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言語による対人関係の距離調整に関する本

滝浦真人(2005)『日本の敬語論 - ポライトネス理論からの再検討』(大修館書店)

敬語を、「尊敬感情の発露」ではなく「関係認識の表現」という機能的見方で説明する立場の学者の系譜を紹介し、その上で、敬語は対象人物との間の「距離調節」の道具(のひとつ)であるというポライトネス理論の立場からの説明を加えている本。

敬語は、距離をとるための道具(ネガティブ・ポライトネスのストラテジーの一つ)であり、「ため語」は距離を詰めるための道具(ポジティブ・ポライトネスのストラテジーの一つ)である。
距離を詰めるためのストラテジーには、冗談を言うことや、一致を求めることもあり、「タメ語」はこれらと並列化される。

ファシリテーターの基本的な役割は、「言語」によってその「距離」を調節することであるとすれば、言語的(語用論的)アプローチによって、それを体系的に説明できる可能性があるのではないか、などと、考えながら読んでいた。
スキルのあるファシリテーターは、話し合いの開始時点では、当事者間の距離を置き、安全性を確認しながら、徐々に距離を詰めるだろう。また、話し合いに危険が及び始めてきたときには適切に距離を離すための介入を行うだろう。こうした活動は、スキルのある人たちにとっては、ごく日常的にできているだろうとおもう。
ファシリテーターやメディエーターの活動は、しばしば、芸術的なもので、科学的であると考えられないが、分析の道具立てとしておもしろいように思えた。

記述はストレートであるし、具体的な表現例も豊富なので読みやすいはずなのだが、それほど簡単な本ではない。
しかし、とても大切なことを扱っているように思える。

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2008年10月17日 11:10に投稿されたエントリーのページです。

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