えらそうに言うと、ブーメランになって自分に刺さるだけなのですが・・
大学院進学志望者の学生さんから相談を受けたので、はじめて修士課程に進学する立場で何をしたら良いかを考えてみた。
わたしのブログは、学生さんよりも、(法律)専門職の方などすでに職業を持っている方が見ている場合が多いと思うが、たとえば、会務を進めていく場合にも、合意をとりながら物事を進めていく上では、研究手法を身につけておくことが有用だと思うので。
えらそうに、何を言っとるか、という妄言(自分の中の声・・)も聞こえてくる気がするが、気にせずに行くことにする。
1.とりあえずの研究テーマを作ること
本気を出せば成果を出せると思っている人は多いが、実際には、本気を出してからが勝負である。本気を出したとたんに、自分の頭の悪さに嫌になったりする。知識のなさやらなまけぐせやらも本気になって邪魔をしてくる。
研究テーマは暫定的に作れば良い。たとえば10個考えてみるのもよいかもしれない。
まず、ひとりでブレインストーミングして、10個リストアップする。
テーマは、「同席調停と別席調停」みたいな名詞で止めるのではなく、「なぜ、日本の家事調停で同席調停が普及しないか」といったリサーチクエッションの形(疑問文)で作る。
次に、その10個のテーマを、具体的に行うには、どのような活動が必要か考えてみる。文献レビューとして、どの辺りから手をつければ良いか、実査研究(アンケートやインタビュー)を行うかなども考える。
少なくとも10個のうち、3個くらいは、上記のような検討を基にした研究計画を書いてみる。
この段階では、それぞれ、500字~1000字くらいの短いものでもよい。
次に、図書館に行って、関連文献を集め目を通す。参照→ 原田大樹先生:九大法学部生のための情報収集ガイド
文献を見たときには、まめに研究ノートに書誌情報とメモを残す。
文献で学んだことを踏まえて、研究計画を書き直しメモを作る(まずは、1000字程度でもよいとおもう)。
研究計画では、何が足りないかという現状分析、リサーチクエッション、研究手法(インプット、方法、アウトプット)を明らかにする。
ここまでできたら、指導教官を含めて、様々な人に相談するとよい。
(この段階以前に相談してはいけないという意味ではない。助言する側に、相談者の意図が分かる程度の情報を与えないと、適切な助言がしづらくなる。)
2.研究ノートを作ること/論文執筆作法を意識的に学ぶこと
自分の思考を育てることが大切である。そのための方法として、研究ノートを作るとよい。これは別に新しい方法ではない。梅棹忠夫の『知的生産の技術』には、200字のミニ論文を書く習慣を作れと書いてある。野口悠紀雄の『超整理法』にも、アイデア製造システムへの言及がある。
5000字程度の小論を毎月新たにアウトプットできるくらいの基礎体力をつけることを当面の目標とする。
戸田山 和久『論文の教室 : レポートから卒論まで』(日本放送出版協会・2002年)
白井 利明=高橋 一郎『よくわかる卒論の書き方』(ミネルヴァ書房・2008年)
なども大変参考になるはず。
3.生活習慣の重要性
文系の研究の場合、自分との闘いという側面が強い。調子の良いときもあれば悪いときもある。メンタル面を維持するためにも、むしろフィジカル面に気を配るとよいとおもう。
矢野顕子が離婚後に自尊心を維持するためにジムに行くことを勧められ実行したという話をしていた。
わたしは、2007年からジョギングをはじめたがいまでも一応続いている。
自分の生活を見直してみて、書店や図書館に行く時間をとっているか、研究テーマを探す・拡げる活動、とりあえず決めた研究テーマを深める活動などをしているか、など、問い直してみる。
本当にやろうと思えば、仁義なき戦いの菅原文太なみに、「時間がないんじゃあ」ということになるとおもう。
人文社会系の研究は、毎日(手を抜くかもしれない)自分とのたたかいであり、人と比べた量ではなく、毎日、自分なりにできる限り学んでいるかどうかです、と某人に言われる。それに尽きると思う。
— 大野更紗 Sarasa Onoさん (@wsary) 7月 27, 2012
*
ということで、ご健闘をお祈りしています。
進学を考えられている方は、思い切って様々な人に相談してみたら良いと思います。
そして、ついでに不吉な話もリンクしておきます。
データえっせい: 専攻別にみた博士課程修了生の惨状