第1部では、オーストラリア人当事者の代理人として関わった著者の体験を元に、直接交渉、法律相談、民事調停、簡裁、地裁、高裁までの「迷宮」をさまよった記録を紹介。相手方は大手損保。
筆者の人物描写が面白く、かつ、納得感がある。あとがきに、裁判官や弁護士はもちろん、裁判所の書記官を含めた法曹関係者は公正で優秀だった、というまとめをしている。ところどころシニカルな指摘はあるにせよ、基本的に個人攻撃の視線はなく、むしろ構造的なブラックホールとして小額紛争という問題を記述している。
第2部では、法社会学研究者による訴訟行動調査やダニエル・フット先生の議論の紹介もあり、その文脈でADRが検討され、第1部での紛争も金融ADRのスキームで解決したかもしれないとまで言っている。
わたし自身の問題関心と非常に近く、興味深い著作だった。