同じ苦痛を堪え忍ぶのにも、低い動機からそうするよりも、高い動機からそうする方がはるかにむずかしいということが真実ならば(一個の卵を手に入れるためとあれば、午前一時から八時までじっと動かずに立ったままでいられた人たちも、ひとりの人命を救うためとなれば、なかなかそんなことはできなかったであろう)、さまざまな点からみて、おそらく低い徳の方が高い徳よりも、種々の困難、誘惑、不幸の試練によく堪えることだろう。
シモーヌ・ヴェイユ, 田辺保 訳『重力と恩寵』ちくま文庫 pp.10-11.
[amazon]重力と恩寵