N.J.ゴールドスタイン、S.J.マーティン、R.B.チャルディーニ (著)、安藤清志 監訳、高橋紹子 訳(2009)『影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣』(誠信書房)
『影響力の武器』は、交渉本の古典のひとつである。
6つの「原理」である、返報性、権威、一貫性、希少性、行為、社会的証明に絞って、社会心理学で証明された科学的成果だけを紹介しているところに特徴がある。
この続編では、より具体的な局面を50列挙して、「テクニック」としての紹介になっている。
交渉テクニック使用における倫理性の問題も再三取りあげているのは、それだけ「使える」からだろう。
プロ調停人の声として、以下のコメントが紹介されている。
説得の心理を読む前は、冒頭に双方が相手側にも聞こえるように金銭的な要求を述べることを認めていました。しかし、一貫性の原理のことを知ってからは、個別の面談に入るまで金銭面の要求や提示を控えるように双方に要請することにしました。大勢の前での公のコミットメントが譲歩の努力を妨げることに気づいたおかげで、私の和解達成率は劇的に上がりました。冒頭の要求を聞いていた人が多いほど、その立場から当事者を引き離すのは難しいことにすぐ気づいたのです。(pp.246-247)
別席支持者が喜びそうなコメントである。
わたしは、これを読んだところで、同席手続を基本にすべきという立場に変わりないが(これも「一貫性」かな・・)、金額面の提示を出させるのは慎重にしたほうがよいという考え方はその通りだと思う。
むしろ調停人が金額提示の前提条件の問題を丁寧に扱うことで、当事者が「一貫性」を保ちつつ、提示を変えやすくする方向で手伝うということもあるだろう。
・・などと、考えながら読んでいた。
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ロバート・B・チャルディーニ (著)、社会行動研究会 (訳)(2007)『影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか』(誠信書房)