宇都宮健児[2002]『消費者金融』(岩波新書)
で紹介されていたが、自己破産するのはバクチなど本人の責任だけでなく、病気や災害などの割合も実際はかなり多いらしい。
大手消費者金融の違法行為(金利もさることながら貸付方法、取立方法の取り締まりがより重要だろう)の追求、ヤミ金融が不当に稼いだ利益を吐き出させることなどが短期的に必要で、長期的にはやはり教育が重要だろう。
サラ金に手を出すなだけではなくて、破産や法律扶助の意味や方法もちゃんと教えるべきだとおもう。
さらには、時間はかかってもまともに助け合える関係の再構築みたいなことも必要だと思った。
以下、読書メモ。
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(個人の自己破産件数について)〇五年度のそれは一八万四〇〇〇人を上回り、十年前、住専処理に明け暮れた九六年の数値と較べると、四倍以上の増加になる。
P14
この消費者金融の利用者数は、〇四年の一年間でついに二〇〇〇万人の大台を超え、主婦を含めた国内の就業者数約八〇〇〇万人のうち、実にその四分の一にあたる市井の人々がサラ金、つまり消費者金融会社を利用した計算になる。最新データによれば、平均借入額は一〇一万円だ。
P14
一般にクレジットや消費者金融などの借金がかさみ、返済困難な状況に陥っている多重債務者の総数は、現在、推定で約三五六万人いると考えられている。
P17
返済不可能な多重債務者に、さらに増枠させて貸付けを行う――それを可能にしたのが、アイフルの「おまとめローン」である。
アイフルは多重債務者に対し、他社からの借入れをまず一本化するように働きかけ、一括返済を名目にした同ローンを勧めてきた。
これは親族や知人などの不動産を担保にさせる新手の不動産担保ローンで、いずれ返済が滞るのを見越したうえでさらに三〇〇万円から五〇〇万円の貸付をする商品だ。
P23
Pさんは私と目をあわさずに、そう語った。
・・
「当時の上司の口癖は、「悪いのは客。どんなことを言っても許されるんだ」と。しょせんは電話での督促ですから、何を言おうが、どんな悪態をつこうが気楽なんです。だんだん相手を攻めたてる面白味にも目覚めちゃって、こいつら人生の負け組みなんだと……。責任転嫁もいいとこですけど、当時の私はほんとにそう思っていました」
P35
〇五年七月、貸金業者に対する裁判で、最高裁は「貸金業者は取引履歴を開示する義務を負い、開示しない場合は不法行為とみなして慰謝料の支払い義務が発生する」との判断を示し、続けて今年(〇六年)一月、利息制限法と出資法の上限金利が食い違うことにより生じていた「グレーゾーン金利帯」そのものを、ついに事実上、認めないと宣言したのである。
P47
また中小の消費者金融会社においても、たとえば一般的な取立て法として、たった一〇〇〇円であっても、とりあえず顧客に返済させる。しかも振込みでなく、片道一時間かけさせても店頭にまで足を運ばせるという手法をよく用いる。
つまり債務者に応分のプレッシャー、屈辱感をあえて与えることで、何をおいても早く返済してしまおうという気持ちにさせるのが狙いらしい。
P71
「そら、むこうの方が危険やから、客も先に金を返そうとしよるやろ。難波中だけやない、金貸しはどこも大手とヤミ金だけになりつつあるわね。それなりに顧客をつかまえて、こつこつ商売しよった中小の業者は、もう片っ端から淘汰されとる。まァ、時代の流れっちゅうやつや」
P116
・・ヤミ金と「オレオレ詐欺」「架空請求詐欺」「振り込め詐欺」などが、なべてイコールの関係にあることが一目瞭然だからである。
P143
Aさん夫婦にかぎらず、裁判所から自己破産を認められた人々のもとには名も知らぬヤミ業者から連日のようにDMの類が郵送され、近年、問題となっている。
P147
誤解を恐れずに言えば、離島出身の若者という、これも一種の弱者が多重債務者という社会的弱者を喰う――いわば「下流喰い」とでもいうべき構図が、そこに現出していたといってもいいのではないか。
P158
ところが八〇年代以降の低成長時代に入り、まず終身雇用性がなし崩し的に崩壊。顕在化していた地域や家庭といったコミュニティの崩壊に、景気の冷え込みがさらさらなる拍車をかけた。相互扶助の精神、借金をすることへの抵抗感なども、最後のコミュニティ社会といえた「カイシャ文化」の崩壊と共に消えようとしているのだ。
P197
悲鳴をあげるタクシー業界
平均年収も三〇〇万円弱と、全産業の労働者のそれより一五〇万円以上も低い現状にあるとされ、地方のタクシー運転手の場合、生活保護世帯と実質、変わらない額の手取りに甘んじている例も少なくないという。
P201
マスメディアのタブー
・・「メガバンクともあろう存在が、そもそもサラ金と組むとはいかがなものか」という私なりの自論を述べた箇所があった。
その論旨、記事の趣旨が後に大問題になったのである。
・・
その大手広告代理店はいきなり編集部を素通りして、夕刊紙の親会社である某新聞社の広告出稿を全面ストップすると圧力をかけてきたのである。
P204