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読売記事:解決へ被災者に多様な支援を

ADRニーズがあるという指摘。

法的トラブル 解決へ被災者に多様な支援を(読売新聞) - goo ニュース

法的トラブル 解決へ被災者に多様な支援を
読売新聞2011年5月9日(月)01:10

 「津波で流された家や漁船の借金が返せない」「震災直後に会社を解雇された」。被災地の人から連日、深刻な法律相談が持ち込まれてくる。

 各地の避難所などで親身になって相談に応じているのは、地元の弁護士会や全国各地から応援に駆けつけた弁護士たちだ。

 被災者にとって、法的な悩み事は大きな負担となる。納得のいく解決策が見つかるよう、法律家による支援を充実させたい。

 日本弁護士連合会は、先月末から今月1日までの3日間、宮城県内の避難所95か所で無料法律相談を行った。11都府県から延べ305人の弁護士が参加した。

 相談は1000件に上った。住宅ローンや所有不動産、遺産相続などに関するものが多かった。

 福島県内の避難所でも弁護士が相談にのっている。原発事故の影響から「風評被害で農産物が売れない」といった相談もあった。

 補償の問題では、今後、訴訟も起きるだろう。土地の利用計画や産業再生など、復興の動きから生じる裁判も予想される。

 その場合、当事者は最寄りの裁判所へ出向かなければならない。だが、被災地の多くは裁判所まで遠く、弁護士の数も少ない「司法過疎地域」だ。

 阪神大震災のときは「震災センター」が神戸地裁に新設され、裁判官や民事調停委員らが配置された。相談と民事調停はそれぞれ2000件を超えたが、約3年間でほぼ解決し終えた。

 こうした震災関連の問題を集中的に扱う“拠点”があれば便利だろう。最高裁は裁判官の増員を検討中だ。実情に見合う人員と解決の場を確保してもらいたい。

 裁判費用をどう捻出するかも大きな問題だ。被災者の中には家も家財も流され、着の身着のまま避難所へ逃れた人も多い。

 日本司法支援センター(法テラス)には、経済的に困っている人の裁判費用を立て替える民事法律扶助制度がある。資産や収入が扶助を受ける条件に合うか、審査があるが、弾力的運用が必要だ。

 できれば、裁判になる前に法的紛争を解決したい。仙台弁護士会は、それを支援する機関として「裁判外紛争解決手続き」(ADR)のセンターを発足させた。

 ADRは弁護士や専門家が仲介者を務め、法的紛争を話し合いで解決する制度だ。他の被災地でも検討してみてはどうか。

 紛争が長引けば、復興の妨げにもなる。早期解決に向け、法律家が力を合わせる時である。

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