丸山真男、加藤周一[1998]『翻訳と日本の近代』(岩波新書)
対談というより加藤周一が丸山真男に聞いているという形式の本。
明治の日本人は、西洋文明の本質を理解しようと、歴史書が多く翻訳され、読まれていたという。
当時は翻訳者にも公法と私法の区別が理解できなかったらしいが、それでも万国公法がベストセラーになっていたとか。
相手のことがさっぱりわからないときには、案外本質に向かうということで、受験生たちがミニマムエッセンシャルズを教えろという態度とは真逆になるんだろうなと感じる。
また、丸山真男の福沢諭吉に対する敬意は非常に強いものがあるが、西洋文明の本質に科学的思考があることを強調していたこと、数学的物理学に代表される空理空論の価値を一貫して言っていたことなども紹介していた。福沢に特有な実験への注目はデューイに近い(p164)とか。