歌人の枡野浩一が、離婚調停と裁判を進めながら連載していた書評小説。
著者は、別れたくない夫であり、別れることは認めるとしても、なんとか子どもに会いたい夫という立場である。
ストーカー防止法をふりまわす元妻側の弁護士への憤りなどは真っ当なのだが、何が真っ当であるかというのもなかなか難しい問題だ。
解説で穂村弘が、ネットで批判を受けると、わざわざ出かけて行って相手の目の前に現れて反論するという枡野の過剰としかいいようがないふるまいを紹介している。
子どもが食事前に大声でイタダキマスと叫ぶのを見てビクッとする大人のような気分がすると言っているが、たしかに真っ当な過剰さ、あるいは過剰な真っ当さが迫ってこられるとたまらんだろう。
そういう意味でウソをついてまでストーカー防止法を言いたくなる元妻にだんだん共感する部分がでてくるという奇妙な本である。
もうちょっとわかる言葉で話してよ。弁護士ぬきで。日本の文字で。というのは、名歌だとおもう。