園尾隆司(2009)『民事訴訟・執行・破産の近現代史』弘文堂
著者は東京高裁の部総括判事。
江戸時代後期から現代に至る民事の手続法の歴史を書いている。
本格的な書物だが、実務家に読まれることを想定して書かれており、ストレートな記述で読みやすい。非常に勉強になる。
歴史の話だけでなく、比較法的な視点もあり、法動態学のテキストという趣の本。
司法省にとっては、その資質からみて、勧解吏は抱えなければならないほどの職種ではなく、また、このように急激に増減が生ずる勧解事件を常勤の吏員で処理することに疑問が生じたものと推測できる。 P126
勧解手続消滅の事情について、民事訴訟法制定という事情だけでなく、もう少し突っ込んだ事情として、「司法のリストラ」とでもいうべき状況を推測して書いている。
調停制度の政策的意義として、「急激に増減が生ずる事件を非常勤の調停委員で対応する」というところに求めているところも面白い。非常に当たり前な話なのだが、民訴の学者などからあまりそういう説明は聞かない。
大正期の調停立法についても、勧解の復活という視点での説明をしている。
ADRの一つである調停の期日に出頭しないことを理由に過料の制裁を科するのは、・・、江戸時代以来の考えを残す、異例な定めである。訴訟の当事者が本人尋問の呼出に応じなくても、過料その他の秩序罰を受けないこととの均衡も失する。 P270