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調停トレーニングは疲れる

オノ・ヨーコ(1990)『ただの私(あたし) 』(講談社文庫)を読んでいたら、ライブ前の一週間は断食をするという話が書いてあった。1週間断食というのは想像も付かないが、おそらく感受性を高めるためにそういうことをしているのだろう。

調停トレーニングはライブと違うものだが、事前には緊張するし、事後にはぐったりする。

調停トレーニングが疲れるのは、人の価値体系にゆさぶりをかけるような側面があるからだと思う。受講者には、受講者の歴史があり、体験がある。その常識にゆさぶりをかけられると、その反動が働くのは当然で、しばしば反感が講師に向けられるのは自然なことだ。
わたしがレビン先生のトレーニングを最初に受けたのは2004年だが、この頃から比べると、講師に対してあからさまな抵抗を示す人は減ってきているように思う。
ADR法ができて、「そもそも日本でADRなんて普及する余地があるのだろうか」という質問をする人が減った気がする。「そもそも日本でADRなんて」という疑問自体はちっとも解消していないにもかかわらず。

ただ、荒い理解しかしていないけれどなんとなくADRに対して好意的な人よりも、ADRの持つうさんくささに敏感に反応する人の方が、本当はADR運動にとっては必要かもしれないと、常々思っている。

ところで、先日、岡山弁護士会でトレーニングをさせていただいた時にはつくづく疲れた。しかし、それは、想定していた抵抗が出たからというよりも、想像以上に好意的に受け止められたが故に、その中でのまともで本質的ないくつかの質問に自分自身が納得できる答えができなかったからだった。

糧にしていこうとは思います。

コメント (4)

市ヶ尾小町:

ぐっとくる内容です。

入江さんに疲労をもたらすきっかけとなった「まともで本質的な質問」とはどんな質問だったのでしょう。

「ADRに対して好意的な人よりも、ADRの持つうさんくささに敏感に反応する人の方が、本当はADR運動にとっては必要かもしれない」ように、受講者からの質問に対して、満足のいく回答が出来た、と得心している講師より、常に疲労を感じながら、より納得のいく答えを求め続ける講師の方が必要なのかもしれません。

でも、しんどい、でしょうね。

今度冷えた麦酒でもご馳走させてください。

ヱ:

例えば、終わりに集めた意見で、以下のような課題が出ました。
・課題(イシュー)の設定の話に移行する際に当事者にどのように説明すべきかがまだよくわからない。(直接問題となっている事柄の解決との関連性の説明が難しい)
・過去の清算がすべてである事件、専門技術的な紛争など事件の性質に応じたエンパワーのあり方を明らかにして欲しい。
とか。
頭のいい人達が、やけに真剣に取り組んでくださった感じが伝わりますでしょうか。

君島浩:

法学と言語学と教育学が交差する分野として興味を持ちました。私は教育デザインの専門家であり、防衛や医学などの分野を手伝っています。法学教育にも強い関心を持っているのですが、人脈ができません。本件は医療の診察に関する模擬患者の話題に通じる気がしました。模擬患者についてはキーワード「東京SP研究会」などで検索できます。模擬患者を使う医学生訓練や模擬患者自身の訓練は、公式試験にも対応しているぐらい、とても綿密なので、良い競争分野になるではないでしょうか。
法学は理論と実践と教育方法がしっかりした分野だと思います。ただし、医学が欧米や留米帰りの現代的教育学の専門家の協力を得ているのに比べると、法学と教育学の接点は乏しいように感じます。心の科学と心の教育の科学も存在します。また、法学は司法学が発達して、立法学や行政学が遅れている感じがして、それが司法学の足を引っ張っている気もします。なお、教育学にのめり込まずに、主題の法学に軸足を置くことは、今後とも大切でしょう。
一方、教育学は法学や医学に比べて現代化が遅れています。実践体験論と歴史物語論に偏重していて、部外者が良質の情報を見分けて勉強するのは大変です。鈴木克明先生の情報は理論や方法論がしっかりしており、バランスも良くて頼りになります。

ヱ:

君島先生
はじめまして。

書き込みありがとうございます。

ほとんどのご指摘に共感します。
わたし自身、法学と言語学と教育学の接点にあるという問題意識を持っています。

司法制度が使いやすくなるにつれ、こういう分野の研究が必要になると思っています。

ところで、模擬患者を使う医学生訓練を見習って、模擬相談者を使った法律面談を研究しておられるグループもあります。

わたしは常々、もっと学際的な研究が進められたらと思っています。

よろしくお願いいたします。

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2008年06月25日 08:38に投稿されたエントリーのページです。

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