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2008年06月 アーカイブ

2008年06月01日

我那覇氏のドーピング疑惑問題について

我那覇選手のニュースは、ADRの知名度を上げるのだろうか。

4500万かけて、210万円の「勝ち」の裁定を勝ち取ったという。
日刊スポーツ:男だ!我那覇「裁判費用自己負担する」
費用負担するのが、男か?

Jリーグは謝罪をするが、今のところ、裁定の準備費用の支払いをする気はないらしい。
国内のADR法認証一号のADR機関での仲裁を断って、CASに持っていくことにしたのはJリーグ側の主張だったのに。

「信じた道を貫いてよかった」=J1川崎の我那覇、声詰まらせ感謝


会見には我那覇の弁護団も同席。Jリーグ側が、CASの裁定(英文)では我那覇が受けた治療が正当な医療行為だったかどうかの判断をされていないとしていることについて、弁護団は一様に驚きの反応を示した。望月浩一郎弁護士は「どちらが誤訳かは明らか」と話した。

国際仲裁には、翻訳の問題も出てくるという点も興味深い。が、それ以上に、Jリーグの対応は一応紳士的に謝罪しようとしながら、ナベツネ氏の迷言「たかが選手」という発想が言葉の端々に感じさせられる。

企業や組織側の弁護士稼業において”市民感情の研究”をする余地もありそうに感じた。
「違反かそうでないかも判断してないし、Jリーグの判断が間違いだったとは(CASは)言ってない」と原秋彦弁護士が言っているそうだ。組織のためによかれと思って発言しているのかもしれないが、現時点でこのような発言がニュースになる意味やリスクをきちんと評価できているのか疑問だ。

2008年06月03日

認知行動療法の入門書

伊藤絵美(2005)『認知療法・認知行動療法カウンセリング初級ワークショップ―CBTカウンセリング』(星和書店)

認知行動療法(CBT)のワークショップ記録形式のテキスト。
DVDも併せてでているようだが、本だけでも十分に理解できる。

CBTの考え方を紹介するときに、原稿が書けなくて焦ると、ぐずぐずしたり、歩き回ったり、部屋を片付け始めるという伊藤先生自身の話が出てきて可笑しい。
確かに部屋を片付けたくなるなぁ・・

ソリューションフォーカスアプローチとの違いもよくわかった。
ソリューションフォーカスアプローチは、対処方法や、例外的に対処できた事例などを聞いていくのに対して、「問題解決技法」としてのCBTでは、問題構造の明確化を先行させる。

制約のあるオープン・クエッション(この本ではソクラテス式質問と呼んでいる)を使ってイメージを共有できるところまで質問を行うといった技法の紹介もあり、なるほどと思わせる。

話を聞かない医師と、話を聞いてくれるだけで何にもしてくれないカウンセラーの次にCBTのカウンセリングを受け、ここでは普通に話していいのですね、といった感想を漏らすというエピソードも面白かった。

いきなり認知再構成法と呼ばれる表をわたすだけでCBTをやっていると自称するところが出てきて困っているという話もしていた。CBTをやっているから効くのではなく、まともなCBTをやってはじめて効くのだろう。

最近のライフハック本などは、CBTのエッセンスをうすーく薄めたようなものが多いと感じがする。
専門家向けではあるが、入門書であり、誰でも理解できる内容になっていると思う。
おすすめ。

2008年06月05日

新潟・関川さん

新潟・燕市の司法書士の関川治子さんのブログ

2008年06月06日

ADR法についての本

和田仁孝・和田直人他(2008)『ADR認証制度 ガイドラインの解説』(三協法規)

少し前に出たことは知っていたのだが、やっと入手した。

隣接士業のADR法認証をめぐる議論が中心。
和田仁孝先生が、かなりはげしく日弁連ガイドラインを批判している。また、中村芳彦先生が、弁護士会内でADR法認証を取ることに対する積極説と消極説を、これまたかなり激しく論じている。

個人的には、白鴎大学の和田直人先生が、ベクトルの違う形で鋭い議論をされているのが興味深かった。
また、愛媛土地家屋調査士会の岡田潤一郎先生が、ひとりでやたらと愛のある文章を書いておられる。ADR法の認証も、こういう形なら意味があったという事例だろう。

札幌の司法書士会での、調停人の能力査定の仕組みが紹介されていた。
評価項目として、①話を聴く姿勢、②傾聴、③適切な質問法、④いいかえ・要約の活用、⑤感情の反映という5項目が設定されている。

札幌の試みは自分たちでなんとか理にかなった親切な対応をしようという試みとしてすばらしいものだとおもう。しかし同時に、調停人の能力査定と、受容・共感的なカウンセリングの能力査定が同一になっているところに、現在の対話型とか促進型とか自主交渉援助型とか呼ばれているものへの理解の限界を感じる。

少なくとも、米国でのものとは大分違うということは言っておかなければならないと思っている。

アメリカの例としては、例えば、以下を参照。
The Test Design Project
ヴァージニア州・メンティー評価シート
Department of the Navy Mediator Certification Program

2008年06月09日

演劇系のインプロ

絹川友梨さんのブログ

演劇系のインプロ(インプロヴィゼーション)のワークショップを広めておられる方。
中年学生をやっておられる点も勝手に共感。

この人のワークショップも出てみたいなぁ、とおもう。
インプロワークス

2008年06月10日

グループ理論と調停

日本でメディエーションを勉強する人の一部で、南山大学の人間関係研究センターのグループトレーニングを受講するのが流行っているが、米国でも似たような議論があるのを見つけた。

Gaynierというひとが、ゲシュタルト心理学の手法は、トランスフォーマティブ(変容型)メディエーションに理論的基礎を与えるという論を張っている。

Gaynier,"In Search of a Theory of Practice: What Gestalt Has to Offer the Field of Mediation?", in the Gestalt Review 7(3):180-197,(2003)

Gaynier,"Transformative Mediation: In Search of a Theory of Practice",Conflict Resolution Quarterly, 22(3), Spring 2005

Bush & Folger, "A Response to Gaynier’s “Transformative Mediation: In Search of a Theory of Practice”", Conflict Resolution Quarterly, 23(1), Fall 2005

2008年06月11日

かいけつサポート:京都府社会保険労務士会


京都府社労士会:ADR法認証第13号

社労士会では初ですね。

司法書士会はまだでしょうか。

2008年06月12日

認知行動療法、べてる式

伊藤絵美、向谷地生良(2007)『認知行動療法、べてる式』(医学書院)

「べてるの家」という北海道・浦河にある障害者の自立支援組織の活動のうち、特にSST(ソーシャルスキルトレーニング)を中心に、認知行動療法の観点で紹介したもの。
DVDが付いていて、SSTの様子が分かる。

べてるの家については、福祉の世界ではかなり有名な存在のようだ。
障害者が主体的に活動し、相互扶助を行い、経済活動としても成り立つようにしているという意味でも注目されているようである。

伊藤絵美氏は、2003年に働いていたクリニックを辞めて、いわば失業した時にべてるの家を見学に行ったのだそうだ。
伊藤絵美氏が、原因指向(ないしは原因除去指向)でもなければ、単純な解決指向でもない、問題指向を持つことが大切だと言っている。言ってみれば、「問題を生きる」ことを重視する考え方だ。

こういうものを見ていると、エンパワーってなんだろうなぁと思う。
少なくとも「開かれた質問」だけじゃあないだろう。
もやいがやっているような、生活保護申請の同行とかこそ。とか。
べてるなんかでもSSTの活動なんかより、昆布の袋詰めを手伝ってくれることが役に立つ場合だってあるに違いない。とか。
とはいえ、行動主義で力尽きててはエンパワーにはならないだろうし、と、グルグル考える。

2008年06月13日

神奈川県司法書士会がADR法認証取得

司法書士会で初ですね。

http://www.moj.go.jp/KANBOU/ADR/jigyousya/ninsyou0014.html

↓このURLを見ていると、新しい認証機関が分かります。

http://www.moj.go.jp/KANBOU/ADR/itiran/ninsyou-index.html

2008年06月14日

全青司でトレーニング

全国青年司法書士協議会の調停トレーニング(フォローアップ、1日)を行いました。共同講師。会場は愛知県司法書士会。

2008年06月15日

裁判所の予算と調停委員の報酬

裁判所の予算は約3100億円から約3200億円であるが,そのうち約100億 円が調停委員の報酬である。コスト効率のよい紛争解決手段といえる。実行満足度も高い。癒しの効果もある。外国から日本の裁判所の見学に来る人の中には, 調停を見たいという人が多い。

明日の裁判所を考える懇談会(第6回)
2002年11月27日(水)
http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/asu_kondan/asu_kyogi6.html

この懇談会は、北川正恭、田中直毅、平木典子、米本昌平など面白い人選。

2008年06月16日

子供用漢字辞典

和泉新(2003)『 くもんの学習 漢字字典』(くもん出版、第三版版)

小二の長男に買った。平塚駅ビルのサクラ書店に長男と二人で行って、長男が選んだもの。
多くの漢字辞典は画数順になっているが、この辞典は学年順になっている。

すべての字に、図入りの成り立ちが載っている。書き順もすべて載っている。あんまりぎっしり詰め込んでいないので見やすい印象がある。

「弟」という字を調べると、ツタがからみついている木の棒の下の方に「ノ」が付いていて、下方を表すという成り立ちが解説されている。からみついているツタは不要といえば不要なのだが、甘えん坊の弟がねばりついている感じが弟らしくて面白いとおもった。

2008年06月17日

労働分野のADR

JILPT(労働政策研究・研修機構)では、昨年度の企業内紛争解決システムの研究でお世話になり、報告書の一部も執筆させてもらった。(もうすぐ公表されると思う)

こちらの報告書は、企業外の(つまり、一般の)ADRを調査したもの。
企業外における個別労働紛争の予防・解決システムの運用の実態と特徴

この研究所は熱心で、品質の高いレポートをたくさん出している。

職業相談におけるカウンセリング技法の研究
も面白かった。
相談の技法として、紹介型→傾聴型→触媒型と3つの類型が紹介されている。

ここで言われている「触媒型」の方法は、調停の理念と技法に近いと思う。

2008年06月18日

産業カウンセラー協会がADRサービス開始

産業カウンセラー協会・報道発表

「対話促進」手法で、勤労者が直面する職場の紛争解決をサポート。ADR開始。(2008年5月21日)[pdf]

ADR法認証の取得を目指しているそうです。

2008年06月19日

ピア・サポート学会

ピア・サポート学会

この学会で推奨しているトレイバー・コールの本には、わかりやすいメディエーションの説明がある。
ピア・サポート・トレーナーの資格制度というのができたそうだ。
一度覗きに行きたい。

トレバー・コール(2002)『ピア・サポート実践マニュアル』(川島書店)

2008年06月20日

ADR機関のADR実施の少なさ

Matimulog: ADR:苦情処理の真相は?

[asahi.com]苦情の99%、専門家経ず「解決済み」 金融業界団体

ADRの研究者にはよく知られている事実だけれど。

アメリカでもBBBなんかでは、非公式の仲介(conciliation)で解決するものが多い。
しかし、ちょっとしたコミュニティセンターでも200件くらいの調停を実施している例は多く、日本のADR機関の多くが一桁代というのとは大違いだ。
それにしても、燦然と光る全銀協の年間1件という数字。

2008年06月21日

和田仁孝先生のトレーニング

早稲田総研での和田仁孝先生のトレーニングを見せていただいた。

コンフリクト・マネジメント・セミナー 上級編

対話型調停(自主交渉援助型調停)と、法情報の扱い方などが主な論点。

2008年06月22日

岡山弁護士会・仲裁センターでメディエーショントレーニング

岡山弁護士会・仲裁センターで、仲裁人、仲裁人候補者に調停トレーニング(中級編)を実施してきました。6/21,22(共同講師)

弁護士会の「仲裁」は、和解あっせんと呼ばれる事実上の調停活動が実務的には中心です。

講師として学んだというだけでなく、前後の時間などに、いろいろ教えてもらいました。

以前のエントリー:
1月の基礎編実施

2008年06月25日

調停トレーニングは疲れる

オノ・ヨーコ(1990)『ただの私(あたし) 』(講談社文庫)を読んでいたら、ライブ前の一週間は断食をするという話が書いてあった。1週間断食というのは想像も付かないが、おそらく感受性を高めるためにそういうことをしているのだろう。

調停トレーニングはライブと違うものだが、事前には緊張するし、事後にはぐったりする。

調停トレーニングが疲れるのは、人の価値体系にゆさぶりをかけるような側面があるからだと思う。受講者には、受講者の歴史があり、体験がある。その常識にゆさぶりをかけられると、その反動が働くのは当然で、しばしば反感が講師に向けられるのは自然なことだ。
わたしがレビン先生のトレーニングを最初に受けたのは2004年だが、この頃から比べると、講師に対してあからさまな抵抗を示す人は減ってきているように思う。
ADR法ができて、「そもそも日本でADRなんて普及する余地があるのだろうか」という質問をする人が減った気がする。「そもそも日本でADRなんて」という疑問自体はちっとも解消していないにもかかわらず。

ただ、荒い理解しかしていないけれどなんとなくADRに対して好意的な人よりも、ADRの持つうさんくささに敏感に反応する人の方が、本当はADR運動にとっては必要かもしれないと、常々思っている。

ところで、先日、岡山弁護士会でトレーニングをさせていただいた時にはつくづく疲れた。しかし、それは、想定していた抵抗が出たからというよりも、想像以上に好意的に受け止められたが故に、その中でのまともで本質的ないくつかの質問に自分自身が納得できる答えができなかったからだった。

糧にしていこうとは思います。

2008年06月26日

千葉家裁松戸支部の取組

吉田彩・田中義一(2008)「千葉家庭裁判所松戸支部の家事調停への取組」(ケース研究295号)

体験型学習を取り入れているそうです。

調停に関する一般的説明を「調停のしおり」にして、期日通知書に同封したところ、書記官室に殺到していた問い合わせが大幅に減ったそうです。

2008年06月27日

文献管理ソフト

http://www.usaco.co.jp/products/isi_rs/endnote.html

http://www.varsitywave.co.jp/products/getaref/index.html

http://www.surf.nuqe.nagoya-u.ac.jp/~nakahara/Software/BibCompanion/

http://www.kenkyuu.net/comp-soft-02.html

http://members3.jcom.home.ne.jp/refwin/

みなさんどうしているんだろう?

最近の英語の文献引用の方法では、斜体を使うのが一般的なようだが、テキストファイルで管理では間に合わないではないか。

文献を読んだときにちょっとしたメモを取っておきたい場面に、どういう流れで仕事をしているのか、とてーも気になる。

2008年06月28日

日証協、ADR認証取得へ

J-CASTニュース : 全国でトラブル仲介 日証協が解決に対応

日証協は、金融関係のADR機関としては最も機能しているところ。

2008年06月29日

2000年のレポート

民事司法改革へ向けての意見 | 論文・提言 | 21世紀政策研究所
民事司法改革へ向けての意見本文2001.1.19(PDF)
21世紀日本の民事司法制度を構想する2000.5.25(PDF)
民事司法の活性化に向けて1998,12.22(PDF)

ふと見つけたのだが、2000年5月に出されたレポートにしては、その後実行された割合がやけに高い気がする。

例えば、ADR機関認証を提言しているほか、少額訴訟や簡裁で扱える額の引き上げなど。

21世紀政策研究所は経団連が作ったシンクタンク。
当時、田中直毅氏が理事長を務めていた。

現在田中直毅氏は、国際公共政策研究センターの理事長。

*

リンクが間違っていたので修正。(2008/07/09)
それにしても、興味深いレポート。

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