小林恭二[1997]『数寄者日記―無作法御免の茶道入門!』(淡交社)
小林恭二が、茶道を(はじめて)習うという企画のエッセイ集である。
はじめにで、「日本の文芸は基本的には茶道に収斂する」とまで言っている割には、あまり真剣におけいこするわけでもなく、雑誌の編集部の企画の言われるがままにあっちいったりこっちいったりと、不器用な体験を繰り返す。
読んでいる限りでは、妙に堂々としている。が、かといって悪びれているわけでもなく、冷や汗をかいたという表現もよく出てくる。
小林恭二は奥さんに、大きい生き物が一匹家にいるようだ、と言われているらしいが、文学者とはそういうものなんだろうか。
この日、日本のやきものについて延々と教わってひとつ感じたことがある。それは、日本人の美的センスの中心にあるのは「面白がる」ということだな、ということ。P143