2009-02-02 - 弁護士ラベンダー読書日記:調停考、説得考
調停などの場で、手続主宰者から当事者に、ある理念(たとえば。子供には母親が必要、だから親権者は母親に…/子供には父親も必要、だから面接交渉を…など)を説いたときに、当事者が「わかりました」と言ったとして、それはたいてい、その理念を「心からわかった」というわけではないのです。このことは手続主宰者側からは見えづらくて、自分の説く理念が受け入れられた、とおめでたく受け止めてしまうかもしれません。しかし、多くは、当事者の言う「わかりました」の真意は、「(裁判所ではそういうことになっていることは/私の言い分が聞き入れられないことは)わかりました」というところにあって、「同意」ではなく「反論を諦める」というにすぎないのです。
裁判所ではそういうことになっているということをきちんと情報公開していけば、あるいは、そういうことになっているということが情報として拡がっていけば、情報提供による紛争解決のモデルは成立するのが難しくなる。
まして、調停委員自身の考えだけがそういうことになっているとしたら、その手続に対する信頼は著しく損なわれる危険がある。
そうならないように、当事者と調停委員の情報の格差を前提としないでも手続を主宰できるだけのモデルが必要になってくるのではないか、ということなのだが。