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郷原信郎『「法令遵守」が日本を滅ぼす』

郷原信郎[2007]『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書)

『コンプライアンス革命』の郷原先生の新書。
元検事が言っているから価値があるのだとおもうが、比喩があいかわらずふるっている。

 こうして世の中が「法令遵守」に埋め尽くされる状況の中で、多くの賢明な組織人達は、法令遵守という意味のコンプライアンスが、多くの弊害をもたらしていることに気づき始めています。抽象的に法令遵守を宣言し、社員に厳命するだけの経営者の動機が、命令に反して社員が行なった違法行為が発覚した場合の「言い訳」を用意しておくことに過ぎないこと、法令遵守によって組織内には違法リスクを恐れて新たな試みを敬遠する「事なかれ主義」が蔓延し、モチベーションを低下させ、組織内に閉塞感を漂わせる結果になっていることを感じています。 P7

 専門の法律家のみで構成される司法の世界では、問題の解決に関して判断理由をわかりやすく国民に示して理解を得ることは、あまり重視されませんでした。法廷に行くと、難しい言葉と難しい理論が飛び交っていて、一般の人によくわからないのはそのためです。
 こういう法律家の存在は、例えていえば、かつての農村社会での巫女のようなものでしょう。種を蒔き田畑を耕し、収穫するという農村の日常の仕事の中では、巫女が登場することはありません。
 しかし、一たび、天変地異が起きたとか、疫病が流行したとか、村人の誰かが物の怪に取りつかれたというような、特異な出来事に直面したときは、霊能力を持った巫女に拝んでもらって解決しようという話になります。唱えているのはさっぱりわけのわからない呪文ですが、ほかに解決の手段がないので、巫女の言うことに従うのです。
 日本の司法の世界も同様で、非日常的な場面で役立つ「霊験あらたかな儀式」であることに存在の本質があったのです。
P130



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2007年07月11日 19:03に投稿されたエントリーのページです。

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