スタンフォード大の監獄実験
大学のある授業で、スタンフォード大の監獄実験のVTRを見せていただいた。
強烈。
社会心理学の分野では有名な実験で、存在は知っていたが、ビデオで見たインパクトは、本で読んだそれとは大分違う。
くじびきで、看守と囚人の役割を分けて2週間役割を演じてみるという実験だったのだが、役割にのめりこむのがあまりにうまくいきすぎ、看守による囚人支配がエスカレートしすぎて2週間ではなく6日間で実験を中断せざるを得なかったというものだ。
大学のある授業で、スタンフォード大の監獄実験のVTRを見せていただいた。
強烈。
社会心理学の分野では有名な実験で、存在は知っていたが、ビデオで見たインパクトは、本で読んだそれとは大分違う。
くじびきで、看守と囚人の役割を分けて2週間役割を演じてみるという実験だったのだが、役割にのめりこむのがあまりにうまくいきすぎ、看守による囚人支配がエスカレートしすぎて2週間ではなく6日間で実験を中断せざるを得なかったというものだ。
わたしが参加したのは、南山大学元教授の中堀仁四郎先生が率いるヒューマン・インターラクション・ラボラトリー研究会(HIL)という団体の2006年5月の3泊4日のTグループセッションでした。
HILはWebサイトがないようなので、南山人間関係研究センターのURLを書きますと、以下の通りです。
http://www.nanzan-u.ac.jp/NINKAN/kokai/2006/laboratory03.html
つい先日、フォローアップ研修が終わったばかりで、あまり軽々に総括できないし、したくないのですが、わたしにとってはとても重要な体験になったこと、今後も継続的に学びたいと考えていることだけは確かです。
聴くこと、コミュニケーション技術、会議をうまく進めるテクニックなどを扱った本は、街の書店に山積みされています。どれも似ているように見えますが、本質的なところに触れているものと、浅いテクニックの寄せ集めとに分かれるようにわたしには感じられます。
21世紀の社会科学にとっては、客観的で検証可能な外部としての社会システムのデザインの技術ではなく、「自己を含む集団」に対して統治していくための技術であり思想が重要であると考えます。
易しそうに見えても高度なものが多いのがこの分野の特徴だと思います。インタフェースが洗練されすぎていて、その奥深さがかえってわかりにくいのかもしれません。ともあれ、ぜひ一読いただきたいものばかりです。
中野民夫[2001]『ワークショップ―新しい学びと創造の場』(岩波新書)を読み直していて、ワークショップの系譜図が改めて気になった。
出発点をデューイに置いているが、そこからクルト・レヴィンへも矢印が伸びている。
あっさり書いてあるけれど、プラグマティズム哲学と、グループ・ダイナミックスなどの考え方を生み出したレヴィンの間にどのような関連があるのか・・気になる。
過去記事:ワークショップな10冊プラスワン
小沢牧子[2002]『「心の専門家」はいらない』(洋泉社)を読み返していた。
カウンセリングの技術は、やさしく柔らかく人を管理する道具に使われているのではないかという問題提起をしている。
自己決定を促し、自己責任を負わせ、問題を個人に焦点化しているのではないかということだ。
メディエーションに引き付けて考えると、相手方が同席するという点で、問題を個人化するところにとどまらない可能性を持っている。
しかし、出席してきている両当事者に問題が焦点化される点は否定できないかもしれない。
連帯して戦線を張るところも、もう一方でどうしても必要になるような気もする。
チャルディーニ、R.[1991]『影響力の武器』(誠信書房)
承認誘導の理論を体系化したもの。
R. フィッシャー、D. シャピロ、 印南一路(訳)[2006]『新ハーバード流交渉術 論理と感情をどう生かすか』(講談社)
フィッシャーさん、もう、中東の交渉話はやめれ。などとは、だれも言えないくらいの大御所の新作。
好き嫌いは抜きにして議論の前提になるタイプの本だという意味で、うまい邦題のつけ方だと思う。
最後に文献案内が載っている。「ポジティブ心理学」についての言及があって、興味を引いた。
ドイチェ、コールマンのHandbook of Conflict Resolutionも読むべきと言っている。
関計夫[1965]『感受性訓練―人間関係改善の基礎 』(誠信書房)
東大・教育学部の図書館で借りてきて読んだ。
感受性訓練というタイトルだが、内容はTグループについて書かれている。
著者は、執筆時点では九州大学教授。
同じことを今行えば問題になりそうなことも載っているが、手作りで実践してきたことを具体的に紹介してあり、「使える」なあと思うところも多々あった。実際に現在の南山でやっていることと重なっているところも多く、Tグループの参加経験者にとっては特に、なるほどこういう意図でああいうことをやっていたのかと合点が得られるだろう。
心理学化する社会だなぁ、といいつつ、ちょっとやってみたい。
全年齢向けと、子ども向け。やってみたい方はご連絡をください。
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平木典子[2002]『カウンセラーのためのアサーション (アサーション・トレーニング講座)』金子書房
先日、東大の学生相談室主催の1日もののアサーティブトレーニングを受講した。
トレーナーは創価大学の園田雅代先生だった。
アサーティブトレーニングの本もいくつか読んでみている。
園田先生のご推薦は、平木典子先生の本だった。
平木典子先生の言うアサーティブは、メディエーションの考え方にとても近い。
平木典子先生の本の中にも、グループプロセスへの理解が必要という話が出てきていて、名指しはしていなかったけれど、南山で言っていることとほとんど同じことを紹介している箇所がある。
わたし自身は、メディエーションまたはそのトレーニングをするために、カウンセリングのスキルトレーニングにはまりすぎることにはとても抵抗感がある。その点もちゃんと学術的な言葉で語れないとなぁと思っていた。アサーティブについては、メディエーションスキルとの接続性はむしろ良いような気がしてきている。
別の日には、半日のカウンセリングの基礎講座を受けていた。
その中で講師の先生が、「感情の言い換えは、実技試験ではできないとだめなんですが、実際のカウンセリングのときは、わたしはほとんどやりません」と言っていたのが印象的だった。
「あなたのお気持ちはこうなんですね」なんて、表面的にまとめてしまうことは、めちゃくちゃ失礼だ。
・・と、常々思っていたので、非常に納得感があった。
つまり、感情理解の技術や仕組みは理解する必要はあるけれど、使い方を誤ってはいけないというなんのことはない結論になるのだが。
ポール・スタラード著/下山晴彦監訳[2006]『子どもと若者のための認知行動療法ワークブック―上手に考え、気分はスッキリ』(金剛出版)
東大・教育学部で臨床心理学を教えている下山教授の研究室が訳書を出した認知行動療法のワークブック。
非常にわかりやすい説明と、いくつかのワークがある。
セルフヘルプのワークブックとしても使えそうだし、ワークショップのネタにも使えそう。
単にワークの方法が書いてあるだけでなく、意図についても説明があるところが親切。
認知行動療法は、エリスの論理療法からスタートしている。
その意味でアサーティブトレーニングとも兄弟関係にあるともいえる。
こういうリンク集もある。
パニック障害は生理的・遺伝的な側面があるという話を、先日、臨床心理の先生から聞いた。
パニック障害は、電車に乗ってパニックになるというような経験から、電車に乗れなくなったりする人なのだが、元々、二酸化炭素濃度の変化に過敏な体質があるのだそうだ。
きっかけは体質だが、その体験の解釈や認知の過程で、その体験の恐怖が増幅されるというメカニズムになっていて、そのメカニズムの改善のための心理療法手法が確立しつつあるのだという。
もともと体質に原因があるのだから、それ以上心因をさぐったり、幼児の体験を聞いたりといったことはしないのだそうだ。
心理療法や、カウンセリングなどについて、あまりわかったようなことを軽々に言うべきでないと、つくづく感じる。
伊藤絵美(2005)『認知療法・認知行動療法カウンセリング初級ワークショップ―CBTカウンセリング』(星和書店)
認知行動療法(CBT)のワークショップ記録形式のテキスト。
DVDも併せてでているようだが、本だけでも十分に理解できる。
CBTの考え方を紹介するときに、原稿が書けなくて焦ると、ぐずぐずしたり、歩き回ったり、部屋を片付け始めるという伊藤先生自身の話が出てきて可笑しい。
確かに部屋を片付けたくなるなぁ・・
ソリューションフォーカスアプローチとの違いもよくわかった。
ソリューションフォーカスアプローチは、対処方法や、例外的に対処できた事例などを聞いていくのに対して、「問題解決技法」としてのCBTでは、問題構造の明確化を先行させる。
制約のあるオープン・クエッション(この本ではソクラテス式質問と呼んでいる)を使ってイメージを共有できるところまで質問を行うといった技法の紹介もあり、なるほどと思わせる。
話を聞かない医師と、話を聞いてくれるだけで何にもしてくれないカウンセラーの次にCBTのカウンセリングを受け、ここでは普通に話していいのですね、といった感想を漏らすというエピソードも面白かった。
いきなり認知再構成法と呼ばれる表をわたすだけでCBTをやっていると自称するところが出てきて困っているという話もしていた。CBTをやっているから効くのではなく、まともなCBTをやってはじめて効くのだろう。
最近のライフハック本などは、CBTのエッセンスをうすーく薄めたようなものが多いと感じがする。
専門家向けではあるが、入門書であり、誰でも理解できる内容になっていると思う。
おすすめ。
伊藤絵美、向谷地生良(2007)『認知行動療法、べてる式』(医学書院)
「べてるの家」という北海道・浦河にある障害者の自立支援組織の活動のうち、特にSST(ソーシャルスキルトレーニング)を中心に、認知行動療法の観点で紹介したもの。
DVDが付いていて、SSTの様子が分かる。
べてるの家については、福祉の世界ではかなり有名な存在のようだ。
障害者が主体的に活動し、相互扶助を行い、経済活動としても成り立つようにしているという意味でも注目されているようである。
伊藤絵美氏は、2003年に働いていたクリニックを辞めて、いわば失業した時にべてるの家を見学に行ったのだそうだ。
伊藤絵美氏が、原因指向(ないしは原因除去指向)でもなければ、単純な解決指向でもない、問題指向を持つことが大切だと言っている。言ってみれば、「問題を生きる」ことを重視する考え方だ。
こういうものを見ていると、エンパワーってなんだろうなぁと思う。
少なくとも「開かれた質問」だけじゃあないだろう。
もやいがやっているような、生活保護申請の同行とかこそ。とか。
べてるなんかでもSSTの活動なんかより、昆布の袋詰めを手伝ってくれることが役に立つ場合だってあるに違いない。とか。
とはいえ、行動主義で力尽きててはエンパワーにはならないだろうし、と、グルグル考える。