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2012年09月 アーカイブ

2012年09月04日

えらそうに言うと、ブーメランになって自分に刺さるだけなのですが・・

大学院進学志望者の学生さんから相談を受けたので、はじめて修士課程に進学する立場で何をしたら良いかを考えてみた。

わたしのブログは、学生さんよりも、(法律)専門職の方などすでに職業を持っている方が見ている場合が多いと思うが、たとえば、会務を進めていく場合にも、合意をとりながら物事を進めていく上では、研究手法を身につけておくことが有用だと思うので。

えらそうに、何を言っとるか、という妄言(自分の中の声・・)も聞こえてくる気がするが、気にせずに行くことにする。

1.とりあえずの研究テーマを作ること

本気を出せば成果を出せると思っている人は多いが、実際には、本気を出してからが勝負である。本気を出したとたんに、自分の頭の悪さに嫌になったりする。知識のなさやらなまけぐせやらも本気になって邪魔をしてくる。

研究テーマは暫定的に作れば良い。たとえば10個考えてみるのもよいかもしれない。
まず、ひとりでブレインストーミングして、10個リストアップする。
テーマは、「同席調停と別席調停」みたいな名詞で止めるのではなく、「なぜ、日本の家事調停で同席調停が普及しないか」といったリサーチクエッションの形(疑問文)で作る。
次に、その10個のテーマを、具体的に行うには、どのような活動が必要か考えてみる。文献レビューとして、どの辺りから手をつければ良いか、実査研究(アンケートやインタビュー)を行うかなども考える。
少なくとも10個のうち、3個くらいは、上記のような検討を基にした研究計画を書いてみる。
この段階では、それぞれ、500字~1000字くらいの短いものでもよい。
次に、図書館に行って、関連文献を集め目を通す。参照→ 原田大樹先生:九大法学部生のための情報収集ガイド
文献を見たときには、まめに研究ノートに書誌情報とメモを残す。
文献で学んだことを踏まえて、研究計画を書き直しメモを作る(まずは、1000字程度でもよいとおもう)。
研究計画では、何が足りないかという現状分析、リサーチクエッション、研究手法(インプット、方法、アウトプット)を明らかにする。

ここまでできたら、指導教官を含めて、様々な人に相談するとよい。
(この段階以前に相談してはいけないという意味ではない。助言する側に、相談者の意図が分かる程度の情報を与えないと、適切な助言がしづらくなる。)

2.研究ノートを作ること/論文執筆作法を意識的に学ぶこと

自分の思考を育てることが大切である。そのための方法として、研究ノートを作るとよい。これは別に新しい方法ではない。梅棹忠夫の『知的生産の技術』には、200字のミニ論文を書く習慣を作れと書いてある。野口悠紀雄の『超整理法』にも、アイデア製造システムへの言及がある。
5000字程度の小論を毎月新たにアウトプットできるくらいの基礎体力をつけることを当面の目標とする。

戸田山 和久『論文の教室 : レポートから卒論まで』(日本放送出版協会・2002年)
白井 利明=高橋 一郎『よくわかる卒論の書き方』(ミネルヴァ書房・2008年)
なども大変参考になるはず。

3.生活習慣の重要性

文系の研究の場合、自分との闘いという側面が強い。調子の良いときもあれば悪いときもある。メンタル面を維持するためにも、むしろフィジカル面に気を配るとよいとおもう。
矢野顕子が離婚後に自尊心を維持するためにジムに行くことを勧められ実行したという話をしていた。
わたしは、2007年からジョギングをはじめたがいまでも一応続いている。

自分の生活を見直してみて、書店や図書館に行く時間をとっているか、研究テーマを探す・拡げる活動、とりあえず決めた研究テーマを深める活動などをしているか、など、問い直してみる。
本当にやろうと思えば、仁義なき戦いの菅原文太なみに、「時間がないんじゃあ」ということになるとおもう。

ということで、ご健闘をお祈りしています。

進学を考えられている方は、思い切って様々な人に相談してみたら良いと思います。

そして、ついでに不吉な話もリンクしておきます。
データえっせい: 専攻別にみた博士課程修了生の惨状

2012年09月06日

千葉家庭裁判所松戸支部の取り組み

論文紹介シリーズ。

吉田 彩=田中 義一「調停実務シリーズ(100)千葉家庭裁判所松戸支部の家事調停への取組」ケ-ス研究2008巻1号(2008年)124-140頁

・期日は2ヵ月後。その後の様々な取り組みで1.5ヵ月後に。
・調停成立率は30%台と低迷。これも改善し8パーセント増加、その後も維持。
・調停導入を見直す研修。
・インシデントプロセス方式の事例検討会。

2012年09月16日

ACR Conference 報告 その1

右を見ても左を見ても調停人だらけというACRのカンファレンスに出席してきた。

実務家向けのもので、追加料金が必要なセッションもあり、学会と実務家向け研修会の混合という趣き。

米国では、大学内に紛争解決専門の修士課程や博士課程がたくさんできていて、そのためのモデルスタンダードを作ろうかという話も持ち上がっていた。ちょっとしたバブルのようで、proliferatingとかmushroomingとか言われる状況がある。
米国でもキャリアパスはあまりはっきりしていないような印象を受けるが、ある程度は拡がって来ているということも事実のようである。

ADR Hubというサイトを運営している方と知り合いになった。
もともと大学の卒業生向けのサービスで作ったWebサイトを活用したもので、様々な機能を備えているが、無料で使えるようにしている。

ウェブベースのセミナーのことをウェビナー(webinar)と言うらしいが、そういうことまでできるようになっている。

ポッドキャストのコーナーもあって、10分くらいの短いやりとりで聞きやすい。

バルック・ブッシュ先生も登場している。

Podcast #17: Transformative Mediation With Robert A. Baruch Bush - ADRhub Werner Institute

トランスフォーマティブ調停は、世の中を良くしようとする調停だと理解したがそうかと聞かれて、ブッシュ先生はそうだと応えている。
その流れの中でブッシュ先生は、調停人はそのスタイルに関わらず、Better world peopleだ、と言っている。

ACRは、まさに、Better world peopleの集まりだった。

2012年09月29日

ACR Conference 報告 その2

「その1」から、ずいぶん間が開いてしまった。

もうひとつ、興味深かった報告が、Kennesaw State Universityの教授で、Conflict Resolution JournalのチーフエディターをされているSusan Rains教授の実証的な研究報告だった。

調停人へのインタビューを実施して、その中から、調停の困難トップ10というものを報告していた。具体的には以下の通り。

  • 立場への固執の扱い方
  • 非現実的な期待の扱い方
  • 人々の間の不信の扱い方
  • 調停したくないという当事者
  • 当事者の感情の扱い方
  • 過去から未来への移行
  • 弁護士の扱い方
  • 文化差の扱い方
  • 当事者が調停を理解しない
  • 中立性と普遍性を保つ

このリストを見てどのような感想をもたれるかは人によるとは思うが、わたしは、つくづく日本人もアメリカ人も同じようなものだなぁと、感じた。
日本とアメリカでは、制度面では非常に大きく異なっており、対照的といってもよい点が多々あるが、トラブルにあった当事者の反応というものは意外なほど似ている。

その研究は、書籍として出版を準備中とのこと。

Jean Poitras, Susan Raines (2012) "Expert Mediators: Overcoming Mediation Challenges in Workplace, Family, and Community Conflicts"Jason Aronson Inc

*

Susan Raines(2013) "Conflict Management for Managers: Resolving Workplace, Client, and Policy Disputes" Jossey-Bass

2012年09月30日

根津でワークショップ

メディエーション入門講座@エンパブリック

という活動をさせていただいた。
社長の広石さんは高校のひとつ先輩。同じ東大理Ⅱから、民間シンクタンクに入り、会社を辞めているところまで共通している。大学時代に同じ教養ゼミに出ていたり、コンサート会場でばったり会ったり、等となにかと共通点もある方。

広石さんの会社は、現在、従業員3人、非常勤スタッフ4人を抱える大所帯に成長している。

入門講座で少しだけ見ていただいたビデオは、こちら。
メリーランド州裁判所ADRプログラム:MACRO Video
(リンク先の中の、Resolutionary People。)

このビデオの特徴は、当事者の了解を得て作ったドキュメンタリーであるということ。現実の調停の場面を見ることができる。

後半は、模擬事例検討会形式で進めたが、興味深く実施できた。参加者に恵まれた感があるが。
広石さんから、進め方に対する助言をいただくこともできた。

入門講座の次の日の午前中にエンパブリックの方々と話をさせていただいていたのだが、法律専門職と違って、話が早いなと。やっぱりこういう方と仕事をしていかないと、物事を進められないなという感想を新たにした。

いただいた書籍、
広石拓司『共に考える講座のつくり方~あなたの経験をみんなの学びに』
を、さっそく読ませていただいたが、大変共感した。
自社で出版されているのに、ISBNの番号もとっておられる。

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