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2012年11月 アーカイブ

2012年11月02日

映画:想田和弘「選挙」「精神」

出張中の新幹線で映画を見るのも良いのではないかと思って、想田和弘監督の「選挙」と「精神」をDVDレンタルをして、見た。(同日に見たわけではない)

「選挙」を見て、政治が貧しくなる構造的な状況がよくわかると感じたが、同時に、この撮影と上映を許す自民党は懐が深いなぁとおもった。
主人公の山内和彦さん(山さん)、おくさんのさおりさんをはじめ、役者がそろっている感じ。
この山さんという方、特定郵便局の家庭に育っているけれど、小泉純一郎のファンで、顔も少し似ているということを売りに手の上げ方なども真似ている…

「精神」は、すごい映画だった。患者がまともすぎるという感想を持っている人もいるようだが、わたしはそこにひっかかりは感じなかった。映画をつくっている最中に監督の奥さんの柏木規与子さんの具合が悪くなってきて、映画に出てきていた山本医師に診てもらったという話もあったようだ。柏木規与子さんは、DVDに付属している上映会の様子のシーンに一瞬登場する。この奥さんのおかげで、想田さんは新しい世界に踏み出しているのだなぁという感想を持った。

DVあり、経済問題ありなので、法律家や法律家になる人にとって勉強になるという意味もある。精神科医である山本医師の面談の関わり方も学べる。・・しかし、そういう勉強の気持ち抜きに見たい映画だと思った。しかし、見ていると、「当事者」という抽象的な言葉を超えて、「当事者」を考えざるを得なくなるが…

「モザイクかけたら人間は描けない」 想田和弘監督インタビュー(上) (1/2) : J-CAST会社ウォッチ
「心の病になったからこそ人生が豊かに」 想田和弘監督インタビュー(下) : J-CAST会社ウォッチ

「精神」を見た感想のなかで、すごいと思ったのが↓。

ドキュメンタリー『精神』 - hituziのブログじゃがー

 「理解する」だとか、「ほめる」だとか、そんなことは ふざけたはなしです。必要なのは、理解されることでも、ほめてもらうことでもないはずです。必要なのは、つめたい まなざしを むけないこと、無視しないこと、いっしょに いきていくこと、ささえあっていくこと。それだけです。

 理解できないところは、のこるに きまっています。理解するしないで、また だれかを 分断するようなことを しては いけないのです。よく わからないけど、なんだか すきだ。あるいは、すきになれないけど、でも なんだかんだで いっしょに やっている。そんな関係で いいではないですか。

 なによりも、理解し、評価するのは「こちら側」であり、わたしは「こちら側」にいるんだという発想そのものを、すてさることが必要です。コミュニケーションは、やりとりです。一方通行にばかり かんがえていると、「こちら側」だと おもっている「わたしたち」という集団が 「ようしゃない」「こわい ひとたち」だと感じられているということが、わからなくなってしまいます。

 「わたしたち」というのは、そのときそのとき、ある意図を もって つくられるものです。その目的というものが、「あのひとたち」を わたしたちから分別し、排除するかたちで つくられる「わたしたち」であるならば、そんな「わたしたち」が すばらしいわけがないのです。

2012年11月05日

Jenny BeerさんのMediator's Handbook新版

Jennifer E. Beer&Caroline C. Packard(2012)"The Mediator's Handbook"

Jennifer Beerさんの調停人ハンドブックの新版(4版)が出た。前の版は1997年だからずいぶん久しぶり。一度日本でワークショップをやってくださった関係でお知り合いになれた。推薦文を書かせていただいたので、わたしの名前が本の背表紙に出ていて、うれしい。

具体的で簡潔な説明が多く、また人間的な暖かみのある手書き部分もあって、調停の良さが伝わる本だと思う。

Issueという用語は、Topicに変わっているが、基本的なステージモデルは維持され、発展している。

過去(2008年)のエントリー:

2012年11月06日

全青司・7期基礎編のふりかえり

先週末は、全青司のトレーニング基礎編7期だった。

去年は3日(基礎編)+3日(中級編)+2日(上級編)だったが、今年はすべて2日ずつの全6日。
参加しやすくなったせいか、あるいは司法書士会本会での広報が功を奏したのかわからないが、28人の申込みがあり、27人の参加があった。

北は盛岡から西は熊本まで。年齢差も広かった。

何度やっても反省が出るのが調停トレーニングだが、初日の稲葉先生の調停デモについて、ご本人としての感想はともかくとして、わたしにとっては、このデモを見ることができてよかったと強く強く思えるものだった。
対話型調停を誤解して安易に決めつけている人というのが意外なほど多い。しかも、やっかいなことに、アンチだけでなくシンパにも存在している。

簡単に言うと、対話型調停=コミュニケーションスキル+(自分の)常識 (→だから法律を無視して良い)と思い込んでいる人と、対話型調停=コミュニケーションスキル+法律 (→だから法律を振り回しても良い)と思い込んでいる人が多すぎる。

そのどちらでもなく、両当事者の常識も、両当事者の権利に関わる主張も全部テーブルに載せて話し合いをするというのが、わたしが考える対話型調停である。

調停トレーニングというのは、調停では法律を無視していいのですか、逆に振り回していいのですか、どっちですか、と聞きに来ている参加者に、あなたは自分が当事者だったら、法律を無視したり、逆に振り回すような調停人に調停されたいですか、と、聞き返す仕事であるのだが、同時に、不快にさせずに楽しく、かつ、確かに別のやり方が存在するなぁと実感してもらわなければならない。
これが難しいのだが。

2012年11月07日

12/1-12/6は沖縄HILに参加

今年も、Tグループ(人間関係トレーニング)に参加。一応スタッフ側としてだが。

沖縄には3年連続で行くことになり、通算でも4回目だが、この筋では初心者と言える。

自分にとってはとても大切にしている活動なので、とても楽しみ。

2012年11月10日

Mediator's Handbook面白い

調停人の、はじめの挨拶のところでは、「電子機器の電源を切る」という注意を入れている。(P33)ケータイで注意がそがれるという話のほかに、こっそり録音されるということも避けるために。

経験の乏しい通訳は容易に意思決定者になってしまう危険について書かれていたり。(P108)

ファシリテーション・グラフィックでも、「活字体を使おう」「余白を使おう」(動詞で書くのもこつ)「文字は青、茶、紫、緑」「目印は赤、オレンジ、ピンク(黄)」「シンボル(スマイルマーク、☆、その他のイラスト)を使おう」「円や矢印」などのコツについても書かれている。(P132)

といったような、納得感のある具体的な記載が満載である。

と、同時に、「Partilal to all(皆の味方になる)」(P95)-共感を示す-とか、「Ultimately it's about your mindset, not external performance.(究極的にはあなたの構えの問題で、外に出てくるふるまいの問題ではないのだ)(P96)とあるように、テクニック以前の話も豊富に、具体的に書かれている。

ムーアの『調停のプロセス』が百科事典的アプローチであるのに対して、こちらは自分たちの選択肢、関わり方の理念と技術を読者と共有したいというアプローチである。第三版に比べて、応諾要請を含めた事前の関わり部分の記載が充実した等をはじめとして、かなり内容が変わっている。

この本の読書会的な活動をしてみたいなぁと考えはじめている。福岡での活動になるが、ネットでの参加ができるようにすればより面白いかなと考えてみたり。・・興味を持たれた方は連絡してください。

Jenny BeerさんのMediator's Handbook新版 (私的自治の時代)

The MEDIATOR'S HANDBOOK

2012年11月15日

論文メモ:労働審判利用者調査

労働訴訟に比べて満足度が高い。
たとえば、裁判官への満足は、訴訟に比べて高い。
 2.67(労働訴訟)→3.47(労働審判)

使用者側当事者の評価について、従業員100人未満の規模の小さな企業では評価が低く、それ以上の比較的規模の大きな企業では評価が高い。労働審判制度は、大企業で支配的な労働慣行をスタンダードとしていると考えられる。

佐藤 岩夫「労働審判制度利用者調査の概要と制度効果の検証」日本労働法学会誌120巻(2012年)22-33頁

2012年11月16日

等しくないものを同一に扱ってはならない

リッチモンド先生曰く。

…われわれは、裁判所においてだけでなく、法律を施行するものがパースナリティに関して学ばなければならないことを次第に認識するようになった。これらの施行者が、パースナリティを援助したり害したりするところ、また個人差を誤って研究して、ひとしくないものを同一に扱ったりするところではどこでも、法律の目的と実際的な成果とは、ほとんど関係のないものとなり、そのため夜中に通過する船のように、互いに知らぬ間にすれちがうように思われる。(P238) リッチモンド メアリー(杉本 一義訳)『人間の発見と形成 : ソーシァル・ケースワークとはなにか』(誠信書房・1963年) Mary E. Richmond (1922) "What is Social Case Work?" Russell Sage Foundation 

2012年11月19日

穂積重遠晩年の日記刊行!

終戦戦後日記--1945~50年 | 有斐閣

おぉ。こんなのが出るのかと。

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