ガワンデ アトゥール(原井宏明 訳)『死すべき定め : 死にゆく人に何ができるか』(みすず書房・2016年)
重たい内容だった。が、決して、単に沈ませる本ではない。
家族の生死を考えさせずにはおれない本である。
と、同時に、自分の研究面でもヒントになりそうだと思ったところも多かった。
医療倫理学者であるエゼキエル・エマニュエルとリンダ・エマニュエルが書いた、外科医と患者の関係性のあり方が紹介されていた。彼らは、インフォームド・コンセントを超える関係性として、解釈的(interpretive)と対話的(deliberative)を挙げている。医師側の態度は、お任せしなさい(パターナリズム)か、自分で決めなさい(自律)の両極端になりがちだが、人(患者)は、もっと違う関係を望んでいる。「人は情報と決定権(コントロール)をほしがるが、助言(ガイダンス)も欲しい」(P199)のである。患者にとっては、助言というより、むしろ意味づけが欲しいという意味で、だからこそ患者に対して、「私は心配しています」とガワンデが言っている(P205)。
ビル・トーマスの実験(W. Thomas, A Life Worth Living (Vanderwyk and Burnham, 1996))、ウィルソン(K. B. Wilson)の「介護付き生活センター」(Assisted Living)についての取り組みについても勉強になった。
著者のサイト(英語):
Being Mortal | Atul Gawande
訳者のサイト:
原井宏明の情報公開
ガワンデ著「死すべき定め」その2