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本『全貌フレデリック・ワイズマン』

土本典昭, 鈴木一誌 編 『全貌フレデリック・ワイズマン――アメリカ合衆国を記録する』岩波書店

今回、来日しているところを見に行くということはかなわなかった。

ワイズマン監督に対するかなり長いインタビューも収録されている。

ドキュメンタリー映画で、しかもナレーションもないという話だけを聞くといかにも難解そうな印象を与えるが、わたしが実際に見た映画はエンターテイメント性が高いとさえいえるもので、蓮實重彦が賞賛するというのも分かるなぁとおもった。

ワイズマンはボストン大学のロースクールの教員として法律を教えていた。学生を見学に連れて行っていた刑務所に関する映画がデビュー作である。それが、24年間上映禁止されていたチチカット・フォーリーズだった。



--映画からは、眼前で起きている事態に対する観察者の怒りを感じます。しかし実際の撮影現場では、ご自身の感想を他人に伝えることはまずないのでしょう。ドキュメンタリーの撮影者は感情を押し隠し、ダブルスタンダードで被写体に接するべきですか。

FW 誰かがわたし個人の意見を聞いたとしたら、正直に答える。しかし、質問されることは、いつも少ないね。(略)

--ダブルスタンダードで相手と対峙せざるを得ない。

FW ダブルスタンダードではない。誰に対しても同じように接するからだ。偽善は決して機能しない。誰かが質問してくれば、わたしはいつも真実を語る。倫理と戦略が共存する状況なのだ。倫理とは、自分たちが何をやっているのか人びとに説明して、撮影許可を得ること。戦略とは、人びとを撮影隊に馴染ませ、安心させることだ。作り話でひとを騙して撮影許可を取ったことは、一度たりともない。

(略)

FW 現場での姿勢はこうだ。「自分の使命は、映画をつくること。この施設を変革しようとは考えない。施設の人びとにしっかり仕事しろとメッセージを伝えようとは意図しない」。 わたしの仕事は、自分が現場で見たこと聞いたこと感じたことにもとづいて、できるだけよい映画をつくることだ。

pp.22-23
インタビューアーは、船橋淳氏。

過去のエントリー:映画:フレデリック・ワイズマン「パブリック・ハウジング」


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2011年11月16日 09:31に投稿されたエントリーのページです。

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