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巡礼

橋本治(2009)『巡礼』(新潮社)

橋本治の小説。
ゴミ屋敷の住民の話である。

先月出たアジア法学会のシンポジウムで中国の弁護士が、ゴミ屋敷問題のようなものがあれば、中国なら人民調停が使われると思うと発言していた。
中国の人民調停は、当事者の申立がなくても、調停委員会の発意で事件として扱うことができる(おそろしい)仕組みらしい。

日本ではどうするか。その状況が前半で描写される。死ねばいいのよと呪いの声をあげつつ心療内科に通う近隣の住民がいたり、ワイドショーでとりあげ「困りますね」という一言で次の話題に移ったり、そのワイドショーを見て野次馬の自動車が近隣で渋滞を作り出したりという、喜劇か悲劇かよくわからない状況が、橋本治らしい過剰な丁寧さとしばしばの突然の飛躍によって描写される。

後半では、そのゴミ屋敷の主の一生が語られる。
わからない人物をわかろうとするためには、それ相応の構えがもとめられる。
おまえらの言っている「コミュニケーション」なんて、どの程度のものだ、という叫びのような小説だと思った。

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2009年12月14日 11:12に投稿されたエントリーのページです。

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