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2009年03月 アーカイブ

2009年03月02日

メディエーションマンガ

高野洋(作)井上紀良(画)(2008)『メディエーター桐島丈一郎』(ヤングジャンプコミックス)

先日のトレーニング先で、単行本になっていることを教えていただいた。
一年前に出ていたらしい。第一話だけ、週刊誌に出たときに教えていただいて読んでいたのだが。

相互利害の一致を探るという概念でメディエーター像を規定している。

個人的には、第一話に出てくる近隣調停センターの女性メディエーターの雰囲気がリアルで面白かった。この話だけは漫画家も取材して作った気がする。

2009年03月03日

それぞれのADR

NIKKEI NET(日経ネット):金融庁、貸金業者にADR機関の設置義務


金融庁は裁判外紛争解決(ADR)機関の設置を貸金業者にも義務づける方針だ。金融庁が貸金業界に設置を義務付け、中立性や公正性を確保したうえで、利用者と業者との迅速なトラブル処理を目指す。

 金融庁は金融業態ごとにADR機関の設置を求める方針。今通常国会に提出する銀行法、保険業法などの一括改正案に貸金業法も加える。


大阪弁護士会の総合紛争解決センターのニュース。

asahi.com(朝日新聞社):全国初の業界横断仲裁機関が開業 19団体が参加 - 関西ニュース一般

 市民生活の多様なもめごとの仲裁にあたる「総合紛争解決センター」が2日、大阪市北区の大阪弁護士会館で開業した。分野横断型の「裁判外紛争解決手続き」(ADR)の実施機関で、発足は全国で初めて。

 センターには大阪弁護士会など19団体が参加。借金や雇用、住宅、介護などの内容に応じて仲介にあたる専門家(3人)を選び、当事者双方から事情を聴いて和解をあっせんする。年間200件以上の利用を見込んでおり、初日は14件の相談があったという。理事長の川口冨男弁護士は記念式典で「社会生活上の総合病院をめざす」と語った。問い合わせは同センター(06・6364・7644、平日午前9時~午後5時)へ。


「IT紛争にもビジネススピードに合った解決方法が必要」、IT-ADRセンター長が強調:ITpro


IT紛争の早期解決を目的に設立した「IT-ADRセンター」は2009年2月25日、キックオフミーティングを開催した。 ADR(Alternative Dispute Resolution)とは裁判以外の方法でトラブルを解決するためのもの。弁護士の藤谷護人センター長(写真)は「IT紛争には企業のビジネススピードに合わせた早期の解決が求められる。裁判所より民事調停、そしてさらなる早期解決を実現するのがADRだ」と強調した。

 ミーティングで藤谷センター長は、IT-ADRセンターが打ち出す「3カ月主義」「専門的納得」「公正中立性」を説明した。「ITは専門技術性の壁が高く、このためIT紛争では裁判所の判断には専門的納得性が得られないこともあった。解決までの期間も長く、解決を待つ間の損益も大きい。トラブルにかかわる双方にとってプラスにならない」と藤谷センター長は続けた。

 同センターは、弁護士からなる「法律ADR委員」とITベンダー出身者や企業・公的機関などの情報システム部門出身者からなる「専門ADR委員」で構成する。これらの専門知識を有する委員が、ITにかかわる紛争に際して中立の立場で紛争の早期解決を図る。

 IT-ADRセンターは、藤谷弁護士が所長を務めるエルティ総合法律事務所が昨年9月に設立した。これまで弁護士会などを通じて広報活動を行い、本日までに2件の問い合わせがあったという。


東京新聞:裁判なしで医療紛争を処理(ADR) 米で訴訟減 日本は機能するか:特報(TOKYO Web)


患者と医療機関との間のトラブルを法廷外で処理する「医療ADR(裁判外紛争処理)」が注目されている。「裁判には費用や時間がかかり、判決が出ても再発防止策に生かされにくい」という現実から、その解決に「ADRを」という発想なのだが、“訴訟大国”米国で生まれたこの仕組み、果たして日本で機能するのか-。 (鈴木伸幸)

2009年03月04日

PIフォーラム年次セミナー

PIフォーラム年次セミナー2009

IT分野における合意形成というセッションで、ファシリテーターをします。

自分としては、このテーマでやるのが、すこし恥ずかしいのだが・・

2009年03月05日

内部告発者をいじめる会社

東京新聞:内部告発後に不当な配置転換 オリンパス社員 人権救済申し立て:社会(TOKYO Web)

大手精密機器メーカー「オリンパス」(東京)の社員浜田正晴さん(48)が、社内のコンプライアンス(法令順守)通報窓口に上司に関し告発した結果、不当に配置転換されたと訴えている問題で、浜田さんは二日、暴言や退職要求などの社内の嫌がらせを会社にやめさせるよう東京弁護士会に人権救済を申し立てた。

 申立書によると、浜田さんは一九八五年に入社後、大手鉄鋼メーカーへの精密検査システム販売などを担当。上司が機密情報を知る取引先の社員を引き抜くことを知り、不正競争防止法違反(営業秘密の侵害)の疑いがあるとして二〇〇七年六月、社内の通報窓口に通報した。役員が取引先に謝罪し引き抜きは止めたが浜田さんは同十月、閑職とされる部署に異動させられた。通報内容は通報窓口から上司らに電子メールで報告されていた。

 異動先では資料整理などをさせられていたが、病欠者扱いで賃金も抑えられている。部外者との連絡には許可が必要といい、上司からは「やる気があるのか」などと言われているという。浜田さんは社内外の接触を禁止する業務命令や人事評価、遠回しの退職強要などの改善を勧告するよう同弁護士会に求めている。

 オリンパスは「申し立ての連絡を受けていないので、コメントできない」とした。

◆『社内で仲間はずれ1年半』

 「社内で村八分(仲間はずれ)の状態が一年半続いている。弁護士から『体を壊しては…』と心配され、救済のお願いをした」。オリンパス社内での不当な扱いに抗議、人権救済を申し立てた浜田正晴さんは東京都内で会見し「普通に勤務したい」と強調した。

 問題の内部通報が告発対象の上司に筒抜けとなって不当に配置転換されたとして、浜田さんは昨年二月、異動の取り消しなどを求め会社側を東京地裁に提訴、係争中だ。

 不祥事を告発した社員を守ることを目的にした公益通報者保護法は二〇〇六年に施行された。

 浜田さんは同法を念頭に置き「正直者がばかを見る制度であってはならない」と語った。

 労働問題に詳しい森岡孝二・関西大教授(企業社会論)は「通報者が泣き寝入りとなってしまうと法が死んでしまう。通報窓口を会社内につくると、告発者の個人情報保護の面から不安にさせるケースが多々ある。故意に個人情報を流したとすれば悪質だ」と指摘する。

 オリンパスは「通報者の情報の取り扱いに問題があった事実はない。人事異動と通報との関連はない。評価は業績に対し公正に実施し、社員の努力不足から残念な結果となっている」との見解を出している。

こういうニュースが握りつぶされないで、しっかり報道されるようになっていること自身を歓迎すべきだと思う。
ところで、この紛争が、ADRに持ち込まれたらどうだろうと考えてみる。
(上記のニュースの真相はわかりませんが、あくまで一般論として考えたことを書きます。)

持ち込まれた時点で、会社が真剣に取り組み始めるなら、それはそれで価値があるだろう。
しかし、ADRが、社会秩序維持だけのために、弱者を踏みつぶす道具として運用される危険というものも十分にある。
おおやけに訴えることも選択肢になければ、ADR自身も、民主的な社会システムにおける制度として意味を持たなくなる。

裁判には限界があるからADRのメリットを理解しようというレトリックだけでは、社会の中でADRを位置づけることはできないのではないかと、わたしはおもっている。
(会社が、従業員に、おまえなんかどうせ提訴もできないだろうから、示談金で手を打てなどと説得する状況を、考えてみればよい。裁判に限界があるからADRを使えというレトリックを、まさに、正義に反する形で使っている。)

そうではないのだ。社会の中で「泣き寝入りの追認」という紛争解決手段があまりに使われているが、かえって社会的コストが増している。それがひずみとして、様々な問題を引き起こしている。例えば、パワハラしかり、自殺問題しかりだろう。
人間関係がドライになってきて、非公式な紛争解決ルートが痛んでいるのに、公式な紛争解決ルートが十分にアクセスしやすくなっていない。
ADRの社会的意義はそのあたりにあるはずなのだ。

と考えると、裁判とADRは対立するものではなくなる。

2009年03月06日

ちゃんと話すための敬語の本

橋本治(2005)『ちゃんと話すための敬語の本』 (ちくまプリマー新書)

敬語は、人間関係の距離を調整する道具であるという立場で、敬語が使えるようになろうと青少年に呼びかけている本。という体裁をとっている。
結論としては、ポライトネス理論の滝浦真人さんの考え方と基本的には同じ。

敬語を本当にちゃんと使うと時代劇のようになるので、現代ではちゃんと使わないのがちゃんと使うことになるという、橋本治らしい、まわりくどい説明をしている。

敬語の暗黒面として、目上の者は目下の者に命令文しかないという話もあって、個人的にはこのあたりが気になった。
また、社会が人間の上下を決めるのはヘンであるという指摘もしている。

この話を延長していくと、人間関係の対等性を前提としながら、しかも適切に距離を調整できるツールとしての新しい日本語が必要だという話になりそうな気がするのだけれど、そこまでは書いていない。

過去のエントリー:言語による対人関係の距離調整に関する本

2009年03月07日

WILLCOM CORE 3G

わたしはマイナーなウィルコムユーザなので、ちょっと関心があるニュース。

ドコモのFOMAのネットワークを使うらしい。
個人向けのサービスがはじまってかつ、十分早いなら自宅のADSLを辞めることもできるので乗り換えても良いかもしれない。
エアエッジのユーザの多くは、Eモバイルに移ってしまった感じがする。取り残されユーザになってしまって、どうしようかと思っている。

WILLCOM|「WILLCOM CORE 3G」のサービス提供について ~100%の全国エリアをカバー 最大7.2Mbpsの法人向け高速データ通信サービス~

2009年03月08日

PIフォーラム年次セミナー2009

わたしがファシリテータを務めたのはITセッションだった。

高知工科大学の菊池豊さんから趣旨説明があり、日立コンサルティングの田熊伸好さんからシステム開発におけるステークホルダごとのニーズの違いと、プロジェクト失敗要因の分析についてのプレゼンがあった。具体的な失敗事例に対する言及もあって、興味深いものであった。
その後、PIフォーラム事務局であり、モデルビレッジの社長である小松一之さんが、建設会社で行ったITシステム導入のためのステークホルダ分析調査(社内ヒアリング調査)の事例を詳しく報告した。
ヒアリングで聞いた内容は、たとえ社長から聞かれても開示しないという守秘義務契約を結んだ上で、なぜ、前回のシステム開発が失敗したのか、それぞれどんなことを望んでいるのかといった話があった。
このプロジェクトは、結果的には大成功だったようで、システムベンダからも感謝され、報酬の上積みさえあったという。

そのあと、わたしが参加者にふせんに「!」(興味を引いたこと)と、「?」(疑問、質問)を書いてもらうという参加型ワークのさわりみたいなことをした。
こういう参加者いじりについても、新鮮に受け取って下さった人もいたようだ。

ITの合意形成の議論は、観念的な議論(プロジェクトマネージャのミッションがなんたらかんたら)になるか、プログラミング時の命名規則みたいなやけに具体的な(かつ局所的な)議論の両極端に陥りがちだけれど、なんとなく、両方をつながなければならないし、そのための方法論も少しずつ整理されてきているという話を感じることができたのではないか。


参加された方の感想:

http://soft-mainte.blogspot.com/2009/03/pi-forum-2009.html

2009年03月10日

マイケル・リンド氏講演会

JMCの田中圭子さんのコーディネートによる企画。

http://www.shiho-shoshi.or.jp/activity/event/20090308/index.html

http://www.adrgroup.co.uk/

http://www.adrgroup.co.uk/about-adrg/Michael_Lind.htm

英国で会社組織としてメディエーションサービスを提供している「ADR Group」のマイケル・リンド氏によるプレゼンテーション。

興味深い報告だった。
・ADR Groupのメディエーションの料金は高い。
 1日に5.6万円~42.7万円。(それぞれの当事者)
・ADR Groupは高い料金だが、年間500件実施している。
 ケースマネジメントを会社が提供し、調停人が調停をする。
 取り分は1:2(会社1で調停人2)。
・ADR Groupでは別席調停が多い。
・メディエーション・ヘルプラインと呼ばれる公設で
 民間プロバイダに事件を流す仕組みの運用が始まっている。
 年間1600件の調停申し込み。約800件の調停実施。そのうち3分の2の成立。
 調停手続は裁判所内で行う。
・少額訴訟事件向けの裁判所付設調停が開始。
 2008年初年度で7800件。当事者の利用料は無料。
 これも調停手続は裁判所内で行う。
・調停人は多いが、調停件数は少ないというのがイギリスの課題。
・ウルフ卿も、ADR Groupのトレーニングを受けた。
・クオリティマーク制度は、認証モデルというより登録モデル。
・EUでは、ディレクティブ(指令)と行動規範がある。
・ADR Groupのトレーニングでは、ビデオテープを取って、メディエーターのパフォーマンスを評価する。
・日本のADR法は、「馬を置く前に馬車を置く」だったかもしれない。
・今日帰ったら、「ADRについて、だれかひとりに話して下さい」-地道な活動が、徐々に広がりを生む。

やり手の方のようだが、わたしと同じ年齢だ。
眉間にしわを寄せて話をするのが気になったのだが、途中から立って話し出すと、生き生きとしてきた。こういうプレゼンよりトレーニングのほうが好きなんだろうと想像しながら聞いていた。
ADR Groupのキャッチフレーズは、Teach、Talk、Resolve。調停という概念を教育することを先行させるという意味か。トレーニングの重要性を強調していたのと、プロフェッショナリズムとしての品質の確保に注力していたのが印象的だった。

リンド氏が、東京司法書士会の、成功報酬料金体系が問題ありという発言をしていた。
東京司法書士会ではあまり意識されていなかったのかもしれない。
わたしが理解している限りでは、米国では、明示的な禁止までされている場合ばかりではないが、一般に成功報酬料金体系は望ましくないとされている。

http://www.abanet.org/dispute/essay/pastan.doc

2009年03月11日

EUのADRについてのディレクティブと行動規範

EUR-Lex - 32008L0052 - EN

European Commission - European Judicial Network - Alternative dispute resolutions - Community law

2009年03月12日

メディエーションとファシリテーション

PIフォーラムで、公共分野のファシリテータとして、活躍している人が言っていた話である。

「通訳なら、Aランクの実力があれば、常にAランクの仕事ができるのかもしれないが、ファシリテータは違う。仕事を請ける経緯などで、その能力を発揮できない。前さばきがCランクなら、Aランクの仕事しかできない。」


通訳でも、事前準備によって仕事の質が変わってくると思うが、公共分野のファシリテータの場合、確かにもっと難しくなると思う。
ここでの「前さばき」とは、ステークホルダ分析を言っていたり、中立的な対話進行に徹することができるという契約条件の設定やその公開を言っているのだとおもう。

メディエーションには、単なるスキルではなく、手続や制度を指向する側面がある。
そこはメディエーションの強みだろうと思う。
(もちろん、手続や制度だけでは意味のある実体にならない。)

ただ、ファシリテーションについても制度化して考えるべきという視点も持たれつつあるので、そうなってくるとあまり違いがなくなってくる。

よくメディエーションとファシリテーションの違いを聞かれるが、両者の違いっていうものがそんなに大事だとはわたしは思っていない。
むしろ、よいメディエーションとよくないメディエーションの違いを考える方が重要だとおもう。

ファシリテータとして現場経験のある人はそれなりの数おられるので、彼らの経験ももっとメディエーショントレーニングにも反映できたらと思う。

2009年03月13日

長崎から

長崎メディエーション塾 - 市民のための和解支援スキル入門

梅枝眞一郎さん率いるメディエーション塾が、新しくドメインを取ってWebサイトを立ち上げられたようだ。

2009年03月14日

日経トレンディによればメディエーションの認知度21%

メディエーションって何? - 今日の知識 - 日経トレンディネット

2009年03月15日

神奈川県行政書士会・基礎編

3月14日、15日の二日間、12時間の基礎編研修。昨年に続いて2回目。継続は力なりということで。

弁護士のOさんと共同講師。

2009年03月16日

戦前の調停

現在の裁判所の調停では、別席での話し合いが原則であるようだが、戦前の調停はむしろ同席が原則であったような節がある。

充分なデータはないのだが、例えば、『調停読本』(1954)には、別席調停のメリットも書かれているが(P98-99)、原則型として、「当事者双方及び代理人並びに利害関係人等を全部同時に呼び入れ」、話し合いが進められる手順が紹介されている(P173-174)。

また、裁判官が最後の調書読み上げだけに登場するなどといったことはなく、調停委員会として調停委員2人と一緒に話し合いに参加していたという話もある。(この点での形骸化は戦前に見られるという指摘もある。)

戦前の調停と一言でいっても、封建的で乱暴な調停もある一方で、逆に、現在では考えられない位丁寧な手続もあった節もある。例えば、関東大震災後の借地借家調停では、調停期日を1週間後ぐらいにどんどん入れていたそうである。

調停理解に、ステレオタイプは禁物である。

2009年03月17日

Good to Great

ジェームズ・コリンズ、山岡洋一 訳(2001)『ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則』(日経BP)

飛躍した企業について分析したビジネス書で、全米200万部売れたというものらしい。

長期的に見て驚くべき成功を収めているのは、地味な商品を売る、地味なリーダーに率いられている会社だった、ということだ。

著者たちの調査グループが発見したのは、単に地味であればよいというのではなく、能力は高くなくてはならないが、そのうえで、謙虚さ、率直さ、献身さを備えた第五水準の能力を持ったリーダーの存在だった。

また、地味に会社としての強みに集中し、成長を早めるためだけの多角化などは行わないという会社のポリシーが貫かれているという点も発見している。

成功している会社の共通点を分析すると、拍子抜けするほど単純な要因が浮かび上がってくるという。

しかし、「経営陣全員が出席して、顧客に直接に接している営業担当者から厳しい質問や批判を受ける」(P114)といったことは、効果的とわかっていても、社内で権力をにぎってしまった経営者がやりたくない不快な活動である。

読んでいて思ったのは、この本で対象とした企業たちが、メディエーター的なリーダーたちによって率いられている、メディエイティブな会社文化を持ったところなのだなぁということだ。

カリスマリーダーに率いられた会社は案外長続きしていないという話も繰り返し出てくる。

仕事には厳しいが、自分の業績を誇るタイプではない人たちが、こうした会社のリーダーであるという話は、なにか、昔の日本の社会にあった、なつかしさみたいなものも思いおこさせる。

2009年03月18日

京大大学院の事件

賠償提訴:京大院生の自殺「アカハラ原因」と両親 - 毎日jp(毎日新聞)

賠償提訴:京大院生の自殺「アカハラ原因」と両親

 昨年3月に自殺した京都大工学研究科の男子大学院生(当時29歳)の両親が「アカデミックハラスメント(アカハラ)が原因だ」として、男性指導教授に5000万円の損害賠償を求め神戸地裁尼崎支部に提訴した。京大は両親の主張を受け、08年11月13日付で学内に調査調停委員会(委員長=大嶌幸一郎・工学研究科長)を設置。関係者への聞き取りなどを進めている。

 訴状によると、外国生活が長く、日本語が得意でなかった院生は06年4月、英語だけで指導を受けることができるという触れ込みの京大院博士課程に入学。教授の研究室に入ったが、英語による指導はほとんどなかった。

 また、教授は院生の建築学の研究を認めず、同年秋ごろ、全く関係のない子供の行動パターンをテーマとした研究をするよう強制。英語での意思疎通がとれず研究方針の指導もないまま、連日事務的な作業を続けるうち神経性胃腸炎を患い、自宅で自殺したという。

 両親は、教授の行為は、京大人権委員会がアカハラの例として挙げる「指導義務の放棄」「本人の希望に反する研究テーマを押しつけること」に該当すると主張。「裁判を通じて真相を知りたい。息子のようなことは二度と起きてほしくない」と話している。

 毎日新聞は教授側に取材を試みているが、5日時点で回答を得られていない。【田辺佑介】

2009年03月19日

メディエーショントレーニングをメディエーションの場とみなす

メディエーションの本物の事件よりもメディエーショントレーニングにばかり熱心だと揶揄されるような状況というのは、なにも、日本だけにあるのではなくて、アメリカでもあるようだ。この間のリンドさんの話だと、イギリスでも同じようだ。

メディエーショントレーニングを熱心に取り組む人が本物の事件に取り組むように成長することも大事だし、すでに事件を扱っている人たちが改めてメディエーショントレーニングに触れるのも大事なことだ。そのために、メディエーショントレーニング自身がそれに耐えるように進化する必要もあると思う。

ただ、メディエーションは、そのような「事件」だけを扱うものではない。日々是メディエーションである。たとえば、メディエーショントレーニングそのものをメディエーションの場と見なすこともできる。トレーニングに対して不信感を持って来る参加者達に、尊敬の態度を持って接し、その方自身が選び取る形で変容する機会をできるだけ誠実に提供する。・・言うのは簡単だが、やるのは大変で、何度やっても、これが最高ということにはなかなか至らない。

だから、わたしは、メディエーショントレーニングにトレーナーとして多くの人が取り組めるようにできないかと考えている。
まずいくつかメディエーショントレーニングを受講することは必要としても、そのあと、いつまでも受講者の立場に留まるより、トレーナーとしての経験を積むことが、メディエーターとしての能力開発に役に立つと思うからだ。
なにも長時間の正式なトレーニングだけがトレーナーの仕事ではない。数時間の簡単なイベントの企画でもよいとおもう。

・・といったことは機会をとらえて何度かしゃべっているつもりなのだが、実際にはなかなかそこまでやるのは大変なようだ。
わたしとしても、もうすこしメディエーショントレーニングがいろいろな場に拡がるようになにかできないかと考え中である。

2009年03月20日

対話のチカラ

静岡駅から5分位のところにある静岡銀行のビルのイベント会場でシンポジウムが行われた。
これは、静岡で行った日司連の企画である。
法務省、法テラスからも後援が得られていた。

シンポジウムでのパネリストだった、ピア・サポートをされている高校教師の山口さんの話もおもしろかったし、労金に勤めながら長年にわたって多重債務者支援を続けておられる勝又さんの存在も改めてすごいとおもった。
居るところには人は居るのだなぁと感じる。本物の人とつながっていくことが大切だと感じる。

静岡県の司法書士会というのは、他県と違う「温度」を持っておられる。
ADRでも熱心で司法書士会として、神奈川、東京に次いで法務省の認証をとったということなのだが、それ以上に、消費者運動の草分けとして献身的な活動を続けておられる。
静岡県は消費生活相談分野でも有名なところだが、消費生活センターと司法書士会の連携もあるらしい。

こういうところだから、単に書類を作るのがうまくて申請が早く通ったということでなく、そのスタンスが評価されているのだろう。

ふらっとで、申立てに5万円かかるというのは、庶民にとってはハードルが高く見えると思うが、静岡市民に愛されるものに育って欲しいとこころから思う。
(ふらっとのWebサイトでは、20分の動画で、調停手続を紹介している。)

過去のエントリー:
静岡県司法書士会のシンポ、報道される
静岡のシンポジウム

2009年03月21日

岩瀬純一氏(家裁調査官)の本

岩瀬純一(2008)『司法臨床におけるまなざし―家事調停にかかわるあなたへ』(日本加除出版)

この本にはとても共感した。

紛争解決を登山にたとえ、調停者を登山ガイドにたとえている。(P135)
わたしも同様の説明を使っていたので、偶然で驚いた。

この本では、民間ADRとの棲み分けについて、家裁の方がむしろ人間関係の調整を丁寧にできる場所だと述べている。

そのあたりは今後どうなっていくかを見ていかないといけないだろうと思う。
良い意味の競争になればと思う。

2009年03月22日

東京弁護士会で調停トレーニング

正確には、東京三弁護士会実務研究会主催だったのだが、東弁の方しか出席されなかった。

3月21日、22日の二日間。両日9:00-18:00までの16時間。15人の出席。

共同講師は、弁護士のGさん、Oさん。

コワモテの論客も少々混じり、プレッシャーのかかる状況だったが、結果的にはかなり好評だった。
さる方から、岡山弁護士会のときみたいにはうまく行かないよなどと警告されていたので、心配していたが。

弁護士の優秀さがでる項目と、弁護士でも難しいところの両方が少し見えた気がする。
前者は、分配型交渉(リスク評価ができる、価格のダンスの性質を知って使いこなせる)についてや、評価型調停の限界をよく理解している点など。
後者は、基礎的な傾聴、課題設定と統合型交渉への転換など。

トレーニングに出ていただけると、弁護士相手でも伝わるという実感が持てたのはなにより。
経験豊富な方々が、謙虚にとりくんでくださった、という運の良さに助けられたのは事実なのだけれど。

2009年03月23日

群馬司法書士会は「かいけつ☆おさ丸」

asahi.com:もめ事解決法 落語から学ぶ ADR講座-マイタウン群馬

「大工調べ」という噺を素材にシンポジウムを行ったようだ。
おもしろそう。

2009年03月24日

ホワイトボードの活用

先日の東京弁護士会のトレーニングで、ホワイトボードの使用について聞いた結果。

全15名中・・
 ホワイトボードが事務所にある人8名。
 ホワイトボードを日常的に使っている人4名。

という結果だった。
ホワイトボードを使ったブレストに興味を持たれた人が多かったようだ。
簡裁にも置いて使ったらいいなどとおっしゃっている方もいた。

2009年03月25日

裁判員制度に必要な第三極の議論

裁判員制度について、ある人と話をしていて、以下のようなことを考えた。

まず、裁判員制度について、裁判所は年間10億円以上の広報予算をかけてPRを行っている。
こちらの視点は、周知徹底がミッションである。ちょっと意地悪に見れば、「動員」を有効に行いたいということだ。

これに対して、裁判員制度の反対意見も強い。従来ならば、精緻な職業裁判官によって専門的に行われていた手続が、簡略化され、雑な手続にならざるを得ないという点を主に批判しているとおもう。

PRを有効に行おうとしているのが第一の立場であり、第二の立場は、第一の立場に反対している。
わたしが必要だと思う第三極とは、市民による司法参加は必要だが、そのためには必ずしも現在導入されようとしている手続が最高であるわけでないと考える立場だ。

具体的には、これから導入しようとしている裁判員制度に、2点の大きな問題があるように思う。
第一は、刑事の重大事件を対象として市民参加を求める制度になっていることだ。猟奇的なものもあるし、暴力団の事件もある。このようなのは、市民感覚がうまく生きてくる類型とは思えない。民事に陪審を導入すると、企業対消費者の紛争で企業側が不利になるという政策判断が働いたのかもしれないが、市民感覚を生かせるのはやはり民事であろう。刑事についても、むしろ軽微なものであれば、例えば加害者が市民陪審に話を聴いてもらったりして、自分の犯罪を反省し、再犯率を下げるのに役立つといったメリットが出やすいとおもう。
第二は、裁判員制度における評議の方法だ。市民裁判員と職業裁判官が話をする方法についての研究がプアだとおもう。具体的には、ファシリテータを置くか、裁判官のうちの少なくとも一人をファシリテータとしての能力を持つ者にするべきだと思う。そうでなければ、市民裁判員と職業裁判官の話し合いが、「対話」として成立しない。模擬の裁判員評議でも、裁判官側が設定した論点について、多数決的に裁判員の意思を確認される場合が多いようである。裁判官側には、どの論点がその事件の核心であるかとか、論点間の依存関係は見えていても、裁判員側には見えない。「対話」ではなく、ミニアンケートで重大な事件に結論を出すのはいかにも無責任である。

司法動員を認めるという立場でもなく、職業裁判官を盲信する立場でもない、第三の立場として、議論が必要なのではないかとおもう。

2009年03月26日

サービス産業におけるADRについての調査

2007年度「サービス産業紛争解決システム調査」(サービス産業生産性協議会)[PDF]

リンク元

昨年度(おととし)実施していた調査。公開しているのを知らなかった。

2009年03月27日

東京弁護士会で調停トレーニング・ふりかえり

東京三弁護士会実務研究会での調停トレーニングのアンケート結果を見せていただいた。

総合満足度の平均値が4.64点(5点満点)と非常に高評価だった。
やっぱりGさんとOさんと一緒にやったのがよかったようだ。

コメントの中に、「講師が公平だった」と書かれていたものがあった。(講師名は特定されていなかった)
こういうコメントをいただいたのははじめてだけれど、メディエーショントレーナーとしては何よりの評価かもしれない。

反省点としては、わたしが担当した傾聴スキルについては、もう少し丁寧に説明したり、練習メニューを考えた方がよいかもしれないという点だ。
ペアでの言い換えのワークなどは、弁護士同士でやると、話し手が論理的すぎて、聴き手にとって言い換えるまでもない印象になるのかもしれない。このあたりはもっと意識的にやらないととおもった。

2009年03月28日

IT-ADRセンター

IT-ADRセンター

弁護士さんが始めた民間ADRサービス。

IT-ADRセンター運営審査委員会の委員長は小島武司先生。

進行一覧表

2009年03月29日

静岡県司法書士会・初級編

去年に引き続き、静岡県司法書士会で二日間の調停トレーニングを担当させていただいた。
3/28,29 10:00-17:00。参加者20名。

1人講師で行ったが、事務局の名波さんと芝さんとの事実上の共同講師という体制で進めることができ、おもしろかった。
冒頭は小澤さんが挨拶していただけたし、帰る間際には登山さんがかけつけてくださり、贅沢な陣容。

静岡では、新人を主な対象者としてこのトレーニングを年中行事化しようとしている。
年齢は様々な「新人」に参加いただき、また、ベテランも何人か混じっての参加だった。

認証を取った程度で達成感を味わっていないで、これから攻めていこうという姿勢があってすばらしいとおもう。こういうところに呼んでいただいて本当に光栄。

2009年03月31日

少し休んでおりました


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About 2009年03月

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