フィルムネットワーク:フレデリック・ワイズマン映画貸し出しリスト
ちょっと前だが、映画を見た。
3時間を超える大作だったが、非常に面白かった。
弁護士で学者でもあり、ドキュメンタリー映画の作家でもある。
ドキュメンタリーといっても、NHKスペシャル風のものではなく、ナレーションなどによる説明は加えず、現実のやりとりを組み合わせて映画にしていくという手法を取っている。
この映画は、シカゴの公営住宅を舞台にしたもの。
赤ん坊を連れた若い女性が入居できるように、住民自治サービスのトップにいるやけに迫力のある黒人女性が電話で役所に交渉する場面から始まる。
路上で麻薬を売っていると思われる女性を叱る警察官の場面や、母親たちを集めて避妊の重要性と方法を説明する講習会の様子(母親が連れてきた幼児たちがわめいている)など、さまざまな場面をつないでいく。
つながりがないと思われていたいくつかの場面の持つ意味がつながってくる。
こういうやりかたでも、映画として成立するのだと驚く。
この映画の中で、Win-Winレトリックの醜悪さというものが存在するなぁとしみじみおもった。
役人が住民たちに会社をおこさせようとして行っている説明会の場面がある。
この地域では、多くの住民に仕事がないので、希望がなく、それで麻薬に走ったりする人が多い。
役所が発注する仕事を請けられる地域の会社があれば、地域に仕事がふえる。
だから、この役人たちが提案していることは筋が通っている。
でも、提案しているというよりは、けしかけているという感じに見える。
そのビジネスがうまくいくかどうかのリスクは、けしかけている側は決してとらない。