カルヴィン・トムキンズ、青山南訳[2004]『優雅な生活が最高の復讐である』(新潮文庫)
なるほどこんな本だったのか。
比ゆ的にいえば、豪華客船での冒険旅行だとおもった。
主人公のジェラルドの妻のセーラが、スコット(フィッツジェラルド)に言った言葉が目にとまった。
質問をある程度すればひとのことはわかるとおもっているとしたら、大間違いよ。あなたには人間というものがまるでわかっていない P179
・・・くどくど、説明は不要だろう。そのとおりではないか。
この美しい本の最後は、以下の文章で終わる。
ジェラルド・マーフィはレジェの言葉を引くのが好きだった――「快適な生活とひどい仕事、ないしは、ひどい生活と美しい仕事、どっちかだよ」。しかし、優雅な生活は、生活か仕事かのどちらかで失ったものへの十分な復讐にはならなかった。ジェラルドはかつて語ったことがある。絵をはじめるまではぜんぜん幸せじゃなかった、絵をやめざるをえなくなってからは二度と幸せになれなかった、と。 P239