学生さんのゼミ論文をきっかけに、夫婦同姓の「家」がいつごろ、どういう風に成立したのかということに興味が出てきた。
坂田聡『苗字と名前の歴史』(2006、吉川弘文館)によれば、苗字帯刀が認められなかったから庶民には苗字がなかったというのは暴論で、実際には江戸期に庶民レベルでの家の観念が拡がったはずだという。また、江戸期には、武士は夫婦別姓だったが、庶民は夫婦同姓だったという。
家名、家産、家業がセットの「家」の観念ということでは、日本の中ではかなり共通性があるのだろうけれど、中川善之助が『民法風土記』で書いている飛騨・白川郷の大家族など、様々な形態があったのだろう。大きな流れとしては、鎌倉時代の分割相続がその後単独相続になったとある(高校の歴史の教科書に書かれている)が、少なくとも、分家のような形の分割相続はかなりの程度あったはずで、実態としての多様性についてもう少し知りたいなと思う。
渡辺尚志『近世百姓の底力』では、江戸期の百姓=庶民が単に武力で抑圧されていただけではなかった様子が描かれている。
歴史学は門外漢ではあるが、人々の意識=ナラティブを形成するにあたって、やはりかなり大きな影響を与えていると思うからだ。
しかし、この分野はイデオロギーが入り込みやすくもあり、実態そのままを理解することが難しいなとも感じる。