« 2010年06月 | メイン | 2010年08月 »

2010年07月 アーカイブ

2010年07月02日

ADRに法律扶助の法制上の措置なしの理由

うーん。難しい。

・・法律扶助の対象化については、既存の制度上もADRによる和解交渉が民事裁判に先立ちとくに必要なものと認められれば、扶助の対象とされる余地があり、現時点でさらに法制上の措置を講ずる必要性に乏しいなどの理由から、結局、・・消極的意見が多数を占めたようである。 (注)・・なお、ADRの法律扶助対象化については、現在の日本司法支援センターの「業務ハンドブック」では代理援助対象になるとの扱いとなっている。 P6-7 竹下, 守夫 (2010) "司法制度改革審議会における審議過程から見たADR法の状況", 仲裁とADR, 5, 1-7.

上記を見る限り、ADR手続費用は補助対象外、ADR代理は補助対象であるということか。
しかし、ADR代理でも、法律扶助を使ったという話は聞いたことがないのだが・・

財政的な議論がされなかった理由をもう少し知りたい。
わたしは、ADR検討会のメンバーでこれを議論できる人がいなかったのではないかと疑っているのだが。

2010年07月04日

ゴム鉄砲の団体

小四の長男が、なぜかゴム鉄砲の製作に熱心になっている。
わたしの顔を見るなり、工作についての助言を求められる。知らんがな、と、おもうが、「とーちゃん、きいてない星人やな」などと、追求してくる。

それで、長男に教えてもらったのだが、日本ゴム銃射撃協会という不思議な団体がある。

会員になるのに一切費用が発生せず、会員証の発行は、運営主体の持ち出しで、会員証のハガキが送られてくる仕組みのようだ。
7月1日現在2208人の会員がいるということのようだが、この「ゆるさ」がなんともおもしろい。

組織形態は単なる任意団体で、何ら法人化のための手続もしていない。
先日、やっと、「権利能力なき社団」になった愛媛和解支援センターのことを思いだした。

日本の社会も、案外、懐が深いなぁとおもう。

2010年07月06日

今週末は仲裁ADR法学会大会

Japan Association of the Law of Arbitration and Alternative Dispute Resolution: 第6回仲裁ADR法学会大会案内

2010年07月07日

法務省のADR予算

法務省の平成22年(2010年)概算要求資料によれば、「裁判外紛争解決手続の利用促進に必要な経費」は、12,743,000円。

http://www.moj.go.jp/content/000001320.pdf
P110

ADR法 第四条 国は、裁判外紛争解決手続の利用の促進を図るため、裁判外紛争解決手続に関する内外の動向、その利用の状況その他の事項についての調査及び分析並びに情報の提供その他の必要な措置を講じ、裁判外紛争解決手続についての国民の理解を増進させるように努めなければならない。

ADRについての内外の動向調査は、国の責務になっているが、上記の予算でそのような活動ができるのだろうか?

2010年07月09日

群馬司法書士会・執務現場から

愛媛和解支援センターで、ことしの2月にあった企画が原稿化されて、印刷物を送っていただいた。

約30頁分の特集で、読み応えがある。何度か読み返しても、愛媛の松下さんや中野さんの独特の話し方もうまく生かして原稿化されているので、とてもおもしろい。


泉 いやぁ、驚きましたよ。今日の事例検討会に参加させていただいて。
松下 そうですか。
泉 何がいちばん驚いたって、皆さん非常に生き生きされてますよね。
江原 入ってきたとき、みんななんだか楽しそうでしたね。
茂木 質問もあれだけ出るし。・・
P65

松下 ・・ADRをやり出してから相談者がすごく増えたんです。ADRでやるような手法で相談を受けますから。われわれは司法書士という職業で物を見てますから、相談にきた人を全部その中へ引き込んで、その範囲で処理ができるように話をもっていこうとするような聴き方をしてしまうんです。ですから、「そうじゃないんよ、もうちょっと違うところなんよ」と思いながら相談者が帰っていくようなことが多いんじゃないかと思うんです。でも今は全部聴きますから。ほんとに聴くんです。やたらと聴いて。事務所の人に怒られるんですよ、長いいうて(笑)。だけどそれをやり出してからすごく増えましたよね、4~5年前から。だから、私は普通、午後は全部相談。多いときは30分おきに来ますし、少なくとも1時間に1人は来ます。

遠賀 ・・僕も一緒やから、多分そうじゃないかなぁという気がする。・・

松下 ・・ADRにかかわり続けとったらやっぱり儲かったんです。じわりじわりといろんなことがわかって、どういう業種の人でも相談を少し受けるようになったら、その相談を受けたことで信頼を受けるようになって、その相談に来た人がまた紹介してくるんですね。不動産登記だったり会社の登記だったり。そうすると、司法書士業も相談を通じて非常に安定してくるんですね。単発的な仕事だけども、そういうことで信頼ができたら、それが次々と伝播していく。
P63-64

松下, 純一, 江原, 崇人, 泉, 純平, 茂木, 光男, 他 (2010) "松下純一代表インタビュー&ADR大放談会", 群馬司法書士会・執務現場から, 42, 56-77.

2010年07月11日

瀬木判事による「家栽の人」批判

astin's Clip! - 瀬木判事による「家栽の人」批判

実録 「弁護士は儲からない」

実録 「弁護士は儲からない」 [講談社]

2010年07月12日

仲裁ADR法学会大会

意外とといっては失礼かもしれないが、おもしろい報告が多かった。

公害等調整委員会の活動について、ぼんやりとしか知らなかったのだが、元委員長で現在も顧問をされている加藤和夫先生の話は、情熱的で、問題の所在もよくわかった。
利用者満足度のアンケートデータも取っているそうで、それを示していたが、2008年(H20)現在は41%の満足度まで下がっている。
裁判所から人(裁判官と書記官)も出して、職権調査の権限まで広範に認められている制度にしては、満足度がいかにも低い。処理件数も少ない。ということでは、存立が危ぶまれるということで、近年、中央でてこ入れされているのだそうだ。
カラオケ騒音のような身近な紛争まで、「公害」として扱えるということだが、どういう機関がこのような問題を扱うのに向いているのかという意味の研究も必要だと感じた。

金融ADRについては、全銀協がこの2年くらい急に取り組みを変えだしたという話を聞いて驚いた。
2008年(H20)は30件、2009年は88件のあっせんをやったのだそうだ。
全銀協といえば、ゼロワンADR機関の典型だったので、ずいぶんと大きな変化だ。

銀行とりひき相談所の職員の属性はどうか、出向者か、という質問をしたが、出向者はおらずプロパー職員のみだという回答だった。いくらプロパーでも、銀行OBしかいなければしょうがないじゃないかとおもったが、質問の仕方がうまくなかったようで、それで終えられてしまった。これは残念。
業界型ADRも、件数が少ないのが問題のない証拠であるというレトリックは通用しなくなりつつあるということを改めて感じた。

報告がわかりやすかったのは、全銀協の辻松雄氏と、消費者側の弁護士として上柳敏郎氏の両方の立場からのものがあったからだとおもう。

業界が自浄能力を発揮できないと、貸金業と同じようになるかもしれないよ、と、上柳先生がボソっといっておられた。

2010年07月13日

松鵜さん・・

ADRへの意欲


労働審判制度についての意識調査

労働審判制度についての意識調査

東大・社研によるもの。

2010年07月14日

司法書士川柳

群馬司法書士会の『執務現場から Vol.42』で、司法書士川柳というのがある。41号に比べて、数も多かったようだが、不景気ネタが多かった。最優秀賞は、

家買った友よ登記はどうしたの 
  ワンKの友

という内容。個人的におもしろいとおもったのは、
書式だけタダで教えてもらえます?
  かしこい主婦

ほかにも、
 開業をしたけど仕事は会務だけ
  多重会務者予備軍

 いそがしさ考えてみりゃみな会務
  登記は皆無

 困っている人の世話して困ってる
  眠れる司士

 継がせたいような継がせたくないような
  前途ヨロヨロ

 電話機の故障気づかぬほどのヒマ
  固定出んわ

 今月も元気に大安まっしろけ
  大いなる不安

 ババ抜きのババが十枚ぐらいある
  重いでトランプ

 夢の中でも補正して謝罪して
  夢の職業

2010年07月15日

東京弁護士会・夏期合同研究(7/14)

東弁のADRセンターの方に誘っていただいて、午前は、ADR分科会に出席してきた。
岡山弁護士会仲裁センターについて、鷹取司弁護士のプレゼン。
ADRの手法を使って、紛争に至っていない事案も扱う「遺言・相続センター」を準備中であるそうだ。
これなら、ビジネスモデルが成り立つかもしれない。というか、成り立って欲しい。一つ成功例が出るということが大事だが、岡山弁護士会仲裁センターの熱心さ、誠実さ、能力があれば、なんとかなるかもしれない。
もう一人のプレゼンターは、京大元教授で中央大教授の棚瀬孝雄先生。面接交渉に特化した、家事ADRの構想を提案されていた。棚瀬先生は、共同親権についての運動にも関わっておられる。これもまた本気の提案である。
この企画は、9月のシンポの、プレシンポという位置づけだったが、大変おもしろかった。

午後は全体会で、労働審判について、寸劇と、コメンテーターによるコメントという構成のイベントも見てきた。コメンテーターのひとりが、東京地裁の労働部の白石哲裁判官という、まさに労働審判の担当責任者であった。かなり率直にコメントされていて、とてもわかりやすかった。
寸劇は、棒読み的であったが、わかりやすく実務を見せようという意欲に満ちていて、勉強になった。

労働審判という、裁定型の裁判所内ADRが整備されたことで、対話型ないし交渉支援型の裁判所外ADRも必要とされるように感じた。
労働審判は、もしかしたら、司法制度改革関連制度のなかで、最も成功したものかもしれない。
しかし、課題はいくつかあるように思った。
もうちょっと研究したい。

2010年07月16日

スケジュール合わせに便利なサイト

会議に 飲み会に スケジュール調整システム「ちょー助」

これ便利ですね。

2010年07月18日

いろいろなスケジュール調整サイト

ちょー助、以外にもいくつかあるようです。

12のスケジュール調整サイトを比較してみた | UMLAND

調整くん、調整さん、あたりが定番なのかな。

2010年07月20日

JAA調停人養成講座・基礎編

7月17日から19日の3連休は、仲裁人協会で調停人養成講座だった。

アンケートをちらっと見たら、「参加者に恵まれて楽しく学べた」という意見があった。
まさにそういう感じで、こういう研修はまったく初めてという方も、かなり勉強も実務もやっている方も、とても楽しそうに参加されていて、よかった。

裁判所で調停委員をされている方(その方は、同席調停もしばしば行っておられる)が、調停は、調停人がうまいかどうかというより、当事者がうまく動くどうかでよい結果に至る、という話をされた。
調停トレーニングも同じように、トレーナーがうまいかどうかというより、参加者が楽しくかつ真剣に学ぶという関わり方をしていただけると、よいセッションになるし、そうでないといくら努力しようとしても限界もある。

もうひとつ大事なのが、参加者の多様性である。
今回は、社労士、行政書士、土地家屋調査士、弁護士、調停委員、看護婦、マナー研修講師の参加があった。
15人の参加で、人数的にはとてもやりやすい。

多様な中で活動すると、自分が普段話をしている言葉の選び方一つが、目の前の相手に伝わらないという現実に直面せざるをえない。
そのことが、調停トレーニングにとっては、とても良い効果をもたらすようだ。

今回の新しい企画としては、「事例ワークショップ」と呼ぶものを入れた。また、「開かれた質問」のスキルトレーニングの活動を見直したこと。

2010年07月22日

JILPT「個別労働関係紛争処理事案の内容分析」

労働政策研究報告書No.123「個別労働関係紛争処理事案の内容分析」:研究成果/JILPT

2010年07月24日

命を継ぐもの

芝知美さんに、お父様の芝豊さんの遺稿集「命を継ぐもの」をいただいて読んでいる。

弁護士と司法書士のドル箱になる以前から債務整理分野に取り組んでこられたことで有名な人物だが、文章を読むと、いろいろ新たな発見があった。

司法書士が本人訴訟支援のスタンスを保つというかけ声は、少し上滑りだという自己批判とともに、レビン小林先生の本のなかに、本当の意味で本人訴訟支援をしていく方法の手がかりがあるということを書いておられる。このあたりは、なるほどというか、やっぱりという感じがする。ナアナアで和を強調するタイプよりも、むしろ、闘うことの価値と方法を知っている人の方が、メディエーションへの理解を正しく持ちやすいのかもしれない。

もうひとつ面白かったのが、書評コーナーの、本の選択の仕方である。
痴漢で逮捕された後の植草教授をはじめとして、世間的には「敗北者」として見られている人の言い分の中にも、真実の可能性を信じて耳を傾ける態度がある。決して、鵜呑みにしているわけでもないが、すくなくとも世間と自分自身を一体化させて、その人物を裁くということがない。

印象的なフレーズに、「文章が書けないのは、法律家としては致命的である」というものもあった。
そういえば、『執務現場から Vol.42』に、文章の書き方の講習会の様子が再録されていて、面白かった。

闘う文章を書く能力を身につけることが大事なのだと思う。
予備校の答案練習的な文章ではなく。

2010年07月25日

弁護士への苦情激増

弁護士会の「自由と正義」の6月号は、各会が年度総括を1頁ずつ書いている。
その中で見つけた記事。

当会(※第二東京弁護士会)の1999年の苦情件数はわずか82件に過ぎなかった。それが2009年には1062件に達している。この増加は、弁護士の質の低下と見るよりも依頼者層の意識の変化ととらえるべきである。「先生にお願い」する依頼者から「良質なサービスを買う」顧客への変化とでも言うべきだろうか。

櫻井, 光政 (2010) "回顧と展望 弁護士会・弁護士会連合会2009年度 第二東京弁護士会 会員サービスと弁護士会", 自由と正義, 61(6), 65.

顧客側が変化しているのに、サービス提供者側が変化できているのかという課題がある。

2010年07月26日

行きそこねた・・

労働審判5年目シンポ7月24日(土): 夜明け前の独り言 弁護士 水口洋介

2010年07月27日

ハーバードの講義でのティーチングフェローの役割

2010-07-25 - Cerebral secreta: 某科学史家の冒言録:『ハーバード白熱教室』の裏側:ハーバードの一般教養の授業をサンデルの講義を例にして説明してみる


結論:著名教授の大人数講義と若手による少人数の討論の組み合わせがハーバードの一般教養教育

つまり、サンデルの授業というのは、あの講義だけではなく、大学院生を中心とした若手を多数動員した少人数のきめ細かい指導を並行して行っているのである。それによって、授業をうける学部生にとっても、授業料に見合った高い水準で、効果的な教育可能にし、同時に、若手に教育経験をつませ、さらに生活支援を実現しているわけだ。

そしてそのような授業を、一般教養科目としてすべての分野の学生がなんらかの形で幅広く履修しなければならない。それを通して、学生はたとえば、サンデルの授業で扱っているような倫理的推論を、単なる講義上の知識としてだけではなく、それについて読み、考え、討論し、文章にすることを通して、自分の教養の一部として行くのである。その過程で、読むこと、考えること、討論すること、文章を書くこと、などの基本的な学問的、あるいは学問以外でも重要な技能を磨いていくわけである。


2010年07月28日

内閣府:総合法律支援に関する世論調査

内閣府大臣官房政府広報室(2008)「総合法律支援に関する世論調査」

 裁判外紛争解決手続(ADR)について,どのようなものがあることを知っているか聞いたところ,「裁判所が行うもの(民事調停,家事調停)」を挙げた者の割合が34.3%,「国民生活センターや中央労働委員会等の政府関係機関が行うもの」を挙げた者の割合が16.7%,「弁護士会・司法書士会等の資格者団体,NPO法人等の民間団体が行うもの」を挙げた者の割合が14.7%,「民間団体が行うもののうち,法務大臣の認証を受けた認証紛争解決サービス(かいけつサポート)」を挙げた者の割合が3.9%,「裁判外紛争解決手続(ADR)というものがあることは知っていたが,具体的にどのようなものがあるかは知らなかった」と答えた者の割合が5.5%,「裁判外紛争解決手続(ADR)というものがあることを知らなかった」と答えた者の割合が36.2%となっている。なお,「わからない」と答えた者の割合が16.6%となっている。(複数回答)

内閣府調査:総合法律支援に関する世論調査:裁判外紛争解決手続(ADR)への認知度 グラフ

法務省の深山氏が、論文中で紹介していたもの。
深山, 卓也 (2010) "法務省からみたADR法の状況", 仲裁とADR, 5, 14-24.

法務省認証については、3.9%の認知度と低いなぁ、というデータとしても読めるわけだが、ADRを何らかの形で知っているのは国民の三分の二だとも言えるわけで、認知度そのものは、さほど低くないと見る見方もあると思う。

2010年07月29日

7/27仲裁人協会・研究部会で報告

仲裁人協会の研究部会で、調停実務上の諸問題研究会の活動報告。

谷口安平先生と道垣内正人先生も聞きに来ていただいておりました。

「当事者に守秘義務があるか、義務づけるべきか」という問題がいちばんの盛り上がり。

2010年07月30日

本郷・ラボカフェ/博士のシェアハウス

Lab-Cafe
本郷三丁目から東大本郷キャンパスに行く途中に、プティフというカレー屋さんがあるが、その建物の二階で始めた、年会費500円の会員制カフェ。営業時間は19:00-26:30。

博士のシェアハウス
というプロジェクトも、やはり本郷のそばでやっているらしい。


About 2010年07月

2010年07月にブログ「私的自治の時代」に投稿されたすべてのエントリーです。新しい順に並んでいます。

前のアーカイブは2010年06月です。

次のアーカイブは2010年08月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Powered by
Movable Type