去年は傍聴していただけだったが、今年は前で話をさせていただいた。
タイトルは、「ADR機関活性化に向けて ~民間紛争解決機関の機能と課題~」。
話した内容は、司法調停が充実している社会的環境の中で、民間調停をいかに位置づけることが可能かというものだった。
士業団体のADRは、あっせん人・調停人の自己満足だとかかなり厳しい状況認識を話した上で、しかし、具体的な事例レベルで見ると、民間調停ならではの価値を生み出しているものがあるという話をした。
同業者に対して、本当かどうかが怪しい「やすい、うまい」と漠然とした話をしても信用されない。
しかし、例えば、不倫事件の不倫の側からの申立なら、家裁で受けるわけにも行かないが、民間調停なら受けることもできるといった話を知っているかどうかが大事だとおもう。しかもその申立人が例えば妊娠していたら、1ヶ月に1回の手続では負担が大きくなりすぎる。こういうものをしっかり受けとめられる場があると知っていれば、会務といった義務感などではなく、むしろ代理人としてのプロの責任感で事件を持ち込むようになるだろう。
こういうレベルで、事例を約30個列挙した資料を作って話をした。
もっとこうした具体的なストーリーの共有をもっと進めることが大切なのではないか。
認知度を漠然と上げようといった話よりも、一つ一つの事件への取り組みを丁寧に行い、当事者や代理人の信頼の獲得に向けて努力を重ね、そこからの教訓を抽出して、ADR運動につなげることが大切ではないかという趣旨で話をしたつもり。
論文に仕立てて、どこかに投稿せねば。
全体の詳しい進行は、芝さんのサイトを参照。
ところで、弁護士会の講堂の半分を仕切って、大きなロの字状に机を配置してある。
座席も組織単位での指定で、とても話しづらい。
言ってみれば、ファシリテーションという概念などと真逆の会議スタイルである。
とはいえ、こういう課題はあるにしても、他士業も呼ぶという姿勢自身はまったく正しいし、実務家として、具体的な現実に対する真剣さにおいては、弁護士独特の迫力があり、勉強にもなったし刺激も受けた。
そのうえ、懇親会の食事まで招待していただけてありがたい。ごちそうさまでした。
懇親会で、ある方に、「ADRのことをしていて楽しいですか?」と真顔で聞かれた。
楽しいですよ、はい。