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ADR士?

さる方と「ADR士」という資格が、ADR法の2012年見直し時に入るだろうかという話をしていた。

ADR検討会の座長メモで、ADR士が将来的な課題とされているので、これが検討されるのはごく自然なことだ。

その方は、ADR士なんかができるとトレーニングの仕事が増えて(あなたにとって)良いのでは、という話をされたが、わたしは、ADR士という資格については、ADRの将来の命取りになる危険もあると思っているという話をした。

ADR士という制度を作るプラスの面としては、教育方法論が成熟化し、質的な向上が期待できる面がある。これはその通りだろう。話合いの進め方だけに特化して40時間位のトレーニングが必要とされ、大学院レベルの教育もいくつかある米国などの水準に比べると、日本で実務家が調停に臨む前に受ける教育はいかにも乏しい。その意味で、資格制度の導入が、教育プログラムの充実につながる可能性は否定できない。

しかし、食えない資格がまたひとつ増えるだけの可能性が非常に強い。そうなると、下手すれば分野そのものの死滅につながるおそれがある。イノベーションを阻害する危険も高い。資格合格のために必要とされる教育水準としても中途半端な内容にしかならないだろう。さらには、「態度」をどう査定するか、一度合格させた者の「態度」が維持される保証があるかという問題もある。勉強は必要だけど、勉強したからといって働ける場所はありませんという話になってしまうと、勉強しようと思う人自身がいなくなってしまう。

米国で、州レベルでは、フロリダをはじめとしていくつか資格的な制度があるが、全国レベルでは存在しないのも、下手な制度を作ることで、ADR発展を阻害するリスクを考えてのことだと思う。

やはり、わたしは、安易に資格をつくるより、教育内容そのものの研究や、教育プログラムを実務家に提供できるようにすることを先行させるべきだとおもう。
また、政策的には、個人を認証するだけでなく、教育機関を認証するアプローチもあり、後者も検討すべきだとおもう。

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2009年12月04日 12:39に投稿されたエントリーのページです。

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