか、そういうものと言われても仕方がない。

実務上の諸問題研究会では、このように、なるべく具体的な問題に即して、理念と手続の実際の両面を考えていきたいと思っている。

2009年09月03日

チョウニナイゼイション

梅棹忠夫が、日本の近代化には、サムライ化(サムライゼーション)と町人化(チョウニナイゼイション)が可能性としてあったが、結果的にサムライ化を選択したと言っているそうだ。
上野千鶴子(2002)『サヨナラ学校化社会』(太郎次郎社、177頁)に出てくるのだが、どの文献を見ればよいのかがわからない。

こういうエッセイ↓でも引用されている。
オリンピックと日本

先日、あるマナー研修を見せていただいたら、小笠原流礼法を考え方の基礎においているという紹介を聞いた。
サムライぜーションは、いまだ進行中と言えば、言えるのかも知れない。

またあるとき、町人の家訓というのを見せてもらったことがあるが、「来客が帰ってすぐに笑い声を立ててはいけない」とか「酒はその都度買え」とか、非常に即物的な、いろいろなレッスンが書かれていておもしろかった。
町人の倫理と、武士の倫理は違うはずであるが、何がどう違うかについて、もっと知りたいと思っている。

2009年09月04日

関大守屋先生のシラバス

関西学院大学 守屋明教授 ADR ロースクール_シラバス(講義内容)

2009年09月05日

ぬかるみに藁を敷く

ティク・ナット・ハン(1999)『仏の教え ビーイング・ピース―ほほえみが人を生かす』 (中公文庫)

中野民夫『ワークショップ』を読み返していて、紹介されていたティク・ナット・ハンの本を読みはじめた。
「和解のための七つの実践」という仏教団に伝わる紛争解決手法が紹介されている。
「七滅諍法」(しちめつじょうほう)と呼ばれるものと同じなのか違うのかもよくわからないが。

「和解のための七つの実践」(110-117頁)<メモ>
第一の実践-対面して座ること
第二の実践-思い出すこと (争いのいきさつの全体を、それと関わり合いのある細部すべてにわたって)
第三の実践-強情でないこと
第四の実践-ぬかるみに藁を敷く (尊敬の受けている先輩の僧が一人ずつ選ばれて紛争をしている側を代表し、相手を尊重しつつ、庇護する)
第五の実践-自発的告白 (おのおの自ら欠点を明らかにする。小さな弱点からはじめる)
第六の実践-全会一致による決定
第七の実践-評決を受け入れること

最後に、三回、異議がないかを確認し、評決を宣告する。

個人的に面白いなと感じたのは、「ぬかるみに藁を敷く」という表現。
代理人の行為というのをこのように表現している。
「雨の後、田舎道を歩くと、ぬかるみがあります。ぬかるみに敷く藁があれば、安全に歩くことができます(113頁)」。
やわらかいもののうえに、やわらかいものを置いている。

2009年09月06日

銀行の理不尽・冷酷・劣化

矢吹紀人(2009)『預けたお金を返してください!―ドキュメント・銀行の預貯金過誤払い責任を問う』(あけび書房)

通帳を盗まれ、預金を引き出された被害者に、銀行は一切補償しない・・という実務がずっと行われていた。
そこに目をつけた窃盗団が組織的な犯罪を拡げる。
銀行は、事態を認識しながらも、改善できない(しない)。
そして、持ち前の冷酷さで、被害者たちにつらく当たる。

薬害被害を扱っていた弁護士自身が同様の被害に遭い、銀行を相手に、被害者集団を組織し、補償を求める裁判を起こしていくという話。

判例では、銀行側絶対有利という状況である。
事態が社会問題化していることを運動として拡げていって、裁判官の判断に影響を与えようとする。
結果として、徐々に勝訴判決を勝ち取っていく。

このような闘い方は、残念ながら、ADRではできないものだとおもう。
被害者が勝てる状況ができてからなら、ADRに持ち込んでも意味があるだろうが、判例で銀行側絶対有利という状況でADRに持ち込んでも、なかなか救済にはつながらなかっただろうとおもう。

ADRを学習するというのはどういうことだろうと考えている。
ひとつには、このようなADRでは解決できない問題がどのように切り開かれてきたかを知るということも必要なのではないか。

いままでは必ずしもそのような試みは広がっていないが。
裁判官気取りで当事者から遠ざかっていく中立性ではなく、両方の当事者に近づいていくスタンスが大事であるが故に、その限界を考えておくことは必要ではないかとおもう。

銀行キャッシュカード被害者の会:ひまわり草の会

Book:銀行の預貯金過誤払い責任を問う: Matimulog

2009年09月07日

明治安田生命のパワハラ

明治安田生命:女性外交員6人、パワハラ集団提訴へ 所長ら相手取り - 毎日jp(毎日新聞)

明治安田生命:女性外交員6人、パワハラ集団提訴へ 所長ら相手取り

 生命保険大手「明治安田生命」(本社・東京都)の大阪市内の営業所に勤めていた保険外交員の女性6人が近く、男性所長(当時)のパワーハラスメント(パワハラ、地位を利用した嫌がらせ)によって体調を崩したり会社を辞めざるを得なくなったとして、明治安田生命と所長を相手取り慰謝料など計3850万円の損害賠償を求める集団訴訟を大阪地裁に起こす。

 訴状によると、原告6人は06年当時、明治安田生命今里営業所(大阪市東成区)で保険外交員として勤務。同年4月に就任した男性所長が▽気に入らない外交員を「そんな態度だから契約が取れんのや」などと怒鳴る▽お気に入りの外交員にだけ便宜を図るなどの差別▽書類管理ミスなどの名目で私的に罰金徴収--のパワハラを繰り返したと主張。その結果、体調を崩すなどして、退職する外交員が相次いだという。

 原告の一人(50)がパワハラとして07年3月、本社コンプライアンス部門に内部通報。しかし本社は対応しなかっただけでなく女性に口止めを図り、さらに所長に通報者の存在を知らせた。職場で「犯人捜し」が始まったため、女性は自らが通報者であることを告白。そのため原告は他の営業所員や同僚から約2時間「死ね」「営業所のがん」「早く辞めろ」とつるし上げられた。頭痛や不眠などの症状で体調を崩し、適応障害と診断され、現在も休職中。大阪中央労働基準監督署から08年11月に労働災害として認定されている。

 他の原告5人も体調を崩すなど、退職せざるを得なくなった。中には現在も働くことができず、生活保護を受けている原告もいる。

 原告の一人は「会社はパワハラを認め、しっかり謝罪してほしい」と訴えている。

 保険外交員は営業ノルマが厳しいうえ営業所長の裁量が大きいため、パワハラが横行しているとされる。パワハラは「言葉の暴力」が多いため証拠が残りにくく、表面化しにくい。しかし集団訴訟で証拠能力が高まり、パワハラの認定が受けやすくなるという。明治安田生命広報部は「まだ(提訴の)事実関係を確認できていないのでコメントできない」としている。【日野行介】

この事件がなんとも嫌な感じがするのは、この生保が大手というだけでなく、内部通報があった後の、本社の行動がひどすぎるところだ。
内部通報の結果、それを現場に丸投げしている。
現場では早速、「犯人捜し」がはじまっている。
これでは内部通報制度を信じたものがバカを見る。

日本の会社は総じて、「稼ぐ現場」に対して、管理部門は権力を抑制的にしかふるわないという特徴がある。
従業員軽視と、それが結びつくと、かなり悲惨なことになる。
こういうときに頼りになるのは、管理部門よりもむしろ「別の稼ぐ部門の長」であったりする。
しかし、物言えば唇寒し的な風土が蔓延すると、よその部門について、誰も何も言わなくなる。

2009年09月08日

河合隼雄『カウンセリングの実際』

河合隼雄(2009)『カウンセリングの実際―“心理療法”コレクション〈2〉』 (岩波現代文庫)

比較的若い頃の著作だと思うが、具体的な臨床の場面に即した話が出てくる。

特に興味深かった点として、日本人が「ひたすら聴く」というと、おのれを空しくするというところに力が入りすぎるという話があった。カウンセラー自身の感情を受容せずに、クライアントだけを受容するなどということはありえないとまで言い切っている。

また、冒頭近くのエピソードで、助言して解決したのですが、これではカウンセリングではありませんねという質問を受けて、「それがカウンセリングかどうかということより、役に立ったかどうかを考えなさい」と言っている。この点も面白い指摘だった。

五章では、「ひとつの事例」として、カウンセリングの基本から一見外れた活動もいろいろ行いながら格闘する様子を紹介している。この事例では、クライアント一人というより、クライアントの家族全体を相手に、時に母親になったり父親になったりしながら、やってはいけないはずの両方の家庭への行き来を含みながら、取り組んでいる。

2009年09月09日

ADR法認証

愛知県社労士会、大阪府社労士会、千葉県調査士会、兵庫県社労士会、福岡県社労士会が認証取得。

認証紛争解決事業者一覧

2009年09月10日

面接交渉の立会

離婚調停で問題になることが多いのが、母親に親権がある場合の、父親と子どもの面接交渉である。

調停等で決定されても、履行される割合が低いという話がある。
養育費の支払い履行も低いようだが。

実際の面接交渉の立会をボランティア等で行うと、ニーズがありそうな気がする。
母親側としたら、子どもだけで会わせるのも心配だし、自分が顔を合わすのも嫌だが、第三者がいてくれるなら考えても良いという場合があるようにおもう。
そのとき、メディエーション技法を知っていると、安心して立ち会うことができるのではないかな。

親子の面会交流を実現する全国ネットワーク

弁護士 小松亀一法律事務所_男女問題_面接交渉実施に第3者の介在を命じた事例-判示概要

2009年09月11日

竹内敏晴氏死去

訃報:竹内敏晴さん84歳=演出家 - 毎日jp(毎日新聞)

竹内敏晴氏が亡くなった。
わたしは、今年の2月に2日間の竹内レッスンを受けたのだが、そのときは、とてもお元気だった。
80歳を超えているとは思えない柔軟なからだで驚いた。
野口体操由来の「ゆらし」とか「ぶらさげ」というやり方を教えていただいたのだが、前屈をしても体が良く曲がる。

竹内レッスンの印象はとても強かったのだが、うまく言葉にできなかったので、ブログには書いていなかった。

もともと耳が聞こえなかったという障害者当事者という位置を基軸として、話をするとか、気持ちが伝わるとかいったことを根源的に考え続けた、偉大な方だと思う。

レッスンの中では、自分は、考えていることをレッスンという場で問うて、その後にその記録として本を作っている。レッスンが主で、本は従だといったことをおっしゃっていた。

合掌。

以前のエントリー:竹内敏晴『からだ・演劇・教育』

2009年09月12日

シェアハウス

ひつじでも分かるシェア住居入門 -ひつじ不動産

シェアハウスには関心が。

過去のエントリー:東京ガールズ不動産

2009年09月13日

近司連・調停人養成講座 基礎編

昨年に引き続き、I先生と二人で2日間12時間の講座を担当。

参加者は35人。司法書士以外からの参加あり(参加したのは1名だったが)。

近畿司法書士会連合会は、同席の対話支援型調停のさきがけ。
今回は、調停トレーニングについて予備知識がない方が多かったようだ。
若い方から高齢の方まで(77歳の方に参加していただいた)だったが、参加意欲が高く、やりやすかった。

近畿の司法書士のADR活動がもう一度もりあがってくれるといいなと願っている。

今回から、「ADRの概論」のプレゼンの内容を見直した。
いままで話していた裁判と調停の比較や米国の事情などでなく、司法調停と民間調停の比較の議論を紹介した。

2009年09月14日

「正解主義」の呪縛

人生に正解はない - Joe's Labo

日本をダメにした「正解主義」の呪縛を解け(藤原和博氏インタビュー):日経ビジネスオンライン

士業のひとは、とくに正解指向が強いので、ぜひ読んでみてください。

2009年09月15日

仲裁人協会・調停技法勉強会(9/14)

コーチングでトレーナーをされているHさんが、前半に傾聴のワークをしてくださった。

世間話などでのふつうの聞き方と傾聴技法がどう違うかをワークを中心に考えるという手法。
この内容を無料で勉強できたというのは、とてもよかったのではないだろうか。

わたし自身も勉強になった。

特に、テープレコーダーバックという手法で、30秒間話した内容を、語順も変えずに、情報を省略せずに相手に伝え返すという練習手法を紹介して下さった。

調停技法を勉強している人でも、このレベルの傾聴技術が、身についている人はほとんどいないとおもう。わたしも自信がない。
それ以前に、このレベルの練習が必要ということの自覚がない人が多いのではないかと思うので、その意味でとても良い練習かも知れないと感じた。

河合隼雄さんは著書のなかで、カウンセラーは、ノートを取らずに1時間位のセッションを、事後に正確に再現できるようになる訓練をする--それくらいできなければ「話にならない」とさえ言っている。
「なんとなく傾聴っぽい」のと、プロの技法として水準に達している聴き方には、大きなギャップがあるのだろう。それを意識できるというだけでも、この練習技法は有用そうだ。どこかで取り入れてみるつもり。

ロールプレイでは、3組だけが実演し、後は観察するという企画だった。
不倫をされた奥さんが、不倫相手に慰謝料を請求する事案だった。

1組だけ、女性同士が当事者役になったところがあったが、盛り上がりすぎて、調停人が困るというリアルな展開になった。

飯田邦男家裁調査官にも見学に来ていただき、評価していただけたようだ。

非常に熱心に準備いただいたみなさん、また、負けずに熱心に参加して下さったみなさん、ありがとうございました。

ある参加者から、この勉強会の手法を参考に、別の勉強会を立ち上げようと思うという話を伺った。
ぜひ、どんどんパクって下さい。

2009年09月16日

ADR法認証、40機関に到達

認証紛争解決事業者一覧

千葉県社労士会、熊本県司法書士会が認証取得。これで40機関。

士業団体のみ集計してみよう。

弁護士会:5
司法書士会:5
社労士会:8(連合会含む)
土地家屋調査士会:5
行政書士会:1

2009年09月17日

世界銀行の調停サービス

The World Bank: The Office of Mediation

2008年にインタビューして知り合いになった人と連絡を取れて、世界銀行の調停部門で、フルタイムの仕事をしているということがわかった。

WEBサイトを見ると、世界銀行グループの職員向けのサービスらしい。
メディエーションと、ファシリテーションとトレーニングが並列で示されている。
仲裁と法律相談の間に置かれていたりはしないのだ。

2009年09月18日

(続) 世界銀行の調停サービス

World Bank: Mediation

昨日紹介した世界銀行のメディエーションサービスについて、「95%の満足度と、80%の解決率」というデータが出ている。15%の方は、解決しなくても満足しているというところもおもしろい。
世銀に限らず、米国のメディエーションのサーベイレポートを見ると、満足度にしても解決率にしても非常に高い。
調査方法がそろっていなければ同列で比較できないが、日本での調査結果とはいかにも違う。

2009年09月19日

福島県土地家屋調査士会・基礎編(2日間)

福島県土地家屋調査士会
ADR研修会 2009/9/19-20。

調査士会での研修は今回が初めて。参加は30人弱。

新潟の関川さんに手伝ってもらって一日終わった。明日もう一日。

今回、「第15回ADR研修会」だということだ。すごい回数・・しかも、ほぼ皆勤賞の人も居るらしい。

2009年09月20日

福島県土地家屋調査士会・基礎編 二日目

盛況のうちに無事終了した。

福島民報という地元の新聞社が、研修会の様子を写真入りで記事にしてくれた。
福島調査士会のように、ADR研修会を、内向きのスキルトレーニングと見なすだけでなく、広報の機会と考えて様々に声をかけていくということはもう少しされてもよいように思う。

調査士の仕事は、依頼主のお隣さんから、承諾のハンコをもらう必要がある。この日常業務に調停技法研修が直接的に役に立つのだそうだ。
岩手と山形からも参加いただいたが、遠くから来てよかったと言っていただいて、ホッとしている。

福島県弁護士会示談あっせんセンターのセンター長の佐藤初美弁護士が2日間終日参加してくださった。おだやかで支援的ですばらしい方だった。

二日間の研修会のパターンとしてはだいたい固まってきているが、今回は、針混入事件ではなく、行列植木鉢事件をメインの素材として取りあげてみた。針混入DVDは使えないが、トレーニングとしてはなりたつことがはっきりしたとおもう。

二日間の研修会で、課題の特定と選択肢の創造までカバーするプログラムだったが、特に12時間しかないと後半に慌ただしい感じになる。思い切ってその前のところまでを丁寧に進める方がよかったのかなということも考えるが、わたしとしては、課題の特定部分が、この調停スタイルの核心部分とも思っているので、できればこれを扱いたい。なかなか答えが出ないところだ。

2009年09月21日

A4一枚アンケート・メソッド

岡本達彦(2009)『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法―チラシ・DM・ホームページがスゴ腕営業マンに変わる!』(ダイヤモンド社)

顧客の意見を聞いて、それをそのまま使って営業につなげる方法を解説した本。
本のタイトルにあるように、<「A4」一枚>のアンケートだから、お金をかけない方法に徹している。

Q1.購入する前にどんなことで悩んでいましたか?
Q2.何がきっかけでこの商品を知りましたか?
Q3.知ってすぐに購入しましたか?しなかったとしたら、なぜですか?
Q4.何が決めてとなって購入しましたか?
Q5.実際に使ってみていかがですか?
という5つの質問(P57)を聞くだけである。
それを、広告に落とし込んでいくのだが、
Q2で、媒体を選び、
「(悩み/Q1の回答)を持っていませんか?あなたと同じように悩みを持っていた人が、この商品/サービスを購入して、今では(感想/Q5の回答)を持っています。この商品は、(決め手/Q4の回答)がお勧めです。とはいっても、(すぐに買わなかった理由/Q3の回答)が不安ですよね。そこで当社では、○○○という特典や対策を用意しました。」(P67-69)というコピーを、ほぼ自動的に作り上げていく。

売り手側の思い入れ、思い込みを棚上げして、実際の顧客の声だけから、購買行動を喚起する宣伝文を作り出すという手法を丹念に説明している。
非常にシンプルなメッセージなのだが、いろいろな事例を示しているために、説得性が高い。

モノを売るだけでなく、さまざまなイベントの企画にも参考になるのではないかと思った。

調停センターの活動に当てはめると、
「離婚後のお子さんとの面接について話し合いたいと思っていませんか?○○調停センターでの話し合ったご夫婦では、お互いに約束を尊重しあえる関係ができています。○○調停センターでは、調停成立後も、養育費の支払いや面接交渉の立会をサポートさせていただいて、好評をいただいております。とはいっても、相手が約束を守らないのではないかと心配ですよね。そこで○○調停センターでは、確実に履行された場合にだけ預かり金を返却する独自サービスを提供しています。」
「ご両親の介護について、ご兄弟で話し合いたいと思っていませんか?○○調停センターでの話し合ったたくさんのお宅では、いまでは安心して兄弟で力を合わすことができています。○○調停センターでは、利用者の都合に合わせて、日時や場所を選べるので、遠方に住む方の帰省に合わせた話し合いがお勧めです。とはいっても、信頼のできない調停人に身内の大事な話を仲介してもらうのは不安ですよね。そこで○○調停センターでは、詳しい調停人名簿を整備し、その中から選んでいただけ、また、事前に無料で面接していただけます。」
みたいな感じだろうか。(全部妄想)

2009年09月22日

精神科医のブログ

自己決定について - Gabbardの演習林-心理療法・精神医療の雑記帳

2009年09月24日

全国こども電話相談室

全国こども電話相談室(TBSラジオ)

このやりとりを見ていると、とてもよいなと感じる。
特に、「おねえさん」の言動を見ていると、達意の聴き手だという気がする。

回答者もいろいろいるが、永六輔さんとか、古き良きAMラジオな感じの人がいいなと。
この番組は、去年終わって、「こども電話相談室・リアル」に変わったようだ。

2009年09月26日

ADR法認証

神奈川県社労士会、宮城県司法書士会、公益社団法人総合紛争解決センター、の3団体が認証取得。

なかでも、大阪の”ソウフン”が注目される。
大阪弁護士会が自前のADRセンターを閉鎖して、士業団体乗り入れ型のADRを運用している。
調停人(和解あっせん人)が3名でうち1人が弁護士という重い制度設計にもかかわらず、弁護士会ADRの中でも安い料金設定ということもあり、比較的事件数を伸ばしているそうだ。

2009年09月27日

神奈川県行政書士会・中級編

Oさんと共同講師で実施。9/26-27の二日間、12時間。参加者21名。

二日目に、当初の予定を変更して、共同調停のデモを行った。
当事者役が名演技で、つい、1時間半も前で実演し続けた。
見ている方も大変だったに違いないが、少なくとも気合いだけは伝わったという面はあるとおもう。
主調停人役をされたOさんも体力がある。
その後の雰囲気が引き締まり、盛り上がってきた。

自主的な勉強会を立ち上げたいという声も出て来て、こういうのは本当に嬉しい。

正直言って、行政書士会の単位会のトレーニングは大変なのだ。
トレーナーとしても、どういう動きに育つのかについて、期待も心配もしている。

2009年09月28日

小島古稀


棚瀬孝雄/豊田博昭/山城崇夫/大澤恒夫 編(2009)『小島武司先生古稀祝賀<続>権利実効化のための法政策と司法改革』(商事法務)

3年越しくらいかもしれないが、ようやく出た。ともかく無事出て良かった。

2009年09月29日

闘うべき相手は士業内部の論理

士業団体の取り組みとして、対話型の調停を研究し実施しようという活動は良い。しかし、口先だけでそれを利用したいという勢力とは闘わなければならないとおもっている。

権威に対して卑屈にならないことも大事だが、経験や能力に対する敬意を忘れてはならないとおもう。
わたしは、その意味で、法曹以外がADRに取り組む過程で、法曹に対する敬意が高まるとさえ考えている。紛争の解決という仕事の大変さが分かってくれば、誰が来ても拒まないという形で運用しつづける大変さへの理解が深まるからだ。また、基本的に誠実に運用されていることそのものが、歴史的あるいは地理的に見て決して当たり前とは言えない、貴重な達成と見られるからだ。例えば、現在でも、わいろをうけとる裁判官がいる国というのは、いくらでもある。ADR活動の前提として、日本の司法の現実を直視する必要があるが、その際には、課題と達成の両面を公平に見るべきだと思う。

士業団体がカネにもならないADRに取り組むのは、業域(平たい言葉では、ナワバリ)を拡大するため(弁護士会は隣接士業の拡大を阻止するため)であるのは、なかば誰でも知っている話だ。
わたしは、そのこと自身は、ある意味、必然的な発想だと思うし、その考え方を貧しいと言っても仕方がないと思っている。
しかし、問題は、その次に、なんとなく体裁だけ整えてその後は政治突破をはかりさえすればなんとかなるだろうという安易な発想が透けて見えることだ。そういう議論を内輪だけでやっていると段々見えなくなってくるのかも知れないが、そんなやり方では、役所も、市民も、他士業もだまされない。

ナワバリを維持したいのであれば、遠回りに見えても、自分たちが役に立つ存在であることを証明するほかない。
地道なところで、世の中の役に立ちたいと思って活動してれば、いろいろな人が助け合えるだろう。
ADR活動はその接着剤としては向いている。

利己的な発想がダメだというのではない。利己的な発想からスタートしてもかまわないが、考え抜かれていないところがダメなのだ。

団体内のなかで、誠実に取り組もうとしている活動をどう位置づけ、肥大化しがちな団体内内部論理をどう制御するか、その団体の賢明さが問われていると思う。

2009年09月30日

仲裁人協会・研究部会 業界型ADRの課題について(中村芳彦先生)

サービス産業ADRと金融ADRについての報告。
サービス産業ADRについては、無事プロジェクトとしては続いているようだ。よかった。

金融ADRについて、来年施行の法律について分析していただいた。
これまでちゃんと勉強していなかったので、良く頭に入った。

金融ADRについては、片面的な拘束力がある「特別調停案」が出せるというスキームになっているという点などが話し合われた。
大岡裁き的な性質を持つともいう「特別調停案」がどういう形で使われるようになるのか。
中村先生は、「特別調停案」を出すということが、実体規範性を強調するのか、手続規範性のなかでの活用を追求するのかによって、そのADR機関の性質が変わるだろうとおっしゃっていた。

中村先生は、いつものとおり、①個社の相談、②ADRの相談、③調停の連携が大事で、特に、①と②の規律が大事という立場で話されていた。わたしもこれが大事だと思う。
ただ、①、②を大切にするというのは、業界の<態度>の問題である。銀行その他の金融機関は、ちょっとやそっとで心を入れ替えるようなタマではないという印象がある。

「特別調停案」が消費者寄りなら、金融機関は片っ端から、訴訟を提起して、調停を無効にするのではないかという懸念がある。その場合に、ADR機関が何ができるのか、そこが見えなかった。今回見送られた「自主規制機関化」、あるいは、行政処分そのものとの連携の設計が必要だろう。

紛争や問題そのものは山ほどあるはずだが、金融行政は伝統的に問題を顕在化させない方向でやってきた。
大蔵省から金融庁が独立して、護送船団からの脱却という方向に舵が切られているとはいうが、まだまだやるべきことは多いだろう。

ところで、業界団体ADRの設計では、担い手を誰にするかがいつも問題になる。
話が通じ、公正性を追求でき、バランス感覚もあり、コストがあまりかからず、誠実で、粘り強く・・と、とても高い能力と意欲を持った人が欲しいということになる。
士業ADRが業界ADRの人材供給源になるという可能性も現実的にもあり得る話だとおもう。
このあたりは大事なのに、まだまだ充分に検討されていない。

仲裁人協会・調停人養成講座中級編の実施延期が決まった。

申し込み人数が集まらず、開催が見送られた。
わたしにとっては、このような開催見送りは、初体験。
日弁連の会議室を使ったトレーニングで、独特な良さがある研修会だっただけに残念。

もう少し参加ニーズを謙虚に聴き取っていく姿勢が必要だということだろうと思う。
少ないとはいえ、申し込んで下さった方には非常に迷惑をかけたので、お詫びしなければならない。

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