仕事に関係のない本って、どうしてこう早く読み終われるものなのか、とおもうが、大変に興味深い内容だった。
もともとは、ホームレス中学生の二番煎じ的な形で出版されたもののようだが、ご本人の小六から中学生あたりの生活が紹介されている。
まず、母親が出て行って、ギャンブル中毒の父親とふたり暮らしになって、その父に心中を迫られたりという経験も経て、さらにその父親は借金取りから逃げるために息子を捨てて出て行ってしまう。ありえないくらいに無責任な父と母なのだが、これが現実である。それまでも親切にしてくれた近所の家に一週間だけお世話になるが、家でひとりで暮らすことを決意し、元の部屋に戻る。元の部屋では、電話は止まり、直に電気も止まる。さらには、借金取りが現れる。・・と、なかなかに壮絶。
その後、生活保護と民生委員の家族の親切を受けながら、ひとりで中学生の三年間を過ごし、その過程で落語に出会うという話。
噺家さんが書いたものだけに、事実に基づいてリアリティがありながらも、どこかふわっとした余白のようなものがあって、厳しさだけの露悪的なところがなくて、読後感が良い。
そういう意味でも見事な作品になっている。