上岡陽江=大嶋栄子『その後の不自由--「嵐」のあとを生きる人たち』(医学書院・2010年)
この本もまたかなり強烈なもの。
一方の著者は、ドラッグからの立ち直りを支援している当事者団体であるダルク女性ハウスの代表の上岡陽江さん。
もう一方は、札幌のNPO法人リカバリー代表の大嶋栄子さん。
話は明快で、豊富な図解さえあるのだが、軽々しくは扱い得ない内容。
当事者にとっての相談の現実についての分析など、ドラッグ問題に関わらずかなり普遍化できそうな話が含まれているように思えた。相談すると、「恥をかく」、「支配される」、しかし「解決してくれない」。「自分が崩れてしまう」という声まで出てきたという。(P77)
援助者は巻き込まれてはいけない、巻き込まれずに共感せよなどという指針ではなく、巻き込まれるのは恥ずかしいことではないというところから出発せよという。(P206)
教えられることが非常に多い。
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当事者側が求めている支援と専門家側が提供するつもりになっている支援とが相当離れてしまっている。だからこそ、当事者団体の活躍の余地があるのだけれど、専門家側が変化していくことも不可避であるはずだ。しかし、また、そこを研究とか教育とかすることが期待されている学者の役割を考えると、大きすぎて途方に暮れる感じもする。