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不逞老人

鶴見俊輔(2009)『不逞老人』(河出書房)

NHKのETV特集の番組を作ったときに併せて制作したインタビュー本。インタビューアーは黒川創。
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私は国家主権の垣根を、区役所並みに低くすべきだと思っている。そもそも根本の単位は、民俗学でいう「もやい」だと思うんだよね。つまり、近所に住んでいる一〇人や一〇〇人のお互いに顔のわかる人たちの親しみが、すべてのつながりのもとになっているということです。私が考えているアナキズムというのは、その程度のことなんだ。でも、区役所程度の制度は必要でしょう。世界政府という考え方についても、あらゆる政府が全部廃止されるべきだとは思えない。「もやい」程度のものは、どんなところでも実際に機能しているんだから。たとえば、山の中の五、六軒の家どうしのつながりでも、その互いの関係を通してやってきたでしょう。その意味では、谷川雁が「日本が持続してきた偉大なものは村だ」と言ったことは卓見だね。それに対して、あるとき東大法学部の川島武宜が、教授会で談合によって政治が行われていることが嫌になって「ここは村か!」と言ったという話がある。その際に川島武宜が言っている「村」への評価は近代的に見えるけれども、私からすると、谷川雁の認識の方が深いと思うね。 P157-158

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2009年11月06日 07:52に投稿されたエントリーのページです。

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