渡辺 尚志 (2009) 『百姓の主張―訴訟と和解の江戸時代』, 柏書房.
現在の千葉県茂原市北塚という場所に当たる「北塚村」の村でのもめごとを丹念に紹介しつつ、その背後にある江戸の村や百姓の状況を解説していくというスタイルの本。
資料に基づいての説明だが、現代語訳された紛争当事者の言い分が面白く、公事宿とよばれる裁判手続専門家が暗躍しようとして見破られたり、展開がヴィヴィッドで引き込まれる。
公事宿は、代書手続とともに、裁判期間中の宿泊サービスを提供していた宿屋も兼ねていたそうだ。
江戸時代の農民というと無知で無学という先入観が出そうだが、実態はかなり違うという。文字を読み書きできる人もそれなりにいたようで、書面の記録があるからこそのトラブルが、この本で出て来る最初の紛争のきっかけになっている。