ダニエル・H. フット[2006]『裁判と社会―司法の「常識」再考』(NTT出版)
また、読書メモは書くかもしれないけれど、まずは感想。
わたしの指導をしてくださっている先生だからというのではないけれど、非常にショックを受けた。
一読して、この本は影響力を持つだろうなと思った。
すくなくとも法学者には読まれそうだが、官僚も読み出すんじゃないかと思う。
ビジネスマンは読むかどうか分からないが、ベストセラーになる可能性も充分備えているように感じた。
日本の司法システムに対して、アメリカなどに比較してこれが足りないと言い立てたり、逆に、アメリカの言いなりでこんなに振り回されているなどという話はよく聞くが、その種の話は得てして、その話し手の領域に読者を扇動して引き込むための戦術にすぎないことが多い。
この本で、基本的のとられているスタンスは、そういうものとは全く違う。
日本の司法システムを、ひとつの先進国の司法システムとして尊重しながら、その発展経緯を<動態>として捉えている、というふうにまとめられるかもしれない。
法体系を<静態>として、解釈的に陳述する説明が、日本ではあまりにも幅を利かせているので、この本が持っているような、達成されているものと達成されていないものを相対化できる視点を持てるような法学の本はほとんど見かけないが、これは稀有な例外だと思う。
日本では何かあると、すぐ「重大な改革の時期だ」などと騒ぎ立てるので、日本の改革騒ぎには眉につばをつけて見る癖がついているとしたうえで、それにも関わらず、現代の司法制度改革は本当の大きな改革をしようとしていると述べている。
わたしもそうだと思う。