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山口・大川論争

二弁全友会Webニュース2003/4/5

仲裁で裁判を受ける権利を奪うのか/山口 広(第二東京弁護士会所属)
http://www.zenyu.org/report/68/68-05.htm

 現在消費者トラブル解決のためとして設置されているADRらしき機構の悲惨な実情がまずある。我々に身近な証券会社や商品先物取引会社と投資家(これも消費者と我々は考えている。業者側はそうは認めないが)とのトラブルについて、法律は、業界団体があっせん委員会を設置すると定め、委員会が設置されているが、全く機能していない。業者と消費者との意見対立が尖鋭な事件では直ちに斡旋放棄。消費者側が柔軟な姿勢を見せると一気に説得にかかる。このため法制度上は設置され、委員も高裁の元裁判官クラスから弁護士までそこそこの人士がそろっているものの無益の組織になっている。
 製造物責任法の制度化に伴って新設されたメーカー側の業種別団体が設置した紛争処理の為のPLセンターも無益の存在と隋している。危陥商品をつかまされて被害を被る消費者は後を絶たないのであるが、その苦情をメーカー側の反論を押さえつつ解決したという例は聞いたことがない。紛争処理に当たるメンバーの質の問題ではない。メーカー側の資金で設立されているため、その意向や利益を無視できないのである。

「仲裁で裁判を受ける権利を奪うのか」か?/大川 宏
http://www.zenyu.org/report/68/68-06.htm


 さて、山口先生の原稿の「仲裁で裁判を受ける権利を奪うのか」という標題を読んで、四半世紀前の「交通事故裁定センター問題」を思い起こしました。弁護士会内のADR嫌いの底流はいまなお続いているのかと思います。
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 山口先生は、「消費者トラブルで公平な解決は空論といわなければならない」といっています。本当に空論でしょうか。仲裁センター発足後間もない時期に、湾岸戦争が始まると金が値上がりするということで金の先物取引をして、被害を受けた消費者が仲裁を申し立てたケースがあります。3件のうち2件の業者は手続に応じ、残りの1件は業者が訴訟を起こしました。K先生、M先生と私が合議体を構成し、消費者委員会のI先生が補助者になっています。結局、未払手数料の半額を消費者が支払うという和解が成立しています。他方、訴訟は、消費者問題に詳しいS先生に引き受けていただきました。後日だされた判決は、未払手数料の半額を支払えという判決でした。
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 山口先生は、国民生活センター、消費生活センターのことに触れられています。国民生活センター等が消費者の信頼を得ている機関であるということにはなんの異論もありません。・・国民生活センターや消費生活センターの相談を受けた消費者のなかの相当数は、裁判所にも行かない、弁護士のところにも行かずに行き場を失っているのが実情ではないでしょうか。

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2010年06月09日 08:03に投稿されたエントリーのページです。

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