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本:矢原隆行『リフレクティング』

矢原隆行(2016)『リフレクティング: 会話についての会話という方法』ナカニシヤ出版

ナラティブ・アプローチ、あるいは、オープンダイアログの源流の思想として知られるトム・アンデルセンの考え方の紹介を中心に、筆者自身の実践的思索を加えてまとめられた本。

矢原先生は、九州大学大学院文学研究科の社会学の博士課程におられた方で、現在、広島国際大学の教授。
チャイルドラインびんごという子ども向けの電話相談活動のスーパーバイズも続けておられるらしい。

リフレクティングの手順を画一化したいというようなことではなく、むしろ、伸び伸びと様々な現場で使われるように、スーパービジョンや、事例検討会、職種間連携などでの活用方法を具体的な現場の事例と共に紹介されている。介護職と看護職の職種間連携の活用などもなるほどと感じさせられる。
同時に、「リフレクティング」という流行のキーワードを消費するような「ためにする」活動に対しては、冷淡ないし警戒的で、そのあたり静かな怒りがこもっているところにも、この本の魅力があると思う。

リフレクティングの基本的意義を考えるとき、この最小構成としての「三人」という数には、とても大切な意味が含まれています。 P30

あらためていえば、そこではリニアな二者間の会話に比べ、じっくりと内的会話を行うための「間」と、内的会話を次なる外的会話に新たにうつし込んでいくための「間」、そして、それらを各々の参加者がダイナミックに立場を転換させながら折り重ねていくダイナミックな「場」が創出されているのです。 P31
とあるように、著者のリフレクティングへの理解は、三者関係を基本構造として、一般的な二者間の話し合いとは違う動きをつくるところにみている。

私の立場では、上記は、メディエーションへの記述そのもののように見えてくる。

ADRは、Alternative Dispute Resolutionというより、Authentic Dialogue and Reflectionの略であるべきではないかと、半ばは、思いつきと言葉遊びだが、半ば真剣に考えているのだけれど、そういう方向での理論化にあたって、大変参考になりそうだと思った。
ラボラトリートレーニングやPCAGIPとの関係でも考えてみたい。

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2017年01月10日 09:00に投稿されたエントリーのページです。

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