本田由紀(2009)『教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ』 (ちくま新書)
教育に関する左右の対立が、実は、現代の若者にとって役に立つものでないものになっていると考えて、その対策を示したものというふうにいえるとおもう。
具体的には、教養主義やその継承としてのシチズンシップ教育など、伝統的な左翼が好むものは、学生の手に職をつけることを避けてきたとする。しかし、そのような教育観が生み出した弊害が大きいという。
むしろ、手に職をつける・・「適応」を学ぶことで、かえって、「抵抗」の道も開けるのだという。
この、「適応」と「抵抗」の両面を学べるようにしようという教育観は、ADRが持っている二面的な性質とも通じるところがあって興味深い。
筆者がいうように、左右の固定的な言説が、教育を奇妙に固定してしまっていたというのは、そのとおりだろうとおもう。
そして、flexpeciality(柔軟な専門性)を身に付けることを支援するという考え方にも共感できる。
ただ、実際的には、労働市場の流動化と併せてやるか、むしろそちらを先行させないと、社会階層固定化政策に陥るおそれもあるとはおもった。
ちらっと紹介されていた、NPO法人POSSEが行ったアンケートで、企業における違法行為経験の多さという話も興味深い。