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結局は「西洋人ごっこ」

我妻洋先生は、社会心理学者であり、我妻栄先生の長男である。

以下のような発言を残している。

 現在の日本にはいろいろな欠点があるわけですけれども、その欠点を直していくには、日本を西洋化すればいいのだという長い間続いた考え方は、この際捨てるべきだと思うのです。  ただ一つ問題が残るような気がするのは、規範としての集団主義、あるいは行動のパターンとしての集団志向でもいいのですけれども、これに対して根本的に否定的な態度をとる集団があるのです。それは法律学者です。法律学者が「法意識」という言葉を使うときには、それはほとんどすべて「人権意識」と同義語になっている。それほど彼らの関心は人権という問題に集中しているように思います。日本式の集団志向の長い歴史の中には、基本的人権という概念が、必然的に生まれてくる余地はなかった。ですから、日本をもっと西洋化して--「西洋化」と言わずに「近代化」というのが普通のようですが--、日本人が基本的人権の尊重ということに目覚めるようにしなければならない。こういう意見が法律学者に共通しているように思われます。そこで、日本を西洋化するのではなしに、集団主義の中から日本的な基本的人権という概念を引っ張り出す仕事が残っていると思うのです。それをやらないと、差別の問題は片がつかないし、借り物の基本的人権という概念で裁判をやってみても、結局は「西洋人ごっこ」に終わってしまうのではないか。こういう問題が残ると思うのです。 P222 濱口 恵俊=公文 俊平『日本的集団主義』(有斐閣・1982年)

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2012年01月12日 10:02に投稿されたエントリーのページです。

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