柳川範之(2009)『独学という道もある』 (ちくまプリマー新書)
とても謙虚な語り口で、独学の価値を語っている。
中学・高校・大学・大学院という一連の序列化されて、かつ、ひしめいているような細い道にこだわらなくても、成功に至る道はあるはずだという話を、大検・通信教育での大学という経験談とともに紹介されている。
たとえば、自分の子どもに対して、どういう教育観を伝えるかという話になってきたときに、「高校に行かずに高校認定(旧大検)もアリ」「通信制の大学もアリ」と、安易に言っていいものか、という意味では、実際には悩ましい。
ただ、悩ましいから思考停止して、みなと同じように偏差値レースをやればいいというだけではすまない場面がでてくるだろう。そういうときに、ちゃんと悩みを悩めるかが大事だとおもう。
そういうときでも、そういうときでないときにでも、こういう本を読んで、一度悩んでみるとよいのではないかとおもう。
また、アメリカなどでそうであるように、大学院がキャリアチェンジの場として機能するようになるといいと言っている。
わたし自身は、まさに大学院でキャリアチェンジしたわけではある。なので、わたしとしてもぜひそうなってくれると、自分の肩身が狭くなくなる可能性にもつながるので、いいなとおもう。が、わたしの実感として、大学院がキャリアチェンジの場として機能するためには、大学院で学ぼうとする人の意識が変わるだけではなくて、大学などの制度側にも変えるべき点があるような気がする・・そして、最終的には、雇用慣行まで変わらなければ、なかなか厳しいとおもう。大学院でキャリアチェンジするというのは、確かに可能性はないわけではないけれど、リスクと便益とを考えると、それほど人に勧められるという代物でもないようにおもう。
ところで、全体として、とても共感するのだが、同じことを言ったとしても、こう謙虚な口調でなければ伝わらないこともあるのだろうなと、我が身を省みて、おもった。
思いついたことをつらつらと書いてしまったが、自らの教育観を見直すきっかけとして、とてもよい本だと思う。
コメント (1)
「謙虚な口調でないと伝わらない」ということに共感しました。
田畑和博
投稿者: 田畑和博 | 2011年03月26日 06:54
日時: 2011年03月26日 06:54